Erdbeere ~苺~ 夜の世界 忍者ブログ
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2011年11月23日 (Wed)
桐生さん/切⇒甘/最初は秋山さん寄り

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沖縄に落ち着いてから、久しぶりに見た神室町の街並み。
今は色んなごたごたが重なっており、昔見た神室町とは少し違う。

治安が悪く、警察なんて意味を成さない。
そんな場所だった神室町が、変に警察で溢れかえっている。
あけは少し寂しそうに町を見渡すと、静かに歩みを進めた。


お留守番を頼まれていたあけが、ここに居る理由は一つ。
真島の兄さんから、「桐生ちゃんがホテル街で女の子とうんぬんかんぬん」という電話を受けたからだった。

キャバ通いについては、昔から許していた。あんなの遊びだから。

でもホテル街となれば・・・話は別になる。



ホテル街で男と女が二人きり。

今まで何も言ってこなかったあけも、それだけは許せなかった。

身体を許すのが、たとえ一夜限りだとしても。
だからあけは今日、桐生に仕返しをするために神室町へ来たのだ。


「秋山さんなら、1日ぐらい遊んでくれるよな・・・」


やられたことは、やり返すのが当たり前。

携帯の電源を切り、完全に思いとどまることを止めたあけは、秋山の事務所へつながる階段を勢いよく駆け上がった。


「ごめんくださーい」


元気よく扉をノックすれば、事務所の中から花ちゃんの声が返ってくる。
返事と共に聞こえた文句のようなものは、秋山に当てられたものだろうか。

また仕事サボったりしてるんだろう。安易に想像が付く。

扉を開けた花ちゃんはあけの姿を見ると、ぱっと表情を明るくさせた。


「あ!あけちゃんじゃないですか!お久しぶりです~!」
「うっす!」
「おお、あけちゃんだったのかい?待っててね。今お茶淹れるから」
「あーもう!こんな所だけ動くんですから社長はー!」


花ちゃんと秋山の会話に、あけがクスクスと笑う。
笑われた秋山は面白くなさそうに煙草を咥え、あけに火をつけるよう促した。


「ライターぐらい持っとけよ、まったく・・・」
「ん、助かったよ。やっぱりあけちゃんは気が利くねぇ」
「気が利くっつぅか、明らかつけろって顔してたくせに良く言うぜ」


美味しそうに煙草を吸う秋山を見て、あけはやれやれと首を振る。
これはこれで良い事なのかもしれない。いつも通りの平和ってことで。

あけは花ちゃんが仕事に戻ったころを見計らい、話をするためにそっと秋山に近づいた。
いつもと違う様子に、秋山の表情が自然と変わる。


「どうした?」


あんまり真剣な表情をされると、物凄く話し難い。
あけの表情も、秋山の真剣さに強張っていく。

このままだと話しづらいため、あけは「真面目な話じゃないから」と苦笑した。
いつもそのぐらい真面目だったら、花ちゃんも困らないのに。


「それで、今日は何の話だい?ただの遊びってわけでもないようだけど」
「いやその・・・。私と、・・・トしてほしくてさ」
「え?」


言葉が聞き取れなかった秋山は、あけの顔を見てもう一度尋ねた。
俯いたあけの顔が、ほんのり赤く染まる。


あけちゃん?」
「だ、だからっ!私と・・・デートして欲しいんだって」
「デート?俺と?」


秋山が驚くのも無理はない。
秋山はあけが桐生の女だということを、前から知っているからだ。

静まり返る空気に、気まずさが増す。

ここでは話しづらいんだろうと気を遣った秋山は、黙り込んだままのあけを外に連れ出すことにした。


「花ちゃん、ちょっと仕事任せるね。今日はあけちゃんをエスコートしてくるよ」
「はいはい。どうせいつも任せられてますし、大丈夫ですよ?」
「花ちゃん・・・わりぃな」
「悪いのはいつも仕事をしない社長なので、気にしないで!」
「おう」


花ちゃんの明るい笑顔に見送られ、二人は事務所から外に出る。
飛行機の時間が最終便ぎりぎりだっただけに、外はすっかり夜の雰囲気になっていた。

そのまま無言で、ゆっくり街を歩く。
先に口を開いたのは、あけではなく秋山の方だった。


「それで、どうして俺なんかをデートに?怒られちゃうよ?」


いきなり事務所に行って、いきなりこういう事を言ったんだ。
あけは覚悟を決め、顔を逸らしながらワケを話す。


「・・・昨日、真島の兄さんから、桐生がホテル街で女と歩いてたって電話貰ったんだ」
「・・・・」
「別にキャバとかは良いんだよ。私も情報屋でやってきたことだしな・・・でも、ホテル街となると、別だろ?」


