いらっしゃいませ!
名前変更所
ウォーゲーム4thバトル。
いつも通りにレギンレイヴ姫がサイコロを振り、ゲームの運命を決める。
出た数字は6。
場所は氷原フィールド。
スノウは休養中のため、メルメンバーもぴったりの人数だ。
その中の一人であるアランは、周りを見回しながら言う。
「俺が戦う相手は・・・もう決まってる」
「ラング、だろ?おっさん!」
「あぁ。だからアイツが出てこなかった場合・・・てめぇらだけで戦ってもらう。俺は出ねぇ」
「なっ・・・・!?」
傍から見たらワガママである一言に、メルメンバーが声を上げた。
皆それぞれ非難を浴びせるが、アランはそれを一喝して静める。
「うるせェ!!俺が出なきゃ勝てねぇってことは、それぐらいの戦争だったってことだよ」
アランは試しているのだ。
このメルのメンバーがナイトに通用するかどうかを。
それに気づいたギンタは、自信満々に笑みを浮かべた。
落ち着いたところでポズンに合図を出し、アンダータでゲームフィールドへと送ってもらう。
「アンダータ!この6人を、氷原フィールドへ!」
冷たい空気。
滑る足元。
ギンタ達がワープした先は、一面氷の世界。
ここが4thバトル会場の氷原フィールド。
戦いが無ければ絶景と言えるその景色も、戦況を左右するものの一つ。
「ぶえっくしゅ!」
「大丈夫よ、馬鹿は風邪引かないわ」
「ぜ、全然、大丈夫じゃないっスよぉ・・・!」
ジャックがずるずると鼻水を啜り、身体を震わせる。
そんなジャックをドロシーは馬鹿にしたが、意外な人物も同じような状態にあった。
「ぶえっくしょい!!っだー、くそさみぃな・・・」
メルメンバー最強のアランもまた、寒さに負けて身体を震わせている。
「なんだよおっさん、寒いの苦手なのか?」
「俺は火使いだからなぁ・・・あんまり、好きじゃねぇ」
「・・・来るよ」
雑談をしていたメルメンバーの目の前に、6人の人影が現れた。
その中には、アランが待ち望んだ相手―――ラングもいる。
ラングの姿を確認したアランは、ラングにだけ見えるよう笑みを浮かべた。
覚悟はきちんと出来てるんだろうな?と、挑発の意味を込めて。
「久しぶりに説教してやるぜ・・・ラング」
氷原フィールドに入って見たもの。それはアランの笑顔だった。
あまりにも意味深すぎる黒い笑みに、私はヒクッと顔を引き攣らせる。
嫌な予感しかしない。
あのオヤジ、まさか、私を指名するためだけにここに来たとかじゃないよね?
「もしかしなくても、そうとしか思えない・・・・」
正直、氷原フィールドの時点で来ないと思っていた。
アランは火のアーム使い。
アームとのシンクロを深めている以上、氷原系は苦手だと思っていたのに。
いやでも、負けると決まったわけじゃない。
ここは氷原フィールド。
私の得意なフィールドであり、アランの苦手なフィールドなのだ。
諦めるには、まだ・・・。
「寒いねェ!寒いねェ!!!こういう時はどうすればいいんだい!?」
「(こんの・・・)」
人が真剣に考えてる時に、うるさいのよこのババア。
口には出さないが、心の中でラプンツェルを強く罵る。
好戦的でヒステリック。そして自己中心的な性格。
たぶん、メルには嫌われるタイプの一人だ。
嫌われて容赦なくボコボコにされてくれれば、少しは気が晴れそうなんだけど。
「そうだねェ!あっつーい物を喰うのさ!お前たち全員、焼肉にして食べてやるよォ!!感謝しなァ!この美しいラプンツェル様が食べてあげるんだからねェ!!」
気を抜いたらラプンツェルを殺しそうで、私は味方の方を見ないことにした。
メルメンバーがドン引きしているにも関わらず、ラプンツェルの醜いショーは続く。
「チビ!」
ギンタを指差して叫んだ。
確かにチビだけど、まだまだ成長期だろう。
そしてラプンツェルは次々とメルメンバーを指差し、蔑む。
「不細工なロン毛!」
これはナナシ。
あれが不細工だなんて、目が節穴なんじゃないの?
