いらっしゃいませ!
名前変更所
リオンとあけの、非番が重なる時はいつもこうだ。
自分の顔を鏡で見ながらふるふる震えているリオンに、シャルは「また始まった」と心の中で苦笑いを浮かべた。
短編.悪戯っ子出動!
『いやー!坊ちゃん、似合ってますよそれ!・・・・ぷぷっ』
「黙れシャル・・・・」
リオンの指が、噴出したシャルのコアクリスタルに爪を立てる。
するとシャルから悲鳴が上がり、リオンはそのまま鏡に映る自分の姿を睨みつけた。
鏡に映る、自分の顔。
いつも美少年と言われる美しいリオンの顔には今、黒いペンでへんてこなラクガキがされていた。
こんなことをするのは、アイツ一人だけだ。
眠っているリオンに警戒を抱かせずに近づけるのも、彼女一人だから。
「おい!あけ!どこにいる!?」
「わわ、起きてきた!」
「そこかっ!」
部屋を勢いよく出てきたリオンに、あけが慌てて逃げ出そうとする。
しかしリオンも負けじとあけの姿を捉え、恐ろしく殺気の籠った瞳で睨みつけた。
『てか坊ちゃん、まずラクガキを落としてからの方がいいんじゃ・・・』
「黙れ!まずはアイツを殺すのが先だ!」
『うわー・・・・完全にまえが見えなくなってるよ、坊ちゃん・・・・』
傍観者の目から見たら、微笑ましい映像かもしれない。
だがリオンは、ラクガキされた顔をメイド達に見られることも考えられないぐらい頭に血が上っており、その殺気をひしひしと刀身で受けているシャルは、何も言えなくなっていた。
まったく、なんで毎回こんな騒ぎが起きるのだろう。
逃げるあけは広い屋敷の中を猫のように走り回り、追いかけてくるリオンを器用にかわし続けた。
「くっ・・・・まて!あけ!」
「またないよーだ!それより、顔のラクガキ落してきた方がいいんじゃないのー?」
「貴様・・・・!」
あけがリオンの方を振り向き、我慢できずに噴き出す。
それがまたリオンの怒りを煽り、ついにシャルティエを鞘から抜き放った。
やっぱりこうなるのか、と。
シャルは何も言わず、ギリギリと力を込めてくるリオンの指示を待った。
こんな屋敷で、大規模な唱術は命じられないと思うが。
今のリオンだと何を言うか分からない・・・・・まるで保護者になったような気分を味わったシャルは、もう一度心の中で苦笑いを浮かべた。
「シャル、最小限の力でグレイブを出せるか?」
『いけますよ、坊ちゃん!』
「よし・・・・」
出来るだけ唱術を使うのがバレないようにシャルを下げ、あけがリオンに背を向けた瞬間に詠唱を始めた。
そして次にあけが振りかえった瞬間、完成した唱術を発動させる。
唱術の発動音に気づいたあけが、慌てて大きくジャンプしようとしたが、すでに遅く。
「グレイブ!」
少し、あけの足元のバランスを崩す程度の唱術。
しかしそれは思った以上の力を発揮し、あけの足元を掬うだけでなく、ちょうど階段だった場所に放り投げてしまう形になった。
あけは驚いているのか、高いところから落ちようとしているのに、受け身を取ろうとしない。
リオンは短く舌打ちすると、シャルを放り投げてあけが落ちるであろう階段下に素早く移動した。
そしてふんわりと、落ちてくるあけを優しき抱きとめる。
「!あ・・・・」
「まったく・・・・受け身ぐらいとれないのか?」
「だ、だってびっくりしたんだもん!・・・・ありがと~!」
「ふん・・・・」
満面の笑みでお礼を言って来たあけに、リオンが頬を赤らめる。
やっとほのぼのした雰囲気が戻ってきた―――――などと思っていた矢先、追いかけていた理由を思い出したリオンが、あけが逃げないように壁際に押さえつけた。
隙を窺って逃げようとしていたあけが、サッと顔を青くする。
あけが壁際に座り、その上から覆いかぶさるようにあけを押さえつけるリオン・・・・・なんだ、なんなんだこの体勢は。
リオンとの近さに、次は顔を真っ赤にしたあけが叫ぶ。
「ちょちょちょちょ!近い近い!近いよー!?」
「近くしてるんだ。近くて当たり前だろう」
「ぎゃー!耳元で囁くなー!」
じたばたと、男と女の差では敵わない力で逃げようとする。
華奢に見えるリオンでも、やはり力は男のもので。
いくら戦える力を持っているあけでも、それを押し返すことは不可能だった。
「ぬおー!はなしてー!」
「放せ、と言われて放すと思うか?」
「いーやーだー!何するの変態ピンク坊ちゃんはなーせ・・・・ひゃっ!?」
あけの悪口が、一瞬にして甘い声に変わる。
目の前のリオンを睨みつけるが、まったく威力がない。
あけの耳元を噛むようにして触れるリオンの唇が、あけの表情を先ほどとは違うものに変えていく。
「っ・・・・や、やめろー!このへんったいっ!」
「・・・・・あけ、僕は怒ってるんだぞ?」
「そ、それがなにさ~!」
「これ以上僕を怒らせると、どうなるか分かっているだろう?」
いつもより声が低くなったのを感じて、さすがにやばいと思ったあけが謝ろうと口を開く。
だが、その口はリオンの唇によってあっけなく塞がれてしまった。
何か言いたげに「んー!」というくぐもった声が聞こえるが、それさえも気にせずにリオンは口づけを続けた。
屋敷内に響いていた声が、シンと静まり返る。
放り投げられていたシャルはそれだけで、あけがリオンに捕まったことを感じていた。
「ふ・・・!」
「フン・・・・やっと大人しくなったな」
「う、ぅ~!」
もう逃げようとはしないだろうが、リオンはとどめを刺すように、濡れた瞳で睨みつけてくるあけに囁いた。
「今日は非番だ・・・・覚悟は、できてるな?」
「っ!!??」
それから数秒後、朝ごはんはいらないとメイドに伝えて自分の部屋に戻って行くリオンの姿があった。
もちろん、その腕の中には、涙目で暴れるあけを抱えながら。
意地っ張りな彼と、挑発する彼女
(どんな形であれ、お似合いの二人)
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