いらっしゃいませ!
名前変更所
神龍の輝きは、いつ見ても神々しい。
呼び出された神龍を見上げたピッコロは、早速一つ目の願いを口にした。
「ナメック星の亡くなられた最長老様のように、俺の潜在能力を目一杯引き出す事はできるか?」
「えぇ、もちろん。それが一つ目の願いですか?」
「あぁ。やってくれ!」
ブルマと私が見届ける中、ピッコロに神々しい光が降り注ぐ。
その瞬間、感じていた気が想像以上に跳ね上がった。思わず言葉を失い、ごくりと唾を飲む。そんなにすごいの?と尋ねてくるブルマに、私は静かに頷いた。
「これが・・・俺に秘められた力・・・!」
「( まさか、ピッコロの潜在能力がここまでなんて・・・・)」
「少しおまけをしておきました」
それでも。
「(ガンマ達に勝てるかは、ちょっと・・・・微妙な気もする)」
私の視線に気づいたのか、ピッコロが私を手招きした。次はお前だと言わんばかりに場所を交代され、私も神龍に願いを告げる。
「今みたいに、私の潜在能力上げられる?」
「・・・・えぇ。今なら可能です」
「それじゃあ、それが二つ目のお願い」
「承知いたしました」
降り注ぐ光に心を落ち着けて目を瞑った。
この体に、神龍の願いを迎え入れるのは初めてのことだ。
少しだけ―――――緊張する。
何が起こるか分からない不確定な体だからこそ、不安は消せない。
それでも、神龍を信じてその光を受け入れ続けた。
沸き立つ魔力が段々と上がっていき、突然身を割くように溢れ出し始める。
「っ・・・・なに、これ・・・・!?」
コップ一杯だった容量が、突然大きなジョッキ一杯になったような。
そんなレベルの力の変化に私は自らの身体を何度も見つめた。
「元はルシフェル様ですから。そのぐらいの変化は当たり前かと思います」
「そ、そうなの・・・?」
「残念ながらルシフェル様にはおまけは出来ませんでしたが・・・・」
「いいよいいよ全然!ありがとね。私の願いはこれだけだから・・・・ブルマ、最後の願い好きに使って!」
「え!?いいの!?じゃあお尻を少しだけ上げてもらっちゃおうかしら~~!!?」
目を輝かせて神龍のところに走っていったブルマを見送りながら、もう一度自分の体を確かめる。
悪魔としての体が強くなればなるほど、魔力を蓄積できる容量も、放出出来る限界も増える。限界が引き上がれば上がるほど、私が自らの悪に飲まれることもなくなる。だから少しでも上がればいいと思って願ったのだが―――――予想以上の、結果だった。
それでもやはり、あの人造人間に勝てるかは怪しい。
「お前・・・・すごいな」
「ピッコロこそ」
「あ~~~~!!?しまったーーー!!!!!」
「ッ、な、なんだ!?」
願いを叶え終わり、弾け飛んだドラゴンボールに合わせてブルマが声を上げた。
「ベジータたちを連れ戻してってお願いすればよかったじゃない!」
その言葉に、今のブルマの願いを聞いていたらしいピッコロが苛立った様子でブルマに詰め寄る。
「お前!何故それを早く言わない!?お前の尻が少し上がったせいで・・・!」
「何よ!?アンタも思いつかなかったじゃない!!」
「私も思いつかなかったし、お尻は大事だからしょうがないでしょ」
「そうよねぇ?ゆえはちゃーんと分かってくれて助かるわ。まったく、これだからナメック星人はデリカシーがないわよねぇ?何かされたらちゃんと私に言うのよ、ゆえ」
「わーい!頼りにしてる、ブルマ!」
「なっ・・・・き、貴様ら・・・・・」
さすがのピッコロもブルマがいると勝てないのか、触覚をしょんぼりと下げて引き下がった。
「・・・仕方がない。もう一度潜入してどうにかしてみるか。行くぞ、ゆえ」
「はーい!」
ピッコロに促され、私達はもう一度レッドリボン軍のアジトへと向かうことにした。