「もう一人不細工!」
アルヴィス。
私の大事な仲間に、何言ってくれてるんだこのババア。
この試合だけメルメンバーに入りたいと、心の底から思ったのは初めてだった。
メルメンバーに入って、あのババアだけをぶっ飛ばしたい。
「サル!!」
これはジャックか。
サルって言うけど、彼は彼なりに強くなっている。
「酷女!」
これはドロシー。
ラプンツェルなんかより、ドロシーの方が何千倍も綺麗だ。
「んでジジイ!」
「ちょっと?」
「あぁ!?」
ラプンツェルの言葉に、私とアランが同時に不満の声を上げた。
「なんだい、アンタ。向こうの味方をするっていうのかい?」
「向こうの味方も何もないわ。アンタ、自分が一番下だってこと分かってる?」
「なんだってェ!!!???」
「うっさいのよババア。勝負しに来てるのよ?見た目ばっかりうるさいって言ってるの。不愉快だわ!!」
「キィイイイ!アンタから先に殺してやろうかい!?」
怒り狂ったラプンツェルが、私を血走った目で睨み付ける。
私を、殺す?ラプンツェルが?
冗談でしょ?と私は小さく微笑み、その場で一気に魔力を解放した。
「ッ――――!」
ピリピリと音を立て、空間が揺れる。
マズイと感じたらしいギロムがラプンツェルを止めに掛かり、その場を宥めた。
ふとメルの方を見れば、良くやった!と言いたげな皆の視線とぶつかる。
「・・・・はぁ」
どうなるんだ、この4thバトル。
ラプンツェルのせいで、嫌な予感しかしない。
―――パァンッ!
「あうっ!」
「うわっ・・・!?」
よそ見をしていた所に、小さな女の子が飛び込んできた。
頬を押さえ、だけど笑ったまま、必死に立ち上がろうとする。
アクアちゃん、だったかな。
笑顔が可愛らしいけど、生きたいという気持ちを強く持った子だ。
殴った犯人であろうラプンツェルを睨み付けた私は、アクアちゃんにホーリーアームを翳す。
「大丈夫?」
「あ・・・ありがとう、ございます・・・ラング様」
可愛い。
めっちゃ可愛い。
もう4thバトルが始まっているにも関わらず、私はその子の笑顔を見て癒されていた。
「一緒に見ようよ、アクアちゃん」
「はい!」
1戦目の勝負は、Mr.フック対アルヴィス。
この勝負、勝敗は既に明らかだ。
最初はノーガードでいてやると挑発し、それに乗ったフックが攻撃を始める。
だがそのどれもが避けられ、何一つとしてアルヴィスに届いたものは無かった。
はっきり言って、フックの実力はアルヴィスの足元レベル。
「(ロランの時と、全然違うよ・・・。また強くなったんだね)」
Mr.フックが必殺のウェポンアームを使うが、それも全てアルヴィスには届かなかった。
最後の最後は手刀で気絶させられるという、屈辱的な終わり方。
「勝者、メル・アルヴィス!!」
アーム一つ出さず、敵を圧倒して勝ったアルヴィス。
もうナイト級にも通用するレベルだろう。
メル側で静かに見ていたアランも、嬉しそうに目を細めている。
いつか追いつかれちゃうかも?なんて。
冗談に聞こえないぐらいの成長。
「負けちゃったねェ!Mr.フック!制裁の時間だよォ・・・!!」
「こ、殺すのか・・・!?」
「それはアンタ次第だよォ!!」
息子の成長を見守るような気分でアルヴィスを見ていた私は、急に聞こえてきたババアの声に振り返った。
「一世一代のじゃんけんといこうじゃないか!」
「は・・・?じゃん、けん・・・?」
「じゃーん!けーん!」
「ま、待っ・・・!」
何してるの、あのババア。
展開についていけない私をよそに、突然始まったじゃんけんの勝負が決まる。
ババアの手はチョキ。
フックの手はパー。
そのことを確認した時にはもう、彼は絶命していた。
首を斬られたのだ。ラプンツェルに。
制裁だのなんだのと言いながら、転がった首を楽しそうに蹴りあげる。
「何してんのよ、アンタ・・・!仲間を・・・!」
「ヒャハハハハハ!こんなつまらない勝負をみせるやつなんて、死んだ方がいいんだよォ!!」
「このっ・・・・「おいババア!!てめぇは自分の仲間まで殺すのか!?」
私が言いかけたことを、ギンタが大声で言ってくれた。
こんなのでも味方な以上、攻撃することが出来ないから助かる。
私の変わりに、どんどん言ってやれギンタ!
