Erdbeere ~苺~ 盗む側が盗まれたら終わり 忍者ブログ
2024.11│ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
いらっしゃいませ!
名前変更所
2024年11月15日 (Fri)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2022年05月22日 (Sun)

剣豪/甘々/ゾロのことが好きすぎてしまうヒロインの話

拍手




ゾロとくろねこがそういう関係になったのはつい最近のこと。

告白してきたのはゾロからだった。
さらっと、そして大胆にも、傍にいてほしいと言われた。
世界一の剣豪になるまでも、その瞬間も、その後も、傍で笑って見ていてほしいと熱烈な言葉を言われたくろねこは、正直戸惑っていた。

何故私に?
もっといい女が傍にいながら、どうして。
私がミホークの娘だから?

色々な葛藤を孕んだ日常の中で、段々と深くなっていく思いに比例するため息を一つ漏らしたくろねこは、甲板でトレーニングに励むゾロの背中をぼーっと眺めていた。




盗む側が盗まれたら終わり





「お熱いわね~。そんなに気になるなら傍で見てればいいじゃない?」


サンジが作ってくれたドリンクを飲みながら佇んでいたくろねこの背中に、楽しそうなナミの声が投げかけられた。その声に思わずビクッと肩を跳ねさせる様子を見て、ナミは更に楽しそうに笑みを深める。


「ずーーーっと見てるわよね?ゾロのこと」
「う・・・・」
「アンタもあの脳筋も恋愛には興味ないと思ってたのに・・・意外ねぇ」


ゾロの告白は、大胆にも皆が見ている場所で行われた。
そのせいでこの船での二人の関係は公認のものとなっている。

ナミの言う通り、これまで戦いの日々で男に興味を持ったことがなかったくろねこは、どうして自分自身があの時その告白を受け入れたのか、未だ分からないでいた。


「・・・・だから、だよ。どうしてあの時頷いたのか、知りたくて見てた」


今まで義賊として、色んな物を盗んできた。
時には気を持たせるようなことをして、心を盗んだことだってある。

でも、逆はなかった。
誰かに惹かれるなんてことは。


「呆れた。好きだったからじゃないの?」
「好きだ・・・とは、思うんだけど」


傍にいてほしい。

その言葉に、一つ返事で頷いた。
傍にいたいと思った。

でもそれが何故なのかは分からない。
ゾロの夢を見届けたいから?――――それも、ある。今まで色んな人と出会い、いろんな関係を築いてきた中で、立場上深く人を信用したりすることがなかったくろねこは、一人の存在に強く惹かれるということに慣れていなかった。

だが、そんなくろねこに対して、ナミはやれやれと肩をすくめる。


「はっきりしないわねぇ。好きなら好きでいいじゃない」
「そ、そうなんだけど。何でなのかなって」
「恋愛なんて理由がわかるほうが稀じゃない?こう・・・感覚的なものも強いはずよ?アンタも戦いじゃ基本的には感覚で戦ってるでしょ」
「そ・・・・うだけど」


もやもやとするくろねこの態度にナミは何か思いついたように悪戯な笑みを浮かべた。それに気づいていないくろねこは未だ唸り続けている。

そんなくろねこを強制的に自分側に向かせたナミは、悪戯な笑みを隠すこと無くくろねこに尋ねた。


「じゃあ聞くけど、ゾロに対してどう思ってるの?」
「どう・・・って?」
「傍にいてドキドキするとか、こういうところが好きとか、惚気聞かせてって言ってるのよ」
「のっ・・・・惚気・・・・?」
「口に出したほうが再認識出来ていいわよ~!ほら!早く言う!!!」


問答無用と圧を掛けてくるナミにどうにも逆らえなかったくろねこは、ぼそぼそと小さな声で答え始めた。


「ゾロは・・・その、他の人と違って・・・傍にいてドキドキするし、上手く顔見れないし、なんか・・・自分の醜い部分を見られたくないって思ってしまうし・・・・あと、やっぱり」


―――――彼が振るう剣は、とても綺麗なんだ。

まるで星を眺めるかのように、うっとりとそう告げるくろねこは誰から見ても恋をしていた。悩む必要もないぐらいの結果を見せられ、ナミは大きなため息を吐く。


「はい、アンタは確実にゾロにゾッコンよ。私の想像以上にね」
「うぐ・・・・」
「分かったらそういうのはゾロにも言ってあげると良いわよ。アンタ最近、そのせいでゾロのこと避けてたでしょ?」


