Erdbeere ~苺~ 1.些細なことをきっかけに生まれるらしい 忍者ブログ
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2024年11月15日 (Fri)
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2021年05月28日 (Fri)



「生まれ変わったら・・・俺もそっちにいれるかな?​」


出会うのが、遅すぎた。

気づくのが、遅すぎた。

俺は流れに身を任せ、せめてもとこの男を巻き添えに。
暴れる男を羽交い締めにして目を瞑る。そして――――。

生まれ変わったら桐生さん、あんたのように俺も。
その願いは突然の銃声にかき消され、俺は思わず目を見開いた。
同時に足へ強い痛みが走り、俺は思わずバランスを崩してしまう。


「ッ」


それを待ってましたとばかりに一緒に戦っていたあけが俺の腕を掴み、全体重を掛けて俺を屋上側へと引き戻した。一緒に飛び降りようと羽交い締めにしていた男が暴れるのを見てあけは見向きもせず銃口だけをその男に構え、放った。後ろを見なくてもわかる。俺はあけを押し倒すように屋上へと倒れ込み、そして男はおそらく銃弾をくらい落ちただろう。

この女とは、変な縁があった。
もとは桐生さんの助け人で、最近では大吾さん専属の情報屋をやっていた女だ。
何かあったときに補佐をしてくれと大吾さんに頼まれたらしく、最近では共に仕事をすることも多かった。・・・・ただ、それだけ。

一緒にいる時間は確かに長かった。

だが長かっただけで俺はこの女にお金も、権力も、時間すらも与えていない。

なのにあけは、俺の下で号泣しながら俺の頬を容赦なく叩いた。
ぱちりと心地よい音が響き、桐生さんや大吾さんが息を呑むのが聞こえる。


「ふっっざけんな!!!生まれ変わったら!?んなもん信じてる暇があったら生きて償えよ!私はまだアサガオの件だって許してねぇ!!私の補佐を無視してこんなことになりやがったのもな!!」


なんでこいつは泣いているんだ?


「私はお前の補佐をしてきた!!だから・・・アサガオの件や、今回の件、情報屋だってのに気づけず止めれなかった私にも責任がある」


なんで、お前が。


「お前は絶対に死なせねぇ!・・・・もう一度、やり直してもらうからな。“こっち側“で!」


あけの瞳から涙がぼろぼろと溢れる。
それを無意識に優しく手の甲ですくった俺は、体中に走る痛みに蝕まれて意識を落とした。













「んで、調子はどうよ?」
「・・・まぁまぁ、です」
「よかったよかった」


俺が微妙な表情をしていることにすら気づかないのか、もしくは気づいていても気にしていないのか。あけはあれから入院する俺のもとへ毎日足を運んだ。
たまに桐生さんも来てくれ、大吾さんの様子や東城会の様子も教えてくれた。

白峯会は俺が招いた混乱のせいで色々と荒れているらしい。
今の状態になって俺を狙うもの、忠誠を誓って残ってくれているもの、立て直そうと躍起になって空回りしているもの。いずれにせよ、俺が退院出来る頃にはある程度戻れるように目処をつけると語るあけはどこか自信ありげだ。


「・・・なぜ、そこまで私にするのです」


何度考えても、この女が俺にそこまでする意味が分からなかった。

出会ったのは大吾さんとの紹介。金を払えばどんな情報でもとってくる凄腕の情報屋としても、喧嘩強い補佐としても、俺の護衛もかねて発展途上中の
白峯会を支える立場としてよく俺の仕事の手伝いをしてくれた。

秘書とは違い、どちらかといえば汚い仕事を共にする仲。
ただそれ以上でもそれ以下でもない。だからこそ俺は大吾さんからの紹介者として敬意はある程度払えど、彼女になにか利益になるようなことはしたことがない。

有効なビジネスパートナーならまだしも。
彼女は結局、俺から金を受け取ることなく仕事をしていたのだから。

でもそんな俺の疑問に、彼女は毎回同じ答えを返す。


「仲間だからだ」


それが理解できないから、聞いているというのに。
そう文句を言おうとした俺は、お茶を準備しようとしているあけの腕が珍しく汚れている事に気がついた。よく見ればそれは血のようで、シャツの内側には適当に巻いたであろう包帯が見えている。


あけ、こちらへ来ていただけますか」
「ん?はいはい、どうした?なんか足りないのがあったか?」


準備したお茶が差し出される。俺はそれを受け取って簡易テーブルへ置き、そのまま何も言わずあけの左腕を掴んだ。


「っ・・・・」
「・・・この怪我・・・一体、どうしたんです」


言えば強がって隠すだろうとわかっていた俺は、無理矢理に左腕の袖をまくりあげた。
一緒に包帯もまくりあげられ、出てきた傷は思ったよりも深く―――痕が残りそうな状態だった。ふさがっていないところを見ると、つい最近ついたものだろう。傷口を見る限り日常生活でつくような怪我じゃない。これは・・・・。


「ナイフかなにかで傷つけられたような傷に見えますね」
「あー、うんまぁ・・・大丈夫だ、すぐ治る」
「どこでこれを?」
「どこでって、そりゃ私の仕事上こんなの日常茶飯事だろ~?」
「・・・・そんなはずないでしょう。貴方の強さはよく知っている。そんな簡単にこんな傷を負わせる相手に遅れをとるわけないでしょう」
「・・・へぇ、意外と信頼してくれてんだな?」


