Erdbeere ~苺~ H7.戻った師弟関係(終) 忍者ブログ
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2023年07月20日 (Thu)


7話/甘々/※ヒロイン視点


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あんな化け物と戦っていたのが嘘のような平和な日常に、目を覚ます打撃音が響き渡る。

海の上を滑るように移動しながら攻撃を避けていた私は、目の前に伸びてきたオレンジ色の手に「うげ」と声を上げた。


「甘いッ!!」
「うっ、く・・・・!!!」


力だけは勝っていた、という関係が完全に崩れた師弟関係は、完全に私がまた“弟子“の状態に戻っていた。オレンジ色に輝くピッコロの攻撃は、受け止めるだけでも危険が伴う。今まで通用していたはずの気弾も、皮膚にちょっとしたかすり傷をつけるレベルにしかならなくなった。

防御を拳一つで打ち破られ、次の手を考える私に足元の島から応援の声が響く。


「がんばれー!ピッコロさーん!ゆえお姉ちゃーん!」
「ふたりとも、頑張ってくださーい!」


悟飯とパンだ。

あの二人も最近は二人でトレーニングを始めたらしい。

あーあ。私もその平和なトレーニングに混ぜてほしいよ。
一時期の感情で余計なことを言うんじゃなかった。
こんなゴリラナメック星人の相手、並の体力じゃ続けられない。


「ハァッ!!!」
「甘いと、言っているだろうが!」
「っ~~~~!!!!」


少しでも構えられていない状態で攻撃を受けると、一瞬で海の中に突き落とされる。

はるか上空から、しかも猛スピードで叩き落された私は、背中に受けた衝撃に悶えながらも何とか海から脱出した。


「ッくそ・・・・・」


厳しい修行は苦手だけど、強くなりたい気持ちは昔から変わらない。

私はピッコロに出会ったあの日から、戦う楽しさを知った。
そして、悔しさも知った。
魔法を使えば、私のことをよく知らない相手を封殺するなんて簡単なことだっただろう。

でも、それをしたくないと思ってしまったのだから、私も相当な戦闘馬鹿なのかもしれない。


「・・・・・いい顔だな」


火がついた私に気づいたのか、ピッコロが楽しそうに鼻を鳴らす。


「その余裕でいかつい顔が、痛みに歪むのを見てやらないと気がすまないからね」
「ほう、出来るのか?」
「さすがに三日連続でそれを相手にしてるんだ。――――癖ぐらい、分かってきたよッ!」


パワー型に変化したその体は、少しだけ機動性に欠けるようになった。

とはいえ、力の差で防がれてしまうので、そのスピードの差を活かすことはあまり出来ていないのだが。


(それでも、私がつくならその弱点しかないッ・・・!)


修行だから、なんて関係なく全力で魔力を引き上げる。
全力でやってもかすり傷にしかならないのだから、これぐらいしないと意味がないだろう。


「もういっちょ!!!」
「来いッ!!」


まともな打ち合いにならないぐらい、その力は私の体勢を崩していく。

スピードでは勝っているはずなのに戦術で負けてその力をねじ込まれてしまうのは、完全に負けている気がして腹が立つ。
撹乱するように更にスピードを上げて空に気弾の弾を撃ち出した私は、雨を降らすようにそれをピッコロに向けて全力で放った。


「フン」


この程度の気弾では、弾く必要もないのだろう。
気弾の雨の中、飛び込んでくる影を見て表情を引き締める。


「この程度か!?」
「・・・・まさか!」


瞬時に足元に潜り込みピッコロの油断を引いた私は、ピッコロの周りに打ち上げたものよりも大きめの気弾を複数貼り付けた。もちろん、こんなもの目眩ましにしかならないことは、私がよく分かっている。

一瞬でも良い。

動きを止められれば。


「小賢しい・・・・!」


周りに浮かべた気弾を全て叩き潰すピッコロを見て、私はその振りかぶった腕の死角になる位置で力を収束させる。


「もらった・・・・!!!!!」


指先に溜めた魔力を、一気に撃ち出す―――――!


