Erdbeere ~苺~ 追いかけっこ 忍者ブログ
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2012年06月23日 (Sat)
桐生さん/切甘/ギャグ/ヒロイン視点
見参軸のお話

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私には幼馴染が居た。
剣術が上手くて、誰よりも正義感が強い、お人よしな剣士。

私はずっと、彼を傍で支えてきた。
自ら女という立場を壊し、剣に近づくことによって彼を理解した。

周りの人からは乱暴者だとか、男女だとか馬鹿にされたけど。

それでも良かった。


あの日が、来るまでは。


関ヶ原の戦い。
その戦いへの誘いを受けた彼は、私の前から姿を消した。

道場の門下生をすらも、放置して。

そしてそのすぐ数か月後、私は彼が賞金首となったことを知った。
何故彼が?でもそれ以前に、彼を守りたいという気持ちが上回った。

だから私は、彼を追いかけた。
追いかけて追いかけて、やっと追いついた。

この、祇園に。


「はぁっ・・・・はぁっ・・・・」
「待ってくださいよー!」
「うっせぇな・・・!」


やっと祇園に追いついて、約1年。
この町で生きていくために剣を捨てた私は、遊女となって生きていた。

もちろん、これも全て彼の傍に居るため。

どうせこんな想いなど届かない。
分かっててもしてしまう、自己満足なだけの馬鹿な忠誠。

どのぐらい馬鹿な忠誠かって?

1年未満で、天神にまで上り詰めるぐらい、かな。


あけ天神ー!逃げ出したら駄目ですって!」
「うっさいな!ちゃんと働いてるんだから問題ねぇだろ!?」


でもやっぱり私には、遊女としてのお淑やかな性格は割に合わなかった。
すぐにこうやって店を抜け出し、遊びに出てしまう。

だけど、今日は特別な日。
きちんと女将さんに、今日1日のお休みもいただいた。


あけ天神ー!」
「だー・・・しつけぇ・・・・」


もちろん、抜け出すことは内緒だけど。
こうやって見つからなきゃ、上手く抜け道から抜け出せたはずなのに。

今日。今日だけは。罪でも祇園の外に出させて。


「おりゃっ!」


何とか追っ手を一時的に撒いた私は、龍屋に飛び込むようにして身を隠した。
龍屋の持ち主である桐生が、不機嫌そうにこちらを見つめている。


「お前・・・また抜け出してんのか」
「わ、ちょ、たんまたんま!今日だけは本当に見逃してっ!」
「あぁ?んなことできるわけ・・・」
あけ天神ー!?」
「やば!な、頼む!匿ってくれ!今日だけは本当に用事があるんだ!」


私が逃げ出した時、いつも捕まえに来るのは桐生だった。
だからある意味、私は桐生に会うために店を抜け出す。

久しぶりに聞けた桐生の声に、自然と心が揺れるのを感じた。


「・・・」
「・・・え?」


匿ってくれと頼みこむ私の前に出された、大きな手。
彼の言わんとしていることが分かったような気がして、大きく首を振る。


「か、金持ってきてねぇんだ・・・・」
「じゃあしょうがねぇなぁ・・・・金の絡まない話に俺は手伝う気はねぇからな」
「それが幼馴染に言うセリフか!?」
「わりぃな。幼馴染だろうと何だろうと、俺のやり方がこれなんだ」
「うぐ・・・・」


お金、持って来ればよかった。
そう後悔しても、もう遅く。

段々と近づいてくる追っ手の声に、私はわたわたと周囲を見回した。
今逃げて逃げ切れるか?いや、もう声の近さ的に無理だろう。

やっぱり、頼めるのはもうここしかない。


「おおおおおねがい!お金なら後で渡すって!な!?」
「どうするかなぁ・・・・」
「おおおおい・・・・!?」
「フッ・・・・じゃあ、こういうのはどうだ?」


グイッと腕を引かれ、急に桐生の顔が近づいた。
出しかけた悲鳴を何とか飲み込み、私は目を閉じる。


「おいおい・・・意外と可愛い反応するじゃねぇか」
「ッ・・・ん、だと・・・!?」
「お前が一晩、代金なしで俺に貸されるっていうなら考えても良いぜ」
「なっ・・・!?」
「幼馴染のお前といえど、天神は天神だ。美味しい思い、させてくれるだろ?」


