Erdbeere ~苺~ 苦手なこともあるもんです 忍者ブログ
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2022年06月06日 (Mon)

ほのぼの甘/恋人同士/高いところは好きじゃない話

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空の海。

雲を泳げる世界。
夢のような、おかしな世界。


くろねこ?」


ゴタゴタの中で黄金郷を目指すことにしたくろねこ達は、脱出のためにアッパーヤードを回る船組と、島の中をサバイバルする組で分かれて行動を始めていた。


「どうした?お前、なんか空島に来てから全然喋らねぇじゃねーか」


初っ端から大蛇に襲われ、他のメンバーと分かれてしまったくろねことゾロ。
空島に来てから顔色が優れないころに気づいていたゾロは、二人きりになったことを幸いとばかりにくろねこに話しかけた。


「なぁ、どうしたんだ?」
「な、なんでも・・・・」


明らかに、様子がおかしい。

くろねこはこの船の中で一番実力を持つ剣士だ。
その剣士が、空島に来てからは剣を取ることもせず、空魚に襲われても反応が一瞬遅れるなどらしくない様子ばかり見せていた。

何度か隙を見て理由を聞いたが、何でもないの一点張り。

体調でも悪いのかと思い、無理やり熱を測ったりしたが問題なかったのは確認済みだ。


「なんかあったのか?」
「・・・・べ、つに」


ここまで頑なに否定されると、逆に苛ついてくるものがある。

目に見えて何かがおかしいのは誰が見ても分かることだった。
昨日の夜なんかはナミやチョッパーが、くろねこの様子を見てくれとゾロに頼み込んでくるほどだったのだから。


「・・・・あぁそうかよ、俺には頼れねぇってか。ったく、さっさと行くぞ」
「ま、まってよ」
「あァ?」


弱々しい声に振り返ると、くろねこがゾロの手を両手で掴んでいた。


「ご、ごめん、こうしててほしい」
「あ・・・・あぁ?おう・・・・」


触れた手は、少し震えている。


「何か、嫌な思い出もあんのか?」
「ううん・・・ただ、その・・・・」
「?」
「こわい」
「は?」


弱々しい声。
汗ばんだ、手。

くろねこから発せされたとは思えないほどの甘えた声に、ゾロは思わず素っ頓狂な返事を返した。


「怖いって、何が」
「ここが!だって空の上だよっ・・・!お、落ちたらどうすんの!」
「地面あんだろうが!」
「でも地面壊したら空の海だし・・・・」
「おめーは泳げるだろ」
「そっ、そう、だけどっ」


必死の形相で叫ぶくろねこは真剣なのだろう。

しかし、今日までかなり心配していたゾロは、くろねこのその言葉に拍子抜けしたようにため息を吐いた。


「そういうことは早く言いやがれ・・・体のどこか悪いのかと心配しただろうが」
「・・・・だってぇ」
「あー、分かった分かった。ほらよ。手、離すなよ」
「う、うん」


力強く握りしめられる手に、ゾロは文句を言いつつも顔を綻ばせる。

あのくろねこが、震える手で、弱々しく自分を頼ってきている。
何ともレアな光景だ。
それに、きちんと頼ってくれたことが何よりも嬉しかった。

ベストなのは、その時にすぐ頼ってくれることなのだが。


「ったく、次は早く言えよ」
「うん・・・・」
「にしても意外だな。地面があんのに怖いって相当だろ」


確かにここは空の上。
地面があるとはいえど、壊せば空の海が広がっていることは事実だ。

それでも、地面に足はついている。

何をそんなに怖がることがある?と首を傾げるゾロに、くろねこは真面目な顔で答えた。


「だって私の剣じゃ、こんな地面すぐ割れちゃう」
「・・・・なんか腹立つなお前・・・」


事実なだけに、その物言いにイラッとする。

ゾロの剣では地面を砕くことは出来ても、海が見えるまで全てを砕く自信はさすがにない。
だが、軽い一振りで船を真っ二つにするような剣豪なら、それもありえるだろう。

だから海魚に襲われても、ぎりぎりまで剣を抜かなかったのか。
妙な行動に納得しつつ、未だ震えが止まらない手を強く握りしめる。


「落ちても俺が助けてやる」
「・・・・ん」
「安心しろよ。お前と違って俺は高いところ問題ねぇからな」
「頼りになる・・・!!!」


こんなことで目を輝かせられても嬉しくないと、ゾロは軽くくろねこの額を小突いた。


「あだっ」
「良いから進むぞ」
「はーい」


よく分からない土地で、二人並んで歩く。

川を大きく離れてからは雲の上にいるという感覚が薄れてきたのか、段々とくろねこの表情にも余裕が見えてきた。


「ここの奴ら、神官もゲリラも変わった戦法を使いやがるな」
「そうだね。純粋な剣の間合いだと厄介かも」
「・・・・飛ぶ斬撃、か」
「色々技試してたじゃない?・・・そろそろ、実践の時かもよ」