「魔貫光殺砲ッ!!!!!」
「なっ・・・・!」


魔力を込めた時間は少なかったが、たとえそうでもこれだけ鍛えられ続けた私が甘い攻撃を放つはずがない。


「・・・・チッ」
「すごいですよ、ゆえさん!」


右肩を貫通した鋭い気が、空の上で弾ける。
ようやくまともなダメージを与えたと喜ぶ暇もなく、ピッコロの気が上がっていくのを感じた。


「良い攻撃だ」


力の大会の練習で、クリリンが悟飯や悟空を驚かせたように。

ここまでの力の差が出来てしまったのなら、ピッコロの言う通り馬鹿みたいに真っ直ぐな戦術を取り続けるわけにはいかない。


「表情も魔力もまったく油断が見えなかった。ようやく馬鹿さが消えたな」
「馬鹿・・・・」


言葉の攻撃に煽られそうになりながらも、心を落ち着かせる。

こんな無駄な会話で時間を取られる訳にはいかない。
今のうちに距離を詰めて、もう一撃を。


「ま、詰めは甘いな」
「っ・・・・!」


穴が空いてる方の腕を狙ってもう一度距離を詰めた私を、ピッコロは軽々と捕まえた。


「ッちょ、はな、離せ!」
「敵が離せと言われて離すと思うか?」
「ぐぞう・・・楽しそうな顔しやがって・・・・」


体を振って勢いをつけてみるが、ピッコロの力は緩まない。
その間にもギリギリと音を立てて左手首が締め付けられていく。――――こいつ、折る気か!?


「デンデがいるから安心しろ」
「だからデンデ頼りやめろッ!!」
「早く抜けださんと本当に折れるぞ」
「ッく、そ・・・・」


普通、妻の腕折るか?

そう思いながらもこの関係性に揺るがされず本気を出してくれるピッコロのことが、更に好きになっていく自分がいる。


「フッ・・・お前は本当に可愛いやつだな」
「・・・・こ、心、読むな・・・!いぎっ!いっ・・・・!」


血が通わなくなってきたのか、左腕が痺れ始めた。

何とか抜け出すため、空いている右手で気弾を撃ち込んだ。集中力も力も満足に込められていない技では、ただ掠める程度にしかなっていない。


「っ、ぅ、ああああっ!!」


痛みに揺らぎそうになる意識を繋ぎ止め、自分の魔力をピッコロ側に流すことにした。

悟空がたまに使っている、気や魔力で相手の動きを止める技だ。
気づいたピッコロが慌てて自分の気で押し出そうとするが、何とか魔力を込める速さで勝った私は、一瞬だけ緩んだ手から自分の左手首を救出した。


「っ、こいつ、まじで、折りやがったな・・・・・」


ぷらんと垂れ下がる左手首に、仕方なく治癒魔法をかける。


「お返ししてやろう」
「ッ・・・・!」


私がさっき取った作戦と同じ。
私の左手側を取るピッコロに反撃するか、距離をおくか、防御をとるか。その一瞬の思考の時間が私を鈍くさせる。

天使の時は、何も意識することなく動けるというのに。

その先を知っているからこそ、もどかしさと苛立ちが増していく。
この体では身勝手の極意も使えない。どうすればの境地に行けるのか、知っているはずの私がそれを出来ない。