幼馴染とはいえ、私の片思いの人。
だからこそ、遊びの関係にはなりたくなかった。

そんな私の目の前に出された、桐生の条件。
一晩貸される?一晩が何を意味するかぐらい、私にだって分かる。

でも、どうしても今日は外に出なくちゃいけない。

桐生の、宮本武蔵の、誕生日なんだ。

今日の日のために、私は祇園の外にある運び屋に故郷で作られた服を頼んだ。
それを取りに行かなきゃ、私は。


「・・・・わ、分かった」
「・・・・そこまでして、行きたいところがあるのか?」
「あぁ。だから・・・頼む・・・」
「ったく・・・・・そこに隠れてろ」
「ほんと!?さんきゅー!」


指定された棚の陰に隠れ、追手が居なくなるまでやり過ごす。
私は隠れた棚の近くで作州の剣を見つけ、静かに手に取った。

剣を捨てた今でも、故郷の事は忘れられないんだろう。
桐生にばれる前に剣を戻し、追手が居なくなったことを確認して棚から顔を出した。


「お・・・行ったみたい?」
「あぁ、みたいだな」


助かった、って思えたのも束の間。
桐生がニヤッと妖しい笑みを浮かべるのを見て、勢いよく後ずさった。


「あ、いや、武蔵・・・・?」
「その名前で呼ぶな」
「あ、わるい・・・桐生、あのな、えっと、どうしても今日は・・・」
「代金、貰ってねぇぜ?」
「いや、あの・・・」


抱かれたくない。
抱かれてしまったら、きっと私は壊れてしまう。

偽りの恋のままで、終わるのは嫌だ。
身体だけの関係なんて、もっと。

そんなことになるぐらいなら、私は砕ける事覚悟でこの気持ちを伝える。


「ごめ、ん、ほんと、ほんとに今日は大事な用事があるんだ・・・」
「・・・・そうか」
「じゃあ、尚更行かせるわけにはいかねぇな」
「へっ・・・・うわ!?」


突如、押し倒された。
目の前に映る桐生の目が、いつもと違う光を放っている。

え、なに?私、何か怒らせちゃったとか?


「お前、誰に会いに行くつもりなんだ?」
「え・・・・?」
「誰かに会いに行くんだろ?めんどくさがり屋のお前が、大事な用って言うぐらいなんだからな」
「ち、ちが・・・」
「言えよ、あけ。俺に隠し事なんて無駄だって言っただろ?」


それは、幼馴染としての顔。

語りかけてくる声も、言い方も。
全て幼馴染の私に対して放たれていた。

子供のころから、私はこいつに勝てなかったんだっけ。
何をしても勝てなくて、だからこいつに嘘は通用しなかった。

きっと今も、それは変わらない。

私は観念したとばかりに両手を上げると、今日の目的を話すことにした。


「今日、作州から服が届くんだ」
「・・・作州?」
「お前の仕事用の服・・・いつも同じだし、気分転換になるかなって」
「・・・・お前・・・」
「今日、誕生日だろ?桐生」


私の言葉に、桐生の表情が気まずそうな色に変わっていく。
そして私の身体から腕を離し、大きな背中を私に向けた。

描かれている龍。
桐生は、武蔵は、昔から龍が好きだった。
私はそれを知っていて、今回の服に龍を刺繍してもらったいた。


「・・・・わるい」
「ぷっ・・・!」
「あ?」
「桐生がそうやって素直に謝るの、は、初め、てっ・・・ぷっ・・・・!」
「お前なぁ・・・・!」


ふてくされ顔で謝る桐生を、私は笑いながらからかう。

昔からこういう関係が私たちの関係だった。
お互いに馬鹿にして、男女という壁もなく喧嘩を起こす。

向けられた桐生の背中を指でなぞり、囁くように甘い声を出した。
それは接客の時に使う、普段の私とは全く違う声。


「もしかして、嫉妬してくれてたのぉ・・・?き、りゅ、う、く、ん!」


叶わない恋。
追い続けた、恋。

微かな望みを冗談として吐き出した私は、振り返った桐生の表情を見て笑うのを止めた。

また、さっきと同じ表情。
目の輝きが、いつもと違う。完全に男としての光を宿して私を見ている。


「き・・・りゅう・・・?」
「お前は・・・どうして、俺に着いて来たんだ・・・」
「え?」
「昔からそうだ。俺に何も言わず、俺の後をついて来て・・・」
「あ・・・・」


