Erdbeere ~苺~ 恐怖の三角関係 忍者ブログ
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2022年06月06日 (Mon)

ギャグ甘/恋人同士/ゾロとサンジの間に立たされるヒロインの話

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デイビーバックファイト。

それは海賊に知られる、人取り合戦。


戦いではなくゲームで人や海賊の命を取り合う。
取られた人はゲームでしか取り返せない。

そんな、恐ろしい魔のゲーム。


「さーて、チョッパー取り返しにいかないとね~!」


第一ゲームで負けてしまった麦わらの一味は、ゲームの相手であるフォクシー海賊団にチョッパーを奪われてしまっていた。
そのため次のゲームで取り返せなければ、このまま奪われ続けることになってしまう。

第二ゲームはグロッキーリング。

ボールマンと呼ばれるボール役の人間を相手のゴールに叩き込む。
シンプルだが危険が伴いそうなゲームは、くろねこ、ゾロ、サンジの三人が出場者だった。

やる気満々でフィールドに走っていくくろねこの後を、チーム戦に不安要素を抱える二人が睨み合いながらついていく。


「おい、ボールマン。さっさと位置につけ」
「あァ?まだ俺はボールなんて引き受けてねぇ。こんなダセェのつけてられるか!」


サンジの指差す先にある、紅白ボール。
ボールマンにつけられるマークらしいが、たしかにあまりかっこいいものではない。


「ゴチャゴチャ言うな!・・・・お、ボール似合うぞ?」
「そんなんでのるかボケ!!!」
「っるせぇな!てめーにお似合いだろうが!」
「んだとこら!?」


今にも殴りかかりそうな二人に、くろねこが手を挙げた。


「あ、じゃあ私がやるー!」
「・・・・勝ちを考えるとそれもありだが、それだけはだめだ」
「あぁ、それだけはクソマリモに同意だ」
「なんでぇ!?」


変なところで仲良く意見を揃える二人にくろねこが叫ぶ。

ボールを取ろうと手を伸ばしていたくろねこの手を掴み、手の甲に口づけを落としたサンジは、キレるゾロを押さえつけながら満面の笑みを浮かべた。


くろねこちゃんにそんな危険なマネさせられるわけないだろう?」
「でもそれはサンジにも言えることで・・・・」
「サンジくーん!!そのボール似合ってるわよー!!」
「ほら、ナミさんもああ言ってるし!やるぜボールマン!!俺にこそ相応しい!!!」


さっきまで嫌がってたボールをキラキラと輝く瞳で装着するサンジは流石というべきか。


「ホントによく似合う。王子様のようだぜ――――アホ王国の」


ゾロの煽り言葉にサンジが一瞬で足を上げた。
二人が喧嘩を始めると察したくろねこは、そっと二人から遠ざかる。

剣と足を打ち合う二人は、ウソップ達のいい加減にしろという叫びも聞いていないらしい。


《それじゃあ準備はいいかい!?位置についてー!!》


何とか二人の喧嘩を止めたくろねこは、フィールドに上がる相手チームを見上げながら立ち位置へと向かった。

全体的に相手のメンバーはかなり図体がでかい。

ウォータンにしては少し小さめではあるが、それでも大きいビッグパンがボールマン。そして肩パッドが目立つピクルス。四足歩行で変な笑い方をしているハンバーグ。三人合わせて、グロッキーモンスターズと言われるこのスポーツのプロらしい。

相手の分析をしながら立ち位置についたくろねことゾロを、審判の声が止める。


「おいおい!武器は反則だぞー!刀をハズせ!」
《そう!これは球技~!!武器を持っちゃゲームにならないよ~!!!》


イトミミズの実況に煽られ、くろねことゾロは大人しく刀を腰から外した。

刀の代わりに拳を構えるゾロは特に不安を感じてはいなさそうだ。
くろねこもまた、ルールに従っているだけといった様子で余裕の表情を浮かべている。


「ま、なんでもいいけどよ」
「おい・・・大丈夫か?剣豪が刀を失うってことは・・・・」
「なんだ?」
「へなちょこの、出来上がりか?」


サンジの煽り返しに反応したゾロが拳を振り上げた。

ここまで来るとある意味仲が良いのでは?と思うが、ぶつかり合う足と拳はわりと本気なのが怖い所だ。


くろねこー!!アンタだけが頼りよーー!!?」


元からゾロとサンジのチームワークに期待していないらしいナミは、最後の頼りとなるくろねこに大きな声援を送る。

その声援を聞いたくろねこが後ろを振り返り、にっこりと笑った。
何か作戦があるとも言いたそうな逞しい表情にナミは一旦は胸を撫で下ろしたが、試合開始の笛と共に発したくろねこの作戦内容に肩を落とすことになる。


