Erdbeere ~苺~ 2.他の男を見てんじゃねぇ、と視界を奪われ何も見えない 忍者ブログ
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2024年11月15日 (Fri)
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2022年04月20日 (Wed)


桐生寄り/甘/ヒロイン視点/なんだかすごくイラつく


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峯に言い寄られた次の日。
私は自分の仕事に集中出来ないでいた。

いや、当たり前だろ?
あんな色んな女掻っ攫えそうなイケメンに、こんな私が突然。
考えれば考えるほど頭が痛くなる。本気なのか?本気だとすればなんで?私が男なら私なんて絶対に選ばない。そんな感情が私の思考を深くしていく。


「珍しく無茶な飲み方してるじゃねぇか」
「・・・・」
「なんだその顔は」
「いや・・・お前こそ、こんなところに来るなんて珍しくないか?桐生」


こんなところ、と呼んでいるのは私の行きつけのバーだ。
私の言葉にマスターがやれやれと苦い顔をしているのも毎度のことだ。神室町で安全に運営が出来ているのも私のおかげなのだから、本気で怒ったりはしてこない。


「お前を探してたんだよ」
「あ?私を?なんか仕事か?」
「いや。・・・あのときのお礼、してなかっただろ?」


あのとき、と言われて首を傾げる。

私は桐生にお礼をされるようなことをした記憶が無かった。
確かに峯の騒動のときはかなり協力したが、それも全て報酬をもらっている。
そもそも、大吾を助けてもらったし、峯も救うことが出来た。むしろお礼をしなければならないのはこっちだと私はマスターに目配せし、良い酒を桐生に出すよう促した。


「あの時がいつのことかは分かんねーけど、お礼をするのは私の方だよ。奢ってやるから飲めよ、な?」
「おいおい、俺が奢るつもりできたってのに・・・・」
「良いから良いから。んじゃ、乾杯!」
「おう」


グラスを軽く鳴らして、お酒を喉に通す。
お酒はそんなに好きじゃないが、今の私には最高の気分転換の材料だ。
酔わないと考えられない。それぐらい私は、恋愛というものに疎かった。

偽りの恋愛ならたくさん見てきた。そしてしてきた。
裏の人間として、キャバ嬢を演じ、時には懐に潜り込むための女を演じた。

―――――なのに、何も分からない。


「何悩んでんだ?」
「ん?いや・・・」
「誤魔化せるわけねぇだろ?何年の付き合いだと思ってんだよ、俺と」
「・・・・それも、そうだな」


誤魔化そうと思ったが、桐生の言葉に考えが変わった。
恋愛マスターの桐生なら分かるだろうと、お酒で軽くなった口で疑問を吐き出す。


「なぁ、桐生」
「何だ?」
「・・・・異性を好きになるって、人間としての好きと何が違うんだ?」


私の質問に、目を見開いた桐生がゆっくりとグラスを下ろした。


「・・・・つまり、誰か男を好きになったのか?」
「え?あ、いや、そうじゃなくて・・・。その、告白されたんだけど、そいつのことは人間として好きだけど男として好きかって言われると分からなくて・・・・」


好きな人間には性別関わらず命を尽くすこの世界。
境目が分からなくなることだってあるだろうと言い訳を繋げれば、桐生が少し苛立った様子で私に顔を近づけた。


「誰だよ?お前に告白したやつは」
「え」
「相談乗るんだから教えてくれたって良いだろ?」
「い、いや、それなら別にのらなくたって・・・・!」
「教えろよ、な?ん?」
「だー!!酔ってないくせにだる絡みすんな!!!いででで!馬鹿力!分かった!教える!」


桐生ほどの男に肩を組まれたら、私ではどうすることも出来ない。
仕方なく教えることにした私は桐生が知りたがってる告白の主をぼそりと呟いた。


「峯だよ」
「・・・・・なるほどな」
「納得って顔してる」
「まぁ、な。あんなことされたらそりゃ惚れるだろ」


あんなこと。

―――――いや、そんな風に言ってもらえることは何もしてない。
私はただ峯に生きてて欲しかっただけだ。
死んでほしくなかった。彼はただ、少し間違えただけ。その規模はでかかったとはいえ、取り返しのつかないことなんてない。取り返しがつかないことを取り戻してあげるのが、本当の仲間の役目だ。

