いらっしゃいませ!
名前変更所
アイツに完全征服されるまでの、5日間。
くっそ・・・これが、惚れた弱みってやつか?
1.強気な奴ほど落とし甲斐があっていい
子供たちが修学旅行や宿泊学習で居ない、静かなアサガオの中。
そこに響く、私たちの喧嘩の声。
「子供たちが居ないからってがっつくな!」
「だからって殴ることねぇだろ・・・」
「うるさいっ!」
原因は、真昼間から桐生が襲ってこようとしたから。
あまりにもしつこかったから、殴ってやったのだ。
これから5日間、子供たちが居ない生活が続く。
それなのに最初からこんなんじゃ、身がもたねぇだろ。
どうしてもシたいと抱き着いてくる桐生を、もう一度拳で黙らせる。
「お前なぁ・・・?子供たちは5日間居ないんだぞ?慌てることねぇだろ!」
「そう言って、どうせまた夜も逃げるだろうが」
「・・・手加減しないのが悪い」
桐生に求められるのは嫌じゃない。
むしろ、嬉しいことだ。
問題なのは、その求め方。
一度それに応じると、桐生は本気で手加減せずに抱いてくる。
もちろん次の日に動けなくなるのは、言うまでもない事で。
「良いだろ、別に」
「良くねぇ!身体が壊れるっての!」
「あんなによがってるくせにか?」
「よ、よがってるとか、言うな!」
「本当のことだろ?」
「あぁああぁあもう!」
嫌じゃないけど、恥ずかしい。
その気持ちが読まれているのか、桐生は意地悪く笑みを浮かべた。
ああ、そうだよ。嫌じゃない。求められたい。
でも求められ続けたら、身体が壊れてしまう。
しかも子供たちが居ないこの状況・・・何を要求されるかも分からない。
私は早めにこの変態を抑えるため、触ってくる手を無理やり掴んだ。
そのままにっこりと笑い、宣戦布告をする。
「この5日間は、私が求めるまでそういうことするの禁止な」
私の挑発的な言葉に、桐生は大きく目を見開いた。
私から“そういうこと”を求めたことは無い。
つまり、5日間は必然的にお預けとなる。
「よし、分かったな」
「・・・・お前から、求めさせればいいんだな?」
「我慢するって選択肢はねぇのかよ・・・」
「ないな」
「ま、諦めろ。私からそういうことを要求したことはねぇだろ?」
ようは、私から求めなければ良いだけ。簡単なこと。
これなら勝てる。
そう思った私の考えを、一瞬で粉砕させる言葉を桐生は放った。
「良いぜ?後悔させてやるよ。強気な奴ほど落とし甲斐があっていい」
・・・どうしてだろうな。
平和なはずの5日間が、恐怖でしか感じられなくなってきた私が居た。
2.随分失礼なこと言ってくれるじゃねぇか
子供たちが居なくなって2日目。
結局昨日の夜は何とか逃げ切って、桐生に襲われることは無かった。
問題はこれから。
私が動揺していたら、間違いなくアイツのパターンに呑まれてしまう。
「桐生ー」
「ん?」
「お茶、飲まないのか?そろそろ疲れただろ」
朝から薪割りをしていた桐生に、冷たい麦茶を差し出した。
カタギになったとはいえ、身体の筋肉は当時のまま。
多少刺激が強すぎる身体から、サッと視線を逸らす。
それを見た桐生は、どこか楽しそうに私の腕を掴んで抱き寄せた。
直接伝わる温もりが、生々しくて恥ずかしくなる。
「あ、ちょ、こら・・・!?」
「そういうこと、じゃなかったら良いんだろ?なら・・・これは別にルール違反じゃねぇ」
「・・・・ったく」
カタギの生活が長くなってから、桐生は少し変わった。
お茶目になったし、子供たちとの冗談にも付き合えるようになったし。
何しろ、こうやって直球で求めるようになってきた。
前からもがっついてくるタイプだとは思ってたけど、ここまでなんて。
嫌じゃないけど、恥ずかしい。それが女心。
