いらっしゃいませ!
名前変更所
手に入れたい。
そう思うものは、なんだって手に入れてきた。
それが力の国。龍の国の掟。
だが一つだけ、龍の国の王―――桐生でも手に入れられないものがあった。
「やっと・・・やっとだな」
目の前で上がる火の手を見て、桐生は満足げにそう呟く。
桐生が手を掛けたのは、鷹の国という「平和の国」だった。
力の国とは真逆の関係にある、平和の国。
その平和の国が、火の手を上げて燃え盛っている。
火の手の真ん中に居るのは赤いドレスの女。鷹の国の王女。
「・・・・どういうつもりだ」
王女は低い声でそう呟くと、重たそうな双剣を桐生に突きつけた。
平和の国である鷹の国は、他の国との平和条約を結んでいる。
だから民衆の安全は守られている。そう思っていたのに。
突然襲ってきた龍の国に壊された平和を、今、目の前で見せつけられているのだ。
「・・・どういうつもりだって聞いてんだ。ここが何の国だか分かってんのか?」
「あぁ。分かっている。鷹の国だろう?」
「お前の国とも条約を結んでたはずだ。突然こんなことしやがって・・・許されると、思うなよ」
壊された平和に耐え切れず、王女は抜いた剣を振り下ろした。
桐生はそれを軽く避け、ニヤリと意地悪い笑みを浮かべる。
目の前で狂い、泣き壊れる王女。
桐生が心の底から手に入れたいと思っていた存在。
力の国では、力無き者が力有るものに媚を売る。
そのため、桐生の近くにはそのような人しか集まらなかった。
自分を真っ直ぐ見る存在。そんな存在がまったくいないのが当たり前。
だが、この国の王女は違った。
堂々と桐生に対して物事を告げ、真っ直ぐな瞳で桐生を見た。
そして、今も。涙を浮かべた瞳で真っ直ぐ見つめてくる。
「なんのために・・・!こんな、こと・・・!」
「お前を手に入れるためだ」
「何言ってんだ?冗談はやめろ」
「ずっと手に入れられないと思っていた。分かっていた・・・だから、こうするしか無かったんだ」
敵国同士。
平和条約を結んだといえど、力の国と平和の国という真逆の関係。
どうしても手に入れることの出来ない王女を、桐生は心の底から欲していた。
敵国同士の叶わない望みを叶える。そのためにはこれしか無かったのだ。
「お前は・・・・」
強い瞳が桐生を睨み付ける。
その瞳がどんな形であれ、自分を見ていることに快感を覚えた。
後はその眼差しを、強い意志を、砕いて自分のモノにするだけ。
一歩踏み出した桐生に警戒した王女は、震えながらも桐生に斬りかかった。
舞うような双剣の技。平和の国の女王とは思えぬ剣捌き。
抵抗するものを壊すのが楽しいんだと、桐生は笑う。
「フッ・・・やっぱりお前は、俺の見込んだ通りの女だぜ」
「見込まれて嬉しくなんかねぇよ!こんな、欲望に塗れたやり方ッ・・・・!」
「いくらでも抵抗しろ。俺はお前を手に入れるためなら・・・お前自身だって壊すと決めた」
「あぁ、やれるものならやってみろよ。私は絶対に、お前には屈しない!」
結ばれることが許されぬ定めの国同士。
こうするしかなかったという桐生の言葉は、剣の音によって掻き消された。
これ以外の方法を、知らない。
だから最後まで力に従い、力で全てを手に入れる。
「はぁッ!」
「ッ・・・意外だな。平和の国の王女が、武器を扱えるとは」
「平和を守るためには、誰か一人は守る力を持つ必要がある・・・それが、王女の務めだ」
「・・・やはり、俺の見込んだ通りだな」
「お前に見込まれても迷惑なだけだッ!」
目の前で全てを砕かれても、閉ざされることのない瞳。
その瞳に自分だけが映り込む。それがどんなに幸せなことか。
