Erdbeere ~苺~ お姫様、腕の中にどうぞ 忍者ブログ
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2022年06月04日 (Sat)

ほのぼの甘/恋人同士/ビビとの別れの前。ほのぼの

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アラバスタの救世主。

どんなに大きなことを成し遂げたとしても、麦わらの一味は“海賊“だ。
一つの国に留まることも、ヒーローとなることも望まない。

―――――でも、彼女は違う。

国を背負う一人の少女もまた、今回の騒動の救世主の一人だった。
そんな少女が今、王女として、麦わらの一味として悩んでいる。

そのことに気づいていたくろねこは、皆が寝静まった後、隣の部屋にビビを呼び出した。


「どうしたの?くろねこさん」
「二人きりで話がしたくてさ。二人で悪いこと、しない?」
「わ、わるいこと・・・?」


ニヤリと笑うくろねこの手にあるのは大量のお酒と、高級菓子。


「ね?悪いことでしょ?」
「ふふ・・・確かに、すごーく、悪いことね」


くろねこに促されて椅子に座ったビビは、おしゃれなアンティーク皿に置かれたチョコレートを手に取った。


「いただきます」


口に入れた瞬間広がる上品な甘み。

最近はこういった娯楽さえも難しい状況にいたため、その味はいつもよりとても美味しく感じた。

のんびりお茶やお酒を酌み交わし、雨の降る町を見つめて話をする。
こんな当たり前で平和的なことが出来なかった国で、今それが出来ている。

全て、ルフィ達のおかげだとチョコの甘さを噛み締めながら目を瞑るビビに、くろねこが優しい声で話しかけた。


「別れが、寂しい?・・・それとも、悩んでる?」
「・・・・」
「ビビは王女だもんね。でも、きっと、私達と一緒にいろんな世界を見て回りたいって・・・思ってくれてると思う」


くろねこの見抜くような言葉に、ビビは黙り込んだ。


「私達も、ビビを奪っていきたいぐらい一緒にいたい」


悪戯に笑って酒を流し込むくろねこは、ゆっくりとビビに手を伸ばす。


「でも、王女だから。ビビの背負うものは・・・私達と違うから、無理やりってのもね」
「・・・・うん」
「私たちはビビが出した結果を応援する。それにこれだけは覚えておいて」


伸ばした手が、机の上のビビの手に重なった。
その手が優しくビビの手を包み込んで、子供をあやすように撫でる。


「私は、私たちは、ビビが出した結果がどうであれ――――ずっと仲間だと思ってる」


何も、海賊は共に旅をしていないと仲間なわけじゃない。

遠く離れていても。
共に戦える存在じゃなくても。

心はずっと、繋がっている。


「・・・・くろねこさん・・・」


くろねこは作戦のために描いた仲間のマークを見せつけながら笑う。


「ね?私たちは、仲間でしょ?」
「・・・・うん」
「悩んで、悩み抜いて。ビビが出した答えが大事なんだよ。私はそれを、誰がなんと言おうと応援する。どんな結果でも、ビビを仲間だと思い続ける」


強く、包容力のある言葉が、じんわりとビビの心に染み渡っていく。

ビビは重なった手を握り返すと、顔を隠すようにその手に自分の顔を押し当てた。
雨とは違う、生ぬるい水滴が落ちる感触を感じながら、くろねこは何も言わない。

気づかないふりをして、空いている方の手で酒を煽る。

震える手も、響く泣き声も、見ていないふりをする。


「・・・・ありがとう」


しばらくして、泣き止んだビビが顔を上げた。

くろねこは相変わらず窓の外を見ていて、ビビのほうを見ないようにしていた。
泣き顔を見られたくなかったビビにとっては嬉しい限りだったが、いつの間にか手元にハンカチが置かれていることに気づき、その気遣いに思わず笑いだしてしまった。