大吾も全力で峯を助けようとしている。
全力で、彼を信じていた。


そして私は、あの場で誰がそうしていても、命をかけて助けた。


「当たり前のことをしただけだよ。桐生だって、あの場動けたら同じことしてただろ?」
「・・・まぁ、それもそうだな」
「あぁ。・・・だから困ってるんだよ。私は命をかけれるほど人間として峯に惚れてるけど、それが異性として惚れてるかは分からなくて・・・・」
「お前ならあの時、俺や大吾がピンチでも同じことしただろうからな」
「そういうことだよ」


私は桐生も、大吾も、同じぐらい人間として惚れている。


「異性として好きって、どういうことなんだろうなぁ・・・」
「俺も詳しいわけじゃねぇ。特に俺は男だからな・・・お前より分かりやすい感情がある」
「分かりやすい感情?」
「・・・・言わせんのか?」


煙草を取り出した桐生がニヒルに笑いかけながら私に火を煽った。
仕方なくライターを取り出せば、その手を掴まれ、引き寄せられる。


「ッ・・・・!」
「こういうことしたいと思うかってことだ」


―――――は?


「お、おま、え」


流れるように、唇の隣に少しカサついた温もりが触れた。
峯のときと同じ。少し時間を置いて、自分が何をされたのか理解した私は、心臓が痛いぐらいに跳ねるのを感じて桐生から目を逸らす。


「・・・・私をからかうなんて、いい度胸じゃねぇか」
「俺がこんなからかい方すると思うか?」
「今してるじゃねぇか」
「そうじゃねぇよ。・・・・こりゃ峯が苦労するのも目に見えるな。分かんねぇのか?峯を見てるお前が気に食わねぇんだよ」
「は?」


まだ火のついていない煙草をカウンターに投げ捨てるのを見届けながら、行儀悪いなんて怒る暇もなく私の視界は闇に包まれた。

服の擦れる音。
近づく気配。
香る、酒。

耳元で囁かれる、桐生の声。


「他の男を見てんじゃねぇよ。―――――お前は、ずっと俺が狙ってたんだ」


耳に吹き込まれる吐息と、甘い声がくすぐったくて、私は思わず声を漏らした。
その声に気をよくしたのか、耳元に触れていた桐生の唇が弧を描くのを感じる。


「ッ、きりゅ」
「好きだ」
「やめ・・・!」
「お前を他の男に取られるなんて想像したくもねぇ。もう我慢なんてしてやらないからな」
「ッ~~~!何をいきなりっ!お前にだっていい女いっぱいいるだろ!なんたって私なんだよっ・・・!?」


いい男がこぞって、なんで私なんかに。

思いっきり力を込めて手を引き剥がせば、簡単に視界が開けた。
明るくなった視界の中で、桐生の真剣な瞳と目が合う。


「峯には怒られるかもしれねぇが、俺も好きな女を逃がせるほど紳士的な男じゃないんだ」
「・・・・マジ?」
「マジだ」


相談するはずだったのに、悩みが増えたこの状況に私は大きくため息を吐く。


「おいおい、告白されてため息ってひどいもんだな」
「悩んでた内容知っててそれ言う?」
「・・・すまん。だがさすがに俺も、好きな女が告白されて黙ってるわけには・・・」
「なんたって私なんだよ・・・ほんと、わけわかんねー」
「何いってんだよ。お前はいい女だ。それは俺が保証する。だから俺の告白も・・・・考えちゃくれねぇか?」


そんな真剣な瞳で言われたら、断れるわけがない。


「・・・・・」


私は仕方なくゆっくりうなずいた。
人の気持ちを蔑ろにする趣味もない。桐生も峯も、冗談ではなく本気で私に告白してくれてる。それなら、私も本気で考えるしか無いだろう。