その言葉で、あけがしたいことを察した秋山。


「へぇ・・・。それで、仕返しがしたいってことか。しょうがないねぇ」


と言いながらも、のりのりであけの腰に手を回した。

桐生とは、手を繋いで歩くことも滅多にない。
そのためか、腰に回された手にあけは凄く恥ずかしさを覚えた。

そんなあけに気付いていないフリをして、秋山はあけとの距離を詰める。

回された手。秋山の声や表情。まるで本当の恋人同士のようだ。


「ッ・・・」
「やるからにはちゃんと、ね。ほら・・・あけちゃんも、ちゃんと恋人っぽくしてよ」
「・・・秋山、調子のんな!」


腰に回された手が厭らしく動くのを感じて、勢いよく足を踏みつぶした。
秋山は突然の痛みに、声を抑えながら痛みに耐える。


「ったぁ~!まったく、あけちゃんには敵わないなぁ・・・」
「ふん。分かったらさっさとエスコート頼むぜ?」
「はいはい。行きましょうか?お姫様」


おちゃらけた感じで差し伸べられる手を、あけは断ることなく受け入れた。
見慣れた神室町が、彼と歩くだけで少し変わって見える。

何故だろう。桐生と見る街並みとも違う。もっと不思議な感覚。

あまりにも秋山が自然すぎて、ドキドキしているのかもしれない。
あけは取り乱さないように呼吸を落ち着けると、秋山の手を握り返した。


「んじゃ、よろしくな秋山?」
あけちゃんの頼みなら喜んで。・・・さて、まずはそこら辺を歩こうか」
「おう!」


二人きり。誰から見ても恋人と分かる距離。
密着しながら街を歩いていたあけは、少し歩いた先で何かを見つけて止まった。
いつもなら止まろうともしない場所だが、とある物が目に入って意識を奪われてしまう。


「(可愛い・・・な、あれ)」
「・・・あけちゃん?」


秋山の声にも気づかないほど、あけの意識はゲーセンに―――――――UFOキャッチャーに奪われていた。

桐生と歩くときはいつも、基本“大人”なところにしか行かない。
恥ずかしいのもあるし、桐生が嫌なんじゃないかと遠慮しているからだ。

だからこそあけは、いつも行けない場所に行きたくて堪らなかった。
UFOキャッチャーの中にあるぬいぐるみ達が、あけを誘惑して放さない。


「もしかして、あれ欲しいの?」
「・・・い、いや別に・・・」
あけちゃん。素直に言わなきゃだめだよ」
「うぐ・・・」


秋山はあけの気持ちを見抜いているらしく、嘘を吐くあけを見逃さなかった。
いらねぇ!と叫び続けるあけを、容赦なくゲームセンターへ引きずり込む。

ゲームセンターはカップルでゲームを遊ぶ人たちで溢れかえっており、それを見たあけは更に頬を赤く染めた。


「~~~~!」
あけちゃん、どれが良い?」


これは仮にも演技だ。1日限りの遊びだ。
そう言い聞かせても心臓の高鳴りは抑えられない。


「え、いや・・・」
「そこで遠慮しないの。俺が取ってやるって言ってんだからさ」


戸惑うあけの頭を、ポンポンと優しく撫でる。
そして秋山はUFOキャッチャーにお金を入れると、どれが欲しいかあけに尋ねた。

UFOキャッチャーには、可愛い系のお人形がたくさん並んでいる。

どれもあけが抱えているところを想像出来ないものばかりだ。
ひよこ系や、ねこ系、お人形も。あけは観念して欲しい物を指差す。


「・・・じゃあ、あれくれ」
「あれ?あれが欲しいのかい?」
「あぁ」
「へぇ・・・やっぱり女の子なんだねぇ、あけちゃんも」
「う、うるせぇ!取るって言ったんだから責任持ってとれよ!?」


あけが指差したのは、ちぃねこと呼ばれるみけねこの人形だった。

遥が桐生に取ってもらったというのを聞いてから、あけがずっと欲しかった物の一つ。
他にも女物のネックレスやアクセ系が欲しいと思ったことはあったが、何一つとして桐生に言えたことは無かった。


