Erdbeere ~苺~ 甘い罰 忍者ブログ
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2012年12月02日 (Sun)
胡土前様/ギャグ/甘々/微エロ/※ヒロイン視点

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オニが居なくなり、玉依姫も解放されたこの平和な世界。
姫様は宿命から解放された反動か、日に日にやんちゃになっていった。


「花を見ているのか?」
「空疎様」
「風邪を引くぞ?これでも羽織ると良い」
「ありがとうございます。でも、もう少しこれが見ていたくて・・・」


先代の玉依姫から姫さんを見守っていただけに、私はそれが嬉しかった。

そしてそれを静かに見守る、鴉の旦那。
季封村の復興を手助けするために村に残った私は、毎日のようにその光景を見ていた。

だが、平和になったとはいえ、全てが平和になったわけじゃない。
今まで通り事件は起こるし、悪い妖が出ることもある。


「お、落ち着いてください胡土前様!!」
「落ち着くわけねぇだろうが。止まれ!」
「ほ、本当に何でもございません!」
「嘘つくんじゃねぇよ!」


そして今私は、旦那である胡土前に追いかけられていた。
平和になったばかりの屋敷を、駆け抜ける私と胡土前。

何故追いかけられているかって?
その理由は、私の右肩にあった。
右肩に刻まれた深い傷跡―――これが、胡土前が怒っている理由。

オニとの最終決戦の時、胡土前を庇って負ってしまった傷。

心配かけたくなくて隠していたのだが、つい先ほど、治療中に胡土前が部屋に来てしまい・・・。


「姫様!!お助けくださいっ!!!」
「姫さん!そいつを捕まえてくれ!!」
「猫、蛇、騒がしいぞ」
「い、一体どうし・・・」


花を見ていた姫様と鴉の間に飛び込み、必死になって胡土前から身を隠した。
胡土前はこれ以上に無い殺気を放ちながら、私に対して手を伸ばす。

普段から胡土前はあまり怒らない性格の持ち主だ。
良い意味での大雑把さがあるのだが、今日はまったく違う。
姫様はそんな胡土前に戸惑い、とりあえず私を背中に隠してくれた。


「姫さん、そいつを渡してくれ」
「できません。とにかく、理由をおっしゃってください」
「・・・血の匂いがするな。怪我をしていたのか、猫」
「え?怪我?」


よ、余計なことを!
咄嗟に鴉を睨むがもう遅く、姫様の視線が私に鋭く突き刺さった。

そして向かうは、私の傷がある右肩。
それに気づいて手を引こうにも、姫様の手が私の手を掴んで離してくれなかった。


「うっ・・・!」
「・・・!!こ、こんな酷い怪我・・・一体どこで?」
「あ、いやー、まぁ・・・・」
水猫様?」
「・・・え、えっと・・・ですね」
水猫様」


誤魔化せない空気が漂い、私はボソッと呟いた。


「・・・オニと、戦った・・・時です」


オニと戦ったのは1週間前ほど。
それでも治らない傷は、傷がどれだけ深かったのかを露わにしている。

でも、あの時はしょうがなかった。
私が庇っていなければ、胡土前がこの傷を負うことになったのだ。

それだけはどうしても嫌だったから。

その気持ちを分かってくれたのか、姫様は私の腕を離した。


水猫様」
「姫様・・・ありが・・・」


瞬時に入れ替わる視界。
気付けば私は姫様では無く、胡土前の腕の中に居た。

あ、あれ?どういうこと?
姫様の方を見ると、鴉と一緒にニヤニヤと笑っている。


「え、や、あの」
「胡土前様。水猫様にしっかりと説教してあげてくださいね」
「あぁ、ありがとな」
「そ、そんな・・・!」
「無茶をするのは駄目だと申したはずです。ですよね、空疎様?」
「・・・あぁ。猫は少し無茶しすぎるところがある。たまには仕置きを受けたほうが大人しくなるのではないか?」
「う・・・」


