いらっしゃいませ!
名前変更所
黒を基調とした短いスカート、白いフリル。
カチューシャ、ネコミミ。
鏡に映るメイド服姿の自分を見て、私は本日10回目となるため息を吐いた。
こうなったのは、酔った勢いの賭けのせいで。
酔った勢いで賭けなんかするんじゃなかったと、後悔だけが頭の中を巡る。
「くそ・・・アイツ相手に勝負とかするんじゃなかった・・・」
今日はアサガオに子供たちが居ない。
だからお酒でも飲もうと誘って、それが引き金になったのだ。
後はもう、酔った勢いで賭けをしてしまった。それだけの話。
将棋は弱いって遥に聞いてたから、弱いって思ってたのに。
普通に強くてボロ負けした。ちくしょう、騙された。
「もう出来たか?あけ」
「まっ・・・待ってくれ。もう少し」
勝負に負けたら勝った方の言う事を聞く、それが賭けの内容。
その賭けの内容として“1日メイド”をやらされることになった私は、この上ない屈辱を感じて唇を噛んだ。
逃げられるものなら逃げたい。
でもアイツから逃げきれる気がしない。
「ん、これでいいだろ」
覚悟を決め、部屋の外で待っていた桐生にメイド服を見せつけた。
桐生は嬉しそうにニヤニヤと笑いながら、私の頬に手を伸ばす。
恥ずかしいけど、今日1日だけだと思えば大丈夫。
条件は1日メイドだ。普通に過ごして家事とかしてれば1日なんて。
そんな考えを見抜いてなのか、桐生がトドメの言葉を放つ。
「今日は1日、俺のメイドで居てもらうぜ。賭けなんだ、逃げるなよ?」
「にげねぇよ別に!」
「じゃあまずは、言葉遣いだな」
「・・・え、いや、桐生。まさかとは思うけど・・・!?」
「桐生、じゃないだろ?」
つまり、ご主人様と呼べと?
すっかりスイッチの入った桐生を押しのけることは出来ず、私は渋々口を開いた。
「・・・ご主人様」
「言葉遣いもだからな」
「うぐ・・・」
ご主人様と呼ぶだけじゃメイドじゃない。
そう言いたげな桐生の表情を、私は苦笑しながら見つめた。
ああ、もう駄目だ。
どこにおいても、妥協出来る気がしない。
むしろ妥協したら、お仕置きと題して何かされる可能性の方が高い。
「ちょっと肩が凝ってるんだ。マッサージを頼めないか?」
「・・・かしこまりました、ご主人様。では、あちらへ」
もう、どうにでもなれ。
すっかり上機嫌な桐生を連れ、私は茶の間に移動した。
そこに寝そべってもらい、マッサージを始める。
それにしても桐生って、こんなのが趣味だったのか。
いやまぁ、いつも私が反抗的ってのもあるんだろうけど。
「ご主人様、痛くないですか?」
「あぁ。ちょうど良い」
こうやってのんびりするのも、かなり久しぶりだな。
桐生の背中を力強く押しながら、ゆっくりとマッサージしていく。
ずっと忙しかったし、桐生にはゆっくりしてもらいたい。
メイドをしてるっていう屈辱的状況は嫌だが、こうしてゆっくりしてもらえる事は嬉しい気がする。
「中々凝ってんなぁ・・・・大丈夫かよ、桐生」
「違うだろ、あけ」
「あー・・・・無理をされてませんか?ご主人様」
「お前が居るから大丈夫だ」
「(だから平気でそういうこと言うなっての・・・)」
「どうした?顔が赤いぞ?」
「ッ、な、なんでも、ありません。良いからゆっくりしててください」
真っ赤になった顔を見られたくなくて、私は顔を下に向けた。
苛立ち紛れに力を込め、マッサージを続ける。
しばらくマッサージをしていると、桐生が「もういい」と私の手を止めた。
うー、さすがに指が痛い。相変わらずガタイ良すぎだろこいつ。
「ふー・・・」
「疲れたか?でも、ありがとな。おかげで軽くなった」
「なた良かっ・・・それなら良かったです」
「なぁ、あけ」
「どうしましたか?ご主人様」
「・・・・こっちに来いよ」
