Erdbeere ~苺~ ひとりで生きたいわけじゃない 忍者ブログ
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2021年08月14日 (Sat)


土方落ちオール/ギャグ/ヒロイン視点/ヒロインのことを探りたい皆との話


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「おいおい、嘘だろ・・・?」


今日の仕事は遊郭に潜入しての情報収集だった。
遊郭といえば男がもっとも油断する場所。最高に、情報収集に向いている場所。
拷問にすら耐えうる男でも女とお酒の前では口が緩くなる。

そういった場所に潜入し、遊女として男の口を更に緩くさせる。
それから惚れさせて金と情報を引き出させる。絞れるまで絞って、相手には与えない。

まぁ、そういう仕事を主にしているわけだが。
これまで順調に新選組の情報屋として動いていた私に、人生最大のピンチが襲いかかっていた。


「斎藤さん、こっちですよ」
「平助達と飲みにこれるやなんてな~!」
「少し遅くなってしまいましたが、近藤さんからも親睦を深めるように言われていましてね」
「まぁ、ええことやな」
「(な、なんで・・・!)」


なんであいつらがここにいるんだ!

ここは遊郭でもかなり高級な部類に入るお店の一つ。
確かに新選組がきてもおかしくはない。
だが、なぜよりにもよって私が潜入しているタイミングでくるんだ。


「先生、こちらへどうぞ」


皆からばれないように柱からそっと部屋に案内される皆を見つめる。
斎藤、土方、沖田、永倉、藤堂の組み合わせ。まぁ確かに納得の組み合わせだ。
先程の声を聞く限り歓迎会みたいなものなのだろう。

斎藤ももう近藤さんと会っているし、今が一番いい時期なのだろうか。
このメンバーなら多少は話がしやすいだろうし。

・・・・いや、分かる。分かるんだけども。


「何してはるんです?揚羽さん」
「あ、え!?い、いや、なんでもないです」
「揚羽ちゃん!こんなところにいた!」
「は、はい・・・・?」


こういう嫌な出来事というのは重なるものだ。
あの部屋に案内されないようにと他の案内を探しにいこうとしていた私に、声がかかる。


「揚羽ちゃん、桜の間のお座敷に舞にいってくれる?」
「桜の間・・・・・・・・・」


女将さんの視線の先にある、桜の間。
それはあいつらが入っていた間だ。なんで、なんでなんだ。


「あの、その部屋は・・・・」
「新選組の隊長さんたちがいらっしゃってるんよ。近藤さんにはお世話になってますからね、貴方ぐらいの子をつけないとと思って」
「あ、いや、えっと・・・・・」
「じゃあ、お願いねぇ」
「・・・・・・はい」


このお店は近藤が金を入れているのもあってだいぶ私も動きやすいお店だ。
それ故に女将さんにはあまり逆らえない。ここに好きなときだけ入って働き情報を得るという動きを許されているのは女将さんと近藤の協力あってこそだからだ。

無言で見つめ合った後、女将の笑顔に負けた私は素直に桜の間に行くことにした。
まぁ、ばれないだろう。女のときの姿を彼らに見せたことはないし、今は全てが違う。
声だって変えれば問題ない。――――よし。


「失礼します」


舞の道具が用意された場所へ、頭を下げてからゆっくりと上がる。
彼らはあまりこういうのには興味がない。そこは助かった。
私があがっても少し目線を向けただけでじっと見つめながら飲もうとはしなかった。
それよりもお互いの話に花を咲かせているようだ。


「それにしても、一ちゃんはほんと強いのぉ」
「さすが天念理心流を追うだけのことはあるな」
「光栄だな」


酒を飲み交わす中で聞こえてくる、雑談。
流派の話から仕事の話。今後の新選組についてや、任務の話。
他愛のない、話。

舞の音楽に集中しながらも、その会話一つ一つに聞き耳を立てていく。
別に味方から収集する情報はないが、聞いておきたくなるのも仕方がないことだ。


「そういえば斎藤くん。何か聞きたいことはあるか?」
「聞きたいこと、か」
「斎藤さん入ってから慌ただしかったですもんねー。ま、答えれるものなら答えますよ、土方さんが」
「平助・・・・」