「あーもう、離せっての」
「その割には、まったく抵抗しないな」
「・・・・うっさい」
変わらない大きな手。変わらない大きな身体。
腰に回された桐生の手を、ゆっくりと自らの手に絡める。
恥ずかしいということを除けば、私はこの温もりが大好きだ。
いつまでも触れていたい。そう思う。
「・・・・」
「あけ」
「・・・ん」
名前を呼ばれ、私は返事代わりに振り返った。
振り返ると同時に降ってくる、熱くて濃厚な口付け。
絡み合う、舌。
逃げられなくなりそうなほど、桐生は私をしつこく求めた。
苦しい。でも、逃げられない。
「ん、ふっ・・・」
「どうした?・・・その気にでも、なったか?」
クラクラと、急に入ってきた酸素に視界が揺れた。
桐生の色っぽい瞳が、何となく私をそんな気持ちにさせる。
だけどそれは、桐生の誘惑。
私が宣戦布告した以上、私から負けるわけにはいかねぇ。
まぁでもせっかくだし、この機会に桐生をからかうのもありかもしれない。
そう心の中で笑い、誘惑に負けたかのように腕を絡める。
「フッ・・・どうした?あけ」
「桐生・・・」
「昨日の強気はどこいったんだ?随分、あっけなかったな」
「だって・・・桐生・・・・」
誘うように、乱れたように。
うっとりとした瞳で、桐生を見つめる。
絡めた腕を桐生の腰に回し、そのまま顔を近づけた。
キスするフリをして唇を通り過ぎ、桐生の耳元で囁く。
「お前もま「負けるわけねぇだろ・・・このおっさん」
その言葉を放った瞬間、私は勢いよく桐生から離れた。
桐生はヒクヒクと顔を引き攣らせながら、私を睨み付ける。
「・・・随分と失礼なこと言ってくれるじゃねぇか」
やべ、予想以上に怒ってる気がするぞこれ。
桐生の意外な地雷を踏んだ私は、慌ててそこから逃げ出した。
桐生におっさんは禁句。覚えておこう。うん。
3.あまり男を舐めない方がいいぜ?
二人きりの生活になって、3日目。
段々と生活に慣れてきた私は、昔のように乱雑な生活に戻りつつあった。
適当な時間にお風呂に入り、適当な時間にご飯を食べる。
昔では当たり前だった生活だけど、最近ではまったくしなくなった。
でもやっぱ、たまにはダラダラな生活も良い。
「ふぃー」
真夜中にシャワーを浴び、沖縄の生温い風を浴びる。
神室町とは違う風。夜の星空。その全てが私を癒した。
この星空を見ながら、お酒を一杯飲むのも良いかもしれない。
そう思った私は台所に移動し、冷蔵庫に入れておいたチューハイを取り出した。
「ほんっと久しぶりだなー。つまみつまみっと・・・・」
子供たちの前ではあまり出来ない、真夜中の晩酌。
つまみとなるお菓子を取り出した私は、鼻歌を歌いながら縁側へと移動した。
沖縄特有の建物の造りが見せる、大自然の輝き。
幾多の星を見上げ、首が疲れた所でチューハイを開ける。
プシュッと良い音が響き、自然と口元が緩んだ。
「久しぶりだな~。んー!うまい!」
「お前なぁ・・・・」
「あ、桐生。起きたのか?」
寝てた桐生を起こさないように出てきたはずだったんだけど。
いつの間にか真後ろに居た桐生を見て、私は緩んだ顔で笑った。
「あ、私のチューハイ!」
「お酒弱ぇくせに何本も持ってくるんじゃねぇ」
「そんなこと言って、飲みたいだけだろー?」
「・・・まぁな。久しぶりだしな、こういうのも」
乾杯の意味でチューハイの缶を傾ける。
カンッと鈍く慣らされた乾杯の音に、再び表情を緩ませた。
お菓子も美味いし、お酒も美味しい。
しかも桐生との晩酌だ。
のんびりとお酒に呑まれていた私を、少し不機嫌そうな桐生の声が起こす。
「お前・・・家とはいえ、ちゃんと服は着ろ」
「あぁ?うー、良いだろ別に。暑いんだよ」
暑いのが苦手な私は、バスタオルを巻いただけの軽い姿でお酒を飲んでいた。
