Erdbeere ~苺~ 待てと言われて待つと思うな 忍者ブログ
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2024年11月15日 (Fri)
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2012年11月22日 (Thu)
桐生寄り/甘/微エロ/流血表現多め

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4.待てと言われて待つと思うな


薄っすらと香る、鉄の匂い。
気づかれないようそっと目を開けた私は、すぐさま状況を確認することにした。

足は縛られてないが、手は縛られてるみたいだ。
でもまだ痺れ薬が残っていて、あまり自由に動ける状態じゃない。

あと、首に冷たい感触がある。
振り返った先にある鉄の柱に、首から鎖が伸びていた。
どうやら、悪趣味な首輪までつけられているようだ。


「(とりあえず、拘束されてるのは、腕と首・・・・)」


場所は薄暗い廃墟ってところか。
転がった鉄パイプや崩れた床を見つけ、冷静に判断していく。

一体どこの廃墟かは分からない。
神室町にはそういう廃れたビルも数多くあるからな。

なるべく早く状況を把握して、逃げ出すかアイツを捕まえるかの行動を取らなくては。


「あれ?・・・起きたんだ」
「っ・・・」


冷たくて、不快になるような声。
目の前に姿を現した男を、私は無言で睨み付ける。

すると男は、ヤケに嬉しそうに私の顎を手に取った。
舐め回すように私の顔を見つめ、それから乱暴に手を放す。

その勢いで床に叩きつけられた私は、走った痛みに息を詰まらせた。


「アンタ、あけだろ」
「・・・・そうだったら、どうするんだ?お目当てのお嬢様じゃなくて残念だったなぁ?」
「お嬢様、か・・・まぁ、確かに狙いはお嬢様だったんだけど・・・・」


気持ち悪い。
コイツの行動が、コイツの声が。

私を、まるで玩具のように見る目が。


「俺の狙いは、男を知らない女なんだよね。あと、気が強くて高貴な女の人・・・」
「・・・・」
「アンタに薬を売ってもらった時から、アンタのこと気になってたんだ・・・最近良く見かけるお嬢様だったから狙ってただけだったんだけど、まさかアンタだったとはね・・・」
「・・・・チッ。触んな」
「嬉しいよ。アンタみたいな女は、絶対男を知らないと思ってたからさぁ・・・・」


逃げるように身体を引くと、無理やり男に首輪を引っ張られた。
いつの間にか、首輪の先を男がしっかりと握りしめている。

抵抗しようにも、それを持たれていてはほぼ皆無なわけで。
もう一度抵抗しようとした私に対し、男は冷酷な目で首輪を手繰り寄せた。


「っぐ・・・!」
「あぁ、いいねぇ。これからたっぷり男を教えてあげるよ。苦しんで、抵抗して、最後まで抵抗して、そして絶望する様子を見せてよ・・・・」
「この、変態野郎・・・!」
「・・・・ふふっ」
「っ!?ぁあっ!!」


首輪を引っ張られ、良い様に殴られる。
お腹に一発蹴りを入れられた私は、悲鳴を上げながら床に蹲った。

それでも男は楽しそうに笑っている。
狂ってやがるんだ、こいつ。
こんなことを楽しみにしてるなんて、悪趣味にもほどがある。


「けほっ・・・!!」
「気の強い女の人は大好きだよ」


私は嫌いだっての。
縛られている手をごそごそと動かし、ポケットにあるはずのレコーダーを探した。

こいつが犯人だってことは分かった。
あとは証拠。証拠であるものさえもらってしまえば後はどうにでも出来る。


「(あった・・・!)」


ポケットの中にレコーダーを見つけた私は、蹲るフリをしてレコーダーのボタンを押した。

これで、後はこいつから情報を聞き出すだけ。
咳き込みながら何とか顔を上げ、煽るように笑って見せた。


「ハッ・・・悪趣味野郎だぜ。こうやって、今までの女も甚振って来たのか?」
「・・・それがどうした?」
「お嬢様だけ狙った強姦魔なんて、サイテーだなお前。気持ち悪・・・うがぁっ!!!」
「何?気持ち悪いって言おうとしたの?・・・でも褒め言葉だよ、俺にとってはね」


苦しい。痛い。身体が軋む。
最低条件が揃う中、それでも私は絶望など感じていなかった。

何故か、なんて。簡単なこと。
誰かが必ず来てくれると信じているから。
あんな馬鹿みたいな奴らだけど、約束は必ず守る。

そして絶対に、誰にも負けるような奴らじゃない。


「その顔、気に食わないね」


証拠も取れ、後は時間稼ぎだけだと考え始めていた私に、男が苛立ちの声を上げた。
再び私の首輪を引っ張り、そのまま上へと持ち上げられる。

無理矢理立ち上がらされる形になった私は、苦しさに強く咳き込んだ。


「ぐっ・・・けほっ!けほっ・・・!!」
「気の強いアンタには、これをあげるよ」
「なに、を・・・。・・・・っ!!!!」
「見覚えあるでしょ?これでたっぷり遊んであげる」


