いらっしゃいませ!
名前変更所
私は人に悪夢を見させる妖怪だった。
人に触れることで心を読み、その姿で魅了し、夢を食らう悪霊。
でも今の私に、そんな姿はもう無い。
私はとある陰陽師に捕えられ、今や道具のように扱われていた。
主人の命令に従うだけの存在。それが今の私。
「おい、あけ」
「ん?」
「何ぼーっとしてんだ。・・・行くぞ」
夢を食らうことで自らを強くする。
だから私は、多くの夢を食べる必要があった。
夢は見る本人の力が強いほど、美味しくなる。
陰陽師の力なんて、高級品そのものだ。
そこで私は今の主人である桐生に目を付け、呪いを掛けようとして。
―――逆に“主従の呪い”を掛けられた。
「・・・次はどこだよ」
「相変わらずだな、お前は」
「んだよ。こんな夜中に任務に呼ぶお前も相変わらずすぎるだろ」
あの時殺されるはずだったと思えば、幸せなのかもしれない。
死ぬことを恐れていた私の気持ちを見抜き、彼は生かす代わりにこの呪いを掛けた。
そう、私の命は桐生一馬というこの男のもの。
彼の気持ち次第で殺され、彼の気持ち次第で痛みを刻み付けられる。
私は逃げることなく、桐生に従い続けた。
いつか、いつか、私に屈辱を合わせたこの男を、殺すために。
『何だ、お前たちは』
「・・・あれが今回の対象?」
「あぁ、そうだ。早速やってもらうぜ、あけ」
同じ仲間だった妖怪を、彼の命令で殺す。
私はいつになったら、この命令を聞かないで済むようになるんだろうか。
彼は私に何も許してくれない。
命令に逆らうことはもちろん、離れることも、隠し事さえも。
早く彼から逃げなければ、私はいつか壊されてしまう。
そんな気さえしてしまうような、絶対服従の関係。
「どうした?・・・また出来ねぇっていうのか?」
彼の笑みが憎い。
私の心を見透かしているであろう、その瞳が。
「うるせぇよ」
反抗心からの言葉。
ああ、きっと、この言葉が強がりだってことも見抜かれてるんだろうな。
かつて同類だった仲間を、自らの手で狩る。
しょうがない。人間達にとって私達は悪者なんだから。
私は唇を噛みしめると、背中の翼を利用してその場から飛び上がった。
「ごめんな、本当に、ごめんな・・・・」
『お前は・・・なるほど?その男に捕らわれたか』
「・・・・あぁ」
『お前ほどのものがな・・・フフ。どうする?私と手を組むか?』
「・・・・」
駄目なんだ。
それじゃあ、お前がやられてしまう。
むごい殺され方をするより、私の手で。
命令通りに殺すことを躊躇っていた私を、桐生の低い声が急かす。
「おい、さっさとしろ」
「・・・あ・・・あぁ」
「・・・・」
「・・・・」
何故、彼が私に妖怪を殺させるのか。
私はこの意味を知っている。
私に忠誠を誓わせるためだ。
殺させ、躊躇う私を痛めつけ、精神的に壊していく。
そうなんだろ?分かってるよ。だってそうだろ。
「・・・・」
そうじゃなきゃ、私にこんなことさせる利点は無い。
自分で殺した方が早いじゃねぇか。
こんな主人に逆らう気満々の奴を生かして、何になる?
楽しんでるんだろうな、反抗心の高い私を服従させて。
「・・・・あけ」
「ッ!がぁあぁっ!?」
考えに思考を奪われていた私は、痺れを切らした桐生に服従の痛みを走らされた。
痛みが体中を巡り、立っていられなくなる。
「命令に従え、あけ。お前は俺の式神だ」
「あぁ、ぐっ・・・・」
「アイツを殺せ。殺せないなら・・・」
痛みに目が眩む。駄目、駄目だ。
私がやらなきゃアイツが苦しむことになる。
私は桐生の腕を掴み、痛みに震える手で妖怪の動きを止めた。
そのまま、痛みなく死ねるよう、悪夢の世界へと誘う。
『ぐ、ぁ・・・・・・』
「ごめん、な・・・・」
「また、それで殺したのか。・・・お前は相当、痛めつけるのが嫌いなんだな」
「お前だって、相手が人間ならむごい殺し方はできねぇだろうが。同じだよ、はげ」
「口の利き方、また教え直した方が良いか?」
「ッ・・・が、ぁぁぁあぁっ!」
最高の服従方法である、痛み。
桐生は意地悪く笑いながら、痛みに苦しむ私の顎をクイッと持ち上げた。
痛みに目の前が眩む。
その中でも、ハッキリと見ることが出来る彼の顔。
悔しい。殺してやりたいぐらい恨んでるはずなのに、手が出ない。
「あ・・・・ぐ・・・」
「これからもきちんと教えてやるよ。お前が俺のものだっていうことを、その身体に」
「・・・や、・・・」
近づいてきた唇を、私はただ受け入れた。
降りていく手が、私の身体を弄ぼうとも、私は抵抗出来ない。
撫で上げられる胸。
まるで俺のものだと言うかのように貪られる唇。
抵抗してもどうせ、痛みで縛られて酷くされるだけ。
囚われ続ける私は、永遠に彼の玩具。
「あ、や、やめ・・・て」
「フッ・・・・綺麗だぜ、お前の身体は」
「ひっ・・・」
「ほんと、ただの式神や妖怪だなんてものに終わらせるには・・・勿体ねぇ」
「あっ、や・・・だ・・・」
「もっと声聞かせろよ」
「いつ、か・・・っ」
「ん?」 「いつ、か、ころし、て・・・やるっ・・・」
「・・・そうじゃねぇと、服従しがいがねぇからな。せいぜいやってみせろ」
「ぁ、あぁっ!」
「出来るものなら、な」
「あぁあぁあ・・・・!」
――――そう、ただの、玩具。
逆らえない私を、彼は弄び続ける
(壊れるまで、いやきっと、壊れてもずっと)
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