Erdbeere ~苺~ 歌に導かれた先は 忍者ブログ
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2012年06月17日 (Sun)
~もしもオペラ座だったら~
(オペラ座パロ/狂愛/桐生さん視点)

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俺は一人だった。
何もかもを失い、怪人と恐れられ、闇に潜む日々。

それを壊したのは、とある少女だった。

このオペラ座にやってきた、乱暴者の少女。
口が悪く、見た目も格別美しいわけじゃない。
それなのにどこか惹かれる性格と、歌声を持っていた。


「ねぇ、どうして、捕まえてくれないの?」


彼女が歌う歌には、特徴のあるものが多いことを俺は知っている。
何故なら、歌の練習に付き合っていたのが俺だからだ。

誘惑的な歌詞。
どこかへ誘うような透き通る声質。
甘く可愛らしい声。

その全てが、俺が俺自身のために育てた歌声。
乱暴者で一人ぼっちだった彼女を救い、歌わせた俺のためのモノ。


「さぁ、私と踊りましょう?」


一人でに歌いながら、見えない誰かと踊る。
最初は俺に縋り、俺の言うとおりに歌っていた彼女が、最近遠くを見つめるようになった。

ああやって踊っているのも、本当に一人なのかと疑ってしまう。

お前は誰を見るようになったんだ?
お前は、誰を想って踊っているんだ?


「どうしても、貴方に狂わされてみたいの」


今歌っている歌も、歌詞も。
全てが俺を捕まえて、離さない。

一目惚れなのか、それとも彼女の声に狂わされてしまっただけなのか。
俺自身も分からないまま、俺はまた彼女を逃がさないように近づく。


「ねぇ――――」
あけ
「ッ・・・・」


姿を現さず、陰から声を掛けた。
歌っていたあけはハッと目を見開き、歌うのを止める。

その行動が少し慌てたように見えて、俺の神経を逆撫でした。
お前は俺のものだ。分かってるだろ?
お前は俺がいなきゃ歌えなかったんだ・・・教えただろ?

なのにどうして、そんな顔して歌ってるんだ。


「お前の歌は、声は・・・誰のもんだ?」
「・・・そんなの・・・今更、確認する必要ねぇだろ」
「相変わらずの口の悪さだな、お前は」
「うっせぇよ・・・・お前だって相変わらず、顔隠しやがって」


背後に立っていた俺の方を向いたあけは、つまらなさそうに顔を顰めた。
仮面に隠された俺の素顔。それを知る存在は一人も居ない。

俺は全てを失った時から、誰にもこの顔を見せないと決めた。
俺の心を、素顔を、知る者など居なくて良い。

一生孤独を貫き、得たいものだけを得る。それで。


「なんだ?・・・不満か?」
「お前だけ私の情報知りやがって」
「お前が知る必要はない。それとも知って・・・逃げられなくなりたいか?」


俺のこの仮面は、理性のタガでもある。
彼女を支配しようとする自らの欲望を、押し留めるための仮面。

さぁ、今は俺だけを見ろ。
そうやって俺に興味を示して、俺の言うとおりに歌えば良い。


「さぁ」


手を差し伸べ、誘う。
彼女が俺のためだけに歌う場所へと。

この手を取ったら最後。
後戻りは出来ない。
いつもと同じ、この夜から朝まで誘惑の時間を過ごす。

彼女は俺の言うとおり歌い、言うとおりに踊るだけ。


「お前に選択肢なんて無いだろ?」


何故迷う?
何故ためらう?

今までは何の疑いもなく、俺の手を取ってくれていたのに。

やはりお前は、誰か違う人を見ているんだな。
誰なんだ?お前が俺以外を見るなんて、そんなことをさせる奴は。


「なぁ・・・」
「あ・・・」
「お前は・・・誰のものなんだ?」


後ろから抱きしめ、逃げられぬよう耳元で囁く。
両手とも俺の手でがっちりと握り、彼女の反応を待った。

微かに震える彼女が、俺の手を戸惑いがちに握り返す。


嗚呼、そうだ。そうだな―――何を今さら俺は恐れていたんだ。


彼女がここに居る、それだけが答え。
逃げられないと分かっている時間を、彼女自身が求めてきているのだから。


「お前は・・・俺のものだ」


お前の声が俺のものであるように、俺の声もお前だけのものだ。
お前を惑わし、狂わせ、闇に誘うための声。

だから今日も素顔を隠し、お前に手を差し伸べる。
お前が完全に俺のモノとなり、人形と化すまで。


「さぁ、手を取れ」
「・・・っ」
「フッ・・・そうだ。それで良い。お前は俺のためだけに歌えば・・・それで良い」
「お前の、ため・・・に・・・・」
「あぁ・・・そうだ。お前の声も歌も、その心さえも・・・俺のものだ」


あけの瞳が虚ろになっていくのが、楽しくてしょうがない。
誰なんだろうな?お前が想いながら踊っていた相手は。

その相手はお前を見て、どう思うんだろうな?

俺は仮面の裏で笑みを浮かべながら、ぼーっとするあけの手を取った。
今夜も長くずっと、永遠に、二人で歌を歌っていよう。
逃げられねぇように教えてやるよ―――また、お前に、新しい歌を。





























彼女の口から紡がれる歌が増えるたび、俺は笑う
(その歌こそが、彼女を縛る欲望の“鎖”)
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