掲げられた、先ほどの紫の瓶とはまた違う瓶。
それにもばっちり見覚えがあった。

危険な薬ほど、入れた瓶や作った相手を覚えて居る。
でも私はこいつに・・・こんな男に、あの薬を売った覚えは無かった。


「・・・・」
「口開けろよ」
「・・・・・・」


気に食わないね。私の薬を勝手に別ルートで手に入れるなんて。
抵抗として口をがっちり結んでいた私を、男は容赦なく蹴り上げた。

苦しくて、思わず悲鳴が上がる。
その瞬間に男は瓶をひっくり返し、私の口の中に瓶の液体を流し込んだ。

飲んじゃ、駄目だ。

瞬間的に吐き出そうとしたが、男が私の口を塞いでいて吐き出せない。


「ん、ぐ・・・」
「飲め」
「ぐっ!!」


もう一発。

痛みから上がった悲鳴と同時に、口に含んでいた薬が体内へと流れ込むのを感じた。

やばい。
これは、本当にやばい。


「ッ・・・・」


この薬は強力な媚薬の一種だ。
プレイで使うというよりは、拷問の一つに使うほど強力なもの。

たとえ耐性がある私でも、飲んでしまったら別の話。
即効性の媚薬が瞬時に私の身体を蝕み、熱で犯していく。
一瞬落ち掛けた意識をどうにか立て直した私は、声が漏れないよう唇を噛みしめた。


「・・・っ」
「アンタが作った薬は最高品だからな・・・。よく効くだろ?」
「あぁ、本当だな。さすが私だ」
「・・・すごいな。まだ普通に話せるなんて」
「当たり前だ。その薬を作った本人が・・・そう簡単にやられるわけねぇだろ」


普通の人なら、すぐに熱の解放を求めて強請るだろう。

でも私はあくまでも、この薬の開発者。
時には自分で効果を試し、解毒剤も考えた。

そう簡単にやられて、たまるかよ。


「・・・・触るな、外道」
「・・・いいねぇ。もっと気に入った!」
「は?」
「だからアンタが自分から強請るまで、アンタをずっと放置し続けることにするよ」
「・・・・っ!」
「本当は今すぐに犯してやろうと思ったんだけど・・・・さ。そんなんじゃつまんないからね」