「ッ・・・・!」
「・・・・!」


何とか切り抜け、次の手を考える。

ここ三日間、ずっとこの修行を続けているが、最後は気絶させられていて記憶がない。三度目の正直、と言わんばかりの今日。絶対に一本は勝ち取りたい。


「・・・・っ」


何とか痛む左手首を回復した私は、その魔法によって自分の魔力がだいぶ持っていかれていることに気がついた。

このままがむしゃらに続けても、勝ち目は見えてこないだろう。
なにか一つ。大きく場面を変えるような作戦が必要だ。


「といってもやっぱり、考えるのは苦手だから・・・・!」
「・・・・!」


とりあえず動いてみよう、ということで気円斬を複数作り出した。
硬い敵にはこういった技が有効だと、クリリンに教わったことを思い出しながら投げつける。


「いけ・・・ッ!」
「気円斬か・・・・」


全力の魔力を込めた気円斬なら、さすがに弾き飛ばすより回避を選択するはずだ。


「さすがにこの動きを避けれないほどスピードを捨てた覚えはないぞ」
「そんなこと、分かってる・・・・!」


気円斬はあくまで目眩ましだ。
複数の気円斬の間に滑り込ませた小さな気弾を、気円斬がピッコロの周りを掠めるたびに放出していく。

虫ほどの小さな小さな気の中に、気づかれないように爆弾を潜ませて。

師匠譲りの魔空包囲弾を模したように少しずつ 少しずつ場を作っていく。


「どうした、それで終わりか?」


全ての気円斬が海に落ちていったのを確認した私は、飛び散る水しぶきに合わせて一つ目の気弾をピッコロに引き寄せた。


「気づかないとでも思っているのか!?」
「ッ・・・・!」


ピッコロがその気を弾き飛ばそうと腕を伸ばした瞬間。

周りに散りばめた複数の気が氷の刃のように収束されていく。
そう、これは、ピッコロとの修行で編み出した技の一つ。

氷の刃のように鋭く、細く、そして輝かせることで見えづらくした気を無数に張り巡らせ、魔空包囲弾のように叩きつける技。


「なっ・・・・!」
「“魔氷牙“!!!!」


空中で、ガラスが砕けるような光が舞い、ピッコロの姿が飲み込まれた。


「ほわー、きれーい!」
「へぇ・・・すごい技です。ゆえさんってやっぱり器用なんですね」


下から聞こえる声に、今までだったら振り向いてポーズをしていただろう。
でもそれが甘いと言われる要因なのも分かっている。

―――――そろそろ真面目にやれってことだよね。


「そうでしょ?ピッコロ?」
「ッ・・・・・お前」


大技のあとに出来る隙を見逃さないのは、さすが師匠だ。

極限まで静まり返った気を見逃さなかった私は、背後に回ってきたピッコロに向かって全力の魔閃光を放った。その勢いで悟飯達がいる島に墜落し、背中を強打する。


「がふっ・・・・う・・・・」
「ぐ、ぅ、・・・はは、ははは・・・・!やるじゃないか・・・・」
「す、すごい!あの状態のピッコロさんが腕に怪我を・・・!」
「怪我させただけですごいって言われるなんて、さすがに凹む・・・・」


私の魔閃光を真正面で食らったピッコロは右肩を大きく負傷したぐらいで、他はピンピンとしていた。もちろん、あの程度ならナメック星人はすぐに回復してしまうだろう。


「・・・・・降参です」
「フッ。かなりいい動きだ。いつもの甘さも、油断もなかった」
「そりゃ、いつもはそれをしてもピッコロと渡り合えるって分かってたから・・・・」
「ほう?つまりお前は俺を馬鹿にするためにそうしてたということか?」
「いだだだだ!!違う!!違うってーーー!!!」


折りてきたピッコロが私の頭をぐりぐりかき混ぜるのを見ながら、悟飯とパンが楽しそうに笑った。


「私も、もーっとトレーニングがんばる!」
「よおし。それじゃあ今日は帰って、明日パパと練習しよう!」
「わーい!!」
「・・・・フン。ようやくきちんとパンの相手をするようになったか。ったく」


呆れ顔で悟飯を見るピッコロは、すっかり“おじさん“の顔だ。

まぁ、正直、悟空よりしっかりパンの面倒を見ているのだから、おじさんで間違いはない。楽しそうに手を振って、舞空術で帰っていった二人の背中を見届けながらその場に倒れ込む。


「・・・・」
「どうした?」
「いや・・・見て分かるでしょ」
「ハッ。すごい消耗だな」


オレンジ状態のまま隣に座ったピッコロが、私の頭に手を伸ばした。


「仕方ないでしょ・・・最後の一撃に全力込めたんだから・・・・」
「良い攻撃だった」
「・・・・次は本当にその顔を悔しさに歪めてやるから」


あぁ、その顔。


「楽しみにしているぞ」


―――――ずるいな。




















修行の一環として、ピッコロは普段からオレンジ形態を維持するようにしたらしい。
部屋の中でも暑苦しくでかい図体でいるものだから、何だかいつもより部屋が狭く見えるようになった。

とはいえ、どうせ起きている9割の時間が修行で外にいるからあんまり関係ないんだけど。


「・・・・」
「・・・・?なんだ?」
「・・・・」


こうやってじっくり見ると、オレンジ形態のピッコロはだいぶ顔つきが悪い。


「なんだ、ジロジロ見やがって・・・・」
「目つき悪いなぁって」
「・・・・元から良い覚えもないが」
「それもそうか」
「・・・・・」
「った!自分で言ったくせに!」