「さっきの感じだと、ピッコロが成り代わった94番の人はあの部屋に入れる兵士みたいだったね。今も話をしてるなら、途中から戻れるかも」
「あぁ。そうだな」
「今から銃に変化してもいい?飛ぶのめんどくさくて・・・・」
ピッコロの最高速度にも近い舞空術に合わせながら飛んでいた私は、重いマントのせいで疲れ始めていた。げんなりとした顔で何とかピッコロのホルスターに近づこうとする私に、振り返ったピッコロが意地悪く笑う。
「うっかり落としちまってもいいならいいぞ?」
「・・・・・と、飛びます」
物に変化した状態でそのへんに投げ捨てられれば、どうなってしまうか分かったもんじゃない。想像して怖くなった私は、とりあえず邪魔になっていたマントを魔法で軽量化しようとした。
その瞬間、ピッコロが私に速度を合わせ、隣に並んだ。
さっきよりも意地の悪い顔で、魔法を使おうとしていた私の手を掴む。
うわぁ。
口を開かなくても何を言おうとしてるか分かる。
「そういうズルはよくないな?」
「いや、ほら、今はそれどころじゃないっていうか・・・・」
「でもついてこれるだろう。そのために速度を落としているわけじゃないんだ。甘えるな」
「・・・・・」
「何か文句があるか?」
「イイエ、アリマセン・・・・・」
―――――鬼だ。
そう叫んでやりたかったが、ホルスターに入った後のことを考えると減らず口は叩かないでおこうと口を閉ざした。
無事基地に戻ることが出来たピッコロと私は、もう一度ヘド達がいる部屋で兵士の一人として紛れ込むことにも成功していた。
「どこに行ってたんだ?」
「あ、い、いえ、お腹が痛くて・・・トイレに行ってました」
「え、大丈夫か?顔色悪いぞ?」
「・・・・だ、大丈夫です」
「そうか・・・・我慢出来なかったらすぐ言えよ」
私達に気づいた兵士の心配と、それに答えるピッコロの返事に思わず吹き出してしまう。頭が良いピッコロにしては、安直な言い訳だ。―――――そういえば、ピッコロってトイレするんだろうか。水しか飲まないのに?
そんなくだらないことを考えていると、それに気がついたのか、ホルスター越しにぎりぎりと爪を立てられた。
「(いだだだだだ!!!!!)」
「(物になってもうるさいとはな)」
「(なんで分かるんだよ・・・!)」
「(魔力の揺れと心の中だな)」
「(いっ、ちょっと、そこお尻、いたっ、いたい!)」
「(ほう、物になっても体に対応してるのか)」
セクハラを受けつつ何とか会話に耳を向ければ、部屋の中は悟飯が話題の中心になっていた。私達の仲間を一人一人狙うような発言はあったが、相手の目的は未だ見えぬまま。
「孫悟飯は生物学者のふりをしていますが、スパイカメラによると子供の頃にセルを倒したというのは事実のようです。頻繁にピッコロが出入りしているのを見ても、新のボスの可能性も・・・・今のうちに潰しておくのも良いかと」
そりゃ、子守してるからね。
そう突っ込みたくなる気持ちを押さえ、話を聞き続ける。
「しかし、世間的にはセルマックスが完成するまで組織のことは公にしたくない。街での騒動は避けねばならんぞ」
「・・・・難しいですね。やつは滅多にアジトからでてこない」
「ふむ・・・それではここで戦ってもらおうか?孫悟飯には確か幼稚園に通う娘がいたはずだ。そいつを誘拐して、孫悟飯一人をここに呼びつければ良い」
「・・・・敵とはいえ、子供を誘拐するのは関心しないな」
「科学者は余計な口出しをしないでもらおうか」
誘拐に口を挟んだのはヘドだった。
ヘドの発言に兵士たちがざわつく中、ガンマ達は面白くなさそうな表情を浮かべている。
ヒーローのような人造人間を作っているだけはあるのか、どうやら悪事自体に興味があるわけではないらしい。