鴉も姫様も、私の無茶ぶりを昔から知っていた。
だけど私にとってそれは普通であり、カミである以上、そんな簡単に死んだりしない。

前まではあまり怒られなかったのに。
姫様も鴉も、良い意味で丸くなったのだろう。
平和は、愛は、人を変えると、そういうことなのだろうか。


「胡土前様、あ、あの、おちつ、落ち着いてくださいっ!」
「うるせぇよ。こっち来い」
「いだだだだっ!痛いです!」


二人に見捨てられ、私はズルズルと屋敷の中に引きずり込まれた。
向かうは一直線。胡土前の部屋。


「胡土前様!」
「あんまり騒ぐと、この場で黙らせるぜ?」
「・・・わ、分かりました・・・」


今の胡土前は本気だ。
廊下で変なことをされたら堪らないので、大人しく引きずられることにした。

しばらく歩いたのち、胡土前の部屋にバンッと放り込まれる。
心配されていた私には乱暴に投げ捨てられ、受身を取れないまま地面に転がった。

見上げた先の胡土前がもの凄い顔をしていて、思わずヒクッと顔が引きつる。


「さぁーて?お前、俺との約束覚えてるか?」
「お、覚えています・・・」
「だったら話は早ぇ。・・・ま。まずは傷の手当をしねぇとな。ほら、手出せ」
「はい」


右腕を差し出すと、ゆっくり胡土前の手が私の傷を撫でた。
生温い暖かさが私の身体を支配し、傷を少しずつ塞いでいく。

胡土前の霊力が、私の身体に流れ込んできているのだ。
妙な感覚に目を瞑っていると、急に腕を引かれたのを感じて悲鳴を上げた。


「ひゃ!?」
「次は、消毒だ」
「え、待ってくださ・・・んっ!」


塞がり始めた傷痕を、胡土前の舌が味わうように辿る。
霊力が流れ込んでくる感覚とは違うものを感じ、私は思わず身体をくねらせた。

舐められたところが、急激に熱くなる。
甘噛みされればビクッと身体が震え、抑えきれない声が溢れた。


「んぁっ・・・」
「やっと大人しくなったな」
「あ、胡土前様・・・っ」
「愛してる、水猫。・・・だから俺に隠し事をするんじゃねぇ。特にこういうのは・・・」


また、傷痕を舌が這う。
胡土前の表情がヤケに真剣で、私はごくりと息を呑んだ。


「お前が傷つくのは見てられねぇからな・・・」
「あっ、や・・・!」
「おいおい。逃げようとするな。・・・まだお仕置きは終わってねぇんだぞ?」
「っ・・・!ま、待ってくださっ・・・!」


肩を傷つけないよう押し倒された。
優しい手つきにドキッとするも、襲われている事実は変わりなく。

真昼間だというのに私の服に手を掛ける胡土前を、必死に止めに掛かる。


「おかしいです!まだ、まだお昼ですからっ・・・!」
「ん?じゃあ、夜なら良いのか?」
「そんなわけないでしょう!」
「だったらどっちでも一緒だろ」
「違いますー!!」
「あー・・・めんどくせぇなぁ・・・」
「何を・・・んっぐ!?」


貪るような口付けに、私は抵抗する力を弱めた。
その隙を狙って、胡土前の大きな手が服の中に滑り込んでくる。

こうなってしまったら、もう抵抗出来る術は無い。
肌を厭らしく撫で上げる手が、胡土前の熱い吐息が、私の思考を壊していく。


「っは・・・ぁ、胡土前、さま・・・っ」
「お前に否定権はねぇよ。・・・これは、罰なんだからな」
「んっ、や、だって、胡土前、さまが・・・傷つくのは、見たく・・・あぁっ」
「・・・俺も同じだ。お前が傷つくのは、見たくねぇんだ」


強引なのに、優しい。
胡土前の口付けを必死に受け止め、やられっぱなしは気に食わないと私もその口付けに応えた。

まさか私がやり返すとは思わなかったのか、絡んだ舌に胡土前がニヤリと笑う。


「なんだ?・・・意外とやる気あるじゃねぇか」
「え、や、そういうことじゃなくて・・・・っ!」


・・・どうやら、逆効果だったようだ。
目が獣のような光を帯びているのに気づき、私は自分の今の行動が、どんなにいけないことだったかを知った。


「愛してる・・・水猫























そう言った彼の目は、私だけを真っ直ぐ見ていた。
(あなたに想われ、幸せです・・・胡土前様)
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