だって風呂上りだぞ?沖縄だぞ?暑すぎて耐えられねぇよ。
不機嫌そうな桐生を無視し、火照った体を冷やそうとする。
「あーぢー」
「分かってねぇな・・・お前は」
下着は着けてるんだ。別に困ることは何も無い。
そう言い返そうとした瞬間、私の視界がぐるりと回った。
目の前にあった星が消え、桐生の怒った表情に変わる。
腕をがっちりと捕まえられれば、もう私に逃げる手段は無い。
「な、なんだよ・・・?」
「そういう恰好してる意味、分かってんのか?」
「だってお前、今私のこと襲えないだろ?」
「・・・・」
私が勝手に取り付けた約束だが、相手もその挑発に乗ったんだ。
負けず嫌いな桐生が今更、手を変えて襲ってくるとは思えない。
だが桐生は、いつまで経っても私を放そうとしなかった。
しかも、放すどころか更に力を込めて私を逃げられなくする。
そして唇を近づけると、私の首筋をねっとりと舐め上げた。
「ひゃっ!?お、おま、えっ・・・!?」
「手を出さなきゃ、良いんだろ?つまりその手前までは・・・許されるわけだ」
「ま、ま・・・!?んぁっ!」
チクリと走る痛み。付けられた赤い独占欲の証。
痛みと快楽に震える私を、容赦ない感覚が襲う。
耳を舐め上げられ、低い声で名前を囁かれて。
自然と腰が浮くのを我慢できず、逃げようと身を捩った。
だ、駄目だ。
このままじゃ、駄目だ。
「あ、ぁ・・・っ。だ、め、やめ、ろっ・・・・」
「言えよ。・・・・俺が欲しくてしょうがないってな」
「く、そ・・・・。そんなこと、絶対、ねぇ・・・!」
「だってそうだろ?あんな誘惑的な恰好で居たんだ」
「だから、それ、は・・・!」
「あまり男を舐めない方がいいぜ?」
桐生の挑発的な言葉に、とりあえず降参するまであと数秒。
私は必死になって桐生の腕から逃げ出し、無事ではないが、何とか3日目を終えた。
4.強がっても力では敵わないくせにな
「はぁっ!」
足を振り上げ、何もない場所に勢い良く振り下ろす。
これは私の日課である筋トレ・・・いわば、修行だ。
私は桐生と違い、運動神経が良いわけじゃ無い。
喧嘩の才能があるわけでもないため、こうやって欠かさず修行をしていないと、身体が鈍ってしまうのである。
今更何のために、って思うだろ?
案外必要だったりするんだよ、こういう腕は。
「はっ・・・!やぁ!」
一度手に入れた技を、鈍らせてしまうのは簡単だ。
でもそれを元に戻すのは、才能と時間が居る。
桐生みたいな化け物とは違うからな。
琉球街のチンピラに絡まれた時、対処できないとめんどくさいし。
「はー・・・よっと!」
沖縄の日差しが、私の体力を消耗させていく。
私はもう一度足を振り上げ、そのまま空気に回し蹴りを食らわせた。
回し蹴り、からの、勢いを利用した膝蹴り。
ヒュッと風を切る音が心地よく、ついつい修行に夢中になってしまう。
静かな波の音。
私が動く音。
こんなに心が落ち着く修行も珍しい。
「おい、あけ」
「ほうわっ!?」
「おっと・・・」
修行に夢中になっていた私は、背後から掛けられた声に驚き、反射的に拳を上げた。
桐生はそんな私に驚く事無く、振り上げられた拳を受け止める。
「相変わらず反射神経良いな、お前」
「お前の事だ。予想はしてた」
「んだよそれ・・・まぁ、集中してたら気づかねぇからな。わりぃ」
「それにしてもお前・・・またやってるのか?」
昨日の夜のように、不機嫌顔になる桐生。
ああ、そうだった。
こいつは私がこうやって修行してるのが嫌いだったんだ。
桐生は私を戦わせたくないらしいからな。
でも私には私で、ただ守られるのは嫌だという気持ちがある。
「お前なぁ・・・もうやめろって言っただろ?」
