Erdbeere ~苺~ 3章 乱闘葬儀 忍者ブログ
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2011年11月26日 (Sat)
3章/ヒロイン視点

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「おーい・・・まじかよ」


スターダストで話を付けた次の日、私は葬式会場の前に居た。
サングラスをかけた、どっからどう見ても怪しい桐生と一緒に。

あの後スターダストで話を付けた桐生は、昔の仲間や知り合いに今の現状を聞いたらしく、直接風間のおじいちゃんに会いに行くと言って話を聞かなかった。


葬儀で席を外せないおじいちゃんに会いに行くことは、相当危険だ。
普通会いに行ける立場でもないし、変装しても怪しい人としてバレればその場を追い出されることになるだろう。


「・・・あぶねぇぞ?」
「分かってる。だが、俺は行くぜ」
「あー・・・もう」


本当に、前を見始めたら止まらない奴だなこいつ。
飽きれながらも、私はスーツを整える。


「見張りもいるみたいだし、私が先に行って見てくるから・・・お前は私の後について来いよ」


何だかんだ言いながら協力する私に、桐生が意地悪く笑った。
それにムカついて睨み付ければ、何事も無かったかのようにサングラスを掛け直す。


「・・・行くぞ」
「んのやろう・・・」


気に食わないが、無視して先に進むことにした。
バレないようにサングラスをしっかりかけ、巡回の目を掻い潜って先に進む。
見つかりかけたら参列者の中に紛れるという作戦で、徐々にだがゆっくりと入口へ歩いていく。

特にこの環境だと、桐生はともかく私も怪しい。
その道の者の葬式なのだ。まず女性というのが目立ってしまう。


「(・・・おい。そこの受付終わらせろ)」
「(俺がか?)」
「(当たり前だろ。適当に偽名で終わらせてこい。私がやると喋った時に女だってばれてめんどくさいからな)」


先に進んだところで受付を見つけた私は、桐生に受付を済ませてもらうことにした。

桐生が受付を済ませている間、とにかく怪しまれないようにする。
こういう潜入系はあまり慣れていないため、息苦しくて動きにくい。

情報屋として仕事するときは、潜入ではなく“変装”するからな。
行動を制限されるという違和感に、私はネクタイを軽く緩めた。


「ふぃー」
「おい。受付終わったぞ」
「あ、了解。んじゃ、あっちにいくぜ」


地図を見ながら、桐生の弟分であるシンジとの合流地点を目指す。
桐生とは会ってからまだ1日ちょっとしか経ってないが、やけに意気投合した感じがあった。


それが風間のおじいちゃんの知り合いだから、というものなのか。

それとも、昨日の夜に少し遊んだ時に打ち解けたのかは、私にも分からない。


とりあえず、桐生が真っ直ぐな極道者だということは分かった。
見た目は怖いのになぁ・・・とボソッと呟けば、それが聞こえたのか凄い顔で睨み付けられる。


「・・・何か、言ったか?」
「ナンデモアリマセン」


昨日の夜から、私たちはこんな感じだ。
私はこれ以上桐生を怒らせないようにし、地図に書いてあるシンジの場所を指差した。


「あれだ」


葬儀関係者しか入れない場所。それらしき裏口が向こうに見える。
私は桐生の腕を引っ張ってその場所へ急ごうとするが、門の前に人影を見つけて足を止めた。

誰だ、あいつ?シンジじゃないことは確かだ。
もしかしたら、裏口を見張ってるやつかもしれない。
念のため作っておいた偽の喪章を桐生にも着けさせ、その場をやり過ごそうとする。

