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2012年11月03日 (Sat)
2章1話/ヒロイン視点

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ウォーゲーム1日目。
その日は私の思った通り、チェスのほとんどがウォーゲームに夢中になっていた。

人数は3対3。
場所はレギンレイヴ城の広場。

メンバーの中には、今回のグループ・・・メルのリーダーに選ばれたギンタも居る。

本当はじっくり戦いを見たいんだけど、そうもいかないのがこの状況。
やる事いっぱいあるんだもん。色々と。


「さてっと・・・」


とりあえず、調べるところの目星は大体ついている。
まずはファントムの上に居る存在、クイーンの周辺だ。

色々なアームを所持しているのもあの人みたいだし、上手く行けば珍しいホーリーアームも見つかるかもしれない。

そしてファントムが持っているゾンビタトゥの事も、分かるかもしれない。


クイーンの存在には気づいていた。
そいつが怪しい事も、何か鍵を握っていることも大体分かっていた。

でも行動に移せなかったのは、そう、危険が多すぎるから。


「(今なら・・・いける)」


今日はギンタを見るためにほとんどのチェスの駒がレギンレイヴに居る。
何かを探るには、最高のチャンスだ。

ファントムの部屋の近くを通り過ぎ、クイーンが居ると思われる部屋の近くまで足を進める。
誰も居ない空間に私の足音だけが響き渡り、より一層不気味さを引き立てた。

たどり着いた大きな部屋から漂う魔力は、紛れもなくファントムよりも絶大なる者の魔力。


「(この魔力の持ち主が・・・クイーン・・・)」


このまま突撃するには、分が悪い。
私は最大限まで魔力と気配を抑えこみ、大きな部屋の近くにあった、小さな倉庫のような場所に視線を移した。

あれは、なんだろう?

