いらっしゃいませ!
名前変更所
「おいこら!ラング!てめぇまた黙ってどこかに行ってたな!?」
「え?あ、やー。ほら、修行に・・・」
「お前は耳ついてンのか!?あぁ!?黙ってどっか行くなって行っただろうが!!」
「べ、別にもう迷子にはならないもん!心配しすぎだよアランは」
「お前がそういって、無事に帰ってきたことなんて数えられるぐらいしかねェだろう」
心地よい低音と、心地よい高音の声が辺りに響き渡る。
幼馴染だというクロスガードのアランとラングの言い争いは、日常茶飯事のものになっていた。
その証拠に、他のクロスガードのメンバーはヤレヤレと首を振って苦笑いを浮かべている。
ラングが無茶をして、それをアランが見つけて怒る。いつものことだ。
今回はラングが無断で遠くの方まで修行に出かけてしまったらしく、それを見つけたアランが激怒している、といったところだろうか。
「てめェにはまた、たっぷりと教えてやらないとわからねェみたいだな・・・?」
黒い笑みを浮かべて指を鳴らし始めたアランに、さすがのラングも危険を察知して謝り出す。
「いっ!?ま、待った!分かった!ごめんって!ごめ・・・っ」
「エアハンマー!!」
「ぎゃー!!!」
響き始めた破壊音。上がる悲鳴。
二人の様子を遠くから見ていたダンナが、フッと小さく笑みを浮かべた。
「アイツら、仲良いなぁ」
「仲、良いですかね・・・?」
「アランがあそこまで心配するのは、アイツしかいねぇだろー?」
「あぁ、まぁ、確かに・・・。幼馴染って言ってましたし、やっぱり心配なんですかね」
「・・・それだけじゃ、ねぇと思うけどなぁ・・・」
「え?」
何か見透かしたように笑うダンナの目の前で、二人の喧嘩は壮絶さを増し始めていた。
乱発されるエアハンマーと、それから逃げるラングを見て、ダンナは再び笑う。
傍から見れば、確かに幼馴染同士の喧嘩だ。
でもダンナから見た二人の喧嘩はそれと違い、痴話喧嘩のように見えていた。
相手を大切に思っているからこその、言い争い。すれ違い。
相手を守りたいからこその、無茶無謀。
「エアハンマー!!」
「がふっ!?」
数発目のエアハンマーを見事に食らったラングが、地面にべったりと寝転がった。
相当痛い場所に入ったのか、ぜぇぜぇと荒い息を吐きながらアランを睨み付ける。
「いっ、痛いってのこの馬鹿アランッ!!」
「お前が反省しないのが悪いんだろうが」
「うぐ・・・。だってさー」
「あぁん?言い訳するつもりかァ?」
「いだっ!だってアラン、私がどこにいくでも怒るじゃんか!」
「お前が迷子になるからだろ」
痛いところをつかれ、思わず口を閉ざす。
ラングは昔から方向音痴の気質があるため、目を離せばすぐに居なくなるのだ。
それを心配しての行動を、ラングは分かっていない。
そしてアランもまた、どうしてラングがそんな無茶をするのか、分かっていない。
お互いの付き合いが長いからこそ、理解してあげることの出来ない領域。
気づいているダンナからしてみれば、それはただのイチャつきにしか見えないわけで。
「おい、お前等」
「う?どうしたの、旦那」
「痴話喧嘩なら向こうでやれ向こうで」
「「なっ!?」」
痴話喧嘩と言われ、二人の表情が一瞬にして赤く染まる。
そして同時に、ダンナに対して声を上げた。
「「誰がこんなやつと!!」」
「仲良いなぁほんと」
「「~~~っ!」」
話を聞かずにどこかへ行ってしまったダンナを見て、二人がまた睨み合う。
今にもエアハンマーを飛ばしそうなアランに対し、ラングがどうにかそれを止めようと後ずさった。
「と、とりあえず落ち着こうよアラン。ね?」
「・・・ったく、お前は・・・」
「うわっ!?」