「(聞いてる感じ、マゼンタ達が私達を悪の組織?とか何とか嘘ついて、ヘドとガンマ達を煽ってる感じかなぁ・・・・)」
「(だろうな)」
「おい!兵士を何人か使って孫悟飯の娘を誘拐して連れてこさせろ!!」
兵士への命令に、リーダーと思われる小さい男が一歩踏み出した。
そのまま隣りにいた15番の男に、行けるか?と確認を取り始める。
この状況、まずいのはどちらなのだろうか。
パンを誘拐出来る人間がここにいるとは思えない。だってこのピッコロに鍛えられてる三歳児だよ?銃を持っていたとしても無理だろう。
とはいえ、ピッコロが考えていることも手に取るように分かる。
おそらくこの機会を使って、悟飯を覚醒させようと―――――。
「それなら、俺も行かせてください!」
大きく声を上げ、一歩踏み出したピッコロにまた笑いがこみ上げる。
「何だ貴様は!勝手に口を挟むんじゃない!」
「お、俺はたまたま、その孫悟飯の家の近くに住んでいて、その娘を見たことがあります!」
「・・・・おかしいな。何故孫悟飯の娘のことを知っているんだ!?」
「え、あ、それは・・・・そ、その娘は、有名なミスターサタンの孫でもあるからです」
おお、切り抜けた。
「なるほど・・・だが、人選は私がする!94番といえばまだ新人じゃないか!お前は黙って・・・・」
「いや、行かせてやれ。顔を知ってるなら好都合じゃないか」
「・・・・は、はい」
「よし、じゃあ94番。ついてこい」
「はい!」
今ここに私の本体があったら、足をジタバタさせながら笑い転げていただろう。たまにはこんな間抜けな師匠を見るのもいいもんだと、物に扮した体で笑い続ける。
「(お前、いい加減にしろよ・・・?)」
「(前向いてついていかないと迷子になりますよ、新人さんー)」
「(・・・・・)」
小さな音を立てて、ホルスターから私の体が引きずりだされた。銃となっている私は手足もないため、その手には従うしかない。突然銃を取り出したピッコロに15番は首を傾げたが、その目の前でピッコロはその銃――――というか私を、思いっきり自分の足に振り下ろした。
「(い~~~~~~~っ!!???)」
普通の人間に叩きつけられるなら、その足が痛むだけだろう。
だが、ピッコロは修行馬鹿のナメック星人。
そのたくましい筋肉の足に叩きつけられた私は、ちょうど頭の部分をやられ、痛みに思わず叫びかけた。
「どうした?94番」
「あ、いえ、先程から銃の調子が悪かったので、今のうちに調整しておこうかと」
「おいおい。昔のテレビじゃねぇんだから」
「でも、いい感じになったみたいです」
「そうかそうか。飛行場はこっちだ、ついてきてくれ」
「はい」
物になっている以上、不用意に声を上げるわけにはいかない。
悶え続ける私を無視して飛行場についていったピッコロは、15番と一緒に飛行機に乗り込んだ。
「よし。それじゃあ案内頼むぜ」
「はい!お任せください!」
飛び出した飛行機に揺られ、パンが通う幼稚園を目指す。
ようやく痛みが落ち着いた私は、ピッコロの心に話しかけた。
「(それで、どうするつもり?)」
「(パンなら俺たちが守ってやれば良い。それに、悟飯を呼び寄せることができれば戦闘で街に被害を出さずに済む上に、上手く行けば悟飯の戦闘の勘を取り戻せるかもしれん)」
「(パンには協力してもらおうってことね)」
「(あぁ)」
「お前、無口だなぁ・・・・」
テレパシーで会話をし始めた私達が無言になったことに気づき、15番が心配そうにピッコロを見つめる。
「もしかして、緊張してるのか?」
「あ・・・・あぁ、はい。あの、どうやって誘拐しますか?」
「そろそろ幼稚園が終わる時間だ。母親か誰かも迎えに来るだろう。その時に移動かなにかを狙って母親もろとも誘拐してしまえばいい」
