いらっしゃいませ!
名前変更所
目を開けると、そこはセレナだった。
あれ、私はどうしてここに?林たちはどうなったんだっけ?
疑問が溢れる中、私の耳に飛び込んできたのは伊達さん達の会話だった。
由美と美月のことや、100億の話をしているのが聞こえる。
そして最後の辺りに「賽の河原」という単語も聞こえたような気がした。
それにしても。
頭が痛い。ぐわんぐわんする。
確か私は林たちと戦ってて。
それで桐生の背後から襲ってくる奴に気付いて・・・。
「目が覚めたか?」
「・・・あぁ、ばっちり」
庇って、倒れたんだった。
ぼーっとする頭で全てを思い出した私に、桐生のデコピンが襲う。
バチィッ!という鋭い音が響き、激しい痛みに声も上がらない。
「~~~~~っ!!??」
「・・・・お前は、無茶するなと何度言わせるんだ?あぁ?」
「・・・まじお父さんくさいよ、おじさん」
冗談で言った言葉に桐生が無表情になった。
あ、あれ。あれれ。凄く嫌な予感がするぞ。
伸びてきた腕が、けが人だということをまったく関係なしに頭を掴む。
そして骨がミシミシ言うぐらいに力を込められ、私はものの数秒でギブアップと叫んだ。
私たちの様子を見ていた伊達さんが、仲がいいなぁとほのぼのしてるのにカチンとくる。
「ぎゃぁあぁあ!桐生ッ!変な音した!頭から変な音してるって!」
「聞こえねぇなぁ・・・」
「聞こえてるっ!ぜってぇ聞こえてる!いた、いたいっ!いたいぃぃい!」
遥の兄弟みたいだね!という言葉にも、笑う余裕すらない。
振り解くことが不可能だということを知った私は、すぐさま謝罪の言葉を口にする。
「ゴメンナサイ、モウイイマセン・・・!」
「・・・」
無言でゆっくりと放される手。
それは静かに私の頭を撫で、そのまま私の背中に回った。
?を浮かべる私に、桐生が申し訳なさそうな顔をする。
「悪かったな・・・お前に、怪我をさせた」
「馬鹿だなー!そんなこと気にすんなよ!」
「・・・だが」
「うっせぇ!ピンチの時はお互い様なの!文句は受け付けねぇ!」
私の強制っぷりに桐生は呆れ顔で首を振った。
何かその表情むかつくけど・・・まぁ、今は許そう。
私はふらつく頭を押さえ、何とか起き上がる。
とりあえず、河原に行くというのは本当なのだろうか?
私は良きライバルであり、良き同業者でもあるサイの花屋の顔を浮かべながら桐生に尋ねた。
「河原、行くのか?」
「お前・・・聞いてたのか」
「あぁ。今の私にはあんまり情報がねぇからな・・・サイの花屋の方がいいかもしれねぇ。お前が行くなら、私もちょっと情報集めてくるぜ」
「・・・あぁ。頼んだ」
怪我で少しふらふらするし、情報収集もかねて少し休ませてもらおう。
じゃないと、桐生がまたうるさくなりそうだから。
私の素直な申し出に、桐生は少しホッとした表情を浮かべた。
そこまで心配されてると思うと、何だか恥ずかしくなってくる。
私はその表情を隠すために桐生から顔を逸らし、持っていた名刺を桐生に投げつけた。
「・・・何だ?これは」
名刺に描かれているのは、私の右腹に描かれている鷹の刺青の絵。
そして私の名前、役職、その他もろもろ。
これは花屋と私との間に結ばれた、“無償で情報交換をする”という取引の証だ。
花屋の監視カメラによる情報と、私の演技によって騙し取る情報。
私達二人はお互いに情報を提供し合い、最高の情報を作り出してきた。
だから私の名刺を見せれば、私からの情報提供要請と分かって無償にしてくれるだろう。
花屋の情報料は高いからな。今の桐生じゃ払えないだろうし。
「花屋に情報を聞き出す時に、一緒に渡してくれ。助けになるぜ」
「・・・そういえば、あけも情報屋だったな」
「そういえば、じゃねぇよ失礼な!本職は情報屋だっての!」