軽いデコピンを食らうだけでも、相当な痛さになるのがこの形態だ。
赤くなった額を押さえつつ、汗を流した体をアイスで冷やす。


「んー!美味しい~!!!」
「お前のそういうところはパンに似てるな」
「わぁ、遠回しに子供っぽいって言われてる?」
「褒めてるぞ」
「分かりづらいなぁ、大魔王様のお褒めの言葉は」


ピッコロは大魔王の椅子に腰掛けると、マントとターバンを消して目を閉じた。

食事も娯楽も取らないピッコロは、家の中でも結局こうやって瞑想をしていることが多い。
話しかければ答えてくれるが、そのせいで家の中もぬいぐるみ以外殺風景だ。

何か置いても良いんだぞ、と言われたけど。
テレビを見る趣味もないし、私もあまり地上の何かを使って暇を潰す趣味もない。

どちらかといえばピッコロをからかって遊ぶとか――――あ。


「・・・・・・」
「じょ、冗談だって・・・・!」
「お前が静かな時はロクなことがないからな」
「ひど・・・・」
「暇ならこっちに来い」


手招きされた私は、違和感なくその手にしたがってピッコロの膝に座った。


「わー、なんかいつもより・・・・ごつい」
「ふむ。確かにかなり体格は大きくなるからな」


腰に回される、腕。
何となく振りほどいてみようと力を込めると、その腕はびくともしなかった。

今までは本気で魔力を込めれば振りほどけたはずだが、何度か試してみてもその腕は動かない。


「こりゃいい」
「ちょ、ちょっと、どんなバカ力になってんの・・・・!?」
「どうした?いつもみたいに振りほどけ無いのか?」
「ぐぬぬぬ・・・・!」


ジタバタと暴れ、何とか抜け出してみようとするがまったくもって無駄だった。
3分間の頑張りに疲れた私は、諦めてピッコロに体を預ける。


「疲れた」
「諦めたのか」
「別に抜け出す理由もないし」
「・・・・本当か?」
「え?」


聞き返しながら上を見上げると、嫌な予感しかしない笑みと目が合った。
同時にもぞもぞと動き出した腕が、ゆっくりと腰をなぞり始める。


「っ、せ、せくはら!せくはらですよ!」
「んー?」
「ま、まって、ほんとにっ・・・・」


流れる冷や汗は、嘘を吐かない。

本気で暴れればピッコロを押し返せる。
今まではそれが分かっているからこそ、ピッコロの意地悪い愛情を受け止めていた。

でも、この状況だと。


「これでも本当に、逃げ出す必要はないのか?」


楽しんでいるとしか思えない瞳が、ぎらりと赤く光る。


「っ・・・・ぴ、ピッコロ・・・!」
「本気で抵抗できない・・・ということがどういうことか、教えてやろうか?」
「遠慮します!」
「暇なんだろう?そう遠慮するな」
「っ・・・・!」


首筋に這う舌の感触。
体を這う、たくましい指。


「ほんとに、こら、ちょっと!?」
「これも修行だな」
「んなわけ・・・・!」


羽をバタつかせても抱え込まれているため意味がない。
腕を叩いても、離される様子は一切なかった。

それどころか、指が段々と際どい部分に触れようとしてくる。


「っ・・・・」
「諦めるんだな」
「諦めるったって、こんな、明らかにやばい状況で諦められるわけ・・・っ!」
「くくっ・・・大人しくするほうが煽らなくて済むかもしれんぞ?」
「このサディスト野郎・・・!」
「魔族に何を言ってるんだお前は・・・・」


―――――魔族が離乳食作ったりおむつ替えたり、幼稚園にお迎え行くかな。


「どうやら、本当に手加減は必要ないようだな」
「うわーー!うそ!!うそうそ!!!!」
「もう遅い」
「待って!ほら、ペネンコ達も見てるから・・・!」


ぬいぐるみを指差し、純粋なピッコロに語りかけようとしても無駄だったらしく。


「いいから、諦めろ」


有無を言わさぬ声に、私は肩を落とす暇もなく顔を引き攣らせた。





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