Erdbeere ~苺~ 2.・・・逆らうつもりか? 忍者ブログ
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2012年12月04日 (Tue)
桐生一馬之介/シリアス

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2.・・・逆らうつもりか?


首筋が、痛い。
起きてすぐに感じたのは、鈍く走る痛み。

そして薄っすらと見える、桐生の姿。
それを確認した瞬間、私は痛みを忘れて身を起こそうとした。

しかし、身体は一切上がらない。


「・・・くっ・・・・!!」


身体を捻ってみると、腕が布のようなもので縛られていた。
逃げないようになのか、足にも足枷に見立てた布が括りつけてある。

なんて屈辱だ。
私は歯を食いしばり、何とか身体だけでも起こそうと動いた。
モゾモゾと虫のように動く私に気づき、桐生が私の身体を抱き起こす。


「っ、さ、触んな・・・」
「起き上がれなかったんだろ?」
「それなら、この布を解け・・・」
「それは却下だ」


何故、こうなったんだ?
本来なら私は、死んでいるはずなのに。

この男・・・桐生のせいで、私は縛られたまま、生かされていた。
任務を失敗した上に、その対象に生かされるなんて。

本当に、最悪だ。


「どうせ外したら、死ぬか殺しに来るかするんだろ」
「当たり前だろ!くそっ・・・いいから、これをっ・・・」
「良いから大人しくしてろ。どうせお前には俺は殺せねぇよ」
「それでお前に従うぐらいなら・・・死んでやる・・・!」


私の暮らす世界は決まっている。
それ以外に従うことも、生きることも考えてはいない。

桐生を鋭く睨み付けると、桐生がやれやれと首を横に振った。
呆れたようにため息を吐き、静かに私の頭を撫でる。


「無理するんじゃねぇ。お前はまだ子供だ。命を無駄にするな」
「ふっざけんな・・・私はもう大人だ!!子供扱いするんじゃねぇ!!」
「あーあー、分かったよ。やっぱりお前は話を聞かねぇやつだな」
「聞く必要なんて・・・っ」


ゾクリ、と。冷たい空気を空気を感じて口を閉ざした。
私の頭を撫でていた桐生が、急に冷たい表情を私に向ける。

やっぱりこいつ、只者じゃなかったんだな。
こんな殺気、普通の人が放てるわけがない。
さすがの私もこれには身を震わせ、怯えているのがばれないよう、視線を下に落とした。


「っ・・・・」
「・・・それでいい。お前は・・・俺に従ってればいい」
「絶対、いやだ」
「嫌でも従わせてやるさ。勝者は俺だ。・・・お前は死ぬことも、殺すことも、殺しの世界に戻ることも許さねぇ」
「・・・・ふざけ、やがって」


屈辱的。
だが、その内容は優しさに溢れていた。

つまり私に、普通に生きろと。そう言っているのだ。
でもその優しさは、私にとってはただの屈辱。

敵だった相手に命令され、従わされるなど、たとえ優しさでもゴメンだった。


「従わなくてもいい。従わせるだけだからな」
「・・・どうしてそんなに、私の命にこだわる。ちゃっちゃと殺してしまえば、簡単だろ」
「・・・・お前は本当に、それでいいのか?」
「え?」
「任務に失敗したら死ぬだけ。それで良いのかって聞いてるんだ」