からかうように笑うあけに苛立ちながらも無言で睨みつければ、観念したようにあけが両手を上げて話始めた。


「そんな怖い顔すんなよ。・・・
白峯会絡みでちょっとな」
「・・・やはりですか」


想像は出来る。全てが俺に従順についてくる奴らばかりじゃない、それが極道だ。
大吾さんのような信頼関係のもとに成り立つ関係もあれば、俺と神田のような利益を貪るためだけの関係もある。俺の組に入った奴らも、純粋に俺についてきている奴らもいれば恐怖に支配された者、もちろん金や権力だけが目的だったもの、そんな有象無象がいるからこそ起きる俺の立場を奪おうとするものや俺自信へ恨みをぶつける反乱。

桐生さんの話を聞く限り、それらの作業は大吾さんから指示を仰ぎあけが一人で行っているという。下手すれば命が、いや――――女ならもっと悲惨な結末もありえるというのに、なぜここまでやるのかが俺には理解出来なかった。


「・・・・貴方がこんなに傷つく価値などないでしょう。今の私が、貴方になんの価値があるのですか?」
「ないよ」


はっきり、そう言われた。
思わずきょとんとすれば意地悪く笑うあけがずいと傷口と包帯を俺に押し付けた。
やれと言われてるのを理解した俺は、優しくあけの腕に包帯を巻いていく。


「価値がなくてもどうでもいいよ。返してもらおうとも思わない。ただお前はまた―――私と一緒に大吾を支えられるように戻ってきてくれれば、それで」
「それは・・・私でなくても、よいでしょう」
「悪いが私はお前と仕事をして、その立場には峯しかいないと思っていってる。・・・お前がなんと言おうと、そこは譲らない。お前じゃないと、ダメなんだ」


貴方は、なんでそう。
自然に嘘をついていないキレイな瞳でそんなことが言えるのですか?

大吾さんや桐生さんと同じだ。
この女には利益や金といったものを抜きにして魅力が溢れている。
苦しいぐらいに、真っ直ぐだ。
極道という世界が完全に絆だけの世界じゃないと、それでも本当の絆もあるものだと、知ったからこそ苦しく感じる。俺はそこに居て良いのかと。そんな俺の考えを見抜いたかのように俺のベッドに腰掛けたあけが顔をぐいと近づけた。


「言っただろ、お前にはこっち側に来てもらうってな。・・・信じさせてやるよ、お前が求めてる絆ってやつをな。逃げられると思うなよ?大吾も私も桐生も・・・逃がすつもりはねぇからな」


そう言い放って無邪気に笑う彼女を見て、俺はふと気がついた。

心地が良い。
あけと一緒にいるというこの空間がとても楽しく感じている。
自分はなぜ生きているのだろうかと疑問に思うことから、あけが来てくれることをどこか楽しく思う自分が芽生えている。

それはただ、彼女が俺を仲間だと認めてくれているからだと思っていた。
だが、違う。そのことに気づいたのはたった一瞬。彼女が俺に近づいてにっこりと普段見せない笑顔を見せたときだった。

女性の笑顔は何度も見てきた。
淫らな姿も、甘えた声も。
神室町トップとも言われる女の全ても、俺は見てきた。

それなのに優越感よりも満たすものが、あけにはあった。気づけば最後。包帯を巻く手がおぼつかなくなり、更に気持ちが加速する。


「(俺は・・・・)」


あぁ、俺は。
俺のために真剣に泣いて、考えて、戦って、傍にいてくれようとするこいつが。


「(好き、だったのか)」


包帯を巻き終わって俺のベッドから離れるあけに、寂しさを感じた。
思わずあとを追うように手を掴んでしまう。そんな俺の行動に驚いた表情を見せたあけは、少し考え込んだあと「あぁ!」と声を上げた。


「もしかしてタバコ?」
「は?」
「いや、タバコほしいのかなって・・・だめだぞ。まだお前は重症なんだから!そんな甘え方しても買いません!」
「い、いえ・・・違いますよ」
「あれ?そうなの?大吾はわりとタバコ吸いたいってうるさかったからなー。さすが、峯はちゃんと心得てるね」


気づいてしまえば厄介なものだ。
彼女から発せられる大吾さんや桐生さんの名前が邪魔に感じてしまう。


「(こんな気持ちになったのは、初めてだな)」


まるで初恋みたいだな。子供のようだ。
自分の苦笑にしながらああけの腕を離すと、あけは再度俺のベッドに座り直した。


「せっかくだし、もう少し喋るか」
「・・・いいんですか?忙しいのでしょう?」
「お前は退屈なんだろ?私を引き止めたいってぐらいにはさ」
「・・・・」
「じょーだんだよ。でも、お前もずっとこんなところじゃ退屈だろ?早く回復してもらわなきゃ困るんだから、私が一肌脱いでやるよ」


純粋に笑う彼女に、今この芽生えた気持ちは隠して。


「・・・フッ。それでは、甘えることにしましょうか」


俺は今日、本当の恋を覚えた。



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