「っしゃ二人共!!適当に全力でやろう!!!!」
「は~~~い!!くろねこちゅわぁ~~~ん!!!」
「へっ。俺一人で十分だぜ、くろねこ、クソ眉毛」
「・・・・・本当に、大丈夫なのかあいつら・・・?」


始まった試合は止められない。

開始の合図と共に仕掛けてきたのは、タックルが得意なピクルスだった。
肩のサポーターを突き出す形でサンジに突進してくるのを、くろねこは横目に見守る。ひとまずはサンジがどういった行動を取るか探るのが目的らしい。

こちらのボールマンはサンジ。

好き勝手に行動した隙にサンジを取られては意味がない。


「オメェに用はねぇ!!」


ピクルスを軽く躱し、サンジは一直線に相手のボールマンであるビッグパンに飛びかかった。


《ボールマン対決だ~~~!!!》


手っ取り早くボールマンを狙った攻撃。
だが、相手もこのスポーツのプロだ。でかい図体で狙われやすいボールマンなのは百も承知のはず――――なんて考えていると、ビッグパンが急に腕を突き出してその上にサンジを乗せた。


「うぉおおあぉお!?」


まさか自ら頭に行きやすいように案内を?
なんてわけもなく、響くサンジの悲鳴。

ぬるぬるとビッグパンの腕の上で進まない駆け足を始めたサンジに、イトミミズの解説が入る。


《そーう!!ビッグパンはドジョウの血を引くウォータン!肌はぬるっぬるだぁ~!》
「何やってんだてめぇは!!!」


相手の腕で踊らされるサンジにゾロが怒りをぶつけるが、サンジは身動きが取れないらしい。

そのままビッグパンの平手打ちを避けること無く真正面に食らい、勢いよく吹き飛んでいった。

もちろん、吹き飛ぶ先はこちらのゴール。
ゾロと目を合わせたくろねこは急いでゴール側へと走った。


「クソコック!!ゴールなんかされやがったらてめぇぶった斬るからなァ!?」
「うるせぇ!!!」
「お掃除タックル!!!」
「ぐはぁっ!?」
《おおっと~!!ここでピクルスのタックルにロロノア・ゾロが吹き飛ばされるー!!》


ゴールされないように先回りする組に混ざっていたゾロは、合流したピクルスのタックルに弾き飛ばされて地面に転がった。

冷静にそれを避けていたくろねこは順調に妨害を躱しながらゴール付近へとたどり着く。


「さて・・・一旦はサンジを取り返そうかな」


戦況を把握している間にも、サンジは再び空中へと打ち上げられ、その体をハンバーグに掴まれていた。ダンクシュートされる形でこちらへと向かってくるその姿をしっかりと捉える。


「ゴールなんかさせるかっ・・・!くろねこッ!!!!」
「はーい!」


やられっぱなしだったゾロが起き上がったかと思うと、ピクルスの足を掴んでくろねこ側に吹き飛ばした。

名前を呼ばれ、目の前に飛んできたピクルスの巨体を確認したくろねこは、冷静にその巨体をサンジ側へ蹴り飛ばす。


「サンジー!着地準備ー!!」
くろねこちゃんにフォローされるのは嬉しいが、クソ剣士にフォローされんのはむかつくんだ・・・・よッ!!!」


宙を舞ったピクルスの体と、サンジを掴んでいたハンバーグの体が空中で衝突した。
その衝撃を利用して地面に着地したサンジは、目をハートにしながらくろねこの方へ歩み寄る。


くろねこちゅわぁーん!最高のフォローありがと~~!!!」
「え?今のは私じゃなくてゾロが・・・・」


伸びたピクルスとハンバーグ。
華麗に着地するサンジ。
それらを目にして盛り上がる会場。

そして敵陣はボールマンだけだというのに喧嘩を始める二人。


「てめぇ何してんだこのエロコック!!」
「あァ?てめぇは黙って俺に従ってればいいんだよ!!」
「俺がやるっつってんだこのクリ眉毛!!」
「それはこっちの台詞だ!俺とくろねこちゃんだけで十分だっつってんだ!!!」


