Erdbeere ~苺~ H6.二人の背中合わせ 忍者ブログ
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2024年11月15日 (Fri)
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2023年07月19日 (Wed)


6話/甘/※ヒロイン視点


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銀色の髪。

赤の、瞳。

燃えるような声。熱にも似た気。
殺気すら心地よく感じるような、強さ。


「この、程度か?」


それは昔見た、セル戦の時と似ていた。
悟飯であって悟飯でないような。

不思議な感覚に陥るその姿を見ながら、悟飯に一撃で瀕死状態まで追い込まれたセルマックスに急いで近づく。そして寝転がっていたピッコロに最後の魔力を受け渡し、回復させてから悟飯の方に押し込んだ。


「ピッコロ、さっさと悟飯と決めてきて」
「な・・・・!」
「ここは私が引き受けるから。・・・・ほら。一番弟子の最高の一撃を近くで、ね」


あの輝く背中には、ピッコロの存在が必要だ。

そして見覚えのある構えを取りはじめた悟飯も、きっとそれを分かっている。


「ッ・・・・アァアアァア!」
「おっと。逃さないよ・・・!」


杖で床を打ち鳴らし、セルの周りに魔法陣を創り出す。
力を溜め、空に逃げようとしていたセルの動きを何とか地面に引きずり込んだ。

私の残りの魔力ではきっとほんの数秒が限界。
それでも、きっと彼らならやってくれる。


「悟飯!この一撃に、全てを込めろ」
「・・・・はい!ピッコロさん」


信頼があるこそ預けられる背中を預けて。


「「魔貫光殺砲――――――!!!!」」


特等席で見るその攻撃は、私の人生で一番興奮した瞬間だったかもしれない。

















あの後無事にセルマックスを破壊した私達は、ぼろぼろの姿でブルマのところまで引き上げていた。土に埋まったクリリンを掘り起こす18号や、私達を出迎える元気なパンの声を聞きながら私達は顔を見合わせる。


「それすごくかっこいいね、悟飯」
「え?ほ、ほんとですか?ピッコロさんも、凄くかっこいいです」
「・・・・フン」


何となく、寂しいと思った。

おいていかれた、というのが正解かもしれない。

私の天使化はあくまで過去に自分が捨てた力に頼る行為だ。下界に関して極度に関われば、例え悪魔になった今でも粛清対象になるだろう。強くなったわけではなく、一番輝いていた自分に頼っているだけ。

でもこの二人は、壁を突き破った強さを呼び覚ました。

悟飯は、怒りで。
ピッコロはその背中に、ナメック星人の誇りを背負って。


「なんだ。不満げだな?」
「・・・・・」


私の感情に敏感なピッコロが、変身状態を解除しながら意地悪く笑う。


「・・・・帰ったら、オレンジピッコロ状態で修行つけてよ」
「ほう。あんなに嫌そうだった奴が、どういう風の吹き回しだ?」
「分かってて聞いてるでしょ」
「えへへ、その顔だと、さすがの僕でも分かりますよゆえさん」
「・・・・・・むぐぐ」


可愛く笑った悟飯が、いつも通りの悟飯に戻った。
合わせて私も天使化を解除し、分かりやすいと言われた表情で悟飯を睨みつける。


「私だって、悟飯やピッコロみたいに・・・強く、なりたい」
ゆえさん、負けず嫌いですもんね」
「天使化はお前の“強さ“ではない。よーく分かってるじゃないか」


いつの間にか、ピッコロだけでなく悟飯にも心を見抜かれるようになっていた私は、悔しくなって頬を掻いた。


ゆえさん、すごくピッコロさんに似てきましたね」
「・・・・これだけ一緒にいればね」
「良いと思いますよ。僕も見たいです。ゆえさんの、覚醒姿」
「オレンジピッコロを相手にすれば・・・・一年後ぐらいには?」


へらへらと笑う私に、ピッコロが冷たい視線を向ける。


「にしてもお前、魔力の消耗が激しすぎないか?」
「え?そ、そうかな?」
「天使のときも妙に動きが鈍かった。いつもなら目を瞑って遊ぶように避けられるだろう・・・・お前、まさか」


何かに気づいたらしいピッコロが、私の方にぐいと顔を近づけた。その瞬間、答え合わせといわんばかりの魔力が私達の背後で輝く。

それは、消えかけていた2号の光から放たれていた。
悲しげに2号を見つめていたヘドと1号が、その光を見て目を見開いている。

死ぬ、と思われていた2号から放たれた光。

慌てて近づいた私達の足元で、私のあげたお守りが溶け落ちる。


「2号・・・・?」


その場に咲いた、光の花。
誤魔化しようもなく広がっていく私の魔力に、さすがの悟飯も気づいたらしい。


「もしかしてゆえさん・・・お守りに魔力を込めて2号さんに・・・?」
「・・・・だって。せっかく和解した仲間とお別れなんて、寂しいでしょ?」


まさかここまで魔力を吸われるとは思わなかった。
守ろうとする者が強ければ強いほど、それ相応の力が必要ということだろう。

2号たちが敵じゃ無くて本当によかったと、胸を撫で下ろしながら見守る。


「これ、は・・・・」


私達の目の前で花が弾け、光の中から2号の影が現れる。
膝をついてその姿を露わにした2号は、しばらくしてからゆっくりと目を開けた。


「・・・・・あれ?」
「2号!」
「ヘド博士、1号・・・?」


立ち上がった2号に、ヘドと1号が抱きついて喜ぶ。


「ッ・・・ゆえ!お守りの魔法にほとんど魔力を持っていかれてやがったな!?何故ペースを考えない!?」
「い、いや、まさか2号があんなにエネルギー食うなんて思わなくて・・・・」
「それ以上持っていかれてたら危なかっただろうが!・・・・というよりお前、その様子じゃ、昔俺にお守りを渡した時も魔力を消費してたんじゃないか・・・?」
「げ」


