Erdbeere ~苺~ 6章 不思議な出会い 忍者ブログ
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2011年12月03日 (Sat)
第6章/ヒロイン視点

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私は桐生を追い、情報を集めるために街に出ていた。
人込みを通るのは苦手なので、出来るだけ人がいない場所を選んで通る。
そしてとある路地を見つけると、情報の整理をするためにそこに座り込んだ。

今まで手に入れた情報を、手帳を見ながら確認する。
人通りの少ない裏路地に来たのは、これが目的でもあった。


「んーっと・・・」


情報整理は出来るだけ一人でやる。集中するために。
それが情報屋としての、私の決まりごとだ。

情報というものは、細かくてミスの許されないものだからね。
私は静かにため息を吐くと、ふと公園の一角に誰かがいるのを見つけて近づいた。


「・・・?」


公園の隅っこで、ヤクザと思われる集団が笑っている。
しかもそれはただ遊んでいる、ってわけではなさそうだった。

随分楽しそうだ。
でも明らかに普通のことをしてる雰囲気じゃない。


私は背後からその男達に近づき、先手必勝とばかりに飛び蹴りを食わらせた。
見事に蹴りを食らった男が、ゴミ箱の中へシュートされる。


「おい!?いきなりなんだよこのアマ!!」
「なんだぁ?お姉ちゃんも遊んでほしいのか?ん?」
「お前ら・・・コイツをいじめて楽しんでたのか・・・?あぁ!?」


男達が取り囲んでいたものを見て、私はすぐに拳を構えた。
どうせ、犬でもイジメてるんだろって思ってはいたけどさ。
まさかホームレスをターゲットにしてたとは。許せるレベルじゃない。

ホームレスの男は、私を見て驚いた表情を浮かべた。
そんな男に対し、“もう大丈夫だよ”と笑みを零す。


「安心しろ。こんな奴らすぐ片づけてやるから」
「・・・君・・・」
「何カッコつけてやがんだ!お前ら、やっちまえ!!」


飛びかかってきた男の腕を掴み、がら空きの腹部に膝蹴りを食らわせる。
ぐえっとカエルが潰れるような声が響くが、私はお構いなしに攻撃を続けた。
崩れ落ちる男の背中に、トドメの踵落としを1撃加える。


犬でも、人間でも関係ないんだ。

弱い奴をイジメてるのを見ると、無性に腹が立つ。

それは正義とか、そんなんじゃなくて。
自分が昔されてきた立場だから、なんだ。
強い立場の親に好きなだけ殴られた。あの時のことを思い出してしまうから。


「ほら、どうした!?かかってこいよ!!」
「てめぇっ!!」


右から走ってくる男に回し蹴りを加え、そのまま足を払う。
こけた男は左から襲い掛かって来た男に激突し、二人して伸びてしまった。

ほんと、馬鹿なやつらだ。
数で掛かってきても、負けるだけなのに。
女だからってナメてる口調が、私を更にイライラさせる。


「くそ、女ァ・・・」
「そういうの、やめてくれねぇ?」
「がぁっ!?」


転がっていたリーダー格の男を睨み付け、そのまま手を踏み付けた。
ぐりぐりと痛めつけるように踏めば、男の口から悲痛な悲鳴が上がる。
数人いた男達はものの数秒で私の周りに崩れ落ち、立っているのは私だけとなった。


「さっきまでの威勢はどこにいったんだよ・・・」


ホームレス狩りって、そういえば流行ってたんだっけ。
このまま許しても、こいつらはまた仕出かすかもしれない。

しばらく考え込んだ後、私は火傷の痛みに身体を震わせた。
火傷が治るまでは、あんまり暴れないほうが良さそうだな・・・。
なんて、呑気なことを考えていた私に、起き上がった男の一人が圧し掛かってきた。


「ッ・・・!」
「この女ァ!良くもやってくれたな・・・!」


地面に背中がぶつかった瞬間、予想以上の痛みが私の身体を襲う。
服が擦れて痛いとか、そんなレベルでは無かった。

身体全体が、痺れてしまうような痛み。
無茶するなと怒る桐生の顔が浮かんだ。
私は咄嗟に身を捩り、男が繰り出したパンチを避ける。


「女だからって、ナメたお前の負けだ!!」
「うが、あぁあっ!」


一瞬の逆転だった。
避けられた反動でバランスを崩した男を、蹴り上げて起き上がる。
男達はすっかり怯えてしまい、私が一歩踏み出すと悲鳴を上げて引き下がった。


「ひぃぃいっ!ゆ、ゆるしてくれっ!」
「じゃあもう、二度とするな。分かったな」
「わ、わかった!」


去って行く男達には目もくれず、私は後ろでしゃがみ込んでいたホームレスの男に手を差し伸べた。
男は戸惑いながらも、手を取って立ち上がる。


「・・・ありがとう」
「いや、通りすがりだ。気にすんな」


立ち上がった男の瞳には、生気がまったく感じられなかった。
その代わりに感じた、他の人とは違う魅力。

一目ぼれに近い、不思議な感情。
私はしばらく、そのホームレスの男を見つめ続けていた。
何だろう。桐生と似て普通の人間とは何かが違う。


「お前・・・名前、なんていうんだ?」


煙草を渡しながら尋ねると、男は少し表情を明るくして答えた。


「俺か?俺は秋山だ。秋山駿」
「ふぅん・・・」
「君は?」


いつもなら、得体の人に名前を教えたりはしない。
でも自分から聞いておいて自分は教えない、ってのもおかしな話だ。
私はしばらく煙草を楽しんだ後、思いついたように手帳を取り出した。


吐き出される息が、煙となって視界を濁す。
その中で私は、ホームレスの男に挟んであった名刺を渡した。

そう、情報屋としての私が書かれた名刺を。
連絡先も書いてあるため、自然と彼に連絡先を教えたことになる。


「情報、屋・・・?あけ・・・ってのが、君の名前かい?」
「そ。まぁ、情報じゃなくてもいい。今みたいに困ったことがあったらそこに連絡をくれ」
「・・・・電話なんて、出来る金もないさ」
「そうか。まぁでもあげちゃったし、持っててくれ」


お節介と言われれば、お節介なのかもしれない。
でも私は彼を、秋山さんを放っておくことは出来なかった。

ただのホームレスだったら、お金を渡すぐらいで終わっただろう。
だけど情報屋として磨いてきた人間を見る目が、勘が、働いているんだ。


――――――――彼は只者じゃ、ないって。


「・・・じゃあな」


私は呆然とする秋山さんに、タバコを箱ごと投げつけ、その場を後にした。
もっとお話しても良かったけど、これ以上時間を使うと桐生達に怒られる。
タバコは面白い出会いをさせてくれた、彼自身へのお礼だった。


「面白そうだな、アイツ。いつかまた会えるといいな・・・」


きっといつか、また会える気がする。
不思議なホームレスとの出会いを果たした私は、鳴り響いた携帯に深いため息を吐いた。



















電話するお金さえもないであろう、彼に託した連絡先。
(それが未来への出会いへ繋がることを、今の私はまったく知らない)
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