協力する気、ゼロだ。

呆れたくろねこは二人を放置することにした。
相手が一人だけならば、サンジから目を離してもある程度は問題ないだろう。


《おーっと!ここでなんとぉ!今回の試合の紅一点!くろねこが飛び出したーー!!》
「あ!?」


イトミミズの声に喧嘩を止めた二人が見たものは、ボールマンに飛び込んでいくくろねこの姿だった。

そんなくろねこが飛び上がろうと姿勢を下げた瞬間、ビッグパンが足を上げる。
移動ではなく踏み潰そうとしてきているその足に気づいたくろねこが、それを利用して足元からひっくり返そうと跳躍をやめて足元に潜り込んだ。

が―――――しかし。
瞬時に違和感に気づき、慌てて足の下から転がり出す。


「ッちょ、こいつ!!靴の裏に刃物ついてんだけどっ!!??」
「何っ!?」


ビッグパンに追いかけられ、フィールドを走り回る三人。
ウソップが逃げるなと叫んでいるが、くろねこの言う通り足の裏に刃が仕込まれているそれに真っ向勝負を挑むわけにはいかない。

審判に武器の使用を訴えても、審判は目を逸らして口笛を吹いている。

どうやら審判に訴えても意味はないらしい。


「ま、最初から武器仕込んでるって分かってりゃあ、対応も変えられる!」
「返り討ちにしてやる!!」
「邪魔すんな、俺一人で十分だッ!!!」


方向転換したゾロとサンジがビッグパン目掛けて走っていく。

やる気満々の二人だが、協力する気は相変わらず起きていないらしい。
張り合うように前に出た二人がスライディングしてきたビッグパンのぬるぬる肌の犠牲になるところまで見届けて、くろねこが頭を抱えた。


「ドジョウレーシングサーカス!」


寝転がったビッグパンの上を滑る二人は、そのまま抜け出せないようにえびぞりになったビッグパンの背中を大回転させられている。


「っ・・・・目が、回る・・・!」
「あぁあぁ~~~」


情けない悲鳴が上がる中、ぼーっと立ち続けるくろねこにウソップが叫ぶ。


「おい!助けてやれよくろねこ!」
「分かってる!」


くろねこは刀を構えるふりを見せると、右手を大きく振り上げた。

その瞬間、突風が吹き荒れ、ビッグパンの抜け出せない背中で滑っていた二人が地面に吐き出される。


「っ、う、やべぇ・・・・」
《おーっと!!くろねこのナイスアシストでビッグパンから抜け出した二人だが、そこに迫りくる二人は出で立ちがおかしいぞ~~!!?武器はルール違反のはずだが、審判はちょうど見ていない~~!!!》


ふざけた実況を聞きながら、ゾロはふらつく足取りで立ち上がった。
その真上に、大きく飛び上がったハンバーガーとビッグパンが構えている。分かってはいるが、目が回る状況からすぐに抜け出せるわけもなく、ゾロは再び地面に倒れ込んだ。

高速で矢のように落ちてくる、ハンバーグ。

構えはエルボー。
肘には鉄のサポーター。

土煙の中、痛みを覚悟していたゾロは、自分の目の前に立つ影を見て目を見開く。


《なんと!?最悪のコンボを受け止める一つの影・・・!》


ゾロを庇うように手をクロスさせてその攻撃を受け止めたくろねこは、そのままにっこりと笑いながら鉄のサポーターを掴んだ。


「ルール違反!!!」
「なっ・・・・!」


砕かれるサポーター。

同時にくろねこを相手にするのは不味いと気づいたらしい三人が、一斉にサンジの方へと向かっていった。未だ回転する世界と戦っていたサンジは、いつもなら避けられるであろう三人の攻撃を簡単に食らってしまう。

もはや、ゴールすら狙っていない。

ただ、甚振るだけ――――いや、そのための技。

それに気づいたくろねこが途中にカットに入り、ボロボロになったサンジを姫抱きにして何とか距離を置く。


「・・・・っ、ちょっと、二人共、しっかりしてよ」
「・・・・そうだな。そろそろ真面目にやるか。おいコック、くろねこ。十秒・・・・手ェ貸せ」
「妥当な、時間だな」
「もちろん!」


