Erdbeere ~苺~ 4章 そしてこの出会いは 忍者ブログ
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2012年12月02日 (Sun)
4章/ヒロイン視点

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人通りの少ない場所に入る車。
警察の女は無言のまま、私たちを乗せて車を走らせていた。

だが、さすがに焦りと苛立ちを隠せない。
この車はどこに向かっているのか。どうして私たちだけ別なのか。

桐生も苛立ちを露わにし、狭山に対してキツイ言葉を掛ける。


「お前、俺達をどこに連れて行くつもりだ?」
「・・・・」
「おい。聞いているのか?」


さすがはヤクザ狩りの女だ。
桐生の低い声にもビクともせず、表情すら一切変えない。

このまま、連れて行かれるしかないのだろう。
逃げようにも車が止まってくれなきゃ、行動に移せねぇしな。

座席の死角で取り出した薬の瓶を、ひっそり取り出しやすい場所へと忍ばせる。


「・・・ここまでくれば、大丈夫だわ」


そんなことをしていると、急に狭山が車を止めた。
詳しい場所は分からないが、本当に人通りの少ない、裏通りのような場所。

周りに気を取られている間、狭山は何故か桐生の手錠を外していた。
急に解放された桐生は、呆気にとられた表情で私の方を見る。


「貴方も解放してあげるわ。早く手を出して」
「え?あ、あぁ」


薬を使う必要も無く、私の手も自由になった。

一体、何がしたいんだ?
解放するなら、私たちを捕まえた意味は?


「何故って顔してるわね」
「・・・そりゃ、するだろ」
「貴方達の身辺保護を頼まれたのよ。傷害罪は表向きの口実」
「身辺、保護・・・?」
「でももちろん、逃げようとすれば即座に逮捕するわ」


強い狭山の声に、私は隠していた薬をぎゅっと握りしめた。
どういった理由で身辺保護をしたのかは分からない時点で、まだ油断は出来ないからだ。

でもこれで、強硬手段を使って逃げるという事態にはならないだろう。
解放された手をぐいっと伸ばした私は、話を聞くために後部座席から身を乗り出した。


「なぁなぁ、これどういうこと?」
「・・・貴方達は大人しくしてればいいだけの事よ。貴方に教えることは何もないわ」


つめてぇやつ。
ボソッとそう呟けば、狭山の鋭い視線が私に突き刺さった。

なんか、私に似てるな・・・なんて。
そう思わずにはいられないほど、彼女の表情や雰囲気が私に似ているような気がした。

ま、こういう世界に居るんだ。数少ない女が似てしまう事なんて普通かもしれないが。


「そりゃそうだけど、少しぐらい聞かせてくれたって・・・」


途中まで言いかけて、私は口を閉ざした。
別に狭山を恐れたわけじゃない。前方のガラスから、何かが見えたような気がしたからだ。

もう少し身を乗り出し、見えたような気がした場所に目を凝らす。
前方に見えるビルから光が―――よく見ると、その光はこちらの方を狙って向けられていた。


「(あれは・・・)」


銃だ。
銃口の、光。


「わりぃ、桐生!」
「いきなりどうし・・・なっ!?」


咄嗟に身を引いた私は、許可を取ることなく勢いよく前の座席を下げた。
桐生が珍しく声を上げて後ろに転がるが、そんなこと気にしない。

次に狭山の座席の方に近づき、また一気に座席のレバーを下げる。


「ちょっと、貴方何をして・・・!」


パァンッ!!

ちょっと、遅かった。
座席が下がる瞬間に響いた銃声が、私の身体に痛みを走らせる。


「ぐっ・・・!!」


狭山の左肩から、赤い血が滴り落ちた。
座席を下すのが少し遅れたため、弾丸が掠ってしまったのだろう。

そして避けるのが遅れてしまった私は、もちろんのこと、弾丸を左肩に受けていた。
弾丸の通り抜けた後が見当たらない。もしかして、貫通していない?
確認しようとして左肩をずらすと、意識が飛ぶほどの激痛が走った。