楽しそうに茶化す藤堂を土方が睨みつける。
それを気にせず「聞きたいことがあったんだ」と切り出した斎藤の次の言葉に、私は舞の扇子を手から落としそうになった。


あけについてだ」
「っ、あ、あぶね・・・・」


舞の振り付けとして誤魔化して皆に背を向ける。
そして立て直したのち再度正面に振り返れば、誰も気にしていない様子で話が進んでいてほっとした。


「なんや一ちゃん、あけちゃんが気になるんか」
「局長補佐、なんだろう?あの男。普段は何をしているんだ?」
「普段は別の任務なんですよ、あけは。山崎と似た立ち位置なんで!」
「そうなのか。・・・・それで、強いのか?」
「彼の腕に関しては私が保証する」
「・・・アンタが保証するってなら強そうだな」
「フッ。その様子じゃ、あけとも切り合いたいって感じやな、アンタ」


勘弁してくれよ。
げっそりとなりながらなんとか舞を続ける私の耳に、まだ終わらない話が飛び込んでくる。


「あぁ、天念理心流の使い手なんだろ?一度手合わせしてみたいもんだぜ」
「でも俺、あけが本気で戦ってる姿あんまり見たことないですね。ちょっと気になるな~。普段の生活もわりとズレてるし、任務以外は普段何してるんですかね?」
「そりゃお前、歳ちゃんと稽古やろ。あいつ気づけば歳ちゃんと切り合いしてるやろ~!血の気多いんとちゃうんか?」
「そ、そうなのか?」
「いや・・・そういうわけではない。あいつは少し怠け癖があるものでね。それでたまに気合いを入れるためにやっているだけだ」
あけって結構サボりぐせ強いですからね~!」
「確かに、金にも興味ないっちゅう男や。総司との任務も良くサボっとるで」


そこから話される、私の任務報告のサボり癖等々。
いや、悪いと思ってるんだよ。分かってるんだけどつい、な。
そしてそれをサボったことによって後から土方からきつい仕置きが振ってくるのも分かっているんだが、こういう場所の潜入は精神と体力を戦闘以上に消費するため、つい繰り返してしまうのだ。


「でもほんと、あけって普段何してるんだろうなぁ」
「そんなに気になるのかね?」
「だって土方さんは本読んでたり、近藤さんはまぁ分からないですけど・・・・斎藤さんはよく町を見回ってるのを監察から聞きますし、永倉さんと沖田さんはよく一緒にいるでしょ?」
「まぁ、そやな。確かに謎が多いかもしれんなぁ」


どうでもいいだろそんなこと!
と叫びそうになるのをなんとか押さえる。


「・・・・・そういえば、もう一つ聞きたかったんだが」
「ん?何かね」
あけは・・・・その、女じゃ、ないのか?」


――――――空気が、凍った。

それは彼らだけではなく、私もだった。
思わず舞を止めてしまい、音楽を奏でていた別の子にそっと声を掛けられる。
慌てて動き出すも、ぎこちない舞になってしまった。

だって、あいつ、いま。
私が女だって。
いつ?いつから気づいていた?完璧に隠していたはずなのに!


「それは・・・なぜそう思った?」
「いや・・・その、どうしても男に見えなくてな」
「ほう~~!!一ちゃん、目がえぇなぁ!」
「ッ、総司!」
「ええやないか歳ちゃん。・・・どうせ今後、知るときがくるで。一ちゃん、このことは俺たち以外には話したらあかんで?」


沖田の切り替わった真剣な声と眼差しに、土方は止めるのをやめた。
そこは止めてくれよ、と言いたくなるのを押さえて舞の曲が終わるまでを必死に耐える。


「・・・・彼のことを何も聞かずして見抜いたのは君が初めてだ」
「そう、なのか」
「ぱっと見てるだけじゃ、普通の少年ですもん。仕草も普通に男らしいから、俺もすぐには分からなかったですよ」
「まぁ、俺達も女だということを聞いてるだけや」
「そやな。あけちゃんが女っぽいところ見たことないからな~!歳ちゃんなら見たことあるんやないか?一番仲ええやろ?」
「・・・・いや、あまりないな。昔は少し、あった気もするが」


そりゃそうだ。
土方とあった時から、つまりは近藤に拾われたときから私は私だった。

ガサツで女らしさを捨てて、下手な武士よりは腕も立つ。
でも食うためには女として体を売るような真似をするしかなくて・・・私は、それがどうしても嫌でそれを逆手にとった情報収集をするようになった。

それでも出会った彼らは私より強くて。
それがなんだか悔しくて、私は頼み込んで天念理心流を覚えた。
独自の流派も加えて更に私は強くなった。

私に、女はもうない。


「だが、私から見れば彼は女にしか見えない。・・・知っているからというのを除いても」
「なんでや!?それ聞きたいで歳ちゃん!!」
「気になりますね。俺は逆に気を抜くと男だと思っちゃってますから、あけのこと」


こ、こいつら・・・!