「峯への返事はいつまでなんだ?」


桐生の言葉に私はスマホを取り出し、カレンダーを確認した。
もうすぐ告白されたのが昨日ではなく一昨日になりそうな時間。火曜日を示すカレンダーを桐生に向けて、来週の月曜日を指さした。


「昨日から一週間って言われたから、月曜日かな」
「じゃ、俺への返事も月曜日だな」
「はぁ!?」
「決めてくれよ、峯と俺のどっちがいいのか」
「い、いや!そもそもどっちも対象外ってこともあるだろ!?」
「・・・・そうなのか?」


おい、その聞き方は卑怯だろ。


「い、いや・・・そうかもしれないって、だけで」
「試しにでもいいから、どっちかにOKしちまえばいいだろ?」
「試しになんてそんな失礼なことできるわけないだろ!」
「・・・・さすが、俺が惚れた女だな」
「だーっ!うるさい!!悩みを解決するために飲んでたってのに!見事に増やしやがって!!」


乱暴にグラスを置き、聞いてないふりをしてグラス磨きに徹していたマスターを睨みつける。するとマスターはどこか楽しそうに笑った後、私が置いたグラスを回収して赤いチェリーの乗った可愛らしいカクテルをその場に差し出した。


「貴方に似合うカクテルをご用意しました」
「・・・・むかつく」
「桐生さん、貴方にもこちらを」
「へぇ?中々カクテルなんか飲まねぇから新鮮だな」


赤ワインをベースにしたのか、桐生のシャツと同じ色のカクテルが私のカクテルに並ぶ。
そして一言、お似合いですよと付け加えたマスターは、私が叫びだすよりも先に奥の部屋へと引っ込んでいった。

半ば貸し切りにしているとはいえ、なんてマスターだと思いながら桐生を見れば、桐生はどこか嬉しそうに笑っている。


「何楽しそうにしてんだよ」
「いや、気が利くマスターだと思ってよ。おかげで二人きりになれた」
「ッ・・・・」
「そう警戒すんなよ。それとも・・・・」


“意識してくれてんのか?“

そんな言葉を、甘い声で言われて反応しない女がいるんだろうか。
少なくとも私は反応するような女じゃないと思っていた。でもそれは想像の世界だけだ。実際は違う。冷や汗にも似た汗がぶわっと吹き出し、私は何も言えなくなった。

あつい。
とけて、しまいそうだ。

峯のときと、おなじ。


「なぁ、今ドキドキしてるだろ?」
「・・・・そ、それが?」
「それが男として意識してるってやつだよ」
「そ・・・・そうだとしても、男として好きかは分からないじゃんか」
「・・・・それも、そうだな。それならもっと意識させてやるしかないか」


肩が触れ合う。
カウンターで隣同士の私には、椅子から降りるしか逃げ道はない。


「逃げるなよ」


そんな逃げ道も肩を抱き寄せられ、力強く引き止められれば意味をなさない。


「最近、の立て直しで峯のところばっかりだっただろ?」
「そ、うだな?」
「だったら俺にもアピールチャンスをくれなきゃ不公平だろ?」
「い・・・いや、私は仕事をしにいってるわけで、アピールされてるわけじゃっ」


酔っ払いよりたちの悪い桐生は私の肩を抱いたまま離れようとしなかった。

伝わる熱が私の体温を上げていく。
上がった心拍数も、元に戻りそうにない。

息をするのすら苦しくなっていく。これが恋愛から生まれる感情なのであれば、中々に厄介なものだと思う。


「せっかくなんだ。お前のこと、もっと教えてくれよ・・・あけ
「しょうがないな。・・・いいよ、何が知りたい?」


動揺しているのがバレないように笑みを作って、グラスをいじりながら流し目で桐生を見つめる。

やられっぱなしは、気に食わない。
恋愛に慣れてないとはいえ、私だって客を騙すキャバ嬢を演じるプロだ。


「その代わり、お前のことも教えてくれるよな?」


精一杯挑発を孕んだ声で囁いた私に、桐生もまた挑発的な視線を返した。


「あぁ、何もかも全部教えてやるよ――――お前だけに」


グラスの氷が、私の熱で溶ける音が聞こえた。
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