Erdbeere ~苺~ 7章(3) 見えていた勝敗 忍者ブログ
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2013年03月12日 (Tue)
7章(3)/※ヒロイン視点

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勝負は既に見えていた。
刀を振るう手が弱まっていく新藤に対し、姐さんから受け取った刀を即座に使いこなす桐生。

場所を移動し続け、錯乱する方法で戦っていた新藤も、もう体力の限界だろう。
動けば動くほど自分を苦しめ、桐生との差を感じることになる。
刀を使う新藤に対し、まったく気にすることなく挑む桐生も桐生で化け物だけど。

新藤が殴られ、地面に平伏す。
その瞬間に新藤の部下が銃を構えるが、動きを読んでいた私の蹴りによって沈んだ。


「助かった、あけ
「それほどでも」


倒れていた新藤がこちらを睨む。
睨まれても怖くねぇよと鼻で笑えば、姐さんが前に出て新藤に怒鳴った。


「この時をもって絶縁だ。とっとと出てお行き!!!」


ざまぁねぇな。

金と欲望に負けて、自分の組を売ろうとするからだ。

もうこんな奴に用はないと、私は大吾達の縄を解く手伝いに向かった。
少し意地悪く笑いながら縄を解けば、柏木さんがキッと鋭い目で私を睨みつける。


「何を笑ってるんだ」
「え?いやぁ、柏木さんもこういうのに捕まるんだなぁ・・・って、あだっ!?ってえな!!殴るなよ!!」
「・・・」
「いひゃい!いひゃいー!!!!」


滅多に怒らない柏木さんの、無言の怒り。
頬を引っ張られた私は必死に手を叩き、謝りながらギブアップを訴え続けた。

そんな私たちを無視して、隣にいた大吾が床に落ちていた銃を掴む。
朗らかな雰囲気が一気に冷たくなったのを感じ、私は咄嗟に後ろを振り返った。


「くっ・・・!」


後ろを振り向いて、一瞬。
落ちていた銃を取って構えようとしていた新藤に、大吾の銃弾が掠めた。

1発―――じゃ、終わらない。

銃を弾かれて慌てる新藤に容赦なく降り注ぐ銃弾。
怒りを露わにする大吾の銃弾を、止める術を私は持っていなかった。


「てめぇの欲で、組をめちゃくちゃにしやがって!!・・・ぶっ殺してやる!!!」


数発新藤の身体を撃ちぬいたところで、ようやく桐生が大吾の銃口を遮る。
大吾はその数発で落ち着いたのか、特に何も言わずに銃を下げた。

もうこうなったら、戦争は避けられない。
ここまでされたんだ。もう、我慢する必要もないだろう。
一応戦力に数えられたであろう錦山組を失ったのは辛いが、それでも私たちはやるしかないのだ。


「いいかい?組員に伝えるんだ。神室町で近江連合の者を見かけたら、容赦することはない」


“力づくで叩き出せとね!!”


姐さんの宣戦布告宣言に、組員達の表情が変わった。




















東城会と近江連合の対立。
いや、正確に言えば“郷龍会”との対立。

そのせいか街は落ち着きを失い、東城会の組員があちこち辺りをうろついていた。
郷龍会との決着も、郷田会長のこともある。
出来ればこれ以上厄介事を増やしたくないってのに、私の目の前では今、まったく聞き覚えのない事件の話が進んでいた。

どうやら私達を攫った、ジングォン派が関わる事件らしい。

久しぶりに会う伊達さんも手伝ってくれているらしく、今はその事件についての情報交換をしているところだ。


「(にしても、わかんねぇ・・・)」


私が攫われてる間に、色々とありすぎたのか?
まったくこいつらの話についていけねぇ。

とりあえず分かったことは、この話の内容が、柏木さんが言っていたジングォン派と東城会の事件の話だってこと。

そしてその事件を担当していた刑事が、狭山の上司である別所さんだったってこと。

んで、なんか瓦って刑事さんもこの事件に関わってるとかなんとか。
正直話についていけない私は、必死に頭の中で情報を整理する。

別所さんが事件の担当でヤクザとの関わりがあったって聞いてから、狭山の随分と顔色が変わった。

やっぱり、過去に近いヤクザとの関わりは、気になるんだな。
しかもそれが上司じゃ、不服を感じるのも無理はねぇだろう。


「どうして・・・課長はそんなこと、私には一言も・・・・」
「狭山・・・」
「・・・・・」


私が声を掛けても、狭山は遠くを見つめたまま、ピクリとも反応を見せなかった。
考え込んでるところを邪魔しても悪いと、私は静かに桐生と伊達さんの方へ移動する。


「よぉ、久しぶりだな。伊達さん!」
あけ・・・お前、無事だったんだな」
「おう、もちろん!そんで伊達さんも事件のこと探ってくれんのか?」
「あぁ、まぁな」


警察辞めさせられたってのに、伊達さんも大忙しだな。

いや、巻き込まれ体質って言えばいいのか?

