いらっしゃいませ!
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空のグラスに、綺麗なピンク色のカクテルが注がれる。
伊達が心配そうに見守る中、あけは一気にそのカクテルを飲み干した。
周りにはお酒の瓶が散乱しており、セレナに強烈なお酒の匂いが漂う。
あけがこうなった原因は、秋山と伊達にあった。
冗談半分で「お酒を飲んだら素直になれる」といって、飲ませまくったのが引き金になってしまったらしい。
最初は冗談で付き合っていたあけも、ほろ酔い気分になってから飲むスピードをがっつり上げた。
飲み勝負だの、一気飲みだの、久しぶりの和やかな空気に酔いしれていたくて。
皆して付き合ってしまったのが、間違いだったのかもしれない。
「ちょっとあけちゃん・・・もうそろそろやめた方がいいよ?」
「っせぇよ。たまにはいっぱい飲ませろよ~」
「これで酔いつぶれないあけもあけだな・・・」
伊達と秋山が、顔を見合わせながら頭を掻く。
悪酔いしたりはしてないものの、これ以上飲むと危険なことは確かだ。
飲みに付き合っていた秋山と伊達は、もうギブアップ段階に入っている。
むしろこのまま良い潰しちゃえば?という提案に、伊達が深いため息を吐いた。
「おいおい。酔っぱらって暴れられたら、こっちが大変なんだからな」
「大丈夫なんじゃないのー?むしろ、本当に素直になったりするかもしれないしさ」
「・・・面白がってんじゃねぇか・・・まったく・・・」
セレナのママさんがいないため、片づけも全て伊達がやることになっている。
単純に仕事を増やさせるのが嫌なのだろう。
まぁ、後あるとすれば、桐生がうるさい事ぐらいだろうか?
「おいあけ。そのぐらいにしとかないと桐生が・・・」
「俺がどうしたんだ?伊達さん」
「おお!桐生!良いところに帰ってきた!」
「ん?・・・なんだ、これは」
帰って来るなり襲い掛かる、激しいアルコールの匂い。
桐生は伊達と秋山がヘルプを出している理由を見つけ、飽きれた表情を浮かべた。
お酒の中では強い類を一気飲みするあけ。
どうしてこうなったのか分からない桐生は、原因っぽい秋山の隣に座って話を聞く。
「どうしてこうなってんだ?」
「いやぁ・・・ちょっと浴びるように飲んでみようって提案したら、案外乗られちゃいましてねぇ」
「すまねぇな、桐生。完全に俺たちのせいだ」
「・・・・いや、気にす・・・っ」
気にするな、と口を開こうとした桐生が、苦しそうに首を押さえた。
犯人はもちろん、後ろに座っていたあけだ。
先ほどの一杯で完全に酔っぱらってしまったのか、真っ赤な顔で力いっぱい抱き着いてくる。
秋山と伊達は静かに顔を見合わせると、あけと桐生の様子を見守った。
あけは二人のことなどお構いなしに、桐生の首に手を回す。
「お、おい、あけ」
「・・・一馬」
「・・・っ!?」
人前では決して、いや、桐生の前でも決して甘えたりしないあけが。
紡がれた声は明らかに甘く、子供の様に縋り付く様は甘えてるとしか思えない。
最初は悪ふざけかと思った桐生だったが、次の一言に本気だということを知った。
「一馬・・・キスしよ?」
冗談だとしても、こんなことは言えないだろう。
伊達と秋山が見ないふりをして楽しんでいるのを感じながら、桐生はあけの頬をゆっくり撫でた。
撫でた頬が、焼けるように熱い。
真っ赤な頬。色っぽい唇。潤んだ瞳。
この状況に理性を保てなんて、無理な話に近い。
「・・・伊達さん、奥の部屋借りていいか?」
「あ?あぁ・・・あけを休ませてやってくれ」
「・・・ごゆっくり」
心配する伊達とは逆に、桐生の心を読んで楽しそうにする秋山。
そんな秋山にやれやれと首を振った桐生は、あけを抱え込むようにして奥の部屋へと運んだ。
ふわりと香る、甘い女性の香り。
それに混ざり合うアルコールの香りは、先ほどより気にならない。
今はそれよりも、理性を揺らがすあけの瞳の方が気になってしょうがなかった。
まるで分かっていて誘うような、潤んだ瞳と肌蹴た服。
隣に腰を下ろした桐生を、自分の方へ引き寄せようとする。
「・・・一馬、キスまだー?」
「お前、酔うと性格変わるんだな」
「変わってないよ?」
いや、明らかに変わってる。
そうツッコミを入れようとした桐生の唇に、あけの唇が重なった。
喧嘩を吹っ掛けられれば逆にやり返し、素直になれといってもならない。
素直になるときと言えば、それこそ夜の営みの時だけ。
いじめにいじめ、焦らしつくして素直にさせる。それが桐生の楽しみでもあった。
でも、今のあけは“女”そのもの。
素直というより、素の姿なのかもしれない。
「おい、あけ」
「なーに?」