失礼な桐生に手を上げるが、今の私に叩ける力は無かった。
振りかざした拳がふわりと空を掻き、何も掴めずに地面に落ちる。
悔しさに唇を噛む私を無視して、桐生はさっさと出かけて行ってしまった。
行動力の高さには、ほんと驚かされる。
知ったばかりの得体の知れない場所に、たった一人で行こうとするなんて。
「馬鹿っつうか、なんつうか・・・」
正義心の強い、変な奴だ。
私は苦笑いを浮かべながら立ち上がると、休むことなく行動に出た。
桐生が居ない間に私も色々情報集めをしておこう。
どうせ桐生が帰ってきたら、また色々しなくちゃいけなくなるだろうしな。
・・・って痛い。なんか後ろから服を引っ張られてる。
「あだだだっ!?」
「・・・お姉ちゃん」
「は、遥・・・・どうしたんだ?」
後ろから服を引っ張っていたのは遥だった。
返事を返しても、服をずっとグイグイ引っ張ってくる。
どうしたんだろう?と思い顔を覗き込めば、そこに映る悲しげな表情。
遥も度胸があるとはいえ、小さな子供なのだ。
でもどうしたら遥を元気づけてあげられるのか、私には分からない。
「遥・・・大丈夫。ずっと私が一緒にいてやるから、な」
「本当・・・?」
「あぁ」
嬉しそうに笑う遥が可愛くて、結局私は遥についていくことにした。
セレナも安全とは言い難いため、伊達さんのところで保護してもらうことにする。
麗奈さんを一人にするのも気が引けるんだけど、そうも言ってられない。
変な奴が来たらすぐに連絡を入れるよう伝え、私たちはすぐにセレナから外に出た。
行動は早い方が良い。桐生の方も上手くいってると良いんだけど。
「行こうぜ、伊達さん」
「あぁ・・・こっちだ」
「お姉ちゃん。手、繋いでもいい?」
「おう!気分転換しようか!」
少しでも遥の気分転換になればいいと、私は遥を手を繋いで歩き始めた。
それに付き添う伊達さんは、まるでお父さんだ。
遥が安心できるように、神室町の街並みを案内しながら歩く。
いつ見ても、眠らない街並み。
子供にも紹介出来る店を選んで紹介する。まぁほら、神室町だしね。
そんな私の気持ちを知っていてわざとなのか、遥が「あれは?」ととあるお店を指差した。
そのお店はいわゆる、キャバクラというやつで。
「あれ、何のお店なの?お姉ちゃん」
「あ、えーっと・・・うーん。なんつーのかな・・・」
助け船を求めて伊達さんに視線を送るが、見事なまでのスルーを食らった。
薄情者め!と叫ぶ余裕を、遥は与えてくれない。
「遊ぶところ?」
「あ?あ、あぁ。そうだよ。こう、皆でお酒のんだりしてお話しする場所かな?」
「・・・えへへ」
「・・・ん?」
「ごめんね、お姉ちゃん。本当はどんな場所か知ってるよ」
「なっ・・・」
驚く私をよそに、遥が楽しそうに笑う。
こいつ、純粋そうに見えてなんてことを!
むしろその純粋さに騙された私の方が純粋な気がしてきた。
でも、遥が笑うのを見たのは初めてだ。
笑ってくれたならいいか、と。つられて笑った私の目の前に急カーブしてきた車が立ちはだかった。
「ッ!?」
「きゃあ!」
「あけ!遥ッ!」
立ちはだかった車から、数名の男たちが突然襲い掛かってくる。
遥を取られないように庇う暇も、与えてもらえなかった。
目の前の男達に夢中になっていた私に、不意打ちの攻撃が襲い掛かる。
ガツン、と。
頭の中に直接響く音が、私の意識をじんわりと奪っていく。
やられるのは、もう2度目だ。
この気絶していく感覚も。
「くっ・・・そがぁっ・・・!」
苛立ちを込めて最後に振り上げた拳は、見慣れた眼帯の男に阻まれ、尽きた。
起きたらまた、怒られるんだろうな。
(揺れる記憶の中で、楽しそうな笑い声が聞こえた)
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