Erdbeere ~苺~ 4.ひとりで泣いたら許さねぇ 忍者ブログ
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2013年03月05日 (Tue)
秋山/ギャグ甘/シリアス/※ヒロイン視点

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4.ひとりで泣いたら許さねぇ


あれから、助けた少女はすっかり元気になり、他の子どもたちと遊べるまで回復していた。
私はその様子を影で見守りながら、料理や家事など、何かしらの手伝いを進める。

極度の空腹や恐怖感に襲われると、変に崩壊する人間も出てくるからな。
私達みたいなのが環境を整えてあげる必要がある。
っていっても、私だってやることはあるし、いつまでも雑用ばっかりしてるつもりはねぇ。


「傷が治るまで、か」


遥を助けるには、二階堂?ってやつを探す必要があるらしい。
ソイツが見つかるまでは各自待機。もちろん私もだ。

それまではいつも通り、救援や物資の調達をしようと思ってたんだけど・・・。
この前女の子を助けた時に負った、火傷や怪我が治るまでは、桐生に「絶対に動くな」と言われてしまった。

だからこうやって、雑用係をしてるってわけだ。

まぁこれも、桐生に見つかれば怒られるかもしれないが。


「んーっと、こんな感じでいいっかな」


余っていた薬を種類別に分け、間違った服用をしないようにしておく。
痛み止めとか、解熱剤とか、必要性の高そうなものを多めに用意しておくのも忘れない。

こういうのは、知識があるやつがやらねぇと危ないからな。
手慣れた感じで全ての薬を分け終え、その中から自分用の痛み止めを1個取り出した。


「はー、だりぃ」


塗り薬よりも、確実に聞く粉薬。
この前女の子助ける時負った、火傷の痕の痛みを消すための薬だ。

負った火傷自体はそんなに大きくなかったのだが、痛みはそうもいかない。
最初は我慢してたけど、背中に出来た火傷が服と擦れあって痛かったから、今は痛み止めを飲むようにしている。

もちろん桐生達には内緒にして、だが。

「俺に隠すな」だのなんだのと言われるが、言ったら言ったで面倒なことになるのが桐生だから。
せっかく一緒に遥を助けにいけるっていうのに、こんなところで痛み止め飲んでるのがバレちゃおしまいだ。


「(とりあえず消毒するか・・・)」


何事も、人が来る前に済ませたい。
まだ痛み止めの効果は出てないが、一人でいられる時間も限定されているため、すぐに消毒を始めることにした。

背中と、左わき腹にある火傷。
服を脱ぐだけでその部分がヒリヒリと痛み、思わず歯を食いしばる。
痛い。本当に痛い。軽い火傷だっていうのに、痛みは普通の傷よりも強く感じた。


「っ~~・・・」


手早く薬を塗り、脱いだ服を着なおす。
その際に擦れた火傷が激しく痛み、私は悲鳴を上げて悶えた。

いやでも、痛み止めが効くまでの辛抱だ。
蹲りながら、静かに痛み止めが効くのを待つ。

部屋の隅っこで、ただひたすらに。


「・・・あけちゃん!?」
「・・・・っ」
あけちゃん!?どうしたの!どこか痛むの!?」


・・・なんで、こう、タイミングを見計らったかのようにこいつらは私を見つけるんだ。

蹲って時間が経つのを待っていた私の所に、遠くから秋山の声が掛かる。
近づいてくる秋山の足音に苛立ちつつ、私は笑顔で顔を上げた。

ったく、なんでこの部屋が分かったんだよ。
おかしいだろ。外部者はほとんど立ち入らないような場所なんだぜ?


「大丈夫、だって。秋山はどうしてここにきたんだ?」
「え?あー、ちょっと栄養剤貰お・・・・って、それどころじゃないでしょ。あけちゃん、背中の火傷、痛むんだよね?」
「いや、ほんと、大丈夫」
「おっと、逃がさないよ」


咄嗟に離れようとした私の腕を、秋山が強く引き寄せる。
必然的に抱き寄せられるような形となった私は、慌てて秋山から身体を離そうとした。

だが、秋山の腕の力は緩まない。
それどころか頭を抱きかかえられ、まったくもって身動きが取れなくなる。


「んぐ、秋山、ちょ、ちょっと、苦しい・・・!」
「ほんと、お願いだよあけちゃん。無茶しないでくれ・・・」
「してねぇって!」
「いや、してる。俺がそう思うんだからしてる」
「はぁ?」
あけちゃんは女の子なんだよ?もっと俺たちを頼ってくれてもいいんじゃない?・・・それとも、桐生さんに置いていかれるのは嫌?」
「ッ・・・・」


思わず、息が詰まるのを感じた。

私ってそんなに分かりやすいんだろうか?
桐生にもバレバレで、その上秋山にまでバレてしまうなんて。

騙して情報を抜き取る、情報屋だったんだがな。これでも。
秋山に抱きかかえられたまま、私はそっとため息を吐いた。


「なんでこうも・・・お前らには隠し事が出来ねぇんだろうな」
「そりゃまぁ、相手が悪いんじゃない?なんたって俺だからね」
「あ、そう」
「酷い反応だなぁ・・・。ま、そこもあけちゃんらしくて可愛いけど」
「・・・殴るぞ」
「痛い!!殴ってから言うのやめてよあけちゃん!!」


苛立ち紛れに殴ってやれば、秋山が笑いながら謝罪の言葉を口にする。
それでも私の頭を離そうとしない腕は、さすがといったところか。
諦めて静かになった私を、秋山が楽しそうに撫でる。