が、そう上手く行くわけも無かった。
通り過ぎようとした瞬間に腕を捕まえられ、私は仕方なく足を止める。


「・・・!(こいつ、近江連合の・・・!)」
「ちょっと、顔貸してもらおうかい」
「・・・・近江、連合・・・」


ここで騒ぎを大きくするわけにもいかない。
私は桐生と目を合わせると、大人しく男の指示に従うことにした。


「正面から堂々とはのぉ・・・堂島の桐生はん」


男が差し出してきた“自分の写真”を見た桐生は、苛立った様子で口を開く。


「・・・何故、近江連合が俺を」
「頼まれたんや。・・・アンタの、元・兄弟に」


その言葉に、桐生の様子が変わったのを感じた。
戸惑った表情を見せ、落ち着きがなくなっている。

元・兄弟・・・か。

曖昧な所しか話が分からない私には、二人の会話を見届けることしか出来ない。


「錦山の組長さんから、写真の男を捕まえろってってな」
「・・・錦、が・・・!?」
「・・・!あぶねぇ!!」
「オラァッ!」

私が声を上げるよりも早く、動揺する桐生の腹に男の拳がめり込んだ。
苦しそうに咳き込みながら倒れる桐生を、私は咄嗟に庇う。


「なんやぁ・・・堂島の龍が、女に守られるんかい」
「てんめぇ!不意打ちしときながら何言いやがるッ!」


頭に血が上った勢いで殴りかかろうとするが、後ろから桐生に止められてしまう。

しばらく無言で睨み合い、ここは桐生に戦わせるべきだと気付いて構えを解いた。


「わりぃな・・・。でも危なくなったら、手だすからな?」
「あぁ」


人が喧嘩してるのを、ただただ見てるのは性に合わない。

でもこの問題は、桐生自身のものだ。
それに手を出すのも性に合わない。


「・・・すっげぇ奴」


桐生は一度殴られたにも関わらず、近江連合の男をぼこぼこにしていった。
今まで色んな奴と喧嘩したことあるけど、こんなごっつい奴は初めてだ。

繰り出される拳も、蹴りも、普通の奴とは思えない力があるように見える。


「化け物かよ・・・」


勝負がつく頃には、私はその強さから目を離せなくなってしまっていた。
私自身も頑張ってきた方だって思ってたのになぁ。
こんなの見たら、自信なくなっちゃうよ。

はぁはぁと荒い息を吐く桐生に、持っていたタオルを投げ渡す。
桐生はお礼を言いながらそれを受け取り、すぐさま裏口の中へと駆け込んだ。


裏口に入るとすぐ、シンジらしき人物が目に入る。
シンジは私たちを見つけると、頭を下げて挨拶をしてきた。


「シンジ。今そこで、近江連合の奴に襲われた」
「えっ?まさか・・・錦山の叔父貴はそんなこと一言も・・・!」

どうやら近江連合の事は、シンジも知らなかったようだ。
シンジ自身も用心するように告げ、風間のおじいちゃんが居る部屋へ急ぐ。


「こっちです!」


案内された部屋は見晴らしがよく、いかにもといった感じの部屋だった。
部屋の左側には、歴代の親達が額縁に飾られている。


そういえば、おじいちゃんと会うのも数年ぶりだったっけな。

そう思うと少し、緊張してしまう。
桐生も座ってはいるが、そわそわして落ち着かない様子だ。


あっちに行ったり、こっちに行ったり。

落ち着いたかと思えば、私の隣で一緒に額縁を見始めて。
またそわそわと歩き出したり。

その様子が少し子供っぽくて、私は思わず吹き出してしまった。


「ぷっ・・・」
「何故笑う」
「いやだって、そわそわしすぎだろ?少しは落ち着けよ」
「・・・あぁ」
「・・・くくっ・・・お前案外、子供っぽいな・・・!」


先ほどの戦いからのギャップのせいか、笑いのツボに入ってしまったらしい。
桐生が怒っても、私は笑うのを止めることが出来ずに笑い続ける。


「ひ、ひー・・・!」
「お前・・・覚悟は出来てるな?」
「あ、ちょ、タンマ!待って!」


殴りかかってくる桐生を止めようとする所に、扉が開いて風間のおじいちゃんが顔を出した。
今にも喧嘩を始めそうな桐生と私の姿を見て、風間のおじいちゃんは楽しそうに笑う。


「久しぶりだな、一馬・・・そしてあけ
「おじいちゃん!」


桐生を突き飛ばし、おじいちゃんに飛びつく。
会うのは本当に久しぶりだ。
1人前の情報屋になってから、ずっと会ってなかったし・・・。


「元気にしてたようだね」
「おう!もうばっちり!」


子供の様に抱き着いた私を、おじいちゃんは優しく撫でてくれた。
桐生は静かに頭を下げ、おじいちゃんに挨拶をする。


「・・・・お久しぶりです、親っさん」


おじいちゃんは私と桐生を交互に見ると、椅子に座るよう促す。
遠慮がちに座る桐生の隣に、私も大人しく座ることにした。

ここから先は真剣な話だ。気持ちを切り替えて真剣に話を聞かなければ。


















久しぶりの再会なのに、どうして和やかじゃないんだろう
(話を聞きながらウトウトしていた私を、目覚めさせたのは一発の銃声だった)
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