いらっしゃいませ!
名前変更所
男は誰しもが変態だという。
そんなこと、この欲望に穢れた世界で生きてきた私には当たり前の言葉だった。
でも実際、その欲望を目の前にしてどう応えるかは別な話。
沖縄から久しぶりに神室町へ来ていた私たちは、急だったこともあり、近場のホテルを取ることが出来なかった。
だったら私のアジトとかセレナでも良いんじゃ?って言ったんだけど、桐生は納得してくれなくて。
「こ、この変態!ばか!離せ!」
「つべこべ言うな。行くぞ」
「今日ぐらい休ませろぉおおおぉお・・・・!」
結局、私はホテル赤レンガに連れ込まれた。
相変わらずなラブホらしくない内装が、投げ捨てられた私を迎える。
ホテルのベッドに放り投げられた私は、渋々持っていた鞄を床に置いた。
来てしまったからにはしかない。今夜の休み場所はここだ。
少々呆れ顔の私を見て、桐生が意地悪い笑みを零す。
ああ、その笑顔。その笑顔に私はいつも勝てない。
「久しぶりだろ、思いっきり声を出せる場所でするのは」
「うっっっっさい!黙れ変態!私はさっさと風呂入って寝るからな!」
「フッ・・・」
持っていた枕を桐生に投げつけ、そのまま服を掴んでお風呂に向かった。
まったく、アイツはいつだってそうだ。
私がこういう雰囲気に弱いと知っていて、こんな事ばっかり話すのだから。
お風呂に向かった私は、ガラス張りのそれに一瞬頬を引き攣らせた。
凄く嫌な予感しかしないけど、入らないことには寝ることも出来ないので入ることにする。
「最近のラブホって、やけに綺麗だよなぁ・・・・」
2年前までは仕事の都合でこういうところに来たこともあったが、最近ではまったくそれが無くなった。
久しぶりに来たそこはラブホとは思えないほど清潔で、乙女心を擽るような作りになっている。
メルヘンチックな内装に、ガラス張りの洋風映画に出てきそうなバスタブ。
バスタブの近くに置いてあった花びら状の入浴剤を手に取り、乱暴に水の中へ投げ入れた。
はらり、はらり。
投げ入れられた入浴剤が、バスタブに綺麗な花を咲かせる。
「(・・・お、結構いい匂い)」
湯船に身を沈めると、入浴剤の良い香りが近くでふわりと香った。
甘ったるい。けれどもしつこくない。
普段は嫌いそうなこの香りも、今の私にとっては癒しになった。
最近のドタバタ騒ぎで身体が疲れていたせいだろう、きっと。
香りに酔わされるように目を閉じた私は、ふと感じた気配にその目をゆっくりと開いた。
「・・・・何見てんだ」
「もう気づいたのか?相変わらずだな、お前は」
「ナチュラルに入ってくんなよおい!」
職業柄のせいか、気配や視線にはすぐ気づく。
案の定、気づいた先には桐生がおり、桐生は私の言葉を無視してお風呂に入ってきた。
たくましい身体つき。
辛うじて湯気で隠れているその身体に、嫌でも顔が朱色に染まっていくのが分かる。
「っ・・・くそ・・・」
「どうした?」
「なんでもねぇよ」
「アイツらと一緒だと、一緒に風呂も入れねぇからな」
「良いよ別に入れなくて。どうせ平和に入らせてくれなくなるんだからさ」
普段はアサガオの子供たちが居るから、無理やりなことは桐生もしてこない。
すれば私が暴れて、子供たちに気づかれてしまうからだ。
でもここには、私を守ってくれる“子供達”という武器が居ない。
ただでさえ普通の男よりもがっつくタイプだっていうのに、こんな奴とお風呂に入って大丈夫なわけねぇだろ。
嫌な予感が的中したとばかりに逃げようとする私を、桐生が無理矢理抱きしめて湯船へと引きずり込む。
「わぁああぁちょっと離せええぇえええ!」
「お、おい、待て、あまり暴れると・・・!」
ずるり。
そんな効果音が聞こえてきそうなほど、綺麗な音が聞こえて桐生が消えた。
私は後ろに崩れかけた体勢を何とか元に戻し、消えた声の主を探す。
「あれ、桐生?どこいった?」
「・・・て、てめ・・ぇ・・・・」
「あ・・・あー・・・だ、だいじょ・・・うぶ?」
半笑いで手を差し伸べた先に居たのは、恐ろしい形相を浮かべた桐生だった。
どうやら私が暴れたせいで、バランスを崩して滑ったらしい。
ギロリと鋭い瞳を向けられ、私は思わずその場から逃げ出そうとした。
が、しかし。足は桐生に掴まれたままだったらしく。
気づかないで走り出そうとした私は、そのまま桐生と同じ結末を歩むこととなった。
べちり。
鈍い音と鋭い音が同時に聞こえ、恥ずかしさで顔を上げる事すら出来なくなる。
「て、てめ、人を巻き添えに・・・っ!」
「お前が最初にしたんだろ」
「私のせいにすんな!お前が無理やり私を引きずり込もうとするから・・・!」