桐生の狂気染みた笑みに、王女の表情が変わる。
怯え、怒り、そして寂しげな表情に変わった王女を、桐生は更に見つめた。
―――欲しい。心の底から、こいつが。
「お前・・・本当に、力に憑りつかれてるんだな」
「・・・」
「こんな事しなくても、お前の気持ちぐらい・・・私は・・・」
「悪いな、俺には・・・この方法しか分からないんだ」
「・・・あぁ。そんな顔してたよ、お前。だから・・・」
王女は振り下ろしていた剣を止め、静かにその剣を前に差し出した。
今まで怒りのままに剣を振っていたはずの王女は、手から剣を放す。
カン、と。
無機質な音が周りに響いた。
武器を手放した王女に対し、桐生は眉を顰めることしか出来ない。
「・・・何のつもりだ?」
「力なんて必要ねぇ。力に憑りつかれてるお前に、教えてやるよ」
武器を投げ捨てたにも関わらず、王女は恐れずに桐生へと近づいた。
殴られる、蹴られる、捕まえられる距離。
それでも王女は止まらない。
桐生に触れられる位置に来てやっと止まり、手を差し伸べる。
その表情は優しげなもので、桐生は思わず息を呑んだ。
「この罪は許されるものじゃねぇ。でもお前は・・・知らなかっただけなんだろ?」
「なに、を・・・」
「力に狂うのが悪いことだとは言わない。私の国みたいな平和主義が、どこでも通るってわけじゃねぇしな・・・でも、力以外の方法を知らないってのは、また別だろ」
「・・・・」
「だからお前に教えてやるよ。力以外のことを。罪を償ってから・・・・私にもう一度、きちんと話つけにこいよ」
強い女だとは思っていたが、まさかここまでとは。
力に屈さず、恐れず、自分自身も怒りに囚われることなく冷静に判断する。
だが、桐生にそんな優しさは通用しなかった。
むしろ煽るだけの材料となり、理性を壊していく。
「あぁ、そうだな・・・俺は、確かに、力をこうやって使って生きてきた」
「・・・・あぁ」
「だから俺は俺の生き方を・・・貫くだけだ」
「ッ!?がはっ・・・!?」
固めていた拳を王女の腹に打ち付け、そのまま地面に押し倒した。
咳き込みながら苦しむ王女。その姿にさえ快感を覚える。
ああ、もう狂ってるんだろう。
戻れない。分かってるからこそ無理やりにでも手に入れたい。
壊れた感情は桐生を犯し、思考さえも蝕む。
「良い顔するじゃねぇか」
「はな、せっ・・・・」
「俺の物になれよ・・・あけ」
初めて呼んだ、王女の名。
その名前を口にした桐生は、完全にタガが外れたのを感じた。
「あけ」
「や、め・・・ぐあぁっ!」
「・・・あけ」
「あぁぁ、あぁあぁあああっ!!」
手に焼け死ぬような痛みを感じ、あけは悲鳴を上げる。
王女という姿の裏に隠された、あどけない弱さ。
それが痛みによって砕かれ、桐生の前に姿を現す。
「やめ、やめてくれっ・・・・!いた、ぃ、いたい、いたいっ・・・!」
「もっとその声・・・俺に聴かせてくれ・・・」
「ふざけ・・・んな・・・!私は絶対に、絶対に・・・・っ」
“お前などに心を渡さない”
掠れた声でそう呟く王女を、桐生は容赦なく剣で傷付けた。
死んでしまわぬよう、急所を外して。執念深く。壊すように。
さぁ、壊れて、叫んで、悶えて、狂って。
「俺のものになれよ、あけ」
「かっ・・・は・・・うっ・・・ううう・・・・」
「たっぷり愛してやるから・・・な」
恋は人を狂わせ、関わる人間さえも壊していく
(力しか知らない王が手にした、“あけ”という愛しい人形)
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