狂おしいほどに、理解できない感情。
口にすればその重みを思い知って、苦しくなる。

それに戸惑い、ゾロを避けることで自分への落ち着きを取り戻そうとしていたくろねこは、ゾロを眺めることはしても、傍にいることは避けていた。

ナミの呆れ顔に罪悪感を覚えたくろねこは更に小さな声で言い訳を始める。


「・・・・だって、なんか、恥ずかしいのもあって・・・・」
「でも、言わなきゃ伝わらないことだってあるでしょ?」
「そ、そうなんだけどぉ・・・!」


未知の感情に振り回されている、といった状態なのだろう。
真っ赤な顔で、誰も聞いていない言い訳を続けるくろねこの後ろに、ナミが語りかける。


「―――――ね?ゾロ」


ぴたり。

くろねこの動きが、ものの見事に止まった。

漫画のような反応に吹き出したナミなんて、もはやくろねこの目には映っていない。ギギギと錆びついたロボットのように後ろを振り向いたくろねこは、いつの間にか自分の真後ろに立っていたゾロと目があって悲鳴を上げた。


「ぎゃーーーー!!!!」
「おばけみたいな扱いしてんじゃねェ!つーか待てコラ!逃げんな!」
「ごゆっくり~!」


全力で逃げ出したくろねこを追いかけるゾロの背中に、ナミのそんな言葉が投げかけられる。

いつもなら食ってかかる言葉だが、ゾロは無視して逃げ出したくろねこの後を追った。この狭い船内で、しかもゾロ相手に逃げ切れるわけもなく、船尾ですぐに捕まったくろねこは必死にゾロを見ないように顔を逸らした。


「い、いつから聞いてたの!」
「あ?最初から」
「っ~~~!」


湯気が出そうなほど真っ赤に染まった耳。

声にならない叫びを上げながら顔を隠すくろねこを更に船尾に追い詰め、座りこんだところに覆いかぶさるようにしゃがめば、くろねこはもう海を見るしか無い。


「こっち見ろ」
「あぁあぁぁ無理!!!!」
「なんで無理なんだよ」
「っさいな!聞いてたなら分かってんでしょこの意地悪!」
「上手く顔見れない、か?」


ゾロの香りを感じる。

それだけで、死んでしまいそうなほど心臓が痛くなる。

戦闘とは違う高揚感。
何もしてないのに荒くなる息を押さえることが出来ない。

恋人になってからというもの、このせいでゾロを避けまくっていたくろねこにとって、この距離は本当に死を覚悟する状況だった。顔を隠していた手を掴まれ、力付くでどかされても、ぎゅっと目を瞑ってゾロを見ないようにする。


「くっ・・・・ははは!お前、どんだけ必死なんだよ」
「うるさいなっ」
「まぁ、別にいいけどよ。見てないと困るのはお前だと思うぜ」


いつもより低くなった声。
嫌な予感を感じて身を引こうにも、追い詰められたくろねこに逃げ場はない。


くろねこ


耳元を擽る吐息。
掠れた声で呼ばれる、名前。

ぞくりと背筋を走る感覚に思わず吐息を漏らせば、耳元に触れたゾロの唇が孤を描くのを感じた。そのままその唇が下に下がり、音を立てて頬に触れる。


「敵の前で目を瞑るなんざ、好きにしてくれって言ってんのと同じだろ」
「・・・・っ、ゾロは、敵じゃ・・・・」
「敵と同じだろ。襲ってんだからよ」


頬、顎、そして首筋。
抵抗出来ないくろねこの肌に、口づけが落ちていく。


「っ、ゾロ、待って」
「止めてほしけりゃこっち見ろ」
「わ・・・わかった、から」


告白を受けてすぐゾロから距離を置いたくろねこは、もちろんのこと恋人らしいことをゾロとするのは初めてだった。

そんな中でこんなことをされれば、思考回路も奪われる。
もう何もかもが分からなくなっていたくろねこは、ゾロに従って大人しく目を開けた。
潤んだ瞳が、ゾロの意地悪い笑みを映し出す。


「・・・・」
「・・・ゾロ?」
「お前、その顔他のやつに見せるなよ」
「え?う、うん・・・?」


そんな事言われても、自分が今どんな顔をしてるかなんて分からない。

そう言いたげなくろねこの唇を、ゾロが一瞬で奪った。

触れるだけの口づけを数回繰り返した後、唇を離したゾロの目がどこか据わっているように見えたのは気の所為ではないのだろう。その証拠に、息苦しそうにするくろねこの後頭部を強引に掴んだゾロが、「わりぃ」と呟きながら再度くろねこの唇を塞いだ。