15番の言葉に、ピッコロがわなわなと肩を震わせた。
自分が聞いていなければパンがただ危険な目に遭う状況だったのだ。気に食わないと思うのは、正常な反応だろう。
「79番にきいたぞ?もうすぐ着くから、うんこ漏らすなよ」
「う・・・・・う、んこ」
固形物食べないピッコロからそんなもの、出てくるんだろうか。
わりと真面目にそういう考えに至った私を、またもやピッコロの爪が容赦なくひっかく。
「(いだいって!!声出ないわけじゃないんだからね!?下手すれば私が叫んでこの計画おじゃんだぞ!!!)」
「(お前がくだらないことばかり考えるからだろう)」
「(実際のところどうなの?うんこするの?)」
「(お前な、そういう時は乙女だのなんだの言わないのか・・・??)」
ピッコロのツッコミを無視し、パンの気が近づいてくるのを感じ取りながら様子を伺う。
「そろそろつくぞ」
「はい」
ヘルメットになった方が良かったかもしれない。
何も見えない中、飛行機が着地する音とピッコロが外に出たのを感じて辿り着いたことを知る。
「・・・・あの子です」
「あの娘か・・・・」
時間は、本来のお迎え時間を少し過ぎた頃ぐらいだろうか。
ようやく見えるようになった空から太陽の傾きで時間を確認した私は、他の子供はいないな、という15番の発言を聞いて胸を撫で下ろした。
ここから起こることは、パンにはよくても他の子供にはよろしく無い。
15番は中の様子を覗き込んでいた壁を乗り越えると、ピッコロよりも先に幼稚園へ侵入していった。
「パンちゃーん。遅くなってごめんねぇ!おじちゃんは、ママにお迎えを頼まれたんだよぉ!」
明るく、怖がらせないように声を張る15番に、私は嫌な予感がした。
だってあんなの、怪しさ満点じゃん。
ピッコロの弟子であるパンがあんな男に頷いてついていくわけがない。
「・・・・どうなりそう?」
「聞かなくても分かるだろう」
そして次の瞬間には、壁の奥からパンの声と痛々しい打撃音が聞こえてきた。
「ですよね」
「まずいな。・・・・仕方ない」
15番がやられるのと同時に、ピッコロが飛び出す。
警戒心を解いていなかったパンが再度構えを取るが、ピッコロが言葉を発する必要も無く「あれ?」と拳を下ろした。
「あれ・・・ピッコロさん?」
「ほう、よく分かったな」
「だってピッコロさんの気だもん。それに、ゆえお姉ちゃんの気もあるけど・・・・」
「詳しい説明は後だ」
「あら、ではピッコロさんのお知り合いだったんですね?パンちゃんをよろしくお願いします」
すっかり幼稚園でも顔なじみになりつつあるピッコロは、すんなりとパンと合流した。その後何故かホルスターを開き、私をその場に投げ捨てる。
「いだっ!!」
「え!?ゆえお姉ちゃんの気?もしかしてお姉ちゃん、この銃になってるの?」
「元の姿に戻って15番を連れてきてくれ」
「?いいの?」
「お前は一度2号に顔を見られているから一応変装を・・・・いや、やはりそのままでいい。その方が悟飯も本気を出しやすいかもしれん」
「・・・ふーん?」
ピッコロが何を考えているのか分からないまま、私は銃からいつもの姿に戻った。
銃から飛び出してきた私を見て、パンが嬉しそうに駆け寄ってくる。
「ゆえお姉ちゃん!」
「よ、さっきぶり!」
「事情を話すからついてきてくれ」
「はーい!」
気絶する15番を持ち上げ、ピッコロの後をついていく。渋滞の原因となっている飛行機に辿り着いたピッコロは、パンに向かって手錠を差し出した。
「一応手錠をするが、こんなのすぐ壊せるよな?」
「楽勝だよ!」
「ゆえにも、中に入ったら手錠をつけてもらう」
「えぇ?私にも・・・?」
15番を乱暴に飛行機の中に放り込み、パンと一緒に手錠を受け取る。