それでいいのか、なんて。
愚問だ。私はそんな世界に生きてきたんだ。

少しの怖さはあるが、ためらいなど無い。
仕事を果たせない道具など、死ぬのが定め。
そう教えられる世界で生きてきたのだから、私に迷いなど無い。


「あぁ、良い」
「・・・そうか。なら、殺してやろうか?」
「・・・な、に?」
「殺してやるっていってんだ」


さっき死ぬことは許さないって言ったばかりじゃないか。
そんな風に口答えする暇もなく、私の首筋に冷たい切っ先が突きつけられた。

身体中に浴びる殺気。あと少しでも力を込めれば切れる刀。
心のどこかでまた、昨日のような死への恐怖が湧き出すのを感じ、静かに目を閉じた。

心を無にしろ。

私は道具なのだと、無心になれ。


「・・・・」
「・・・・・」


突きつけられた刀が、少し強く首元に食い込んだ。
小さく皮膚が切れる感覚に加え、温かいものが流れ出す。

そうか、これが血の感覚。
生きてくる中で任務を一度も失敗したことが無かった私は、その感覚に不思議な感情を抱いた。

その感情がなんなのか、次の感覚で知ることになる。


「ッ・・・が・・・!」


無言で押しこめられた刀。
先ほどより深々と刺さり始めた刀に、私はその感情を知った。

それは悲しさ。そして虚しさ。
死を目の前にして、どうして私はこんなことをしているのだろうと、そう思ったのだ。

一種の悟りなのかもしれない。

ああ、もうどうでも良い。
どうして死に恐怖するのか、どうしてこんなに忍びとして生きてきたのか。
何も分からない・・・このまま、死んでも構わない。

私は恐怖もろともその感情に包み、覚悟を決めてそっと目を開いた。


「・・・・」
「・・・・はぁ。やっぱり死にたくねぇんじゃねぇか」
「・・・・何?」
「お前、今自分がどんな表情してるか分かってるのか?・・・お前の心の奥底は、正直みたいだぜ」
「・・・そんな、こと」


桐生に促され、私は桶の中を覗き込んだ。
そこに映っていたのは、あり得ないほど悲しげな瞳を持った私の姿。

これが、私?
こんなに弱々しいのが、私?


「わた、し・・・」
「死にたくねぇんだろ?それなら素直に、そう言えよ」


そんなはず、ない。
死ぬのが運命。任務に食われる命。

そう思ってきた、ハズなのに。


「・・・私・・・」
「痛かっただろ?こっち来い。治療してやるよ」
「・・・別に、いい」
「強がるな。ほら、来い」


桐生はそう言うと、持っていた刀で私の足を繋いでいた布を切った。
そのまま何の躊躇も無く、私の手を縛っていた布も切り捨てる。


「どうして疑わないんだ。・・・もしこれが演技だったら、お前、私に殺されてたかもしれねぇんだぞ」
「ハッ。お前がそんな器用な嘘吐ける女じゃないことぐらい、見てて分かる」
「・・・」


この男には敵わない。
そう思い知らされた瞬間だった。

力においても、精神的な強さに置いても、私はこいつに勝てないだろう。
だから大人しく従い、傷の手当てを受けることにした。


「そこに座れ」
「ん」
「ったく、余計な手間かけさせやがって・・・・」


ぶつくさ言いながらも、桐生の手当ては優しい。
ゆっくりとした手つきで首元の血を拭い、血を止めるための布を巻きつける。

こんな風に治療してもらうことすら、初めてだった。
そのせいか、まともに桐生の方を見れず、恥ずかしさに顔を背ける。
するとそれを見ていた桐生が、身体を震わせて笑い始めた。


「な、なんだよ・・・っ!」
「お前は、そういう表情の方が似合ってるぜ」
「う・・・・うっさい」
「おいおい。仮にもお前の主だぜ?酷い言い草だな、ったく」
「別に私は、お前を主と認めたわけじゃ・・・!」


ぐー。


「っ!!!」
「お前、腹減ってんのか?」
「・・・ち、ちがっ・・・」


ぐー。

空気を読まず、私のお腹が鳴いた。
そりゃそうだ。私はあの日、任務のせいで何一つ口にしていなかったのだから。

あれから気絶して寝ていたのだとしたら、お腹が空いて当然。


「よし、んじゃあまずは飯でも食いに行くか」
「べ、別にいらない!」
「何言ってんだ。腹減ってんだろ?」
「でも・・・祇園は、苦手だ」
「良いから行くぞ」
「い、良いって・・・!」


手を掴まれ、無理やり立たされそうになる。
それに少し力を込めて抵抗すると、桐生が優しげな表情でニヤリと笑った。


「俺に逆らうつもりか?」


こんな所で主としての権限を使うなんて。
別に私はこいつを主を認めたわけじゃないが、その優しさに私は抵抗するのを止めた。

どうせ逆らい続けても、こいつは私を引きずっていくだろう。
そんな感じの男だ。こいつは。


「なんだ?ヤケに素直だな」
「油断するなよ。・・・いつか後ろから殺すかもしれねぇぜ」
「フッ・・・そういえばお前、名前聞いてなかったな」
「・・・名を名乗る時は、まずお前からだろ」
「めんどくせぇなぁ、お前は・・・」


まぁ、こいつの名前は知っているんだけれど。
やられっぱなしなのが気に食わなくて、気が付けば私は桐生に反抗の目を向けていた。

桐生はそれにもまったく動じず、静かに私に名前を教えた。


「俺の名前は桐生一馬之介だ」
「・・・・私はあけだ」
あけ、か。よろしくな、あけ
「よろしくなんてしねぇよ」
「・・・はぁ。お前は本当に・・・しょうがねぇなぁ」


呆れたような桐生の声。
それに少し安堵してしまった感情の名を、私はまだ知らない。

























こんなに人に触れたのは、何年ぶりだろうか。
(何年ぶり?いやきっと・・・初めてかもしれないな)
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