立ち上がった二人に、三人は更に凶器を取り出した。

刀を取り出したピクルス。
鉄の棒を振り回すハンバーグ。

そして相手をぺちゃんこに潰してしまうであろうプレス器を持ったビッグパン。


レッドカードレベルの違反にも、審判は目すら向けない。
まぁ、それはそれで都合がいいのかもしれない。

ゾロ達ももう、ただで終わらせるつもりはないのだから。


「最初誰行くー?」
「レディファーストでどうぞ、くろねこちゃん」
「ほんと?やりぃ!んじゃ、後よろしく!!」
「おう。出来れば殺すなよ」
「できればね!」




◆◆◆





鳴り響く試合終わりのホイッスル。

無事に二試合目勝利を収めたゾロ達は、第三試合までの時間に休憩していた。


くろねこちゅわーん!治療してあげるからこっちに座ってぇー!」
「多分、治療必要なのはサンジ達だよ・・・・」


ほとんど無傷のくろねこに対し、ドジョウに弄ばれた二人は傷だらけだ。

くろねこの傷はエルボーの攻撃を受け止めた時の打撲だけ。
それでも治療しようとするサンジを何とか押さえつけたくろねこは、サンジを芝生に座らせた。


「軽く治療するよー」
「はぁ~~~い!!!」
「あら、コックさんが先でいいの?義賊さん」
「んえ?」
「彼、すごい形相してるけど?」


ロビンの指摘に後ろを振り返ると、すごい形相のゾロと目が合う。

禍々しい不機嫌オーラ。
ロビンの言う通り、サンジを優先している場合ではなさそうだ。

仕方なくゾロを優先しようと立ち上がったくろねこを、サンジが止める。


くろねこちゃん、あんな奴ほっといて俺を頼むよ。すごく痛いんだ」


サンジの視線は不機嫌なゾロに向けられ、しかも明らかに挑発を孕んでいた。

その視線に気づいたゾロが更に不機嫌オーラを強くするが、肝心のくろねこはそれに気づいておらず、痛いと申告したサンジを本気で心配して顔を覗き込む。


「大丈夫?頭も結構血が出てるもんね・・・」
「っあぁ、このへんが痛いんだ。治療、頼めるかい?」
「おいこらクソコックよりこっちが先だ、くろねこ
「でも、サンジがすごく痛いって・・・・」
「んなもん仮病に決まってんだろうが」
「んだとこのクソマリモ!俺はてめぇと違って繊細なんだよ!!・・・っ、あー、クソマリモのせいで、腹の傷がっ・・・・」
「え、大丈夫!?」


わざとらしく泣きながらくろねこに抱きついたサンジは、近づいてきたゾロに挑発的な笑みを浮かべた。


「おいクソエロコック、離れろ」
「普段独り占めしてるくせにケチ野郎だな」
「ケチもクソもねェだろうが」
「心が狭い男は嫌われるぜ?」
「・・・・トドメ刺してやろうか?」
「やれるもんならやってみろよ?」


くろねこを挟んで言い争いを始めた二人は止まる気配なく、くろねこが身動きが取れなくなるほど近づいて睨み合いを始める。


「大体おめぇはくろねこちゃんの扱い方も、レディの扱い方もなっちゃいねぇんだよ」
「あァ?オメェに言われる筋合いはねェよクソコック。俺はお前みたいなラブリン脳とはちげぇんだ」
「さ、くろねこちゃん。こんな野郎放っておいて俺の治療を頼むよ」
「いいから離れろッ!」
「・・・・ロビン・・・たすけて・・・・?」


くろねこのか細い声。

気づいたロビンが目を合わせ、微笑む。


「いいじゃない、微笑ましくて」
「いや私は殺気に挟まれて怖いんですけどぉ・・・・?」


微笑ましいレベルじゃない殺気に挟まれたまま、くろねこは仕方なくサンジの治療を始めた。
治療が始まったことにすら気づかない二人はまだ言い合いを続けている。


「アァン?くろねこちゃんに迷惑ばっか掛けやがって!さっきの試合もお前さえいなければ俺たちの最強コンビネーションが発揮できたってのに」
「それはてめぇの方だろうが。てめぇさえいなければ俺とくろねこで十分だった」
「いいや?お前がボールマンだったら一瞬でやられてたな」
「あぁ?試してみるか?」
「上等だコラ!!!」
「ストップ。治療終わったよ、サンジ」


立ち上がって喧嘩を始めようとしたサンジを止め、くろねこはサンジが酷く怪我していた箇所を指さした。


「もう大丈夫?」
「あぁ、すっかり良くなったぜ。ありがとうな、くろねこちゃん。――――クソマリモよりも先にしてくれて」
「・・・・ぶった斬るッ!!!」
「さーって!ナミさんにも活躍見てくれたか聞きにいかねぇとな」
「待てコラてめ・・・!」
「待って待って、次はゾロの番だよ!」