「ふとした仕草や声、思考は女性寄りだと思うが」
「ほんまかいな?」
「では逆に聞いてみるといいのではないか?斎藤くん、君はどこを見てあけを女だと思ったのかね」
「俺は・・・あいつの、仕草だ」


そこから斎藤は私がふとした瞬間に出す仕草について女性らしさを感じたと聞いた。
ただそれだけなら、いわゆる女性寄りの男性である発想になってもよかったんじゃないかと思ったが、皆は何故かそれに納得していた。

悔しいがそこは素直に参考にする点として聞くことにした。
女性に扮するときの参考としても、普段の自分の振る舞いとしても。


「あ~、なんかそう言われればそうって感じもしますねぇ」
「特に土方。アンタといるときのあいつはなんか・・・・少し、違う」
「・・・まぁ、一番付き合いが長い一人だ。彼も少し気が抜けるのだろう」
「そんなもんかいな」
「でも確かにあけって可愛いですよね」
「お、平助、見る目があるなぁ。実は俺もそう思ってたんや、なぁ?」
「なぁって・・・・俺にふるなや総司・・・・まぁ、そやな。わからんくもない」


舞の音楽が止まった。
話に夢中だった彼らは話を止め、拍手をくれる。礼儀はきちんとしているいい奴らだ。

私はこの話を聞いているのが耐えれなくて、一刻も早く部屋から出ようとした。
だが何故か土方に呼び止められ、仕方なく笑顔を浮かべる。


「先生、いかがなさいましたか?」
「・・・・・君は」
「・・・はい?」
「いや、他の方は退席していただけるか?私は少し、彼女と話がしたい」
「は、はい。では揚羽さん、失礼いたします」
「えっ、あ、はい」


思わず変な声を出して返事をしてしまう。
同時に音楽を奏でていた遊女達が部屋を去り、部屋は呼び止められた私と5人だけになった。


「なんや歳ちゃん。まさか・・・・惚れたんか!?」
「違う。・・・お前、あけだろう」
「えっ!!??」


藤堂がお手本のような驚き方を見せる。
それと同時に目を見開いた斎藤は、何故かそこまで驚きを見せていなかった。というよりは私をじっと見た後、何故か納得したように頷いた。


「言われればあけに似ているな」
「いやですわぁ、先生方。何か勘違いしておられます。私は揚羽。そのようなお名前ではございません」
「私が貴方を見間違うとでも?」


この場合、どうするのが正解なんだ?

正直別に私があけだということがバレるのは構わない。
さっきの話の通り、私が女だということは古参組は皆知っている。
斎藤が気づいたのは予想外だったが、任務に支障が出るわけでもない。

だが・・・問題としては私の気持ちにある。
だってこの話を散々私は目の前で聞いていたことになるのだ。
しかもちょうど女だということが話題に上がっている最中で。どんな拷問だ。


「いや・・・えっと」
「・・・・・」
「ッ!?」


一瞬。

土方が私の刀腕に素早く手を伸ばしたのを見て、思わず反応してその手を捻り上げようとしてしまった。もちろん土方はその反撃を読んでいたのだろう。勢いを殺し、今の一瞬の攻防をわざと皆に見せつけるようにして笑う。


「・・・だろう?」


皆の視線と無言に耐えきれず、私は仕方なく両手を上げた。


「バレたなら仕方ねぇな・・・・」
「おお!ほんまかいな!なんやあけちゃん、かわいいのぉ!そんな格好も出来たんか」
「っ・・・任務のときに仕方なくやってるだけだ」
「でも似合ってますよ!」
「平助、お前顔がものすごく笑ってるからな???」
「いい女じゃねぇか」
「斎藤お前は真顔で言うな、殴りたくなる」