「ふふ・・・!Mr.ブシドーが惹かれる理由が、今ものすごくわかったわ」
「んぶっ!」


綺麗に噴き出される、酒。


「けほっ・・・・!い、いきなり何をっ」
「今の気遣いや言葉を聞いて、すごく感じたから・・・・」
「私が代表してお節介しただけで、皆同じこと思ってんの!」


大きな声を上げて反論するくろねこは、明らかに先程より顔が赤い。


「私、もっとくろねこさんの話が聞きたい」
「わ・・・わたしの?っていっても話せるような話題はなにも・・・・」
くろねこさんはMr.ブシドーのどういうところに惹かれたの?」
「・・・・その話題から離れない?」
「ふふっ、くろねこさんって可愛い反応するわよね」
「んのやろ・・・・」


ナミのように舌を出して笑うビビは、年相応の表情をしていて少し安心する。

ふと見せる思い詰めたような表情が和らいだのは嬉しいが、代わりに苦手な恋バナを振られてしまったくろねこは誤魔化すようにチョコレートを頬張った。


「・・・・別に、明確にどこに惹かれたってのは・・・」
「ないの?」
「いや・・・あるけど・・・・言葉に出来ないっていうか・・・・」


もごもごと言葉を逃がす口に、どんどんチョコレートが詰め込まれていく。


「ただ、その・・・・死ぬまで一緒にいたいと、思えたからっていうか・・・・」


泳いだ目線。
真っ赤に染まる頬。

戦う時とはまったく違うくろねこの表情に、ビビが嬉しそうに笑う。


くろねこさん、結構ロマンチストなのね」
「っさいな、こういうの得意じゃないから感覚的になってるってだけだよ」
「でも、素敵ね。・・・・そういえば、今日もMr.ブシドーと稽古していたみたいだけれど、傷は大丈夫なの?」
「うん、大丈夫」


このアバラスタの戦いで、くろねことゾロは重症を負った一人だった。

ゾロはMr1との戦いで。
くろねこは、そのMr1の戦いをサポートするために遣わされていた特殊エージェントとの戦いで。


「・・・・ごめんなさい。皆にも、くろねこさんにも、危険な目にあわせてしまって」
「?私達からやりたいっていったんだから、謝ることじゃないよ」
「でも・・・・・」
「ほら、見て。跡なんて残ってないでしょ?」


くろねこはその場に立ち上がると、思いっきり服のファスナーを上げた。

晒されるお腹に、傷跡はもうない。
それでもビビの脳裏に残った血だらけのくろねこの姿は、消えなかった。

下手すれば、死んでいたかもしれない。
もっともっと、犠牲者がいたかもしれない。


「まーたそういう顔する」


悲しげに視線を落としたビビの顎を、くろねこの手が捉える。


「なんであれ、この国を救えた。それでいいじゃん」
「・・・・・うん」
「頑張ったね、ビビ」


平和になったことへの喜びと、そのために払った犠牲の大きさ。

その感情を簡単に整理することは出来ない。
分かっているからこそ、くろねこは黙ってビビの傍に歩み寄り、その頭を抱きしめた。


「・・・・やっぱり、Mr.ブシドーが惹かれる理由、分かる・・・・」
「うるさいぞ~」
「いたたたた!」
「ったく・・・」


しばらく、お互いの顔を見ないように抱きしめ続ける。


「あのクロコダイルを相手にしたんだ。誰も怪我しない、死なないなんて無理だったんだよ。ルフィも言ってたでしょ?」
「・・・・うん」
「まぁでも、そういう優しさがビビのいいところ!これからはそれが実現できるようにすればいいよね!」
「うん・・・!」


くろねこの言葉に顔を上げたビビが、満面の笑みを浮かべた。
キラキラと輝くような瞳を向けられて、まるでお姉さんみたいなことをしている自分がらしくなくて恥ずかしくなったくろねこは、ビビの唇にチョコを押し付けて離れた。


