Erdbeere ~苺~ 4章(2) 血の中で 忍者ブログ
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2011年11月27日 (Sun)
4章2部/ヒロイン視点

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攫われたユウヤとその彼女のミユを助けた後、私は桐生から説教を食らっていた。
理由は、ショーパブでの無茶に続き、ユウヤ達を助ける時に無茶したこと。


あんまり心配されたこと無いから、桐生の説教が凄くくすぐったい。
ちょっと前までは冷たい感じだったのに、急にお父さんっぽくなりやがって。

そんな心の愚痴を感じたのか、桐生がギリリと私の頭を掴む。


「ぎゃー!痛いッ!痛い痛いッ!」
「無茶するなっていうのが、お前には分からねぇのか!」
「いたいー!はげるっつってんだろぉ!」


まるで兄弟のようなやり取りに、少し嬉しい気持ちもあった。
情報屋としての繋がり以外、ずっと一人ぼっちだったから。

・・・でも、あんまり長い説教は勘弁だ。

聞き流しても続いている説教に、ハァと深いため息を吐く。
次の目的地であるバッカスまでは、あともう少し。


「お前、お父さんみたいだぞ。お父さん!」
「うるせぇ。てめぇがガキなのがいけないんだろうが」
「ガキっていうな!」


確かに桐生は私より年上だ。それも10歳ほど。
だからって、ガキ扱いされるのは気に食わない。
やっとバッカスについてもガキ扱いは止まらず、私は桐生の背中を睨み付けながら階段を上った。


扉を開けてすぐ、漂ってきたのは血の匂い。

桐生が入口を塞ぐように足を止めたため、私もいったん足を止めた。

中の様子は、まだ見えない。でも何となく嫌な予感は感じている。
血の匂いに桐生の反応。
嫌な予感がしないほうが可笑しい。


「これ、は・・・」


絶句する桐生をようやく押しのけ、血の匂いが漂う部屋の中を見渡した。
つい先ほどまで飲んでいた店が、見るも無残なほど荒れている。

血の匂いに感じる、強い吐き気。
こういうのに慣れているとはいえ、得意なわけでもない。


「けほっ・・・」
「大丈夫か?」
「・・・あぁ」


心配してくれた桐生にお礼を言い、そのまま奥へと進む。
奥にも血が散乱しており、私には表情を歪めることしか出来なかった。
桐生はその中でも表情を崩さず、そして奥に居る何かを見つけてしゃがみ込んだ。


「おい、お前・・・」
「ひっ・・・!」


血だらけの中に座り込む、小学生ぐらいの少女。

そしてその手に握られている――――――銃。


状況を理解できない桐生は少女の手から銃を奪うと、怯えさせないようにゆっくりと口を開いた。
少女は震えながらも、必死に言葉を返そうとする。


「・・・何があった?」
「私がきたら・・・みんな、みんなもう・・・!」
「何しにここに?」
「お母さん探して・・・。私、色んな所で聞いて・・・」
「お前、名前は?」


黙り込んでしまった少女を見て、私は桐生の後頭部を叩いた。
状況を把握したい気持ちは分かるが、動揺している少女を質問責めにするのは可哀そうすぎる。

桐生も私の言いたいことを理解したのだろう。
静かに頷き、しゃがみ込んだ少女を安心させるように言った。


「とにかくここから出るぞ」


少女は特に返事をすることなく、俯いたまま。
こんな怖いところに一人でいたんだ。怖くないわけがない。

出来る限りの優しい笑みを浮かべ、安心させてあげようとする。 だが、少女の瞳に映った私の笑顔は、笑顔と呼ぶにはぎこちなさ過ぎた。
こういう時の自分が1番情けない。しっかりしなくちゃいけないのに。


あけ・・・大丈夫か?」
「あ?あぁ。私は大丈夫に決まってんだろ」


自分でも顔色が優れていないのは分かっていたことだった。
今は嘘でも、正気を保っていたくて。
見え見えの嘘をついて、自分自身を落ち着ける。

少女はお店を出てすぐの所で足を止めていた。
遅れてしまった私は、急いで少女と桐生の後を追う。


「ん?・・・あれは」


少女と桐生が立ち止まった、その先。
二人の目線を追うと、そこには1匹の子犬がいた。
やけに怯えた様子で・・・しかも、怪我をしている。

すると見えない場所から風を切る音が聞こえ、同時に子犬の悲鳴が上がった。
誰だと問い詰める暇もなく、石が飛んできた方から声が聞こえ始める。


「うわー!今の内臓いったっしょ!」
「残酷だなぁ~。もう早くトドメ刺しちゃえよ!」
「じゃあ、次俺な!」


楽しそうな、声が。

頭の中を一気に駆け巡る、不快感より強い“苛立ち”
それを桐生も感じ取ったのか、「やめて・・・」と呟いている少女の頭を優しく撫でた。


次の男が投げたものだと思われる石が飛んできた瞬間、桐生が一歩前に踏み出して石を手で受け止める。

たった一瞬の出来事。
石を投げていた男たちのヤジも聞かずに、桐生は振り返って私の方を見た。


あけ
「・・・任せろ」


カチリと合う、目と目。
それだけで私は桐生が何を望んでいるのか、理解することが出来た。

合図も無しに舞う、桐生が持っていた大きな石。
私はそれを、得意の足蹴りで投げた男の顔面に蹴り返した。
石は見事に男の顔面を捉え、グロテスクな音と共に男が崩れ落ちる。


「さすがだな」
「あたり、まえだろ・・・」


上手くいったのは良いけど、物凄く足が痛いです桐生さん。

さすがに石を足で蹴るのには問題がありすぎた。
ジンジンする足を引きずりながら、桐生と男たちの会話を見守る。


「なに・・・アンタ?」
「俺は今日、大変な一日でなぁ・・・すこぶる機嫌が悪いんだ」
「アァ?」
「運が悪かったんだよ・・・お前等は」
「・・・・そ~う?」


ぞろぞろと近づいてくる、無数の足音に私は拳を構えた。
どうやら、仲間がこれ以外にも居るらしい。
すっかり囲まれてしまった私たちは、背中合わせに立って笑い合った。

もちろん、余裕の笑みで。
こんなの怖いのは数だけだ。私はともかく、桐生がやられるわけない。


「桐生、そっちは任せた」
「お前こそ、こっちに迷惑かけるんじゃねぇぞ」


さぁ、弱い者イジメをしている奴らにお仕置きといこうか?
私と桐生はお互いにあくどい笑みを浮かべると、少女の前だということも忘れて男達を片付けに掛かった。























「私は遥、お前じゃない」
(質問攻めにしていた桐生がその一言に戸惑うのを見て、私は密かに笑っていた)
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