いらっしゃいませ!
名前変更所
脇腹に強い痛みが走る。
咽あがる感覚に耐えながら体勢を立て直し、私は勢いよく龍司の懐に潜った。
振り上げた足は龍司の頬を掠め、そのまま空を切る。
反撃を食らわないよう素早く足を下げるが、龍司にそれは通用しなかった。
振り上げた足を掴み上げられ、容赦なく身体を床に叩きつけられる。
「ぐあぁっ!」
「もうやめや。アンタじゃワシには勝てへん」
「・・・っせぇ、よ」
「・・・」
痛みなんて関係ない。
ふらつきながらも立ち上がる私に、龍司はやれやれと首を振った。
呆れようが何だろうが良いんだ。
私はコイツに邪魔されたくない。それだけのこと。
コイツがここを通ろうとする限り、私は本気で彼に立ち向かっていく。
「ワシも諦めへん」
「お互い頑固って・・・ことだよな!」
「ッ・・・!」
龍司が突き出してきた拳を避け、その手を思いっきり掴んだ。
そして自らの全体重を掛けて、掴んだ手を自分の方へ引っ張る。
引っ張られた龍司は足元をふら付かせ、体勢を崩した。
体格の大きなコイツを怯ませるには、これしかない。
ふら付いた龍司の腕を更に引き、反動を使って龍司の胸元に膝蹴りを食わらせた。
膝蹴りを食らった龍司は、胸元を押さえ、それでも楽しそうに笑っている。
「やるやないか・・・」
「言っただろ?」
「そやな・・・ホンマに、アンタは」
「ッぐ!?」
「最高や」
まともに蹴りを食らったはずなのに。
あれだけ全体重と勢いを掛けてした攻撃を食らっておいて、こんな。
すぐに反撃を食らって羽交い絞めにされた私は、龍司に対して恐怖を抱いた。
荒れ狂った龍。これが関西の龍。
こいつに今ここで暴れられたら、本当に盃なんてものは無くなってしまう。
「どいつもこいつも・・・っ」
「あ?」
「どうして、アイツに平和をやってくれないんだ・・・!!」
思い通りに行かない物事に、怒りを込めて毒を吐き出した。
龍司は何のことやらと表情を歪め、反抗的な私を無理矢理担いだ。
そのまま、“手加減”という言葉の無い力に投げ捨てられる。
投げ捨てられた先はいくつもの襖があり、その先は桐生達が話し合いをしている部屋に繋がっていた。
龍司に思いっきり投げられた私は、抵抗出来ずに襖をなぎ倒して転がっていく。
「ガハッ・・・・!!!」
最後の襖を突き破った時、視線の先に映ったのは郷田会長の姿だった。
背中を激しく打ち付けたせいか、息が出来ずに身体が震える。
あ、やばい、目の前に星が。
「・・・!?あけ!?おい、どうした!?あけ!!」
「な、何事や・・・!?」
静かだった部屋が一瞬で騒がしくなった。
原因はもちろん、私とコイツらのせい。
倒れた私を庇うように立った桐生を、歩いてきた龍司が鼻で笑った。
その行動に桐生が怒りを示し、龍司を鋭い瞳で睨み付ける。
「こいつに手を出したのは・・・お前か」
「そやったら・・・何なんや」
「・・・今からコイツが受けた分、倍にしてお前に返させてもらうぜ」
「そない怒らんといてくださいや。ふっかけてきたんは・・・そいつの方や」
「んだと・・・!お前らが盃を邪魔しようとするからじゃねぇか!」
私の言葉に、後ろに居た龍司の部下が私たちを取り囲んだ。
そして逃げないよう、最も恐れていた武器――――銃を会長達に対して突きつける。
会長は龍司を睨み付けると、鋭い声を上げた。
怒りを露わにする会長など知らんぷりなのか、龍司はその声に対しても笑みを浮かべたままだった。
「何のつもりや!ここはお前のような奴が来る場所やない!」
「だからこうしてるんやないですか・・・ワシらはクーデターをしに、来たんですわ」
「何・・・!?」
「ボロボロの東城会とワシらの近江連合・・・五分五分なんてもっての他や。盃交わすなんてふざけた話、ここで通してもらうわけにはいかんのや」
「龍司、お前・・・!」
戦争。関西の龍。
昨日龍司が話していた言葉が頭を巡り、そして消えた。
会長が龍司の部下に連れて行かれる。