隠す必要がなくなった私は苛立ちで拳を震わせながら皆を睨みつける。
特に原因になった土方を、入念に。


「なんっで黙って帰してくれないんだよ!」
「いえ、ちょうど貴方の話をしていたのでね。共にお酒でもいかがかと」
「顔ちょっと笑ってんだよなぁ~?」


鬼の副長と呼ばれている土方も、こういうからかいを見せるときがある。
苛つきながら仕方なくお酌をすれば、私の苛立ちなんてつゆ知らず。元々お酒が入っていた彼らは楽しそうに話を続けた。


あけちゃん~!お酌してぇや~!」
「・・・・・・・・」
「うわ、顔怖いよあけ・・・」
「平助、お前も同罪だからな」
「えぇ~?」
「いい機会やな。俺にも頼むわ」
「永倉・・・・・・・」


むかつく。
・・・・むかつくけど、たまにはいいのかもしれない。

私はこいつらがこうやって笑って、和やかにお酒を飲むのを久しぶりに見た。
今までずっと血にまみれてきた。この壊れた世界で、ずっと人を斬り続けてきた。
近藤の描く絵図のために。日本のために。

私はこいつらが好きだ。
私を拾ってくれた近藤さん含め、私にとって本当の仲間はこいつらしかいない。
斎藤は最近入ったばかりの新人だからわからないが、近藤も土方も信頼を向けている。その点においてはきっとその仲間になる日も近いのだろう。


「フッ・・・まぁ、たまには、いいか」
「・・・その、表情だ」
「あ?」
「そのふとした瞬間に見せるアンタの顔が、とても・・・その、キレイだと思ったんだ」
「なんや一ちゃん!やっぱりあけちゃん狙っとるんか!?」
「い、いや、そういうわけじゃ・・・」
「酔ってんだろ?・・・もうそろそろ時間ですよ、先生方?」


わざとらしく空っぽになったお酒を見せつけながら頭を下げれば、少し残念そうに皆が腰を上げ始める。


「しゃあないなぁ、んじゃ帰るか~」
「では、これからもよろしくおねがいしますね。斎藤さん」
「あ、あぁ」
「もう1件どや?」
「総司、明日任務やろ」
「ええやろ~!大丈夫やって!」


 にぎやかに皆が出ていく中、何故か土方は立ち上がったまま私を見下げている。


「・・・・・・・・ど、どうされましたか」


一応、遊女としての対応をする。
すると土方が近づいてくる気配をかんじた。思わず顔を上げれば膝をついた土方が私の顎に手を這わせる。


「・・・・?」


顎を掴まれた私は自然と土方を見つめることになる。

ゆらゆらと揺れる火に煽られる、土方の表情。
――――綺麗だ。

鬼の副長と呼ばれる彼は女性からは人気だった。
美しく、その冷徹な性格さえも女性を惹きつける魅力となる。

・・・・・って。


「近い!近い近い!!!」


土方の表情に見惚れていると、いつの間にか土方の顔が口づけできそうな位置まで迫っていた。
慌てて押し返そうにも土方には力で適うはずもなく、その距離でただ見つめられ続ける謎の拷問を味わうことになる。


「あの、ひじ、ひじかたさん?」
「なんだ」
「いやほら、近いといいますか・・・」
「何か問題でも?」
「もんっ・・・だい、だらけでしょ・・・・」


さすがに、こんな近くで土方と目を合わせ続けるなんて、無理だ。
我慢できなくなって土方の腕を強くつかめば、どこか楽しそうに土方が笑う。


「先程斎藤くんが言っていたことを、きちんと覚えたか?」
「へっ?な、なんのこと」
「君を女性らしく感じる仕草の話だ」
「あ、うん・・・そ、それが、なに」
「私以外でその仕草を出さないように気をつけるんだな。・・・一応、男ということになっているのだから、バレるのには少し問題があるぞ」
「ご、ごめんなさい」
「分かればいい」
「わ、わかりました!」
「・・・・」
「・・・・」


――――で、全然離してくれないんですけど?


