いらっしゃいませ!
名前変更所
最近、桐生の様子がおかしい。
おかしいっていうか、その、正確に何が可笑しいとは言えないのだが。
最近琉球街に出かけては、何かしらテキストのようなものを買ってきて見ていることがある。
それも桐生が興味を持たなさそうな、英語のテキストのばかり。
最初は気にしてなかったが、最近はその量も増えてきて無視することも出来なくなって来た。
しかも前は、外国人の綺麗なお姉さんにやたら親しそうに話しているのも見かけたし。
「・・・なんか、イライラする・・・」
また1冊、英語のテキストが増えているのを見て、私はイライラしながら部屋を出た。
まさかアイツ、あれか?
外国人の女を口説くためにこんなの買ってるってわけねぇよな?
「(さすがにそれはねぇよな・・・)」
ただ、桐生も男だ。
キャバ嬢に誘われればあんまり断らないし、それなりに遊んでいるのも私は知っていた。
だからこそ、イライラが募る。
「(出かけてくるか・・・)」
このままここに居ても、ただイライラを募らせて終わるだけだ。
街に出て、絡んで来た相手でストレス発散でもしようか。
「遥ー!」
「?どうしたの、お姉ちゃん?」
部屋の掃除をしていた遥の名前を呼び、何か買うものが無いか尋ねる。
「買うもの、ねぇか?出かけるから買って来てやるよ」
「え?大丈夫だよ!お姉ちゃんは出かけてき・・・」
「はーるーかー?」
「う・・・」
こうやって出かける時は、いつもの癖で確認するようになった。
遥の負担を少しでも減らしてあげたいし、自由な時間を作ってあげたい。
遥はいつも遠慮したり、お世話役を買ってでちまうからな。
有無を言わさぬ勢いで買い物リストをよこせと言い放った私に、遥が折れて買い物のメモを渡した。
「よ、よろしくおねがいします」
「よろしい」
「じゃあ今日は、お姉ちゃんが好きなもの作ってあげるから、待っててね!」
「おう!」
遥の頭をガシガシと撫で、あさがおを後にする。
メモの内容は、にんじんやらじゃがいもやら・・・どうやら、カレーの具材のようだ。
カレーは桐生の得意分野。
桐生が当番の時は良く作ってるのを見る。
だからすぐ、材料が無くなってしまうのだろう。
でもまずは、買い物よりストレス発散が先だ。
「どうすっかなぁ・・・」
東京と違って、ここはあまり行く場所が無い。
だからこそ、こういう気分の時に行く場所は決まっている。
「やっぱ、飲みだよな!飲み!」
向かうはアクアスカイ。
私が良く行く、行きつけのバーだ。
お酒の種類が凄く豊富で、しかもダーツまである。
遊んだり気分転換するには最高だと、私はいつも通りの道を通ってアクアスカイを訪れた。
「ちゃっす、マスター」
「おや、いらっしゃい。こんな昼間っからは久しぶりだねぇ」
「ちょっとなー。マスター、いつものくれ」
「あいよ」
レモンハートデメララ。私はいつもこれを頼む。
香ばしい風味がツボにはまり、一度飲んでからすっかり常連になってしまった。
「はいよ」
「おっ、ありがとー!」
これ飲んだら、ダーツで遊んで、それから・・・。
「・・・・you・・・」
「・・・ん?」
考え事をしていると、カウンターの奥の方から綺麗な女性の声が聞こえてきた。
しかも聞こえてくるのは英語。
ちょうど忘れようとしていたことを思い出さされ、私は思わず苛立った。
桐生が持っていた英語のテキスト―――ああもう、こんなことなら買い物から行くべきだったかもしれない。
「チッ・・・ったく」
「どうしたんだい?今日は何だか荒れてるね、あけちゃん」
「あー、ちょっと、な」
そう言って軽く誤魔化した瞬間、私の目に信じられないものが飛び込んできた。
金髪の女性と楽しそうに喋る、桐生の姿。
私がさっき見た、奥のカウンター席にその二人は居た。
その女性が喋っているのは、英語。
そしてぎこちないながらも、桐生が発している言葉も英語だった。
「Don't love me」
俺に惚れるなよ。
何?口説いてるのか?まさか。
苛立ちが頂点に達した私は、酒を飲みほしてお金を置いた。
口説き文句なんて、私すら言われたことないのに。
滅多に嫉妬しない私が嫉妬する原因、それは桐生の執着心にあった。
基本桐生は、来るもの拒まず、去る者追わずのタイプだ。
キャバ嬢も自分が楽しむために行き、惚れられてソウイウコトをするぐらい。
それなら、私だってそんなに嫉妬しない。
桐生だって男なわけだし。
でも今回はわざわざテキストまで買って口説いてるんだ。
めんどくさがり屋の桐生がそこまでするんだ。私は、それが許せなくて。
「アホ桐生、死ね」
「・・・・っ!?」
思わず桐生に聞こえるぐらいの暴言を吐き、お店から逃げた。
本当に、私はいつからこんなに女々しくなった?