悪いんだろ、と。
最後まで言葉は放たれることなく、桐生の唇の中に吸い込まれていった。
激しい、激しい、口付け。
お互い風呂場に座ったまま、私の唇を貪るようにして口付けを交わす。
侵入してくる舌を押しのけようとしても、それは絡める行為になって逆に私を追い詰めた。
勝手に身体が震え、抵抗という術を無くしていく。
すっかりキスに酔わされた私を見て、桐生は熱い息を吐いた。
「可愛いな、お前は」
「や、やめ・・・!やめろっ」
「大人しくしてろ。じゃねぇと・・・」
「ひゃ!」
足をゆっくりと撫でられ、思わず声が上がる。
その隙をついて私の腕を押さえた桐生は、器用にタオルで私の腕を縛った。
腕という自由が奪われた事に気づき、私は更に暴れようとする。
でもこうなったら、もう私に勝ち目なんてものはない。
「へん・・・たい」
絞り出した声は桐生を煽るだけ。
分かっていても止められない。ただやられるのは気に食わないから。
「変態!」
「俺はお前の色んな姿が見たいんだ・・・変態だってなんだって良い」
「おいこらもっともらしいこと言いやがってやってることはへ・・・ん、ぁ、や・・・っ」
「なんだって?」
「んっ、んん、あぁ・・・、んう」
快感で止められる声。
逆に漏れ出す、甘い女性としての声。
私はその声を何とか抑え込みながら、桐生が与える快感に耐えた。
桐生の手が私の胸を撫で、赤く色づき始めた突起を刺激し、時に痛いほど摘まみ上げる。
その全ての行為に身体が反応してしまう以上、私はすっかり桐生に染められてしまったのだろう。
だって桐生は私の初めての人。
最初も、最後も、彼だけしか私の身体にこんなことを教えていない。
「は・・・っ、はず、かしい・・・から、ここじゃ・・・っ」
「あけ」
「ん・・・?」
「お前を見たい。乱れるお前を、しっかりと・・・な」
「や、お願い・・・明るいのは、いや、だ・・・ひゃぁ、ん、んんん!」
ベッドの上、薄明りの下。
それが行為においての当たり前の環境となっていた私にとって、この場所は地獄だった。
明るい場所。電気の下。
声も響く場所だし、私にとっての逃げ場が一切ない場所がここだ。
しばらく逃げようともがいていたが、桐生の力が抜けないことを感じて諦める。
「馬鹿力・・・っ」
「黙ってろ」
「ん、・・・・」
壊されると思うぐらい、私の身体が熱を帯びていった。
やめて、とは言えない快楽。逆らえない力。
桐生の熱を帯びた強い瞳が、私を支配して壊していく。
「ッ、ん・・・」
手が縛られているため、唇を噛むことでしか声を止めることが出来ない。
微かに漏れてしまう声が風呂場に響くたび、私は顔を真っ赤にして左右に振った。
恥ずかしすぎて、自然と涙が零れ落ちる。
その涙を、桐生の舌が優しく舐めとった。
「ぁ・・・」
「こっちを向いてくれないか?あけ」
「うっ・・・さい」
「あけ」
「・・・っ」
桐生を求めて顔を上げる。
それに納得した桐生が笑みを浮かべ、もう一度私にキスを降らせた。
その瞬間、油断していた私の秘部に指が突き立てられる。
いきなりの衝撃と快楽に身が跳ね、大きな声が漏れた。
怒りたくても怒れないぐらい、桐生の指は私を逃がすまいと攻め立て続ける。
「あぁ、ん、ひ、ぅ!」
「そんな余裕のない顔するんじゃねぇ・・・俺も、抑えが利かなくなるぞ」
「お前、が、いきな・・・り、するからぁ・・・・」
「いい格好だ」
「っ、へん、たい・・・!腕解け、この・・・っ、ん、あぁ!」
壊れそう。
身体が、熱い。
桐生の腕が私を撫でるたび、身体がじんわりと犯されていくのを感じる。
ぐらぐらと視界が揺れた。
いつも通りそのまま桐生が私と繋がろうとそれを近づけ―――手を止める。
「ん・・・う?」
「・・・・」
え、なに、何があった?
焦らされるというのはあったけど、こんな変な形で止められるということは今まで無かったこと。
気になって顔を上げてみれば、そこには何やら考え込んだ表情を浮かべる桐生の姿があった。
どうしたんだ?と首を傾げて聞いた私に対し、衝撃的な言葉を突きつける。
「なぁ、あけ」
「ん?」
「・・・してくれねぇか?」
「あ?何を?」
「・・・・」
桐生の目が、私から桐生のソレに移った。
経験の無い私とはいえ、それがイコールで知識がないを示すわけじゃない。
経験は無くても知識はある。
桐生の熱を帯びたそれと、そこに私を手招く桐生の手。
それが何を示すのか、私は数秒後に理解した。
「ッ!!!!」
理解した瞬間、思わず固まる。
桐生が上機嫌で私の腕を解いているが、私はそんなことを許した覚えはない。
つまり、あれだろ?