「ちょっと!?そろそろ限界だから離して!!」
「何が限界なのかね」
「ひ、土方の顔をこんなにまじまじと見るなんて拷問に決まってんだろ!?」
「・・・・ほう?拷問?」
「いだだだだだ!!!違う!!悪い意味じゃないっ!!お前どんだけ自分が二枚目か分かってねぇのかよ!?お前二枚目なんだからあんまそんな容易に女に顔近づけるなッ!!」


泣きかけながらそう叫べば、土方は更に楽しそうに笑った。
あ、そんな顔もするんだ。珍しい!なんて思っていた瞬間に、それは訪れた。


「・・・・・・・?」


思考すら遅れる、衝撃。
土方の顔が見えなくなったかと思うと、自分の唇に暖かい感触が押し当てられていた。

何が起こっているのかは、分かる。
口づけをされているのだ。あの土方に。
人生で初めての、接吻。その衝撃とこの状況に対する対応力のなさは土方への抵抗力をすっかり削いでしまった。


「・・・・こういうときは、目を閉じるものだ」


数秒が、数分に感じられて。
ようやく離れた時、いつも近くで感じる土方の香りが心臓をぞわりとさせた。


「ッ・・・・・・」
「・・・ふっ、どうした。君のことだ、すぐに切りかかってくるかと思ったんだが」
「・・・っ、おまえは、私を何だと思ってんだ・・・」


彼とは長い付き合いだ。
だから何でも知っている。苦労も、弱さも、強さも、その美しさも。

長すぎて、意識の外にいっていたんだ。
女として彼を見てしまうと、どうなるのか。
いや、封印していたに近いかもしれない。男として生きるためには、そういう感情は不要だ。あってはならない。


「・・・それで?からかって満足かよ」
「からかう?私がからかいのために女に口づけをするとでも?」
「しそうじゃん、二枚目だし」
「・・・・それとどう関係があるのかお教え願いたいな」
「いだだだだ!すーぐ暴力する!!」
「くだらない女にそのようなことをする趣味はない。君ならよく分かるだろう」
「いや、普段何してるか知らないし、実は女遊びとかが趣・・・・ひ、ひじかた、耳取れる!!いたい!!!」


無言で耳を引っ張られていた私は抗議の声を上げる。
すると土方は意外にもあっさり手を離し、そして今日一番の黒い笑みを浮かべて私の顎を掴んだ。


「あぁ、君にはこっちの罰のほうがよさそうだ」
「ッ・・・・待って、本気で謝るからそれはっ・・・」


こんな感覚知らない。
背中にぞくりとした不思議な感覚が走って、頭がぼーっとする。
まるで食べられているような。操られているような。


「っは・・・」


長い口吻が終わって涙目で土方を睨むと、土方が私の耳元に唇を近づけた。


「さて、そろそろ意味は分かっただろう?」
「・・・・えっと、その」
「分かったのであれば今後、“私以外“に女と分かるようなことをするのは慎め」
「それは、なに?新選組の任務のため?」
「・・・・それはわざと聞いているのか?」
「っ、だ、だって、その他の選択肢ってなんか・・・こう、想像できないというか」
「想像できるように行動にしたんだが」
「本気で、言ってるのか・・・?」


土方は表情があまり大きくは変わらない。
だからこそ、どこまでが本気か分からなかった。

そもそもそういう冗談を言うやつじゃないことは知ってる。でもなんで、私なんだ。なんで今何だ?だって私を女として見たところで、何もない。


「なんで、わたしなんだ」
「君だからだ」
「・・・・アンタなら、もっといっぱいいい女引っ掛けられそうなのに」
「フッ・・・常に君を見ていて、君ほど真っ直ぐな女はいないと確信したよ。だから最近は君を女だと知っている奴らの目が気が気でなくてね」
「・・・・・」
「それで、答えは?」
「えっ」
「・・・・・まさか君は、ここで何も答えず終わるつもりだったのかね?」


このままうやむやにしてしまおうと思っていた私は、土方の鋭い言葉に顔を引きつらせた。


「えっと・・・いや、その、急すぎてほら・・・・というか知っての通り私こういうのには慣れてなくてさ、なんか・・・その」
「・・・・・・・」
「まぁ、その、友達からとかで・・・いやもう友達というか戦友だけど、いやなんというか・・・」
「・・・・・・・」
「わ、わかった!わかった、その、あー、じゃあその・・・お試しとかでどうだ?」
「それは私と恋仲になってくれるということで問題ないかね」
「恋仲・・・・・!?」
「君は不慣れすぎにもほどがあるのではないか・・・・?」