「あぐっ!!!」
あけ!おい、あけ!!」
「騒ぐなよ・・・大丈夫、だ」
「弾丸が貫通してない。このままじゃ危険だ!」


車から降りた桐生は、すぐに後部座席の扉を開け、私の傷口を押さえつける。
そして弾丸が貫通してないことを確認した後、狭山の傷も確かめた。

狭山の傷はそこまで深くないようで、狭山自体も意識があるようだ。
だが痛いのには変わりないだろう。表情が痛みに歪んでいる。


「おい、近くの病院はどこだ」
「・・・蒼天掘り・・・」
「何?」
「蒼天掘りの、スナック、葵ってところへ・・・」
「スナック?・・・チッ」


掠っただけとはいえ、弾丸が当たった傷はそう浅くない。
急激な出血についに意識を手放した狭山を見て、桐生が苛立ちながら狭山を抱きかかえた。

それから私と狭山を見比べ、どうするかと悩む様子を見せる。
ったく、しょうがねぇよな。痛みに慣れてる私は、まだ意識を保つ余裕があった。

出血は酷いが、痛み止めで痛みだけでも食い止めることにする。


「っは・・・ほら、行くぜ、桐生」
「お前・・・血が・・・!」
「しょうがねぇだろ、ソイツの方が意識飛ばしちまったんだ。私は、まだ、痛み止め飲んだから・・・平気だ」
「痛みはなくても、出血は止められねぇだろうが!」
「そんな、怒られてもな・・・どうしようも、ねぇだろうが・・・。ほら、さっさと、行くぜ・・・」


















スナック葵。
狭山が気絶する間際にそう言った場所についた頃、私はもう目の前が見えていなかった。

白い霧がかかったような、変な感覚。
葵に入るのと同時に倒れ込んだ私を、スナックの中に居た女性が抱き起してくれた。


「あんた、どないしたん!?」
「怪我してるんだ。二人を、頼む!」
「・・・・何があったんか知らんけど、薫をそこに運んでくれへん?まずはこの子の治療や」


桐生はママの指示通り、狭山を奥のソファに運んだ。
そしてそのまま、机の上に医療箱を置き、止血するよう桐生に命じる。

ママさんの方は、どうやら私の治療をしてくれるようだ。
見た目は普通のスナックのママさんなのに、その手つきは素早く手慣れたものだった。
私はそれを見て安心し、薄らぐ意識の中で左肩を差し出した。


「撃たれたの、こっち。たぶんまだ弾残ってるかもしれねぇ」
「あんた・・・よくその状態で喋れるもんや・・・。普通なら気絶しとってもおかしくないで」
「痛みになれてるもんでね・・・・ぐっ・・・・」


さすがに治療の最中は、声を上げずにはいられなかった。
当たり前だ。たとえ手慣れた人の治療であっても、麻酔などといった設備は揃っていない。

麻酔なしの治療が、拷問と同じぐらいの痛みを伴うのは当り前のこと。

だが私は決して意識を飛ばさず、歯をくいしばって耐え続けた。


「もう少しや、我慢し・・・」
「っ・・ぐ、ぁっ・・・・!!」


チカチカと揺れる視界の中、桐生が心配そうに私のことを見つめている。
ああもう。そんな顔されたら痛がれないじゃねぇか。
桐生に見えないよう苦笑を浮かべ、それからそっと息を整える。

本当は、痛い。
でもあんな顔されたら、痛がるのさえ恥ずかしい。


「桐生、もう少しで終わるから待っててくれ」
「お前・・・・」
「心配すんなって、な?」


ぐいっと何かが引き抜かれる感触。
思わず意識がぐらつき、私は上半身をソファに横たわらせた。

でも、痛みは引いている。
どうやら残っていた弾を、取り出してくれたらしい。
テキパキと傷口を塞いでいくのを見ながら、駆け寄ってきた桐生に笑いかける。


「な?大丈夫だったろ?」
「ったく、少しは弱々しくしやがれ・・・」
「ん・・・」
「ほんまや。強がりすぎやで、アンタ」
「頑丈なだけが取り柄なんだよ、私は。それにしてもありがとな、ママ」
「・・・礼をいうのはこっちや。薫を連れてきてくれてありがとうな」


頭に乗せられる桐生の手の重みを感じながら、私は狭山とママを交互に見比べた。

似てはいない、が。
この物言い。もしかして親子だろうか。
桐生もそこは疑問に思ったのか、カウンターに移動しながら口を開く。


「あんた、この女の母親か?」
「ん?まぁ、そんなところやね。母親代わりみたいなもんやけど」
「なるほどな」
「どうしてそんなこと聞くん?」


会話を聞きつつ、傷の具合を確かめた。
そして机に転がっていた、私を撃った弾丸に目を向ける。

やっぱり、普通の銃弾より小さい。
殺す―――というよりは、脅しのために撃ったのかもしれないな。

誰が何のために、かは分らないが。

こんな小さな銃弾を使ってわざわざ狙うなんて、汚い奴らだ。


「俺も孤児だったからな。こいつが怪我をした時、あの女は名前じゃなくスナックの名前を呼んだ」
「・・・・」
「普通、ああいう状況でスナックの名前なんか出さねぇ、と思ったんだ」
「そう・・・。まぁ、そやな」
「悪い・・・気に障ったか?」
「ええんよええんよ。私そういうの気にしてへんから」