「これ以上したら、どうなるか・・・分からねぇぞ?それでもいいのか?」
会話の合間にも腕を絡め、甘えてくる。
それに己の理性の限界を感じた桐生は、意味の成さない確認をとった。
返事など、既に分かりきったことなのに。
「うん、いいよ」
その返事を聞いて、桐生はあけをソファに押し倒した。
珍しく余裕がないのが、自分でも良く分かる。
焦る手で肌蹴たシャツを取り払い、白い肌に舌を這わせていく。
甘い。凄く甘い。
早く、壊してしまいたい。
「はぁっ・・・ぅ・・・」
「今日は声を抑えないんだな」
「ひゃ、あっ!は、ン・・・!」
まったく抵抗しない彼女を組み敷く快感。
いつもとは違うあけの姿を見ているだけで、壊れてしまいそうだった。
酔いで甘え上戸になったのか。
それとも、あけの素がでてきたのか。
分からないままあけを鳴かせ、溢れ出す蜜を楽しむ。
「あぁああぁっ・・・!」
「こんなに濡らしやがって・・・気持ちよかったのか?」
「・・・う、んっ・・・おかし、く、なりそ・・・!」
「もっと狂わせてやるよ」
もう、酔いなんてどうでも良かった。
自分だけに見せる表情を、もっともっと見たかったから。
狂わせて、壊して、酔いがさめた後の反応も見てみたい。
桐生は早くも限界を感じ、己の熱をあけの濡れた場所へと近づけた。
それを感じとったのか、あけが嬉しそうに抱き着いてくる。
「一馬・・・」
「なんだ?」
「一馬が、欲し、い・・・」
「ッ・・・・」
たった一言に全ての理性を失った桐生は、焦らすことなくあけの中へ熱を侵入させた。
いきなりのことに痛がるあけを、労わってあげる余裕も無い。
「あけ・・・あけ・・・」
「ひゃ、あぁあぁっ、はうっ、んっ!」
「ほら、もっと鳴けよっ・・・!」
「あぁあ、ふ、ぅ!」
何度も何度も、唇を重ねる。
絡み合う舌を味わい、鳴けと言っておきながらその声さえも全て呑み込んだ。
限界に近い熱を一気に奥まで突けば、あけから苦しそうな声が上がる。
「あけ、そろそろっ・・・」
「か、ずま・・・!好き・・・、愛して、る・・・!」
「・・・あぁ。俺も、だ・・・!」
余裕を削られているのはお互い様なのかもしれない。
滅多に聞けない「愛してる」という言葉に、桐生はあけの全てを壊した。
声が枯れるまで鳴かせ、自分の欲望のままに突き上げる。
どれだけ無茶なことをしても嫌がらない。
それに罪悪感を覚えながらも、止めようとする選択肢は無かった。
これがあけの本音なのだとしたら。
我慢なんて、出来るはずがない。
「あけっ・・・!」
「かず、ま・・・!あぁあ、ひゃぁあぁぁっ!」
あけの甲高い声と共に放つ、己の欲望。
全てをあけに注ぎ込んだ桐生は、治まりそうにない熱に苦笑いを浮かべた。
明日起きたとき、顔を真っ赤にして怒られるだろう。
桐生はあけに優しく口付けると、「煽った責任をとれ」と囁き、再びあけを求めて動いた。
「まじ、かよ・・・」
自分の肌に残る無数の痕。
そして隣に感じる、桐生の温もり。
目を覚ましたあけは、昨日の事が夢じゃないと知った瞬間、顔を真っ赤にして桐生から離れた。
「っあぐ・・・!」
しかし、腰が思ったようにいう事をきいてくれない。
腰の痛みに崩れ落ちたあけを、起き上がった桐生がさっと抱きかかえる。
「・・・酔いはさめたか?」
意地悪い笑顔で聞いてくる桐生に、あけは何も言う事が出来ずにいた。
口をぱくぱくと開き、何かを言いかけては閉じる。
顔はお酒を飲んでいた時よりも真っ赤に染まり、あけが本気で恥ずかしがっているのが見て取れた。
それでも桐生は容赦せず、逃がさないとばかりに耳元で囁く。
耳元で桐生の声を聞いたあけは、昨日の事も重なって全身の力が抜け落ちていくのを感じた。
「お前普段、本当はあんなこと考えてるんだな?」
「ち、ちがう・・・!」
「違う?じゃあ、昨日俺を求めてくれたのは嘘ってことか」
「そんなことねぇよ!」
「それじゃあ、本当なんだろう?」
「う・・・!」
乱れ、誘い。
狂うように鳴き、それでも素直に桐生を求める。
普段のあけなら考えられないことを、昨日はしたのだ。
あけは震える声で桐生の名前を呼ぶと、胸に顔を隠しながら口を開いた。
「そう、だよ・・・。嘘じゃねぇ」
「・・・あけ」
「好きだ。大好き、なんだ・・・」
「あぁ。俺もだ・・・あけ」
甘ったるい声を味わいながら、あけに深い口付けを落とす。
朝からまた桐生の愛を身体で受けたあけは、夕方まで動けないことを覚悟して目を閉じた。
素直になれなくても、分かっているから。
(部屋の外では、伊達と秋山が楽しそうに笑っていた)
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