Erdbeere ~苺~ 7章(2) 内部の裏切り者 忍者ブログ
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2013年03月02日 (Sat)
7章(2)/※ヒロイン視点

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王者のように椅子に座り、刀を持つ男。
その男は私たちが扉を蹴り破るのを見て、ニヤリと厭らしく笑った。

この男が、新藤。
新藤の後ろには大吾や柏木さんを含む、ほとんどの構成員が銃を突きつけられて縛られていた。
弥生の姐さんだけは別に、新藤の腕の中に抱きしめられている。

大人しくはしているが、弥生の姐さんの顔が本当に嫌そうに歪んでいた。

嫌なのは当たり前か。
裏切り者・・・しかも愛してなどいない者に腰を抱かれるなんて、屈辱的すぎる。


「姐さん!!」


桐生の声で、新藤と姐さんが振り返った。
新藤は刀を持ったまま、ニヤニヤと笑い続けている。

嫌な、表情だ。

欲に塗れた、本当に嫌な表情。

私は無言で桐生の横に立つと、そのまま二人の様子を見守ることにした。
縛られている大吾達に銃が突きつけられている以上、下手に動けねぇしな。


「あなたが留守の間、ひと仕事させてもらいましたよ」
「・・・千石に買収されたそうだな」


1歩、また1歩と、新藤に近づいていく桐生。
それに恐れる表情すら見せない新藤は、暴れる姐さんの腰を強く抱きしめた。


「これでもう、東城会の現体制は崩壊です」
「貴方の小細工で、右往左往するような東城会じゃないわ!!」
「いいや・・・自分には聞こえるんです・・・東城会が音を立てて変わっていくのが」


うっとりとした目で私たちの方を見つめていた新藤の目が、一瞬にして殺気立つ。


「今頃、他の幹部は、千石組が送り込んだヒットマンの餌食になっているでしょうね」
「何・・・!」
「・・・・っ」


五代目寺田の葬式だってのに、幹部の半数が居ない状態。
可笑しいと思ってはいたが、まさか千石組の餌食になっているなんて。

ったく。当たらなくていい予感が当たっちまった。
確かにあれだけの数の幹部が全てやられたとなれば、相当なダメージになる。
姐さんの言っている、「小細工」なんてレベルじゃ済まされない。


「恥ずかしくねぇのか。世話になった東城会を・・・売り渡すようなマネをして」


段々と、桐生の声に殺気が帯びていく。
そりゃそうだ。生まれ育ったに近い場所を、こんな男に売られて腹が立たないわけがねぇ。

だが新藤は、それが何だとばかりに笑っている。
不快感しか与えない笑い声に思わず怒りの声を上げかけるが、それよりも早く新藤が姐さんの顎を掴んで、自分側へと引き寄せた。


「売り渡しませんよ。私が次期会長の座について・・・姐さんを自分のものにします」
「・・・何を言ってるんだい!?」
「俺はね、姐さん・・・前からあんたに惚れていたんですよ!」


掴んでいた顎を更に引き寄せ、口付ける。
新藤から与えられる無理やりな口づけに、姐さんは必死に抵抗していた。

しかし、所詮は女の力。

成す術なく。姐さんはされるがまま。


「んっ・・・こ、の・・・!!」


しばらくしてから、唇が離された。
その瞬間に姐さんが新藤を引っ叩き、私たちの方へとふらつきながら逃げてくる。

―――最悪、だな。

好きでもなんでもねぇやつに、しかもこんな男に唇を奪われるなんて、屈辱でしかないだろう。
私は、唇を拭い続ける姐さんを庇うように立ち、新藤を睨みつけた。


「私から逃れることはできませんよ」


新藤の行動に痺れを切らした桐生が、今にも殴り掛かりそうな勢いで怒鳴りつける。


「お前、何しているのか分かってるのか!?」
「あんただって1年前に、錦山の親父と女取り合ったでしょうが。それが原因で、東城会はガタガタになっちまった・・・」


1年前。
桐生と私が、出会うきっかけになった事件。


「結局、俺もあんたも“同じ穴のムジナ”ってことですよ」


―――違う。
桐生は新藤みたいに、東城会を顧みず、由美を選んだわけじゃない。

全てを考え、事件を起こした錦山ですら助けようとしていた。
それを新藤なんかと一緒にされちゃ、たまったもんじゃねぇ。


「違うね。桐生とお前とじゃ、何もかもが違う。・・・仮に一緒だったとしても、お前は勝ち組の方にはなれねぇよ。姐さんは、絶対にお前の物にはならねぇからな」
「・・・何故、そう言えるんです?」
「何故って・・・なぁ、姐さん?そうだろ?」
あけの言うとおりさ。私はお前の女になるつもりはないよ!!」


その言葉を聞いて、新藤が立ち上がる。


「方々に女を作っていた堂島組長より・・・私の方が姐さんを幸せに出来ます」
「お前にあの人の何が分かるってんだい!!他に女を作ろうが何だろうと、私はずっと堂島宗兵という男だけを見続けていた。・・・死んだ今でも、気持ちは同じさ!!」


一途に愛してくれる人が居たとしても。
自分が愛せない存在じゃ、意味がない。

たとえどんなに、他の女の所へ行こうが。

遊びまわり、自分のことを見てくれてなかろうが。

それでも、自分は相手の男だけを見続けている。
それだけで幸せなのだと、姐さんは言っていた。

昔はその気持ちが分からなかったが、今なら私にも分かる。


「新藤、聞いただろう?好きになった男を愛し続けることが出来る・・・それが女の強さだ」
「そんな能書きはどうでもいいですよ。・・・なら、あんたの女も、同じ強さを持った女なんですか?」
「あん?それって私のことか?」
「そうですよ。分かってるんでしょう?この男が、女遊びをしてることぐらい」


ああ、知ってるよ。
時々空き時間に、キャバクラに行ったりしてることだって知ってる。

だから、なんだ。

私が好きなのは桐生だ。支えたいと思うのも。だからそんなこと、関係ない。


「私はそれでも、桐生に一生ついていく。それに・・・一人の女でおさまるような男じゃ、つまんねぇぜ?な、姐さん」
「アンタがそう言うようになるなんて、なんか不思議な気分だねぇ・・・。アンタ、男に興味なんてなかったじゃないか。それがこんなに変わるなんて・・・・」
「あー!うるさいぞ姐さん!余計なこと言わないでくれっ!」


せっかくかっこ良く決めたつもりだったのに、姐さんにからかわれて台無しになった。
恥ずかしくて桐生のことをまともに見れない。見なくても、ちょっと笑ってるのが感じ取れる。


「愛すだけではなく、愛されなきゃ意味がねぇ。あけは俺に、他の女には無いものをくれる」
「・・・そうですか。でも俺は、力づくでも姐さんを手に入れる。そのために桐生さん・・・貴方には死んでもらいます」


新藤が刀を抜くのと同時に、桐生が私たちの前に立った。
なるほど。手は出すなってことか?んなこた言われなくたって分かってるっての。

姐さんを守る様に立ち、二人の様子を見守る。
もちろん危なくなれば手を貸すつもりだが、そんな必要ないだろう。

この男に敵う者は、身も心も強くなきゃいけねぇ。

真島の兄さんとか・・・それこそ、龍司とか。

二人の戦いを見守りながら、私はこれからのことを考えていた。
3日後の戦いに勝てるかどうか―――それはまだ、分からない。



























刀を振るう新藤と、それを達人ともいえる動きで避ける桐生。
(やっぱアイツには勝てる気しねぇよ・・・ほんと、化け物みてぇだな)
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