構えを解いたかと思うと、次に頭を押さえつけられる。
ぐしゃぐしゃと撫でまわされたラングは、むくれた表情でアランを睨み上げた。
その瞬間見えた瞳が、ヤケに真剣で。
ラングは何も言うことが出来なくなり、ごくりと喉を鳴らした。
「痴話喧嘩」というワードが、ラングの頭から離れずにぐるぐると巡る。
「・・・心配かけるな」
「ご、ごめんなさい・・・」
「んぁ?なんだァ?やけに素直じゃねぇか」
「い、いや、だって。心配かけさせちゃったら、やっぱり・・・元も子もないかなって・・・」
強くなりたい理由。クロスガードに入った理由。
それはただ一つ。
アランを守りたいから。
なのに、痴話喧嘩というワードを出されるまで、気づけなかった。
心配かけてしまったら、意味がないということに。
急に大人しくなってしまったラングを見て、アランが気持ち悪そうにラングの顔を覗き込む。
「おいおい、頭大丈夫か?」
「なっ・・・失礼な!」
「いや、お前らしくねぇからな・・・」
「うっさいな!私は強くなりたいだけで、別に心配かけたいわけじゃないの!だから今度から気を付ける」
「ったく、最初からそう言ってればいいものを・・・」
アランの呆れ顔を見て浮かぶ、不安という感情。
気づけばラングは、その気持ちを口に出して呟いていた。
「だって、アランを、守りたかったんだもん・・・」
「あぁ?」
「ッ・・・!な、なんでもない!」
「おいこら、ちょっと待ちやがれ」
「うぐっ!?」
恥ずかしい言葉を無意識に呟いてしまったと、逃げるラングをアランが取り押さえる。
首根っこを掴まれて逃げ場を失い、ラングは赤くなりかけた顔をアランに見せないよう背けた。
だが、それでアランから逃げられるわけもなく。
「おい。こっち向けよ」
「う・・・!み、見るなー!」
「今お前、なんつった?」
「・・・・っ」
無言の抵抗。
それを許さない、アランの表情。
先に折れたのはラングで、恥ずかしそうにもう一度言葉を呟いた。
小さく呟かれたその言葉は、小さくも確かにアランの耳に入る。
「アランを、守りたい・・・から」
その言葉に、アランの不機嫌顔が最大を迎えた。
苛立ってる時のその表情に、ラングは思わず悲鳴を上げる。
「あ、いや、その・・・」
「お前が、俺を守る?」
「・・・っ」
「ふざけんじゃねェ。俺はお前なんかに守られたくねぇよ」
「・・・!」
ラングの表情は分かりやすい。
恥ずかしそうな表情をしたと思えば、アランの冷たい言葉に悲しそうな表情を浮かべて。
アランは分かっていた。
そんな素直な彼女の表情に、自分は惹かれているのだと。
ただ仲間だから。ただ幼馴染だから。そんな感情で片付けられるものではないと、分かっていた。
「お前は俺の後ろにいれば良い」
「・・・へっ・・・?」
てっきり足手まといだと言われると思っていたラングは、ニヤリとニヒルな笑みを浮かべるアランを見て、首を傾げた。
「お前が、俺に守られてればいいんだ」
「うー・・・」
「ただでさえお前は危なっかしくてどんくせぇんだ。大人しくしてやがれ」
「なんだってー!?やっぱムカツク!私だってアランのこと守るんだから!」
「俺を守りてェんだったら、俺より強くなりやがれ」
「じゃあ、一人で修行するの許可してよ!」
「それはだめだ」
「なにぃ!?」
ほら、痴話喧嘩だろ?と。
ダンナが苦笑しながら呟いた言葉に、クロスガードの人達が笑みを浮かべた。
いまだに喧嘩を続ける二人を囲う、民衆の笑顔
(その笑顔と同じように、守りたい存在は身近にいるということを、二人はまだ気づかない)
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