慣れた手つきで煙草を取り出し、伊達さんの方に放り投げる。
ついでに桐生の分も取り出せば、投げ渡す前に腕を掴まれ、口元にぐいっと無理やり持っていかれた。


「桐生!?てめ、こ、このっ・・・!」
「ひゅー。相変わらずお熱いみたいだなぁ」
「っ・・・・そ、そんなんじゃっ・・・」


あんまりラブラブベタベタするようなことをしない桐生は、こういったさりげない所で平気で恥ずかしいことをしてくる。
確かにこういうのはラブラブって言わないだろうけど、桐生と私の関係を知ってる人間からすれば、ラブラブなわけで。

ニヤニヤと笑う伊達さんの視線に耐えきれず、ぎゅっと桐生の服を掴んだ。
しかしそれさえも、伊達さんには逆効果だったらしく。


「くくくっ・・・・」
「笑うな伊達さんっ!」
「でもまぁ、少しは甘えてやれ。お前が攫われたときの桐生は、見てられるもんじゃなかったからな」
「・・・そう、なのか?」


ちらりと桐生の表情を盗み見る。
するとバツ悪そうな顔をした桐生が私の頭を押さえつけ、桐生の表情を見られなくした。

そのままの体勢で、桐生は伊達さんと話を始める。

つ、辛い。この微妙に前のめりになってる体勢辛いよ桐生。


「伊達さん。伊達さんはそろそろ手を引いた方が良い。ジングォン派・・・深く関われば、死ぬかもしれねぇ」
「はっ、今更引けるかよってんだ。お前たちが頑張ってるってのに、俺だけ引くなんてことはしねぇよ」


やっぱ、伊達さんは伊達さんだ。
警察を止めさせられても、あの強い意志は健在らしい。

あまり危険なことには関わって欲しくないのが事実。
でも伊達さんは、たとえ私たちがここで止めても、裏で関わるのを続けるだろう。

だからもう、止めない。

桐生もそれを分かっているのか、何も言わずに頷いた。


「まったく、伊達さんも相変わらずだな」
「お前に言われたくねぇよ、桐生。それで、お前達はこれからどうするんだ?」
「郷田会長がまだ見つかってない。俺たちは龍司を追って、もう一度関西に行くつもりだ」


もちろん、私は桐生に着いていくだけ。
私と桐生を見比べた伊達さんは、納得したように頷き、その場からゆっくりと立ち去った。

その後に続き、狭山もその場から立ち去ろうとする。


「貴方達も関西に行くのね?それなら、準備があるから後で合流しましょう」
「んー?どこで?」
「あのセレナってところでいいでしょう?じゃあ」


・・・なんだ?
なんか、狭山・・・前よりも雰囲気変わってねぇか?

異様に怖いというか、冷たいというか。
元々そういう態度はあったけど、今回のはそれとはまた違う何かを感じた。

――――相当、ジングォン派やヤクザの関わりにピリピリしてるみてぇだな。

ああいう気の強い女は怖い。私と似てるから。
何をやらかすか分からねぇんだ。そう、私と同じ。


「とりあえず、準備すっか?」
「あぁ」
「じゃあ、あんまり時間取りたくねぇし、私のアジトにある服でいいな?どうせお前、泊まりに来た時のもあるし」
「・・・あぁ、頼む」
「んじゃ、行くか」


ここからアジトへは、徒歩数分。
セレナも近いし都合が良いから、私たちはこのまま歩いてアジトに向かうことにした。

とりあえず、最低限必要なものを詰めていければそれでいい。
服と、緊急用の医用薬と、私が作った薬と。
必要なものを洗い出しながら、目の前に見えてきたアジトへと小走りで向かう。


「よいっ・・・しょっと」


扉を開け、後から来た桐生を招き入れる。

閑散とした部屋から荷物を見つけ出すのは簡単で、あっという間に荷物がまとまっていった。

さて、これからどうするか。
ぶっちゃけ狭山の方は、私たちが深く関わることじゃねぇ。
ジングォン派が邪魔してくるなら叩き潰すだけ。わざわざ事件に関わろうとは桐生も思ってねぇだろう。

だとすれば、優先すべきは郷田会長の救出。
その後に龍司との決着・・・ここら辺は前後しても問題ない。


あけ・・・俺たちがやることは、分かってるな?」
「んぁ?もちろん。ジングォン派には深く関わるつもりはねぇ。やることは郷田会長の救出と、龍司との決着。そうだろ?」
「あぁ。俺たちには時間がねぇ。・・・無駄なことは、しねぇぞ」
「・・・おう!」


桐生の方に拳を突出し、返事の意味で桐生の拳と自らの拳を合わせた。
これからは厳しい戦いになる。真っ向から近江連合と勝負をしなくちゃならねぇからな。

だから私たちがやることは、救出と決着。この二つだけ。
余計なことは考えず行こうと、私は再び気を引き締めなおしてアジトを後にした。




























ここからが本当の戦いになるんだ。
(掴むべきは、東城会の平和だけ)
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