撫でんな、っつっても聞かないのがコイツだ。
その証拠に、どれだけ力を込めて殴っても、撫でる手は止まらない。


「やめろ。はげるだろ!」
「ん?大丈夫大丈夫。ちゃんと愛情込めて撫でてるから」
「そういう問題じゃねぇっての!嫌いなもんは嫌いなんだ!撫でんなっ!」
「桐生さんにだけ撫でさせておいて、俺には撫でちゃ駄目なんておかしいでしょ?」
「っ・・・・あ、あいつはどれだけ言っても聞かないから・・・!!」
「じゃあ、俺も聞かない」
「~~~~っ!もう、好きにしやがれっ!」


どうしてこう、私の周りにはこういうやつらばっかりなんだ。
私のことを言いくるめて、大人の余裕とやらで一切私が勝てる隙を与えてくれない奴らばっかり。

特に桐生はその傾向が強い。
なんでも見抜き、私に口答えや反論をさせる余裕すら与えず、そのまま抑え込んでくる。
桐生の男らしくていいところっていえば良いところだが、時々されるがままで悔しくなることもあるのだ。

そして秋山も、その傾向が少しある。

飄々とした態度からは感じさせないほど、実は人を良く見ているからなのかもしれない。


あけちゃんはさ、少し頑張りすぎ。あとね・・・人を頼らなさすぎだよ」
「・・・んなことねぇよ。頼る分には頼ってるつもりだ。それ以上・・・お前達に迷惑を掛けたくねぇし・・・」


ふわり、と。
鼻をくすぐる香水。

嗅ぎ慣れた秋山の香りに、少し心が安らぐ。


「それが間違ってるんだよ、あけちゃん」
「・・・間違って、る?」
「あぁ、間違ってる。俺たちに迷惑を掛けたくない・・・なんて、思わなくてもいいんだよ。そんなことを思うこと自体間違ってる」


そんなこと、言われても。


「もっと甘えてくれて良いんだ。もっと・・・自分を大切にしてくれ、あけちゃん。あけちゃんが弱くても、甘えても、桐生さんはそんなことであけちゃんを見捨てたりしない」


―――正直、分からないんだ。

どこまで甘えていいのか。
そもそも甘えるって、なんなのか。

この状況は怖い。
ゾンビも、銃を持つのも、全て。

でもそれを言っていいのか。

・・・・正直に言って、桐生は私を邪魔だと感じないのか。


あけちゃん。そんな状態じゃ、桐生さんについていっても怪我するよ?」
「・・・・でも」
「いいからいいから、あけちゃん。俺の言うとおりに、甘えてみなよ。おじさん、何でも聞いてあげちゃうから。ほら」
「はぁ!?んなこといわれても、急に出来るわけねぇだろ・・・!!」
「やれない?ふぅん・・・やれないなら・・・・」


フッと耳元に息が掛かり、思わず変な声を上げてしまう。
嫌な予感がしてすぐさま身体を離そうとするが、相変わらずの強さで抱き寄せられてしまった。

身体を捻っても、ビクともしない。
それどころか耳元に掛かる息が近づき、まるで舐められているような感覚に襲われる。


「っあ・・・・!」
「怖かったでしょ?痛かったでしょ?・・・正直に、言ってごらん」
「秋山・・・」
「・・・・恥ずかしいなら顔隠しても良いよ?」


落ち着く声。

安らぐ、ぬくもり。

秋山の言うとおり、私はそっと秋山の胸に顔を埋めた。
無理やり顔を見られることが無いよう、ぎゅっと秋山の服を掴む。


「・・・・辛いんだ」


助けたい、とは思う。
力になりたいとも。

だけど、その心のどこかで覚えていた恐怖と痛みに、私の心は疲れ切っていた。


「ゾンビを撃つことは怖くなくなった。でも、ゾンビに対する恐怖は・・・まだあるんだ。いつか私も油断して、ああいう風になるかもしれねぇって・・・」


それだけじゃない。


「下手したら、他の皆もなっちまうかもしれねぇんだろ・・・・?真島の兄さんだって、噛まれたって聞いたんだ。桐生だって、龍司だって・・・お前だって、いつか、噛まれっちまうかもしれねぇ・・・・」


失うことへの怖さ。
自分自身も死んでしまうかもしれないという、戸惑い。

撃つことへの戸惑いや、恐怖感はそこまで無くなった。
でも、生と死に関する恐怖は、どうしても拭いきれない。


「怖いんだ・・・・」


―――ずっとこうやって、吐き出したかった。

それでも我慢してきたのは、こうやって私が弱音を言うことで、桐生達が私を見損なうのではないかという気持ちがあったから。

私はどんな時でも強く生きてきた。
秋山の前でも、桐生の前でも。どんな人の、前でも。


「お願いだ・・・お前らも、無茶しないでくれ・・・怖いんだ・・・お前たちが、居なくなるのが・・・・」
「ん、よくできました。大丈夫だよ、あけちゃん。俺たちは絶対にあけちゃんの傍から離れないさ」


泣きそうになっていた私の頭を、秋山が強く胸元に押し付ける。
息が苦しいくらいなのに、私はそれを押し返そうとはしなかった。

秋山がわざと、私を泣かせてくれる状況にしてくれてるんだと、そう感じたから。


「やっぱあけちゃんは可愛いなぁ・・・・」
「意味、わかんねぇよ・・・」
「意味わかんなくてもいいよ。皆は分かってることだからね」


何故か、涙が止まらなかった。
何度涙を止めようと思っても、私の意思など通用しないとばかりに流れ落ちて。

・・・今日は、甘えよう。

秋山の胸元にすがりついた私は、そのまましばらく涙を流し続けた。


























それで良いんだよ。もう一人で苦しもうと、しないで。
(泣くときは俺が必ずいるから、と耳元で囁かれた言葉に、私はまた涙を零した)
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