「・・・・このチョコ」
「ん?」
「私が、好きなやつ・・・・」


押し付けられたチョコを食べたビビが、口の中に広がったプリン味にそう呟く。


「・・・・なんだよ、その顔」
「ありがとう」


照れくささが勝ったくろねこは、乱暴にビビを引き剥がして自分の席に戻った。
豪快に足を組んで酒を飲み始める姿は何とも男らしいが、その耳は赤い。


「何だか、すごく元気が出ちゃった」
「そりゃ良かった」
「もっと悪いことしちゃおうかしら?」
「いいねぇ!酒でも飲む?」
「遠慮しておくわ、私はチョコのほうが好きなの」


大量にチョコを頬張りだしたビビにくろねこが楽しそうに笑う。

たとえこの先、どんな選択になろうと、この時の会話や笑顔は忘れないだろう。
いままでの航海の思い出も。
アラバスタでの戦いも。

ビビと居た時間、全て。


「・・・にしても、このお酒どこから?」
「ゾロのへそくり」
「・・・・怒られない?」
「気にしない気にしない」


その思い出を更に濃く刻むように、二人は夜通し悪いことを続けた。
甘い味わいと、苦い香りに包まれながら。




◆◆◆




らしくもない、二日酔い。
痛む頭を押さえてふらふらと立ち上がったくろねこは、珍しくまだベッドに残っているゾロと目が合った。

時計の針は既に昼を回っている。

昼寝をしにきたのだろうか?と思い首を傾げるが、雰囲気的に鍛錬を終えたという感じもしない。

ここのところ前以上に鍛錬に力を入れていたゾロが、この時間までただ寝ていたとは思えなかったくろねこは、ゾロの方へ歩み寄った。


「どうしたの?体調悪い?」
「そりゃおめーだろ」
「え?いや、私のは・・・・」
「俺の酒取っていきやがったな?」
「あはははは・・・・ばれた?」


誤魔化すように笑うくろねこに、ゾロがとんでもないことを口にする。


「“死ぬまで一緒にいたいと、思えたから“か。それを俺の前で言ってくれねぇのか?」
「・・・・・・」


二日酔いがどこかに吹き飛んでいく。

その言葉には覚えがある。二日酔いといえど、酒に記憶を飛ばすほどではない。
昨日、ビビに話した言葉。
直接ゾロには言ったことのない、言葉。

ゾロから気持ちを伝えられて以来、あまりくろねこはゾロに対して自分から好意を表現することをしていなかった。


したくないわけじゃない。

恥ずかしい、のだ。


付き合った直後、中々ゾロに直接気持ちを伝えられなかったくろねこは、一度ナミにそそのかされ気持ちを伝えたことがあった。

慣れないながらも吐き出した言葉は、戦いよりも難しく、死んでしまいそうになる心臓を押さえつけるので精一杯だった。


「・・・・き、聞いて、たの」
「そういうのは俺に直接言ってくれてもいいんじゃねェのか?」
「そ、それは・・・・」


顔が、熱くなっていく。

逃げようと思い離れようとするも、ベッドに腰掛けていたゾロがくろねこのお腹に顔をうずめるようにして抱きついてきたため、逃げ場がなくなってしまった。


くろねこ
「~~~っ、ゾロ」
「女剣豪様の弱点を俺が握ってると思うと楽しくなっちまうな」
「性格悪ッ!!!!」


悪戯な瞳がこちらを見上げてくる。
やられっぱなしが悔しかったくろねこは、その悪戯な笑みを浮かべる顔を挟み込むと、目の前で叫んだ。


「死ぬまで一緒にいさせてほしいっ!・・・・です」


静まり返る、部屋。


「心臓、うるせぇな」


抱きついたままのゾロが呟く言葉に、くろねこは何も言わず顔を逸した。


「・・・・くろねこ
「ん」
「俺は簡単には死なねぇから覚悟しろよ」
「・・・・逆に、死にたくても死なせないから覚悟してよ」


くろねこにしては大胆な返しにゾロが口の端を上げて笑う。


「望むところだ」


その会話を外でビビとナミに聞かれているとも知らなかったくろねこは、後から女二人にお風呂場で尋問されたことは言うまでもなかった。


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