何故、かって?そんなの簡単なことだ。

恥ずかしいし、迷惑かけたくない。うざがられなくない。
そんな小さな乙女心があけの邪魔をして。


「まったく、あけちゃんも素直じゃないねぇ」
「・・・ん?なんか言ったか?」
「なーんにも。ほら、見ときな。ねこ以外にも取ってやるぜ」

羨ましかった。素直に桐生へおねだり出来る遥が。
表情からそんなあけの心を見抜いていた秋山は、気づかないフリをしてゲーム開始のボタンを押した。

陽気な音楽と共に、アームが人形の真上へと移動する。
手馴れているせいだろうか。ものの1回で人形はあけの手元へと渡った。


「・・・うめぇな」
「だろ?まだ欲しいのあるかい?」
「んー、じゃあそこのヒヨコとって!」


秋山は慣れた手つきで人形を取っていく。
ひよこ人形とちぃねこを抱きかかえるあけは、秋山が想像していた以上に“女の子”の顔をしていた。


「嬉しそうで何よりだ」
「礼は言っといてやるぜ。ほら、次いくぞ次!」
「はいはい」


すっかりテンションが上がったあけと共に、秋山は色んな場所を回った。
それも普段、あけが絶対行かなさそうな場所ばかり。


アクセサリー屋、洋服屋さん、それからプリクラ。

お互いに時間を忘れて遊びまくったこともあり、気づいたら真夜中になっていた。

静かに歩き始めたあけの目の前に飛び込んでくる、ホテル街の風景。
心臓が大きく揺れるのを感じながらも、あけは秋山から手を放そうとしなかった。


「・・・・」
「・・・・」


無言の空気が、辛い。
この先のことまで覚悟はしてきた。でも、いざとなると怖いものだ。

寂しさを紛らわすための、一夜限りの相手。
桐生だってそれをやってるのに、どうして自分は?


あけちゃん」


自分の世界に入り込んでいたあけは、秋山の声にビクッと身体を震わせた。
ついにその時が来たのかと、覚悟を決める。

しかし秋山は、あけをホテルへ連れ込むどころか裏路地へと引き摺り、コンクリートの冷たい壁に手を押さえつけた。

秋山からは“何かをしよう”という悪い気配を感じない。
それどころか、秋山は寂しそうな目であけの頭を撫ではじめた。


「秋山・・・?」
あけちゃん。少しは桐生さんに甘えな」
「え・・・」
「今日あけちゃん、すっごく楽しそうな顔してたよ?いつも桐生さんに甘えてないんでしょ。ちゃんと遠慮しないで、連れてってもらいたいところに行く。欲しい物を強請る・・・それが、女の特権だぜ?」


撫でてくれる手が、とても心地よい。
あけは秋山の話を聞きながらも、うっとりと撫でられる感触に酔いしれていた。

まるで、そう、お父さんみたいだ。
いやここは、お兄さんと言っておくべきだろうか。

あけちゃんは十分、今のままでも女として魅力的だ」
「嘘だ・・・そんなことねぇよ」
「いいや?だって現に俺は、桐生さんの女じゃなかったら・・・」


するりと、頭を撫でていた手が唇へ下がってくる。


「・・・俺の女になってもらってたぜ」


冗談だろ?とは言わせない、秋山の真剣な眼差し。
身動きが取れなくなったあけは、擽ったそうに目を閉じた。

そこに落ちてくる、ちょっとした触れる程度のキス。
あけは驚いて思わず目を開けてしまい、そして開けたことを即座に後悔した。
目の前にあるのは秋山の綺麗な顔。あけの顔が一瞬で赤色に染まる。


「っ!?」
「あれ、あけちゃんってキスの時に目閉じないの?」
「ちちちちち、ちげぇよ!」


噛みつくように言い返せば、秋山はもう一度頭を撫でてからあけの手を放した。
そのまま踵を返し、ホテル街から立ち去ろうとする。


「あ、秋山・・・」


あけが引き止めると、秋山は顔だけをこちらに向けてニヤリと笑った。


あけちゃんは可愛いんだから、ちゃんと自信持たなきゃだめよ?」
「・・・ごめんな。ありがとう、秋山」
「お礼は貰ったから、全然オッケイってことで」


唇に人差し指を当てながら立ち去る秋山を、あけは熱が抜けない瞳で見送る。
ホテル街に吹き抜ける微妙な風が、火照るあけの頬を優しく撫でた。

気持ちよさそうに目を細め、それから持っていた携帯の画面に映る自分の顔をじっと見つめる。

女の子・・・らしい。
自分ではお世辞でも自分自身をそういう風に見ることは出来ない。


「・・・・はぁ」


ボサボサの髪の毛を整えながらふと顔を上げると、すぐそこのホテルから出てくる人影が見えた。
ああもう、なんて嫌なタイミングなんだ。
人影を見て一瞬で彼だということを理解したあけは、裏路地の奥の方へと逃げる。