「良いじゃねぇか。備えぐらいは」
「ったく・・・・」
私はこれから先も、皆を守っていきたい。
桐生のことだ。必ずまた、何かに巻き込まれる可能性がある。
だから私は、力を手放さないことを選んだ。
不機嫌そうな桐生に寄り掛かり、持っていた煙草を差し出す。
「機嫌治せって、な?もう今日はやめるか・・・おわっ!」
桐生に差し出した手を、勢い良く引っ張られた。
その勢いに逆らえなかった私は、桐生の腕の中に吸い込まれる。
見上げると映る、悲しそうな桐生の表情。
静かに桐生の服を掴み、抗議の意味も含めて桐生の胸に顔を埋めた。
「んな顔するなよ・・・」
「お前がさせてるんだろ。強がるなって何度言わせんだ」
「強がってねぇって」
「じゃあ少しは、女らしく俺に守られてろ」
「・・・・嫌だ」
「それが強がりだって言ってんだ」
「でもそれは「黙ってろ」
ぴしゃりと言い放たれた言葉に、私は思わず口を閉じる。
「お前はいつだってそうだ。体調が悪くたって隠す・・・そうだろ?」
「そ、それは・・・」
「うるせえ!うだうだ言うな!」
「!?」
あ、やばい。これはやばい。
完全に怒らせたと感じた私は、咄嗟に逃げようとして桐生の足を踏んだ。
もちろん、それで逃げられるわけもなく。
「おっと・・・逃げられると思うなよ」
「だっ!ちょ、こら!」
「フッ・・・」
桐生はうだうだしたことが嫌いだ。
完全に吹っ切れた桐生から、何とか逃げようと必死に暴れる。
「ぬぉおおおぉお!」
「どうした?抜け出してみろ」
「はぁ・・・はぁ・・・この、馬鹿力・・・!」
分かってるよ、桐生が言いたいことは。
だけど、私のタチに合わないしさ。
いや、そうじゃない。桐生の前だからこそ強がってしまうんだ。
桐生の前では弱みを見せたくない。
普段の私で居たい。
そんな気持ちさえも、きっと桐生は気づいているんだろう。
だから怒ってるんだ。有無を言わせずに。
抵抗することに疲れた私は、ギブアップの意味で両手を上げる。
「・・・もう終わりか?」
「無理無理。ほんっと無理。馬鹿力過ぎんだろお前・・・・」
かなり暴れたのにビクともしなかった。
疲れ果てた私を後ろから抱きしめ、耳をねっとりと舐める。
え、いや、ちょ、ちょっと待て。
今ここをどこだと思ってるんだこいつ!
「まままま、待った!」
「待って欲しければ逃げれば良いだろ?」
「お前の力からじゃ逃げられねぇよ!」
「じゃあしょうがねぇなぁ・・・逃げられるまでずっとこのままだ」
「なっ・・・!?」
力を求める私に対し、力で押さえつけてくる桐生の行為。
どうやら桐生は、頼ろうとしない私に痺れを切らしたらしい。
身体で教え込むって作戦か、これ。
いつもなら受けて立つとか言うけど、今の状況的に絶対無理だ。
「はっ、ぁ・・・」
「俺はそうやって見せる、お前の女の顔が1番好きだ・・・・」
「ぁ、ひぅ・・・!ん・・・!」
「強がってるお前も嫌いじゃねぇが・・・な」
「んっ、ふ」
「ほら・・・逃げてみろよ」
真昼間の浜辺で、こんなの。
どこかスイッチの入ってしまっている桐生を、止めることは出来そうに無い。
あれか?最近シてないからか?
我慢の限界とか、そういうのなのか?
いつもより甘く熱い息を吹きかけられ、ぴくりと肩が跳ねる。
「ひゃっ!?」
「降参、か?」
「ッ・・・!んなわけ、ねぇだろ・・・!」
「そうか・・・・」
「っひ、あ、触ん、なっ・・・・」
抵抗出来なくなっていく私に、桐生の低い声がトドメを刺した。
「強がっても力では敵わないくせにな」
5.負けを認めて楽になっちまえよ
子供たちが居ない、最終日の5日目。
朝早く目を覚ました私は、起きたくても起きれない状況に頭を悩ませていた。
何故かって?