こんなことに嫉妬するなんて、私らしくない。
原因があるとすれば、それもきっと桐生だろう。
桐生が私を、女性として目覚めさせたんだ。
「はぁ・・・」
「・・・い!おい!」
「っ!?」
イライラしていたせいか、桐生が追いかけてきているのにまったく気づかなかった。
顔を合わせるのも気まずい今、私が取る行動は一つ。
「く、くんなばか!」
「良いから話を聞け!」
「嫌に決まってんだろ!」
とにかく、逃げる。
後ろを見ることなく逃げ始めた私に対し、桐生がため息を吐きながら追いかけてきた。
走って、走って、ものの数秒。
あの桐生から逃げられるわけもなく、私はすぐに首根っこを掴まれて確保された。
「いきなりどうしたんだ、お前は」
「さっきの金髪美人は口説かなくていいのか?桐生」
「待て、あけ!それは・・・!」
逃げようとしても、グイッと引き寄せられて逃げられない。
「はな、っせ・・・!」
「・・・嫉妬してくれてたのか?あけ」
何故か桐生が楽しそうに笑う。
遊ばれている気がしてむかついた私は、咄嗟に拳を振り上げた。
が、もちろん。そんなものが桐生に当たるわけもなく。
軽々と受け止められたかと思うと、そのまま顎を掴まれて唇を塞がれた。
「んっ・・・!?」
逃げようとする舌を桐生の舌が追い、遊ぶように絡める。
思わず腰が抜けそうになり、ふらふらと桐生の方へ倒れ込んだ。
桐生の低い声が、私の耳元を擽る。
負けず嫌いの私にとって、最大の屈辱となる言葉を。
「嫉妬するなんて・・・お前もまだまだ子供だな」
「っ・・・・!」
私が怒っていたはずなのに、どうして私が負けているんだ?
恥ずかしさと怒りで桐生の足を踏んだ私は、逆転するために最大の疑問を放った。
「んで?あの金髪美女さんとはどういうご関係で?」
「・・・ただ飲みに付き合ってもらっただけだ」
「ふぅん?外国人さんと?わざわざ?」
「それはたまたま会っ「英語のテキストまで、買って?」」
「・・・っ!?」
何故それを!?という、桐生にしては珍しい表情に変わったのを見て、私はニヤリと笑みを浮かべる。
そして桐生に背を向けると、遥のメモリストをチラつかせながら更にその笑みを深くした。
「今日の夜ご飯・・・楽しみだね・・・なぁ、桐生?」
食卓に並ぶ、大量のピーマン料理。
遥のメモリストにあったピーマンをわざと大量に買ってきた私は、今夜の食事当番を自ら引き受けた。
ピーマンは桐生の大嫌いな物の一つ。
帰ってきた桐生が私と夜ご飯を見比べ、ヒクッと顔を引き攣らせる。
桐生のこういう表情を見れるのは、私か遥ぐらいのものだろう。
いつもは男らしい東城会元4代目の男、なのだから。
「お帰り、桐生」
「・・・・」
「どうしたんだ?夜ご飯だぜ?」
「・・・った・・・」
「ん?」
「すまなかった・・・」
伝説の極道がピーマンに負けた瞬間、私は遥にブイサインを送った。
嫉妬しても、喧嘩しても、必ず私はここにいる
(だからこそ意地悪するのが、誰にも出来ない、私だけに出来る特権)
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