「・・・・」


桐生の隣に居たのは、キャバ嬢の可愛い女の子だった。
二人の距離に間はない。お互いにぴったりとくっ付きあって微笑んでいる。

悔しい。むかつく。でもそれ以上に。
自分でも理解しがたい感情に襲われ、あけは裏路地に座り込んだ。


「(・・・私は、何がしたいんだろうな)」


桐生に夜の遊びを止めて欲しいのはもちろんだが、それ以上に何を望んでいるのかは分からなかった。

わざわざ神室町に来て、秋山とデートして。

何がしたかったんだろう。

素直になる、きっかけが欲しかったんだろうか。
でもそのきっかけは、秋山のおかげで何となく掴めた気がする。


「(素直になりたいけどさ・・・。私は女になれねぇよ)」


あのキャバ嬢のように、元の自分を磨いて輝くことはしない。
あけの場合、キャバ嬢という姿は「偽り」でしかないのだ。

本物の自分は、がさつで、見た目も何も気にしない馬鹿な女。
そう思うとキャバ嬢が羨ましくもあり、悔しくもあった。


「・・・ん?」


そんなことを考えながらキャバ嬢を見ていたあけは、桐生と反対方向に帰っていくキャバ嬢の様子がおかしいことに気が付いた。

こちらに向かってくるキャバ嬢が、黒い男達と話をして・・・いや、絡まれているのかもしれない。
最初はただのお客さんかと思って見ていたあけも、キャバ嬢が男たちから逃げようとする動作を見て、咄嗟に裏路地を飛び出した。


桐生との距離は、そこまで遠くない。

バレるという危険性もあったが、あけはお構いなしに男の一人を蹴り飛ばした。
キャバ嬢は悲鳴を上げ、涙目であけの腕に縋り付く。


「た、たすけて、くださいっ・・・!」
「あぁ。任せろ」


ああ。やっぱり私に「女」という姿は似合わないな。

あけは涙目になっているキャバ嬢の顔を見ると、立ち向かっていく自分の姿との正反対さに笑みを零した。

黒い服を着た男たちは、邪魔してきたあけに牙を向く。
それぞれ思い思いの武器を手にする男達を見ても、あけは微動だにしなかった。


「何だぁ?姉ちゃんも混ざりたかったのかよ?」
「混ざりたくねぇなら、邪魔すんじゃねぇぞこのガキ女!」


安い挑発だ。
あけがそんな挑発に乗るわけもなく、呆れ顔でため息を吐いた。


「やれやれ・・・。お前ら、精神年齢がガキすぎて話になんねーよ」
「んだろこら!やっちまえ!」
「おう!」


襲い掛かると同時に上がる、空を切り裂く悲鳴。
安い挑発に乗ってあけに殴りかかった男たちは、一斉にあけの足技を食らって伸びていた。

ほんの一瞬の出来事に、キャバ嬢はぽかんと口を開ける。


「弱すぎだろ。まだやんのか?」
「くっそ・・・調子にのるなぁぁあ!」


痛みに耐えながら立った男が、あけに勢いよく突進してきた。
あけはそれを軽くかわし、男の足を薙ぎ払う。
そしてバランスを崩したところに踵落としを入れ、男の顔面を地面に叩きつけた。