桐生が寝てるんだよ。私の腰をがっちり抱きしめた状態でな。
まず桐生を起こすしかないと、寝ている桐生に声を掛ける。
「おーい!起きろー!」
「・・・ん・・・?あけ・・・か・・・?」
「そうだよ。ほら、起きなくても良いから手を放せ」
「・・・・」
無言で腕の力を強められた。
その力の意味を理解した私は、起きることを諦めて寝直す。
いや、寝直すつもりだった、という方が正しい。
実際は寝直せなかった。この原因も、もちろん桐生。
何か当たってるんです。何かは想像出来ちゃうものが、お尻に。
怪しい熱に気づいてしまったら、もう寝るどころじゃない。
「お・・・・おい、桐生?」
「なんだ?」
「その、あの、ですね、あたってるん・・・ですが?」
「あぁ」
「・・・・」
あぁ、って。
普段だったら問答無用で襲われている状況だが、今の桐生はまったくその気配を見せなかった。
「おはよう・・・あけ」
「・・・あ、あぁ。おはよう、桐生」
まだ、あの勝負の続きだからか?
この5日間は、私が誘うまで禁止ってやつ。
守ってくれるのは嬉しいんだけど、我慢させてるという状況を生々しく感じてしまうと、逆に申し訳なくなる。
「あの・・・さ、桐生」
「どうした」
「苦しくねぇの・・・?」
私には、男の人が味わう苦しみってのが分からない。
恐る恐る発した質問に、桐生は笑いながら答えた。
「お前がその気じゃねぇのに、無理やりしたりしねぇよ」
「桐生・・・」
「俺はいつもとは違うお前を見たいだけだからな」
「へ・・・・?」
「欲望を満たすっていうより、お前が俺に乱されて、恥ずかしそうにしてるお前を見たいだけだ」
「え、えっ・・・と・・・」
「だから俺はいけなくても良い。お前が俺に乱されてくれればな」
何でだろう。
無性に桐生に抱かれたいと、思ってしまった。
乱れた私を見てほしいわけじゃ無い。
恥ずかしいし、激しく求められると痛いのにも変わりない。
でも、それでも。
今聞いた言葉は、そういうことに対する私の感情を変えた。
「・・・・っ」
「どうした?」
「あー・・・いや・・・」
欲望のためじゃなく、私を見るために。
愛されてるんだなって感じて、変な熱が私を狂わしていく。
あぁもう、くそ。
いつもの桐生になら、負けないのにな。
「桐生」
「・・・ん?」
くるりと振り返り、不思議そうに見てくる桐生の頬を撫でる。
そして自ら唇を寄せ、深い口付けを交わした。
もっと欲しい。
もっと、もっと。
桐生が欲しい。
でも勝負には負けたくないという微かな理性が、私を止める。
「あけ?」
「・・・なんでも、ない・・・」
早く逃げ出さないと、駄目になってしまう。
勢い良く逃げ出そうとした私を、桐生の腕ががっちり掴む。
「・・・あけ。俺が欲しいんだろ?」
「・・・ち、ちが・・・う・・・」
低い声。熱い息。
足をなぞる、大きな手。
ああ、やっぱり負けた気がする。
愛されてることを感じて、自ら求めようと思ったのは事実なんだけどさ。
こいつの余裕な表情を見ると、悔しくなって言えなくなる。
言いたくない。そんな私に、桐生は低い声で囁く。
「負けを認めて楽になっちまえよ」
分かった。きっと私は、こいつに勝てないんだ。
桐生の言葉に征服され、私の理性は壊れる。
「一馬・・・」
「ん?」
「・・・し・・い・・・」
「はっきり言わねェと、分かんねぇなぁ」
「・・・・っ」
もう、駄目なんだよ。
私はこいつに、最初から征服させる運命だったんだ。
そう思って諦めよう。
恥ずかしさと理性を全て捨てた私は、桐生に抱き着いて負けを認める言葉を放った。
「一馬が欲しい・・・です」
「フッ・・・良いぜ。お前に全部やるよ・・・だからお前も、俺だけに全部見せろ」
彼との勝負の5日間。
結局私は勝つことが出来ず、彼の言葉に征服された。
もちろんこの後、シなかった4日分の全てを身体に刻まれ、1日中寝る羽目になったのは言うまでもない。
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