にっこりと笑ったくろねこが、遥か上空でゾロ達を見ていた鳥に対して剣を振り上げる。

その瞬間、まさに“飛ぶ斬撃“が放たれ、鳥は真っ二つになって地面に落ちた。
それを見ていたゾロが面白くなさそうに顔を顰める。


「チッ、簡単に撃ちやがって」
「そんな怒んないでよ」


落ちてきた鳥には目もくれず、二人は歩き続けた。

目指すは黄金郷。
足を止める理由もない。

だが、この敵地とも言える中で、その“理由“は探さなくてもやってくる。


「・・・・・ゾロ」
「あぁ」


気配を感じ取ったくろねこが、ゾロから手を離して刀に手を重ねる。


「・・・・うおおおお!!!!」
「何の因果か知らねェが・・・・!!!」


叫びながら槍を突きつけてきた男を、刀――――ではなく拳で殴り飛ばしたゾロ。
咄嗟に雑魚と判断して拳に切り替えたゾロに感心していると、その後ろから更に声が聞こえた。

白い服に身を包み、翼を生やした男がなにかに向かって許しを請うている。
だがその男の言葉も虚しく、男は何かに撃たれてゾロの足元へと転がった。

その攻撃の正体と思われる男は転がった男と、そしてその傍に居たゾロとくろねこに対して銃を突きつける。


「おいお前ッ!神官じゃねェなら仕掛けてくんじゃねぇ!俺は先を急いでんだ!!」
「・・・・・・」


ゾロの叫びを無視し、無言で放たれる銃。
放たれた瞬間、閃光弾のように輝く光のせいで、ゾロは相手の姿を見失いながら銃弾を避けることになった。

くろねこは静かに刀を抜き、自分の方に飛んできた銃を弾き飛ばす。


「ゾロ―?大丈夫?」
「っけほ・・・・!」
「あれ、やられてる?」
「ちげェよ・・・・てっきり、雑魚かと思って油断しただけだ」


ゾロの逃げた方向に追いついたくろねこは、ふらつきながら立ち上がるゾロに手をかした。
その手を取らず、邪魔だとばかりに叩いて起き上がるゾロに、くろねこはやれやれと苦笑する。

そして何も言わず、くろねこはゾロの鞄を奪い取った。


「自分でやりたいんでしょ?」
「おう」
「じゃ、死にそうになったら私の番ねー!」
「・・・・なるか、ボケ」


まるで遊びの順番を決めるかのような、緊張感の無さ。

暇そうに木の根本に座り込むくろねこを見て、相手の男は奇妙な顔をしながらゾロと睨み合った。

まぁいい。こんな青海人さっさと捻り潰してあの女も始末してしまおう。
――――そんな余裕が消えるよりも前に、自分の意識が消えるなんて、知らずに。



◆◆◆



「眼・耳・鼻・舌・身・意」


ゾロの声が、静かに響く。


「人の六根に好・悪・平、またおのおのに浄と染――――
一世三十六煩悩


腕を上げ、刀を構える。


「俺は今、お前に大砲の砲口を向けている。お前はピストル、
俺は大砲。間合いも威力も俺の武器のほうが勝っている。お前はよくやったが・・・・くたばれ!」


その言葉を理解できているのは、のんびりと見守っているくろねこだけ。

誰も信じはしないだろう。
彼が構えているのはただの刀。
それが大砲だなんて、何を言っているんだとばかりに笑って当然のこと。

剣を、知らない人からすればだが。

案の定、睨み合っていた相手は、小馬鹿にしたように笑いながらゾロの方へと突っ込んでいった。


「血迷ったか!?」
――――飛ぶ斬撃を、見たことあるか?」


銃を構え、命を奪うつもりで連射する。
いくら連射しても、大砲には敵わないというのに。


「一刀流・・・・
三十六煩悩鳳ッ!!!」


飛ぶ、斬撃。

ゾロの刀から放たれた斬撃が、男の体を斬り裂いた。

崩れ落ちる、男の体。
それを見届けて男に背を向けたゾロに、くろねこが拳を突き上げる。


「おつかれー!」
「おう」


拳をぶつけ合い、鞄を取ろうとすればくろねこに止められた。


「足怪我してる人に持たせてあげません」
「このぐらい・・・・かすっただけだ」
「うなぎに見惚れて撃たれてたの見ました!」
「っせぇ!余計なとこ見てんじゃねェよ!」
「はいはい。ここで留まるのは危険だから、少し進んでから弁当と治療にしよう」


さっきまで震えていたくせに、平然と歩き出すくろねこにはもう怯えは見えない。


「んだよ、つまんねぇな。繋がねぇのか?」


からかうようにそう言えば、くろねこは満面の笑みで返した。


「落ちてもゾロが来てくれるって思ったら、怖くなっちゃった!」
「じゃあ手もいらねぇか?」
「それは・・・・繋ぐ!」
「・・・・・おう」


変なときだけ素直なくろねこに振り回されながら、くろねこの手を取って足を進める。
くろねこは少し恥ずかしそうに笑うと、繋いだ手の指をゆっくりと絡めた。

恋人つなぎの状態になったその手に、思わず緊張してしまったのはここだけの話。

そして汗ばみだしたゾロの手に、それを感じ取っていたのも、ここだけの話。




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