グイッと腕を引かれ、桐生の胸に飛び込んだ。
顔を上げれば、目の前に桐生の楽しそうな表情が映る。
これが今日1日続く、と思うと眩暈が止まらない。
メイド役をするってことよりも、メイド服で居るってことの方が辛い気がしてきた。
スカート短いし。
こうやって引き寄せられたらパンツが丸見えになるし。
「あ、ちょ、桐生!」
「違うだろ」
「ご、ご主人様!は、離してください・・・」
「良い眺めだぜ」
「くっ・・・」
腕を掴まれた状態の私は、桐生から身体を離すことが出来ない。
桐生はそのまま私を抱き寄せ、キス出来そうな位置まで顔を近づけた。
触れそうで、触れない距離。
焦らすようなその位置で、桐生は囁くように私に命令した。
「あけ」
「・・・っ、な、なんですか?」
「お前から、キスしてくれ」
「っ・・・・」
普段しないことを、命令される。
それは有無を言わせない、拒否権のない命令。
逆らえないと分かっていて言われる言葉ほど、恥ずかしいものはなかった。
私は恐る恐る桐生の頬に触れ、唇を近づける。
「あ、の・・・せめて、目を瞑っていただけませんか・・・・」
「・・・・」
「(くっ・・・こいつっ・・・!!)」
心の底からの願いだったのに、桐生は一切聞く耳を持たなかった。
しょうがない。覚悟決めてやるしかねぇだろもう。
「んっ・・・」
そっとそっと、優しく口付ける。
触れるだけのキスは一瞬で終わり、私はバッと勢いよく顔を逸らした。
それでもまだ、桐生は私を離そうとしない。
あの距離のままで私を見つめ、優しく微笑む。
「・・・・」
「あけ、もう1回だ。次はそんなんじゃだめだからな」
「・・・・う、大人のキスって・・・ことですか」
「あぁ、そうだ」
「・・・・」
「返事は?」
「うぐ・・・てめ、調子に乗りやがって!」
我慢の限界を越えた私は、桐生の頬をぐーっと引っ張った。
賭けとはいえ、負けた立場とはいえ、これ以上の屈辱は耐えられない。
涙目になりながら抵抗する私を、桐生は一瞬で押し倒した。
両手を頭の上に縛り上げれ、まったく身動きが取れなくなる。
いつもなら抵抗できるこの状況。でも今は、皆が居ない。
「(え、もしかしてこれ、めっちゃやばい・・・?)」
子供たちが居る状況なら、暴れることによって逃げられていた。
騒げば子供たちにばれるからな。さすがの桐生も無理やりは出来なかったんだが。
出来なかったんだが、今は違う。
子供たちも、遥もいないこの状況。
逃げられるという可能性が1%も感じられず、私は思わず足を振り上げた。
「ぎゃー!やめろっ!まてっ!」
「なんだ?ご主人様に逆らうメイドにはお仕置きが必要だろう?」
「まてまてまてまて!今何時だと思ってんだ!今からとか私を殺す気か!?」
「殺されたいんだろ?お前が逆らったんじゃねぇか」
「悪かった!言う事聞く!聞くから・・・おねが、ぁ、ん・・・!」
短いスカートに手が侵入してくる。
太もも、ふくらはぎ、そこから腰へ。
まさぐる手によって、私の口から自然と声が漏れ始める。
「ひゃ、ぁ、やめ、も・・・」
「今は昼か・・・夜までたっぷり可愛がってやるよ」
「ちょ、ほんとに、ほんとに手加減し、しろよ・・・!?」
「出来るか分からねェ。お前のその恰好、似合ってるしな」
「お前そういう趣味か!メイド趣味か!この変態!」
「・・・手加減しねぇと思え。覚悟しろ」
「あ、うそ、嘘ですちょっと待って・・・・ぎゃあぁあああ!」
おじさんの部屋に投げ捨てられ、ものの数秒後。
私が泣きながら謝ることになるのは、言うまでもなかった。
もう二度と、メイド服なんて着るもんか
(腰が立たない私を尻目に、桐生は嬉しそうに笑っていた)
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