“ご奉仕”しろって、ことだろ?
桐生のソレを口で、ご奉仕、する。
いや、あの、知識ではあるけど、さ。
「・・・・っ」
「嫌、か?」
「あ、いや、そうじゃ、ないけど・・・・」
「無理はしなくていいんだ。俺のワガママなだけだからな」
「・・・や、でも、その・・・・」
いっつも私は、桐生に快楽を与えられているだけ。
それが例え望んでいない時であっても、桐生がしてくれていることには変わりない。
つまり、私からしたことは一度も無いということ。
それがどこか私の背中を押し、私は解かれて自由になった腕を桐生のそれに伸ばした。
「・・・」
「あけ?」
「・・・する」
「・・・無理するんじゃねぇ。震えてるぞ」
「うっさいな!するったらするっての!」
震えていることを指摘され、否定するために大きな声を上げる。
うるさい。本当にうるさい。人の覚悟を無駄にするつもりかコイツ。
心の中で散々罵倒したわりには、その行為に対する恐怖は尋常なものではなかった。
「っ・・・・」
普通の男よりもたくましいであろう、ソレ。
生々しい感覚に、私の喉がゴクリと音を立てる。
でももう、引き返せない。
私はそっとソレに口付けを落とし、そのままそれを口に含んだ。
私の頭に添えられていた桐生の手が、それに合わせてぴくりと反応する。
「ん・・・、んぐ」
苦しい。しょっぱい。苦い。
感想と言う感想を心の中で述べ、行為自体は静かに進めていく。
顎が外れそうなほど苦しくて、その行為を進めること自体大変だった。
だけど、喜んで欲しい。桐生にも気持ち良くなって貰いたい。
恥ずかしさの裏側に隠れていた、小さな乙女心というものが私を必死に動かした。
「ふ、ぅ」
「大丈夫か?あけ」
「ん、んうひゃ、い」
「っ・・・良い、から、喋るな・・・」
もしかして、感じてる?
余裕のない声を漏らした桐生に、少なからず私も心が揺れた。
もっと、もっと。
苦いけど、これが彼の味。
もっと欲しい。
もっと感じてほしい。
もっと、もっと。
なぁ、桐生。
その瞳で私だけを、見て。
「んん、ぅ・・・ふぁ」
「あけ・・・もう、もういい」
「ん、はっ」
「あけ・・・っ!やめろ、これ以上したらっ・・・・」
余裕のない表情が、ここまで私を酔わせるとは思わなかった。
普段余裕しかない彼が見せる、余裕のない表情。
これほどまでに最高の媚薬となるものは、他に一つも存在しないだろう。
だから私は彼の言葉を無視した。
「むぐ、ん、ふっ」
「・・・・くっ」
桐生の苦しそうな声。
それに煽られたまま、私は彼のソレを甘噛みした。
同時に口の中に放たれる、初めて味わう苦い味。
いわゆる男の味というやつなのだろうか。
しばらく飲むことも出来ずにそれを口に含んだ私を、桐生が少し慌てた様子で止めた。
「す、すまん、出すつもりは・・・!」
「ん・・・・」
「苦いだろ?悪かった・・・とりあえずいったん出せ」
「・・・んな慌てるなよな」
「・・・・!」
桐生の優しさが気恥ずかしくて、私は普通にそれを飲み込んだ。
吐き出す方が恥ずかしい。
いや、どっちも恥ずかしいけど。
「お前・・・飲んだ・・・のか・・・・?」
驚いた表情を変えない桐生に、顔を背けながら答える。
「う、うっさいな。別にお前のだし嫌じゃないからやったんだ。これぐらい・・・・」
再び私の視界が天井に変わるまで、そう時間は掛からなかった。
気づけば押し倒され、桐生に覆いかぶさられている。
冷たい背中。
響く甘い声。
それとは真逆の熱さを帯びる、桐生の手。
向けられた瞳が、私の心を大きく揺らす。
「お前は本当・・・俺を煽るのが上手いな」
「煽ったわけじゃ・・・なくて・・・!」
「思いっきり啼かせてやる。覚悟しろ」
「ま、まて、お前今出したばっかりじゃ・・・っ!」
すっかり目が据わってしまった桐生を、私が止められるわけもなく。
私はそのまま、桐生に思う存分啼かされることになった。
ああ、やっぱり。
やっぱり私は、こいつには勝てない。
いつだって私はこいつに、酔わされているのだから。
自然と私を壊していく彼と、彼を気づく事無く煽る私。
(次の日声が出せなくなった私は、秋山にニヤニヤと笑われる羽目になった)
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