まぁ、パンと同じで、私にもこんなものは意味ないものだけれど。
「先生、ばいばーい!」
先生に手を振り、とりあえずただのお迎えというカモフラージュを済ませた私達は、何とも不安定な飛行技術を見せる飛行機の中で話を始めることにした。
「ピッコロさん、操縦下手・・・・」
「こういうのは苦手なんだ」
「それで?どういうじじょう、なの?」
「あぁ。・・・・俺はある恐ろしい人造人間のあとをつけて、レッドリボン軍という悪い組織に潜入した。そこで、世界征服で邪魔な俺たちを消す計画を立てていることを知ったんだ」
「せん、にゅー?」
「こっそり敵の組織に忍び込んだり、仲間のふりをして情報を探ることだよ」
「へー!ゆえお姉ちゃんも?」
「そう。まぁ、人数が多いとばれやすいでしょ?だから私は銃になってたってわけ」
ふらふらと揺れる飛行機に酔いかけながら、話を続ける。
「それで、だ。まずはお前のパパをおびき寄せて倒すために、お前を誘拐しようとしたわけだ」
「へぇ!・・・・でも、面白そう!」
「油断はするな。本当に恐ろしいやつだ。・・・・パンは誘拐されて、怖がってるふりをするんだ。俺が守ってやるから、心配しなくていい」
「・・・・え、私のことも、守ってくれる?」
「お前は自分で守れ。知らん」
「えぇ・・・・?」
がっくりとわざとらしく肩を落とせば、パンが「じゃあ私が守ってあげるね!」と笑いかけてくれた。何だこの優しい天使は。お願いだから悟飯と同じでピッコロには染まらないで欲しい。
「ちぇ。守ってやるって言われたかったのに」
「大丈夫だよ。ピッコロさんはゆえお姉ちゃんのことも守ってくれるよ?ねー?」
「・・・・フン。ま、気が向いたらな」
「それにしても、パパ、来てくれるかなぁ。最近、忙しいみたいだし・・・・」
私と交代で肩を落とし始めたパンに、私とピッコロが全力で元気づける。
「来るに決まってるよ、悟飯はパンのことが大事なんだからね!」
「そうだ。これに来ないようであれば俺が半殺しにしてやる!」
「・・・・・ピッコロ。そろそろこいつ起きそう。私達は、どうすればいい?」
寝ていた15番の魂がそろそろ目覚めそうなことに気づいた私は、そのことをピッコロへ伝えた。運転で余裕のないピッコロが視線だけを私によこし、手錠をつけろと合図する。
「パン、これつけてー」
「お前もな」
「はいはい」
「あ、あとお前は」
「うん?・・・・・・がふっ!!???」
振り向いた瞬間に、強烈な一撃。
「ピッコロさん!?」
「こいつは俺と一緒にいるところを見られてるんだ。あいつらからは俺の眷属だと思われていた。少なくとも無傷じゃおかしいからな」
「・・・・っ」
「パン、こいつを引きずって後ろに行って怯えたふりしといてくれ」
「はーい」
油断して緩み切っていたお腹に食らった一撃は、本気で意識を飛ばしそうなほどに痛かった。悶える私を心配そうに覗き込んだパンが、15番が起きる音を聞いて棒読みの悲鳴を上げる。
「うわーん!はなして!こわいよぉー!」
「・・・・っ」
「・・・・?な、これは・・・94番、お前がやったのか?」
「は、はい」
「この・・・・悪魔のコスプレしているやつは誰だ?母親か?」
「いえ、そいつはピッコロの眷属と思われる悪魔です。あの後パンの迎えに来ていたので、一緒に連れてきました」
あ、そういう設定なんだ。
「だ、黙っておけよ?」
「はい?」
「俺が、この子供にやられたってことだ・・・!」
「は、はい」
ピッコロの戸惑ったような返事を聞きながら、痛みに響く運転技術を受け入れて私はその場に崩れ落ちた。早くこの酔いそうな、下手くそな操縦から解放してくれ・・・・!
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