ナミの方へと走り去っていったサンジを追いかけようとしたゾロを、くろねこが止める。


「てめェもなんであのクソコックから・・・・!」


本気の苛立ちを孕んだ怒鳴り声。
くろねこが思わずぴくりと震えたのと、ゾロが止まるのは同時だった。

ぴたりと止まったゾロは、微笑ましそうに見ていたロビンに視線を向ける。

途端に口を閉ざし、耳まで真っ赤になって黙り込んだ。


「あらあら。気にせず続けてもらっても良かったのに。お邪魔なようだから先に向こうに行ってるわね」
「?うん」
「剣士さん、あまり義賊さんをいじめないようにね」
「っるせ・・・・」


ロビンの言葉をあまり理解していないらしいくろねこは、首を傾げながらゾロに向き直った。


「ごめんね、ゾロ。大丈夫だよ、ちゃんとゾロの分の治療道具は預かってて・・・・」
「・・・・・はぁ、そんなんじゃねぇよ」


素直なくろねこに罪悪感が湧いたゾロは静かに座る。
包帯や消毒液を準備するくろねこの手を引っ張り、自分の方へと抱き寄せた。


「お前は、誰のモンだ?」
「?ゾロのだよ」
「だったら・・・・クソコック、優先してんじゃねぇよ」
「・・・・・」


腰に回された手が、熱い。

ようやくゾロの怒っていた理由に気づいたくろねこが、耳元で小さく呟く。


「後からのほうが、ゆっくりできるからと思って・・・・」


くろねことゾロは次の試合に出ない。
そのため、実質ここからは見守るだけの時間となる。


「だ、だから、その、サンジの方を早く終わらせてゾロの方をゆっくり丁寧にしようと・・・・」


ゾロを収めるための嘘、というわけではなかった。

ゾロの額から流れる血を拭いながらくろねこは丁寧に治療を進めていく。

くろねこの表情はとても分かりやすい。
その言葉が嘘でないことも、ゾロには分かっていた。

それでもサンジにモヤモヤを抱いていたゾロは、治療中のくろねこの頬をそっと撫でた。不思議そうにするくろねこを無視して、頬や耳、首筋を撫で、くすぐったそうにするくろねこの反応を楽しむ。


「ゾロ、くすぐったい」
「・・・・」


撫でていた手が突然、くろねこの頬をつまんで伸ばした。


「いひゃい!」
「やわらけぇ」


一生懸命消毒しようとするくろねこの妨害をするその行為に、くろねこが頬を膨らませる。


「もー!」
「そんなのいらねぇよ」
「さっきまで治療しろって騒いでたくせに!?」
「・・・るせぇ」


頬を引っ張っていた手を離したゾロは、その手でこつんとくろねこの額を突いた。

奥の舞台の方で、皆が大騒ぎしている声が聞こえる。
どうやら次の試合に向けて出し物が始まったようだ。
お祭りのように騒ぎ出す会場を見ながら、くろねこはその場を歩いていた販売員にお酒を頼んだ。


「はい、治療の最終工程ですよゾロ殿」
「分かってるじゃねェか」
「チョッパーには内緒ね。怪我してるときは治りが遅くなるからって怒られるんだから」


お酒の瓶を開け、お互いに乾杯して笑い合う。


「・・・・ゾロ」
「ん?」
「心配しなくても私はゾロのものだよ」
「・・・・・」


ゾロが酒を飲む手を止めないままくろねこの瞳を見つめる。


「当たり前だろ」
「うわ、むかつく。サンジに嫉妬してるのかと思って言ってやったのに」
「分かってるならやるんじゃねェよ。次はねーぞ」


潔すぎて、「そうだ」と返事されたことに気づかないぐらいのゾロの答え。
思わず素直に頷いてからガバッと顔を上げれば、意地悪い顔がくろねこを見下ろしていた。


「分かったな?」
「・・・・うん」


―――――かっこよすぎて、ずるい。

それを口にすればもっと意地悪く見下げられるのが分かっていたから、くろねこは黙り込んだ。誤魔化すようにお酒を煽りながら、一ミリの抵抗としてゾロの肩に自分の頭を預けた。



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現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。
(龍如/オール・海賊/剣豪)