数年越しに気づかれたヒミツに、私は思いっきり視線を逸らした。
そのままピッコロの怒声に追われながら2号の後ろへ隠れる。


「2号、おかえり」
「はは・・・・まさか本当にお守りだなんて思わなかったよ」
「せっかくお友達になったのに、お別れなんて寂しいでしょ?」
「スーパーヒーローの僕と悪魔がお友達・・・ふーむ、それも中々面白い」
「まったく・・・無茶しすぎだ」
「1号・・・君は本当にお硬いなぁ~。こうやって上手くいったんだからいいじゃないか。まさにヒーローって感じがするね。最高のハッピーエンドだろ~?」
「お前な・・・・」


背後にきらきらとした神々しいエフェクトを表示し始める2号を、1号が呆れ顔で睨みつけた。


「・・・・お前は、本当に馬鹿か」


少し離れた場所で見ていたピッコロが、私に聞こえるように呟く。


「・・・・ごめん」


それが心配から来る言葉だと分かっていた私は、素直に謝ることにした。

これからヘド達はどうするのかと話し合っている皆の輪を離れ、一人岩場に座るピッコロへと近づく。


「ピッコロだって、危険を犯して2号を踏みつけから守ったじゃない?」
「・・・・・・」
「私も同じように守りたかったんだよ。あの二人、悪いやつじゃなかったし」
「・・・・・だが、もしそれ以上魔力を食われていたら、下手すればお前も危なかっただろう。いくら潜在能力を引き上げてもらったとはいえ、無理をするな」
「・・・・ごめん。まぁ良い感じのこと言ってるけど、どっちかというとあの場では2号が役立つと思ったんだよ。だから2号に保険を掛けておいた方が、後々戦いに有利になるかもって思って・・・・」


制限もある上に自由に下界の存在を葬ることが出来ない私は、どうしても状況によっては不利になる。それなら強いと分かっている2号を守る方が、得策だと思ったのも事実だ。

―――――そんなのが付け足した言い訳だってこと、ピッコロは気づいているだろうけども。


「ったく、とんだ甘い悪魔だぜ」


ピッコロの横に座り、静かに肩を預ける。


「それよりも、いいのか?」
「ん?」
「修行の話だ」
「・・・・あんなパワーアップされたら、私だって本気出すしか無いでしょ?私、ピッコロに守られ続ける趣味はないよ」
「ハッ。あんなに守ってくれって言ってたのにか?」


意地悪い笑みに、私は力強くピッコロの手を掴んだ。


「あれは・・・・久しぶりに、言われたくなって」
「は?」
「だ、だから!パンにあんなかっこいいこと言ってたから・・・・言われたく、なっただけ!む、昔は言ってくれてたじゃん!だから・・・・!」
「・・・・・くくっ、お前というやつは・・・・」


熱くなる顔を隠そうとしても、大魔王の手によって捕まってしまえば逃げられない。平和に染まったピッコロが私にだけ向ける、意地の悪い顔。見る影もなかったはずの大魔王の牙を立てられ、私はぽつりと呟く。


「・・・・ずるい」
「お前が悪い」


皆が話に夢中なのを良いことに、ピッコロは力強く私の唇を奪った。

どうせその聞こえの良い耳で、しっかりと様子を伺いながら私を弄んでいるのだろう。
分かっていても、恥ずかしさが勝ってしまった私は、ピッコロの服を震える手で掴んだ。


「ん、んん」
「・・・・今のも、お前が悪いだろう?煽ったのはお前だ」
「・・・・わ、分かったから・・・そういうのは、家に帰ってからにしてよ」
「心配掛けさせたやつが、随分偉そうだな?」
「うぐ・・・・」


ピッコロの意地悪が心配や嫉妬から来ることなんて、分かっていたはずなのに。

未だ私を意地悪い瞳で見つめるピッコロに、私はそっと自分からキスをした。
そのタイミングで運悪く振り返った悟飯と目が合い、私は勢いよく後ずさる。


「・・・・・えへへ。ほんと、二人は仲が良いですね」
「わ、笑うな馬鹿悟飯・・・・これはピッコロが拗ねてるからやっただけで・・・!」
「別に拗ねてなんかないぞ。お前がしたくてしたんだろう?」
「拗ねてるじゃん。心配かけたのは謝るから機嫌治してよ~」
「人を子供みたいに言うな」
「・・・・・私からすればまだ子供じゃん」
「ほう?じゃあ大人なお前が色々教えてくれるんだろうな?」
「・・・・・」
「どうした?俺はそれでも構わないが?」


一歩も譲らない大魔王様に、私は静かに降参のポーズを取った。




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