呆れ顔になった土方に口をとがらせて抗議する。
不慣れも何もない。男として生きている人間が、そんなことを率先して意識するわけもない。


「んなこと言ったって・・・・」


私は、この状態に身を投げ入れてから全てを捨てた。

それは望んでやったことだ。
戦いに染まって、危険に潜む。そして全てを近藤と土方のために捧げる。

日本のために生きる。
私はそのために、女なんて。

女、なんて。


「・・・・正直な話、土方はこういうのに興味がないんだとおもっていた」


女に興味がないという意味ではなく、誰か伴侶を持とうとする考えはないと思っていた。

色んな意味で、孤独に生きる。
それが戦いに身を落とした者の、運命。


「誰かと共に歩むなんて、志を共にした奴ら以外とはないと思ってた。私はその戦友の一人だって、おもってた」


素直になれば私は昔から土方が好きだった。
でもこの思いは封印したんだ。そう、戦いのために。


「だから私は・・・・捨てたのに」


なんで今さら、惑わすんだ。


「私はお前と違って・・・そんなに強くない。きっと、女としての部分は弱さになる。だから、私は・・・・お前の邪魔になるぐらいなら・・・」
「それで」
「ぶっ!?」


長くいじいじと言葉を垂らし流していた私の頬を、土方が乱暴に掴んだ。


「結局答えは?」
「え、だ、だから・・・」
「君のその女を捨てた話は私がよく知っている。君の覚悟も何もかも、ずっと見ていたのは私だ。だからこそ聞いてるんだ。・・・・あけ、私は君が好きだ」


君はどうなんだ?

その聞き方に私は少し、悔しさを覚えた。
あぁ、そういうことか。土方は全部分かってて聞いてるんだな。

私の覚悟も。

私が、こいつのことを好きだったっていうことも。


「性格悪」
「おや、なぜそう思う」
「全部分かってて手のひらで転がしてる感じ」
「わからないから聞いているのだが」
「でも分かってるって顔してる」
「どうだろうな」


鬼の副長の笑みは、いつだって意地が悪い。


「・・・いつまで焦らすつもりだ?」
「っ・・・分かってるなら、いいだろ」
「それが答えになるとでも?」
「なんか・・・・楽しそうだな」
「ふっ・・・何故だろうね。君のその表情を見るのが私だけだと思うと、楽しくてたまらないよ」
「やっぱ性格悪」
「ならその言葉に答えよう」
「ッ!?」


掴まれていた頬から手が離れたかと思うと、一瞬で私はその場に押し倒されていた。
普通に女性を押したおすというよりは敵を押し倒すような勢いでやってくるあたり、私の抵抗を踏まえた動きで計算高いところが更に腹が立つ。


「答えるまで私はここを退くつもりはない」
「っ・・・・」
「このまま私に襲われるか、答えるかを選びたまえ」
「え、襲!?」
「当たり前だろう。私がどれだけ我慢していたと思っているんだ?」
「わー!!近いっ!近いっ・・・分かった!答える!!私でっ・・・よければ、一緒にいさせてくれ・・・・」


着物に手をかける土方を止めながら、ほぼ勢いでそう答えた。
私の答えを聞いた土方は満足そうに頷いた後――――何故かそのまま着物にかけていた手に力を込め始めた。


「え、ちょっと!?」
「なんだ?」
「いや、何だじゃないよね?返事したんだけど?」
「あぁ、これで合意のもとだな」
「いやちょっとまって!!!ほ、ほら、ここっ、お座敷だし!!」
「心配するな。今日は酔いつぶれる可能性も考慮してこの部屋の間は全て貸し切ってある」
「金持ちなことしやがって!さ、斎藤達が戻ってくるかもしれねぇよ!?」
「いや、それはない。この間からは月がこの部屋から見えなくなる時間帯には人を入れるなと女将にいってある」
「・・・・・・え」


血の気が引いた。
それはつまり。もしか、して。


「お前、まさか、最初から全部知ってて・・・・・・・・・」


私の言葉に土方はそのまま笑みだけを返した。


















女を捨て、全てを捨てて、戦いのためだけに生きるつもりだったのに。
一人で生きるつもりだったのに。

どこかで私は、共に生きる人がほしいと願っていたのかもしれない。
愛する人をもちたいと、思っていたのかもしれない。

いや、思っていたのかもしれないじゃない。
思っていたんだ。でもそれを封じていた。それを見破られていただけのこと。


「・・・・おはよう、あけ


らしくもない優しい挨拶を隣で受けて、私は恥ずかしさと怒りでそっぽを向いた。


「・・・・ばーか」




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 ・気まぐれ

◆Thanks!
見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。
現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。
(龍如/オール・海賊/剣豪)