「・・・ふぅ」
「あ、ありがとう、ございました・・・!」
「あぁ。気にすんな」


キャバ嬢は震える声であけにお礼を言うと、その場からそそくさと立ち去った。
よほど怖かったのだろう。帰る足取りがおぼつかない。


「お前、何してんだ・・・?」
「あ」


男とキャバ嬢のせいで、桐生のことをすっかり忘れていた。
後ろから声を掛けられたあけは、「アハハ」と苦笑を浮かべる。


「なんでお前がこんなところに・・・?いつこっちに来たんだ」
「今日だけど?」
「・・・・」


それ以上問い詰めようとしない桐生に、あけは勢いよく抱き着いた。
突然のことに桐生はバランスを崩し、思わず尻餅を付く。

女になるなんて、自分には似合わない。それは分かってる。
だがこれ以上、我慢することもあけには出来なかった。

素直になるチャンスは今しか無いんだと、あけは桐生の胸に顔を埋める。


あけ・・・?」


突然のことに、桐生はあけの頭を撫でてやることしか出来なかった。
あけは表情を見られないように顔を埋めたまま、ゆっくりと話し始める。


「・・・なん、だ・・・」
あけ?」
「私以外のやつを、抱くなんて、嫌なんだっ・・・!」


曝け出した、嫉妬の心。
一度言ってしまえば、後は簡単だった。
次々と言いたいことが自然と、零れるように出てくる。


「別にキャバ嬢と遊ぶのは反対しねぇよ。でも、私以外を抱くのは嫌だ!」
あけ・・・」
「私なんてあいつらみたいに、女の魅力も何もねぇ。だから怖いんだ・・・寂しいんだ・・・そうやってお前が、別な奴を見てるのがっ・・・!」


キャバ通いを、良いと言ったら嘘になる。
でも桐生も男だ。癒しを求めて遊んだりもするだろう。

だから、せめて。
自分だけの何かが欲しかった。
抱くという密接な行為を、自分だけのものにしてほしくて、あけは必死に桐生にしがみ付いた。


あけ。ちょっと待て」
「・・・ぐすっ。ひっく・・・」
「悪い・・・お前がいつも嫉妬しねぇからって、俺も好き勝手やりすぎてたな」


ぐしゃぐしゃと、乱暴に頭を撫でられる。
あけが泣いていることを感じ取った桐生は、あけの頭を自分の胸元に押し付けた。

「・・・情けねぇ話だが」
「ん・・・?」
「お前と離れたら、こうやって遊んでないと、寂しくなっちまうんだ」
「・・・・」
「今までお前、気づいてたのに何も言わなかっただろ?だから俺も調子に乗りすぎたんだ・・・言ってくれて、嫉妬してくれてありがとな」


その言葉に、涙で顔を濡らしたあけが顔を上げる。


「桐生・・・?」
「もっと、言っていいんだぜ。お前、たくさん我慢してるだろ」


桐生が放ったその言葉と、秋山に言われた言葉があけの中で重なった。
“自分に素直になれ” 今ならそれが出来る。


「桐生・・・私、たくさんお前と遊びたい。手を繋いで歩きたい」
「あぁ・・・」
「遊んで、いっぱいケーキ屋とかに行って食べたい。桐生に甘えたい。色んな店入って、色んなことして・・・」
「・・・あけ


泣きじゃくるあけに、そっと桐生の口づけが落とされた。
優しくて大人の味がするそのキスを、あけは「もっと」と強請るように求める。

桐生はそれに応え、開かれた口に舌を入れた。
あけの口の中を、我が物顔で暴れまわる。
深いキスに身体を震わせるあけを見て、桐生は妖しい笑みを浮かべた。


「ふ、ぁ・・・っ」
「最初から、そうやって素直だったら良かったんだけどな」
「ん・・・でもこんなの、私らしくないだろ・・・?」
「お前らしくないとか、関係ねぇ・・・。俺にこうやって甘えてる時は、十分女の顔になってるぜ?」


すっと嫉妬や怒りの感情が冷めてくると、急に恥ずかしくなってくる。
そんなあけの気持ちに気付いたのか、桐生はあけを逃がさないよう、しっかりと顎を上に向けたまま固定した。


「っ・・・!」
「お前の気持ち、聞いたからな。もう遊んだりしねぇよ」
「ん・・・」
「そのかわり、お前もめいいっぱい俺に甘えろ。もう、我慢したり、変に遠慮したりするんじゃねぇ・・・分かったな?」
「・・・おう」


あけの返事に、桐生が優しく微笑んだ。
そのまま力強く抱きしめ、場所などお構いなしにお互いの温もりを感じ合う。

それが嬉しくて、あけはまたぎゅっと桐生の胸に顔を埋めた。

桐生がにっこりと、誰が見ても怯えるような黒い笑みを浮かべていたことも知らずに。




















to:桐生 from:秋山
良い感じにやっておいたつもりです
お礼は、また今度一緒に飲みに行ったときにでも貰いますよ?


to:秋山 from:桐生
あぁ、礼を言う。






to:桐生 from:真島
桐生ちゃんの頼みやからやってやったで!
今度また、闘技場で会うのが楽しみやのう!


to:真島 from:桐生
今度また街に戻ったら、必ず行く。ありがとうな。















これが仕組まれたことだと気付くまで、あともう少し
(素直にならない彼女を、素直にさせるためのちょっとした黒い“刺激薬”)
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 ・気まぐれ

◆Thanks!
見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。
現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。
(龍如/オール・海賊/剣豪)