謝罪なんて意味がないほど深い口づけに、くろねこの震える手がゾロの服を掴む。


「ん、ぅ」
「っ・・・は、わりぃ、本当に止まんねェ」
「んんっ、んー!」


初めての感情。

初めての感覚。

刀と戦いを中心に回っていたゾロの世界が、崩れた瞬間だった。
蝕んでいく熱は簡単には止められない。
疼く体を何とか理性で押さえつけて、ぎりぎりのところでくろねこを貪り続ける。


「ぅ・・・ばか・・・・」


何回かそれを繰り返してようやくくろねこを解放したゾロは、涙目のくろねこにそう罵られた。それでも悪い気がしないのは、くろねこの表情のせいだろう。


「んな顔で馬鹿って言われてもな」
「こんな顔以外出来ないでしょ!?人が!顔もまともに見れないって言ってるのに!!いきなりこんなっ・・・・!」
「見れてるじゃねぇか」
「・・・・そりゃここまでされたらね!?」


ここまで来てしまえば、もう顔を見れなかったときのことは忘れたに等しかった。


「死んじゃったらどーすんの!」
「あァ?最強の女剣士様がそんなんで死んだら笑いもんだな。俺が歴史に刻んどいてやるよ、その死に様を」
「残そうとすんな!殺そうとしたことを謝れ!!」


ようやくいつもの調子を取り戻したくろねこが、叫びながらゾロの頬を引っ張ろうとする。
その手を掴んでくろねこを抱き寄せたゾロは、くろねこが顔を逸らせないように自分の腕の中に閉じ込めて顎を掴んだ。


「そんなだっせぇ死に方したくなきゃ、俺を避けんな」
「好きで避けてたわけじゃないって、聞いてたでしょ!」
「それでも嫌なもんは嫌だろうが」
「・・・それは、ご、ごめん・・・・」
「・・・・・嫌われるようなことしちまったのかと思ったじゃねぇか」
「・・・・ごめん」


謝ることしか出来なくなったくろねこに、ゾロは安心したようなため息と意地悪い笑みを溢す。


「ま、今のでチャラにしてやるよ」
「・・・・ほんと、ごめん。その・・・言い訳になっちゃうけど、私ほんとに生まれてから今までずっと戦ってばっかりで、そういうことに疎くて・・・・」
「そりゃ、俺も同じだ」


過去は違えど、剣士が行き着く先は似たようなものだ。

それなのに何故ゾロは自分に、あんなことを言ったのだろう。


「それならどうしてゾロは、私にあんなことを言ったの?」
「あ?そりゃ、そうしてほしいと思ったからだろうが」
「その理由が知りたいんだけど」
「んなもん知るか。そう思ったんだよ。・・・・強いて言うなら」


―――――お前の剣が、真っ直ぐで綺麗だったからだ。


剣を極めようとする者の太刀筋には、その人の中身が映し出される。
故に、剣士同士は刀を合わせれば相手のことが分かる。
喋らなくても、本心や人となりが伝わってくるのだ。

つまり、太刀筋を褒めるのは、その剣士の全てを褒めるのと同じ。

剣士同士にしか分からない、最高の褒め言葉。


「・・・・・最高の褒め言葉を、ありがと」
「おめーもな」


顔を見合わせ、黙り込む。
自然と近づく顔。雰囲気的にそのまま口づけを――――と思ったところでくろねこが急に離れようともがきはじめた。


「ね、ちょっと、たんま」
「あー?」
「き、気づいてるでしょ、皆部屋から出てこようとしてる!」
「だから?」
「だからって・・・ちょっと・・・・ん!」


気配を察知することに長けているゾロが、気づいていないわけがない。
しかしゾロはその発言に笑みを深めるだけでくろねこを離そうとしなかった。それどころか強引に顎を持ち上げ、唇を塞ぐ。


「ッ~~~~ばか!!」


皆が部屋から出てくるまで、あと数秒。

足音も聞こえ始めたその時にようやく唇を離したゾロは、真っ赤になって腕から逃げ出したくろねこの背中を見てぺろりと舌なめずりをした。あぁ、思ったよりも、この感情は癖になりそうだ。




盗む側が盗まれたら終わり
(もう、二度と返ってこない。盗まれたハートも、唇も)
PR
←No.486No.485No.484No.483No.482No.481No.480No.478No.477No.476No.475
サイト紹介

※転載禁止
 公式とは無関係
 晒し迷惑行為等あり次第閉鎖
 検索避け済

◆管理人
 きつつき
◆サイト傾向
 ギャグ甘
 裏系グロ系は注意書放置
◆取り扱い
 夢小説
 ・龍如(桐生・峯・オール)
 ・海賊(ゾロ)
 ・DB(ベジータ・ピッコロ)
 ・テイルズ
 ・気まぐれ

◆Thanks!
見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。
現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。
(龍如/オール・海賊/剣豪)