話が一段落つくのを待ち、私もカウンターの方へ移動した。
それを見た桐生が、明らかに不機嫌そうな表情を浮かべる。

だけど優しく手を差し伸べてくれる所を見ると、私の性格を理解してきているのだろう。
無茶してこそなんぼっていう、私の無茶無謀な性格を。


「言うこと聞かないやつだな、お前は」
「あーあー、うるせぇよ」
「・・・無茶したのが祟って寝込みでもしたら、お仕置きだからな」
「っ・・・・!?」


小声でそう呟かれ、私は慌てて桐生から顔を逸らした。
ママさんは不思議そうに私を見つめ、それから話の続きを始める。


「そういえばあんた達、見ない顔やね。薫の同業?それとも探偵か何か?」


探偵、か。
同業は違うけど、探偵と言われれば似た職業なのかもしれない。

言葉を濁す桐生を横目に、私は何の詫びれもなくそのことを口にした。


「むしろ敵だぜ。まぁでも、探偵に近いっちゃ近いかもしれねぇけど」
「・・・まぁ、そんなところだ」
「ふぅん。そうなんか・・・」


少し残念そうにしながら、何故そんなことを聞いたのか、ママは理由を話してくれた。
狭山の性格上、誰かに頼ったり、仲間を連れてくることがほとんどないのだと言う。

強がりな上に、孤児で、孤独。どれを聞いても、浮かぶのは私自身。
その話を聞いている最中、後ろから鋭い声が飛んだ。


「お喋りがすぎるで、ママ」


どうやら、狭山が目を覚ましたらしい。
後ろを振り返ると、傷口を押えた狭山が私たちを睨みつけている。


「薫。この人たちがあんたを運んでくれたんやで?礼ぐらい言ったらどうなん?」
「・・・・やくざ風情に礼言うほど、落ちぶれちゃないわ」
「薫!」


この女、どこか影があるな。
やくざを見る目が何よりも冷たい。何か個人的恨みでもあるのだろうか。

でもそれなら、私たちの保護など、引き受けないはず。
警戒しておいた方が良さそうだと構える私に、狭山が急に弾丸の方へ目を向けた。
血のついたそれをそっと手に取り、ブツブツと何かを呟きながら調べる。


「・・・・この弾丸のこと、調べてきた方がいいかもしれないわ」
「と、いうと?」
「この銃弾、普通のものじゃないわ。きっとどこか手に入れているルートがあるはずよ」
「それを探れば、犯人が分かるかもしれねぇってか」
「ええ」


こんなもので、私たちを狙うやつ。
無意識に郷龍会の名前を呟くと、狭山が首を横に振った。


「郷龍会は力でとことん相手を叩き潰すところよ。こんな小癪な手は使わないわ」
「・・・なるほど」


まぁ確かに、そうかもしれない。
龍司はあり得ないほど強く、誰よりも気迫があった。

あんな男が、こんな小さな仕掛け・・・するわけがない。
私は自分の肩に埋まっていた銃弾を手に取り、早速出かける準備を始めた。


「よし、行くぜ桐生」
「お前・・・」
「行くあてはあるの?」
「ん?あぁ、雀荘の情報屋に聞く」
「・・・・さすが鷹の情報屋ね。もうここのことまで押さえているなんて」
「・・・まぁな」


振り返りもせず、スナック葵を後にする。
狭山のほめ方に皮肉が込められているような気がして、少しだけ眉を潜めた。

後ろから着いてきていた桐生が、それに気づいたのか、私の頭を優しく撫でる。
・・・最近、やけに撫でられているような気がするのは気のせいだろうか。

ってか撫でんなよ。私のこと何歳だと思ってやがるんだ!


「こら!子供扱いするなっつってんだろ!?」
「俺から見たらガキだ」
「んだとー・・・・!!」
「ほら、行くぞ」


何の躊躇もなく手を繋がれ、私は一瞬にして怒る気力を無くした。
無くした、というか無くされたのだ。

こんなことされたら、恥ずかしくて普通に怒ることすら出来ない。
桐生はそれを分かっていてやっているのかもしれないが、私には聞く余裕すらなかった。































手の温もりに戸惑いながら、私はヨタヨタと雀荘を目指した。
(見えない桐生の表情が、少し笑っているような気がして―――むかついた)
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