もしかして、迷惑だった?
なんて、笑顔で聴くことは出来ない。

さすがの私でも、それを聞くことは出来なかった。
ただただ無言を貫き、桐生から視線を逸らす。

そんな私を見た桐生は私に近づくと、私の顎を持ってグイッと無理やり上を向かせた。


「どうして俺に言わない?」
「え、だ、だって、迷惑・・・かけ、るだろうが・・・」
「俺がいつ迷惑だって言った」
「・・・で、も・・・」
「チッ・・・お前が勝手に遊女なんかになるから、めんどくさい事になったんだろうが」
「え・・・」


驚くと同時に感じた、唇への温かい感触。
それがキスだと分かったころには、既に桐生の唇は離れていた。

ぽかんとする私を尻目に、桐生は言葉を続けていく。


「そうやって、他の男にも触らせてるのか?」
「んなわけねぇ、だろ・・・」
「その割には隙がありすぎじゃねぇか?俺に着いてくるために剣を学んでたお前が・・・こうやって、誰にでも身体を触らせてるのか?・・・・気に食わねェ、な」


どういう、こと?
それってまるで、あれだよ。

嫉妬してるみたいに聞こえるよ、桐生。


「桐生、わたし、は・・・・」
「俺以外のやつに、何人抱かれた?」
「なっ・・・・」
「俺以外のやつに、何人こういうことされたんだ?言ってみろよ」
「・・・・さ、された、こと、ないっ・・・・」
「・・・・本当か?」
「本当、だ!私は、私は・・・」


噛み付くように、首筋に歯を立てられた。
チクリとした痛み。そして咲き誇った赤い花。

遊女としては、決して付けてはいけない痕。

でも今の私にとって、その痕は最高のものだった。
桐生の独占欲の証を付けて貰えたんだ。それだけで。


「好き」


もう、嘘は吐けない。


「私は、武蔵が好き。だから、私はお前のためにここまでなった。だから、本当に誰にもそういうこと、させてねぇんだ・・・・」


我慢なんて、出来ない。


「好き・・・、武蔵が、ずっと、前から」


呟くように本音を零した私を、桐生が強く抱きしめてくる。


「桐生・・・」
「お前、明日店を止めろ」
「え・・・・?で、でも、そんな急にやめれるわけ・・・」
「金だろ?それならここにある」
「・・・へっ?」
「決めた。俺はお前を身請けする。明日にはやめろ」
「へ、な、なんで、どこで、そんなお金・・・!」


私は一応、これでも天神だ。
太夫の1個下。それなりに身請け金額もかかる。

それなのに、なんでそんなお金が。
目を見開いて驚く私に対し、桐生は余裕の笑みを浮かべた。


「ずっと前から、俺はお前を・・・・自分の物にしたかった」
「え、じゃあ、これ・・・前から、用意してて・・・?」
「桐生となってからは諦めるつもりだった・・・でも、お前が悪いんだぜ。お前が俺についてくるから」
「っ・・・」
「これからはずっと俺の傍に居ろ。俺の、女として」
「・・・・!」
「ついてくるんじゃなくて、俺の隣を歩け」


追いかけっこしていた恋愛が、叶った瞬間。
私は初めて、彼の前で涙を零した。

動揺する彼なんか気にせず、我慢出来なくなったものを全て吐き出す。


「ふっ・・・うう・・・・」
「な、なんで、泣く・・・!?」
「だって、絶対に、お前は・・・私なんか、好きじゃ、ないってぇ・・・・」
「わ、分かった、分かったから泣くな。調子狂うだろうが・・・!」
「うううう・・・・」
「泣くなって言ってるだろ!泣きやまねぇと・・・黙らせるぞ」
「んっ!?ん・・・んんんんっ!!」





























追いかけっこの恋愛。追いついた気持ち。
(でもきっと、これからも、この関係は変わらない)
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