そう言って男は首輪から手を放した。
ぐったりと倒れ込む私を尻目に、その場を後にしようとする。

本当に放置するつもりらしい。
それが今の私にとって良い事なのか悪い事なのか―――よく分からない。

時間は稼げそうだ。

でもそれまで精神が持つかは、正直よく分からない。


「は、ぁっ・・・く、そ・・・っ」


ここは女性としての身体を恨むしかなかった。
どんなに気持ちが男でも、女を捨てていても、この熱からは逃れられない。


「ぐっ・・・」


じんわりと染み渡る熱さ。
嫌でも分かる、快楽の痺れ。

触られただけで意識が飛びそうなほど、強い快楽を身体が求める。


「っは、ぁっ・・・も、最悪・・・だな・・・・」


だからと言ってあの男にだけは絶対に求めたくはない。
いくら経験のない私だからって、抱かれる相手ぐらいは選ぶ。

そう、だな。
―――桐生がいい、な。

ふとすぐに浮かんできた桐生の名前に、自然と笑みがこぼれた。

好きじゃない。気になってない。
そうは言っても、やっぱり意識しちゃうもんだな。

薬の影響か、変に桐生を意識し始めてしまう。


「わた、しは・・・」


秋山に迫られて、桐生に弄ばれて。
だけど気になってしまうのは、桐生のこと。

ああ、そうか。

とっくに私は、桐生に負けてたんだ。


「はっ・・・馬鹿、みてぇ・・・」


おとり捜査が始まってからというもの、ずっと私は桐生を意識し続けていた。
その時点でもう、負けは決まっていたんだ。

彼の思うつぼ。
眠らせていた女としての心を、持ち出された時点でゲームオーバー。


「ッ・・・ふ、ぁ」


身体を少し捻らせた瞬間、痛いほどの快楽が身体中を走った。


「んっ!」


部屋に響く声が、私の羞恥心を煽る。
こんな声、私じゃないと耳を塞ぎたい。


「・・・くそ、馬鹿、はげ桐生・・・・っ」


早く助けに来いよ。
苦しくて、痛くて、壊れてしまいそうだ。

・・・怖い。

何も出来なくなるまでボロボロになったことが少ない私は、初めて感じる強い恐怖心に身体を震わせた。


「早く、馬鹿、桐生っ・・・・」


おかしくなってしまう前に。


「き、りゅ・・・っ」
「待ってろ、今助けてやる」
「っ・・・き・・・りゅう・・・?」


返ってきた、聞こえないはずの声。
ゆっくりと身体を起こした先に見えたのは、私を襲った男と秋山と桐生の姿だった。

私を襲った男は相当やられたのか、血だらけでぐったりとしている。
秋山の靴に返り血ついてるし、絶対こいつらがぼこぼこにしたんだろうな。

・・・こんなにぼこぼこにして、もし私が証拠取ってなかったら、どうする気だったんだこいつら。


「大丈夫か?あけ
「やっぱり着いてってあげれば良かった・・・。あけちゃん、本当に無事で良かったよ・・・」
「わる、い・・・。縄、解いて、くれ・・・」


抱き起そうとしてきた秋山に、後ろで縛られている手を見せつけた。
気付いた秋山が慌ててナイフを取り出し、ゆっくりと縄を切っていく。

今触られたら、変な声を上げてしまうかもしれない。
縄と首輪を外してもらってる内に、なるべく落ち着かなければ。


「っは・・・」
「・・・あけちゃん?」
「ん、だよ」
「どうしたの?何か変な薬でも飲まされた?顔色が・・・・」
「さわ、んなっ!!!」


伸ばされた手を払いのけようとして、動かしたところから痺れが走った。
思わず甘い声が漏れ、払いのけようとした手は桐生の手を握りしめる。


「んっ・・・ぐ・・・」
あけ・・・お前、媚薬か何か盛られたか?」
「・・・・っせぇよ。さっ・・・さと、首輪も取れ・・・っ」
「媚薬?アイツ、そんなものをあけちゃんに・・・」
「どう、せ、解毒剤を・・・作れる・・・っ」


ガチャリ、と。
首輪が外されるのと同時に、私はぐったりと倒れ込んだ。

自ら動くことなど、もう出来ない。
このままアジトまで運んでもらうしか、私には方法が残されていなかった。
震える声で桐生に縋り付き、アジトまで連れて行ってくれるよう頼む。


「桐生、わた、しを・・・アジトに・・・っ」
「そんな状態じゃ、解毒剤も作れねぇだろうが」
「で、も、どうすればっ・・・・」
「・・・あけちゃんのその苦しみを、解放してあげることぐらいなら・・・出来るけど?」


秋山の甘い声が、私の脳天を揺さぶった。

別に秋山の事は嫌いじゃない。
でも、本当にその方法でしか解放されないとしても。

熱に踊らされた行為は、したくない。


「い、や・・・・だ」
あけちゃん・・・・」
「おねが、い、きりゅう・・・っ」


桐生に縋り続ける私を見て、秋山が悲しそうにやれやれと首を振った。
そのまま犯人の男を抱きかかえ、私達に背を向ける。


「やっぱあけちゃんは、桐生さんを選んじゃうかぁ・・・」
「なん、の、話・・・を・・・」
「そんな状態で縋りつける人ほど、信頼されてる証拠だからね。・・・悔しいけど、今日は桐生さんに任せますよ」
「・・・・あぁ」
「でも、諦めたわけじゃありませんから・・・覚悟しててくださいね」


去って行く秋山。私を抱きかかえて歩きはじめる桐生。
逆上せあがる意識のせいで良く理解出来なかった私は、何も考えず桐生に身体を預けることにした。

抱きかかえられる腕が、熱い。
触れてる場所が、壊れそうなほど痺れてしまう。
時々無意識に零れ落ちる声が、私の羞恥心を煽っていく。


「ん、ん・・・・」
「無理をするな。つらいなら・・・・」
「いい、から、早くアジトにつれてけ・・・っ!」
「・・・ったく、お前はどんな状況でも変わらねぇなぁ・・・」