何か情報が得られるかもしれない。ここは行動あるのみだ。


「し、失礼しまーす」


一応、誰も居ないことを確認してから入る。
小さな扉に隠されていたその部屋は、私が予想した通り、小さな倉庫のような部屋だった。

しかも、アームの倉庫。


「(うーん・・・でも、アームの倉庫が、こんなに警備が手薄でいいのかな・・・)」


恐る恐る手を伸ばす。
するとアームの入った箱が突如牙を剥き、私の手に噛み付こうと暴れはじめた。

慌てて手をひっこめれば、箱も何事も無かったかのように動くのを止める。

なるほど。

警備が手薄ってわけじゃないんだね。
箱自体に警備がしてあるってわけか。


「それなら・・・」


むやみにあれこれ手を出して調べるのは危険だ。
私は仕方なく手を出すのを諦め、アームから感じる力でそのアームの能力を見定めることにした。


「(ホーリーアーム・・・ホーリー・・・・。うーん、これはダークネスかな・・・これは・・・)」


強力なもの。
そして、ホーリーアーム。

二つの条件を兼ね備えたアームを見つけるために、私は必死になってその倉庫を駆け回った。
だけど見つかるのは、何故かその真逆のダークネスアームばかり。

これがクイーンの、趣味なのだろうか。


「ん・・・?あれは・・・」


ダークネスアームの中に、少しだけ違う輝きのアームを見つけ、手を伸ばす。
もちろん箱が噛み付いてくるが、私はそれを魔力で封じ込めた。

私が見つけたアームは、綺麗なサファイア色の輝きを持つブレスネットだった。

冷たく、心地よい力を感じる。
強いかどうかは分からないが、これはたぶん「ホーリーアーム」だ。


「(やりぃ!)」


喜んだのも束の間、大きな部屋に居た魔力がこちらに向かってくるのを感じて、私は青ざめる。


「(あ、やば・・・!何も考えずに魔力使っちゃったー!)」


やばい。

やばい。

クイーンが部屋の中に居るのを分かっていたのに、その近くで魔力を使うなんて。

私は馬鹿か!
そう自分自身に罵倒を加えながら、私は早口で自分の部屋へとアンダータを発動させた。























本当はあのまま、ゾンビタトゥについても調べるつもりだったのに。
結局部屋に逃げ帰って来た私は、唯一の戦利品であるホーリーアームを眺め、ため息を吐いた。


「綺麗なアームだなぁ・・・」


それにしてもこのアーム、結構良い物だ。
あの時は適当に選んできただけだったけど、良く調べてみると、かなり強い力を感じる。

しかも能力は回復の方では無く、私が求めていた呪いを解除する能力の方みたいだ。


「でもなぁ・・・今までもたくさんこういうの集めてきたけど、結局意味なかったし・・・」


何度か強力なホーリーアームを手に入れ、使ってみたが、結果は全て惨敗。
アランやアルヴィスの所へ持って行くまでもなく、そのアーム達は私が掛けた中級の呪いさえも解くことが難しいレベルのものだった。

やっぱり、ホーリー能力を持ったガーディアンとかじゃないと、駄目なのかな?

でも、一応試してみるだけ試そう。
危険を冒して取ってきた、数少ない戦利品なのだから。

今取ってきたホーリーアームの強さを検証することにした私は、ポケットから一つ、アームを選んだ。


「出ておいで、ペシュ」
『わんっ!』


小さなリング状のアームを翳し、ガーディアンを呼び出す。

ガーディアン、ペシュ。
犬耳を持った可愛い少年のガーディアンだが、いつも私の検証に付き合ってくれるそこそこ強いガーディアンだ。

私がペシュの頭を撫でると、ペシュが嬉しそうに尻尾を振りはじめる。


「ペシュ、久しぶりに頼んでいい?」
『うん、いいよ!でも、痛くないのでお願いね、マスター』
「もちろん。じゃあ、行くよ?」


静かに息を吐き、私はペシュに動きを封じるダークネスアームを発動させた。

代償は強烈な痛み。
検証のためとはいえ、痛みに声を上げる私を、ペシュが心配そうに見つめる。


「大丈夫だから・・・ね?じゃあ、行くよ!」
『うん!』


痛みに耐えながら、先ほどの戦利品として手に入れたホーリーアームをペシュに翳す。
すると、みるみる内に私の身体から痛みが消え、ペシュの止まっていた身体も動き出した。


「・・・!」
『やったね、マスター!中々強いアームみたいわんっ!』
「うん・・・!これなら・・・」


間違いない。
これは上位レベルのホーリーアームだ。

初めて得た前進する感覚に、思わず頬が緩む。
もちろん、前進できるかどうかなんて分からないことは分かっているけど。


「ありがとね、ペシュ。今度試してくる!」
『わんっ!』


私はそのホーリーアームを大事にしまい、協力してくれたペシュを撫でてアームに戻した。
ゲームの様子を遠隔で映し出していた水晶を見ると、ちょうどウォーゲームの1thバトルが終わりを告げようとしている。

バトルを見れなかったのは残念だけど、一歩前進といえるかもしれないアームを手に入れることが出来た。


でもそれと引き換えに、しばらくクイーンの近くには行けなくなってしまったが。


「(・・・まだ、いける。このゲームが終わるまでには、全部突き止めてやるんだから)」


ファントムの秘密を。
クイーンの秘密を。

そして、ゾンビタトゥの秘密を。


タイムリミットは、ウォーゲームが終わるまでだけど・・・。
ファントムが、私をどこで戦いに放り込むのかも気になる。

きっと彼の事だ。

最大限に私が“玩具”として楽しませてくれる場所で放り込むはず。


アランが出てくる時?それともメルのリーダーであるギンタ?

もしくは、アルヴィス?


絶対、どこで放り込まれても私は負けない。
そんな簡単に、アンタの玩具になんかならないんだからね?ファントム。


「覚悟、しておいてよね・・・!」




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