くそっ。早く取り戻さないと。取り戻して話の続きをさせないと。
焦りが私の身体を自然と動かし、龍司に向かわせる。
勢いで一発殴ろうとした私の目の前に、大きな影が飛び出して私を止めた。
「っ・・・・!?だ、大吾・・・!?」
「郷田龍司・・・!あの時の借り、返させてもらうぜ・・・!」
「誰やお前」
「堂島大吾。昔お前のせいでパクられたんだ」
「ハッ。そないな名前、全然知りませんわ」
馬鹿にする龍司。
挑発に乗って冷静さが欠けた大吾。
今ここで勝負して、どちらが勝つかなんて目に見えていた。
冷静な判断が出来る時ならまだしも、こんな状態なんて。
私が止めに入る暇もなく、大吾は予想通り龍司に殴られ地面に蹲った。
大吾を助けに行きたいが、それよりも今は。
「龍司・・・!」
目の前の事を片付けるのが先決そうだ。
龍司は私と桐生を交互に見て笑うと、部下達に命令して私たちを襲わせた。
すっかり戦闘態勢に入って武器を持ち出す彼らを、私と桐生は苦笑いで見つめる。
自信満々?ああ、そうとってもらって構わない。
「なぁ、桐生。いけるか?」
「お前は後ろで休んでろ」
「えー、やだよ。絶対嫌」
「・・・予想通りの答えだな。とりあえず・・・無理はするなよ」
「あぁ、任せろって」
龍司以外の相手を恐れる必要性は無いから。
私はニンマリと笑って軋む身体を伸ばすと、戦闘態勢に入ってる部下達に向かって走り出した。
それを見ても、龍司は一切動く気配を見せない。
そうか、なるほど。高みの見物ってわけか。
ならもっと見物なんて余裕がないぐらいのもの、見せてやらなくちゃな。
んでさっさと、会長を返してもらおうか。
「ほら、来いよ。女だからって手加減しなくたっていいんだぜ!」
構えていた部下達が、私の挑発に乗って襲い掛かる。
馬鹿だな、ほんと。挑発に乗ったせいで前が見えていない。
こんなの、そこらへんの雑魚と一緒だ。
ただただ突進してきた男達を足蹴りで一掃した後、私はすぐに桐生の方へと向かった。
そして桐生を相手にしていた男を、背後から殴り飛ばす。
「桐生ばっかと遊んでないで、私とも遊ぼうぜ?」
「おい、あけ。俺の話を聞いていたのか?」
「ん?安静にしてるじゃねぇか。ほとんど体力使ってないぞ・・・っと!」
「ガハァッ!?」
話の最中に飛び込んできた男が、私の膝蹴りで沈んだ。
桐生に見せつけるように余裕の表情を浮かべれば、桐生もまた喧嘩に集中し始める。
正直、身体中が痛い。
龍司に飛ばされた影響は、結構大きかったみたいだ。
また無茶して倒れないよう気を付けながら、最小限の動きで確実に敵を仕留めていく。
「・・・そっちは終わったみたいだな」
「桐生こそ。・・・ほら、龍司。次はアンタの番だ」
二人して龍司に向かおうとした瞬間、やられて転がっていた大吾が突然起き上がり、龍司に一発食らわせた。
結構良い拳だったのか、龍司が足元からバランスを崩す。
「お前の相手は・・・俺だ・・・!」
「・・・ほぉ。中々、やるやないか」
「桐生、あけ。お前たちは会長を!」
「大吾・・・ちゃんとやっつけて来いよ!」
男の喧嘩は邪魔しない。これ常識。
大吾が1人で戦うということに反対はせず、私達は大吾を信じて部屋を後にした。
大丈夫だ。
大吾ならきっと、アイツなんかぶっ倒してくる。
だから私たちは、さっさと盃を交わすために、組長を取り返してくるまで。
「遅れんなよ、桐生」
「・・・・先に行くな。俺の後をついて来い」
「えー?めんどくさいから向こうの道と分かれて・・・・」
「俺の後について来い」
これ以上無茶をするつもりか?と。
無言の威圧を感じ、私は大人しく手を上げた。
「あいあい、ついていくよ。背中は任せろ」
「あぁ・・・任せた」
背中合わせの温もりは、私たちの信頼の証。
(誰も私や桐生に傷を負わせることなく、私たちは先へと進んだ)
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