可愛げなくて、悪かったな。
そう小声で呟くと、桐生が何故か優しく笑った。

桐生の腕に抱かれたまま、神室町の町を通り過ぎる。
向かうはもちろん、私のアジト。

あそこならちょうどセレナの近くだし、色々と都合が良い。


「早く、たのむぜ、桐生」
「あぁ」
「あ、ま、まって・・・」
「・・・・なんだ?」
「は、走る、な・・・っ」
「・・・・」


桐生の表情が、少し苛立ちの色に染まる。
しまった、と思った時は既に遅く。

桐生は私の身体を強く抱きしめると、私の言葉を無視して走り始めた。
衝撃さえも快楽になりうる私の身体には、それすらも拷問のようなもので。


「っ~!き、りゅ、ま、待っ・・・・!」
「早くしろだの待てだの、お前の言うことを聞いてたらキリがねぇ」
「っん、ぐ・・・」


この、馬鹿。
ほんと、馬鹿。

罵倒する元気も無くして、ぐったりと身体を預けることしか出来ない。


「ほら、そろそろ着くぞ」
「ん・・・」


乱暴なわりには優しく囁かれ、ゆっくりと桐生の腕から顔を上げた。
潤む視界に映る、見慣れた光景にどこかホッとする。

でも、まだだ。
まだ安心なんて出来ない。こんな状況なのだから。


「はっ・・・う・・・・」


震える手でアジトの入口に手を当てた。
そしていつも通りの“暗号”を描き、鍵穴を出現させる。

これがこのアジトに搭載された、最新技術ともいえる機能。
ある一定の場所をなぞる事により、隠してあった鍵穴を開けると言う仕組みになっている。
この開け方を知っているのは、いつものメンバーに居る奴らだけ。

震える手で鍵穴に鍵を入れると、静かに扉が開いた。

いつも通りの香りが私を落ち着かせ、部屋の中へと誘う。


「よ、し・・・。あとは、解毒剤、を・・・」
「あるのか?」
「ねぇに決まってんだろ・・・作る、んだよ・・・」


常日頃、そんな薬が準備されているわけじゃない。
慣れた手つきで薬品を手に取った私は、再び走った痺れに思わず手を止める。

奪われた思考と感覚。
こんな状態で薬を作れば、どうなるかなんて目に見えている。
数秒間で「作るには危険」という結論に至り、仕方なくその場に腰掛けた。


「どうした?」
「・・・危険、すぎる。結構複雑な、ものを・・・作らないといけねぇ・・・からな」
「・・・だから作れるのかって聞いたじゃねぇか」
「うっせー・・・・」


静かな部屋で、桐生と二人きり。
見慣れたこの光景が、慣れ親しんだこの空気が、私の身体を狂わせる。

熱い。

壊れそうなほど、熱い。


「っ・・・くそ・・・」


桐生も隣に腰掛けたが、私にはそんなことすら構う余裕が無かった。

気を抜いたら理性が壊れてしまう。
我ながら相当強力な薬を作ったものだ。

相当危険な状態だって言うのに、そんなことを考えてしまうのは職業病だろうか。


「何笑ってんだ、お前は」
「いや・・・ここまで、私の薬が、強力だとは・・・思わなくって、よ」
「お前が作った薬だったのか?どうりで珍しくお前が余裕を無くしてるわけか」
「っは・・・褒め言葉、だな・・・」


この苦しさからは、逃れることが出来ない。
逃れる方法はあるけども、私はそれを試すことが出来ない。

目を瞑って薬が切れる時間まで耐え凌ぐ作戦に出た私を、桐生がそっと撫でた。
その温もりにさえ声が上がってしまう身体が、憎らしくてしょうがない。


「や、めろ・・・っ」
「苦しんだろ?・・・お前が許すなら、俺が楽にしてやるよ」
「・・・・」
「お前が嫌がるところまではしない。あくまでもお前をこの状態から解放するだけだ」
「・・・・で、も・・・っ」
「俺じゃ、嫌か?」
「う・・・」
「俺に見られるのは嫌か?・・・秋山の方が、良いか?」


卑怯だ。

こんな時に限って、そんな真剣な顔で聞くなんて。
そんな弱々しい表情を、するなんて。

私自身の答えは、もう既に決まっていた。
心が桐生に傾いていることも、私自身気づいていた。

だからもう、私に首を横に振る選択肢は―――無かった。


「・・・調子に、のったら・・・すぐ、殴り飛ばすからな・・・!」
「あぁ。大丈夫だ・・・俺に任せろ」
「・・・っ」


その言葉と同時に降ってきた、優しいキス。
今頃自分が何を言ったか理解した私は、待ったを掛けようとして手を上げた。


「あ、ま、やっぱ、り・・・待っ・・・・!」
「・・・・待てるわけねぇだろ?一度は承諾したことだ」
「あ、や・・・っ!」


低く、耳に吹きかけるように囁かれる声。
それだけで私は意識が飛びかけるのを感じ、ぎゅっと桐生にしがみ付いた。

もう、逃げられない。

私は彼に捕まってしまったんだ。


「今更待てと言われて、待つと思うなよ・・・あけ


散々待ってたんだ、この時を・・・と。
珍しく余裕の無い表情をした桐生が、私の唇をもう一度奪った。



























さすが龍っていったところか
(狙った獲物は逃がさない、か)
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(龍如/オール・海賊/剣豪)