Erdbeere ~苺~ 3.勝手に大きくなるのを止められないらしい 忍者ブログ
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2024年11月15日 (Fri)
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2021年05月28日 (Fri)

ぱちん!と、俺が死のうとした時以来の大きく心地よい音が響いた。
俺は叩かれた頬を押さえ、何が起こったのか分からないままベッドの上にいる。


「あれだけ!やすめって言っただろうがバカ!!!私が気づかなかったらどうするつもりだったんだ!!?」


俺の頬を叩いたあけは涙を浮かべながら体温計を俺に差し出す。
あぁ、そういえば。今日は少し体調が悪かった。心配されたが今日は明日の会議に向けて資料作りが必要で、俺はパソコンに向かって作業をしていて――――それで。


「お前のことだから絶対作業してるだろうなと思って覗きにくればこれだ!」


そこからの記憶がないということは、俺は倒れたのだろう。
怒りながらもテキパキと俺の肌をふき、サイドテーブルに飲み物やお粥を運んでくるあけに俺はただすまないと謝った。


「それで、明日のテリベスカンパニーとの会議は・・・・」
「それは片瀬と連携して体調不良で延期することと、延期後の日程、あと資料もお前がチェックしていた概要だけを先出しにして後ほど送り直すってことで手を打ってある。心配すんな」
「そうか・・・・」


仕事ができる補佐と秘書を持つというのは本当にありがたいことだ。あけの報告を聞いた俺は胸を撫で下ろし、サイドテーブルに置かれたペットボトルに口をつけた。


「んで?私の説教はまだ終わってねぇんだけど?」


サイドテーブル横で仁王立ちになって腕を組んでいるあけは、今までに見たことのない表情で俺を睨みつけていた。思わず、水を飲むのをやめる。


「あれだけ昨日やすめっていったよな?」
「・・・ですが、資料が・・・」
「倒れてからじゃおせぇよな?私に頼んだり片瀬に頼んだり、出来たよな?」
「ですが貴方も別な仕事があるでしょう」
「私は!・・・なんで私に頼らなかったって言ってんだよ。私が無理そうでも、言ってくれたっていいだろ・・・・」


あけへの思いを自覚してから、日に日に彼女への思いは大きくなる。
こんなに真剣に怒られたのはいつぶりだろうか。頼ってくれと泣かれるなんて、思ってもみなかった。


「すまなかった」
「・・・・本当に反省してんの?」
「あぁ。どうすれば、許してくますか?」
「うーん、健康になって、私のセレナ飲みに付き合ってくれる・・・なら?」
「そんなことでいいのですか?お安い御用ですよ」
「奢らせるからな、てめぇ」
「それもお安い御用です」


怒りながらもどこか優しいあけに思わず顔が緩んでしまう。
だがそれを見られれば怒られそうだったのもあり、俺は用意されたお粥に手を付けた。・・・とても温かい。作りたてのようだ。気づいて大きく顔をあげれば、事務所についてるキッチン側からネギのいい香りがする。


「・・・作って、くれたのですか?」


俺の言葉にあけがどこか悩んだ表情を見せた。


「あー、うん、まぁ、そう。まずかったらごめんな」


手作りは嫌がると思われたのだろうか?そんなことを気遣おうとすることすらも微笑ましく思いながらもお粥を口に運ぶ。外食とは違う、素朴な味。だがきちんと出汁がきいていて、家庭的な味だ。


「美味しいです」
「おっ?まじ?よかった~!」
「意外ですね、料理ができるなんて」
「そりゃ薬とかも扱うから大体薬品と同・・・あ、それで思い出した。風邪薬作ってきたんだよ」


作ってきた?
買ってきた、などではなく?

そういえばあけの経歴を聞いた時、薬剤師としての知識があるため薬品を扱えるときいたことがある。それこそブラックな調合なども可能で毒薬を作り出して戦ったことがあるというのも大吾さんから聞いたことがある。
だからというわけではないが、俺は少しだけ嫌な予感がして首を横にふった。


「いえ、普通の風邪薬で治ると思いますから」
「そんなこというなよ、な?成分はほとんど風邪薬と同じだよ、市販の」
「ほとんどってなんですか」
「いやちょっとだけ栄養剤的なのも入れてるだけで全然大丈夫だって、な?」
「私を実験材料にするおつもりで?」
「・・・・・・そんなことないって!」
「貴方は嘘を吐くことを学んだほうがいいですよ」
「あ~~!!!」


渡されかけていた薬を奪い取り、放り投げる。
手作りの薬とはいえきちんとした袋には入っていたため、特にベッドルームに問題を起こすことなくその薬は俺たちの手から離れた。


「ちぇっ。じゃあ市販薬」
「まったく・・・・」


お粥を食べ終わったあと、俺は渡された薬を飲んだ。
お腹が満たされ、体が温まると自然と眠気が襲ってくる。その様子を見たあけが俺を寝かせようとベッドサイドから離れようとする気配を感じた。無意識に手を伸ばし、あけの手を掴む。


「っ・・・?」
「・・・・いかないでくれ」


あけはなにか言おうと数秒悩んだ様子を見せたが、何も言わず俺をまたいでベッドに入り込んだ。


「じゃ、私もねよー!」
「それはどうかと思うんですがね・・・・」
「えぇ?んだよ、だってただぼーっと見られてもつらいだろ?なら一緒に寝るほうがいいじゃねぇか、な?」
「・・・・・」
「お前が健康だったら絶対やらないんだから、ラッキーぐらいに思っとけよ。ま、今のお前なら襲われても殴り飛ばせるからな」


確かに俺の体では、彼女を襲うことは無理そうだった。
男と二人で寝るというのがどういうことか教えるよりも先に、眠気と気だるさで目が閉じていく。


「おやすみ、峯」


こんなにも、眠るのが心地よいと思ったのはいつぶりだろう。
そっと遠慮がちに頭を撫でていくぬくもりを感じながら俺は静かに目を閉じた。


















夢かと、思った。
目を開けずに耳を澄ませていた俺は、隣から少し涙声になってつぶやかれるあけの声を聞いた。


「ごめんな、峯。お前を・・・・止めれなくて」


あれからもう数ヶ月も経っているというのに。
彼女はまだ、自分のことのようにその罪を懺悔し続けている。俺よりも深く。


「私が傍にいたのに。だからこそ、今度こそ・・・頼むから、無理はしないでくれよ」


その声に、愛しさが膨らむのを感じながら、俺は再度夢の中へと微睡んだ。




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