そう心の中でギンタを応援していると、次はドロシーが出てきて「ババア!」と吐き捨てた。
い、意外と言う子なんだね。びっくり。
「あああああ!今すぐ人を殺したい!殺したいよォォオ!」
「ま、待てって姉ちゃん!?姉ちゃんには一番美味しいところくれてやるって!!」
暴走したラプンツェルを必死に止めるギロム。
大変な姉を持ったねと、同情する気はあまり起きなかった。
弟であるギロムも、そんなお姉さんと同じぐらい残酷だと聞く。
ヴェストリの街を襲って殺しまくったらしいし、ね。
「それでは2戦目、誰が出ますか?」
「オイラが出るっス!」
やっとラプンツェルが落ち着いたらしく、4thバトルが再開された。
2戦目はコレッキオ対ジャック。
正直、ジャックの魔力の方が強いけど・・・環境的に部が悪い気もする。
ジャックは勝負が始まるまでそのことに気づいてなかったらしく、アースビーンズを育てようとして青ざめた。
そう、ここは氷のフィールド。
植物なんて、咲く訳がない。
「ヒャハハハハ!いいねェ!やっちまいなぁ、コレッキオ!」
植物が出せないジャックを圧倒し、小さくなるハンマーを使って小さくする。
このままコレッキオの勝利かと思われた瞬間、ジャックが突然コレッキオに上りはじめた。
小さくされ、大きいコレッキオに殴られ続け、それでも諦めない彼の表情。
サルとか言ってたけど、やっぱり彼はかっこいい。
「・・・っ!?なにする、気・・・!」
「てやーっ!」
ジャックの手が空を掴み、コレッキオから離れていく。
なるほど、そういうことか。
状況が掴めてないコレッキオより先に理解した私は、口元に薄っすらと笑みを浮かべる。
「育て、アースビーンズ!!」
「あがっ・・・あぐあぁあああっ!!!」
コレッキオに上り、口の中にアースビーンズを投げ込んで、発動。
見事にお腹の中からアースビーンズを伸ばされたコレッキオは、窒息しそうになりながら倒れた。
これで2敗。
あのババアがお怒りだ。
だけどもう、味方を殺させるわけにはいかない。
「制裁だよ!コレッキオ!!じゃーんけーん!」
「アイススパイク!」
「なっ・・・・!?」
じゃんけんが終わる前に、私は得意の氷アームでババアとコレッキオの間を割った。
そしてすぐにコレッキオを自分の方に引き寄せ、アームを構える。
「これ以上勝手に味方を殺すなら、私が相手になるわよ」
「なんだってェ!?このっ・・・!」
「アイススパイク!」
実力の違いを見せつけるため、私はわざとラプンツェルが持っている同じアームを使った。
さっきはコレッキオが居たから手加減したけど、今回は一切していない。
一瞬でラプンツェルの心臓を捉える位置まで氷を伸ばし、無言でラプンツェルを脅した。
「・・・やる?」
「・・・チッ・・・」
大人しくラプンツェルが引き下がるのを見て、心の底からニヤけてしまう。
ざまぁ見ろ。
早くラプンツェルの番になってくれればいいのに。
もし負けたら、私が制裁してあげる。
心の底から殺戮を楽しんでる奴だけは、どうしても許せないから。
「それでは第3試合、開始!」
第3試合、アクア対ナナシ。
アクアちゃんが出る時点で、相手がナナシなのは少し予想してた。
ロコの時もナナシが出てたし。
女好きという噂を聞いたけど、どうやら本当みたいだ。
「レディーワーストや、どっからでも来ぃや!」
「まぁ!なんで優しい人なんでしょう!」
レディーファーストに甘えて技を繰り出すが、ことごとくナナシに破られていく。
ガーディアンのアッコちゃんは避けられ、呼び出した海の仲間はグリフィンランスという槍に殺された。
後が無くなったアクアはアッコちゃんの中に入り、捨て身のタックルを挑むが。
・・・・終わり、だね。
そう呟いた私の目の前に、ナナシのエレクトリックアイが勢いよく落ちる。
「はわ、はわわ・・・はわぁ・・・・」
アッコちゃん共々焦がされたアクアは、目を回しながらその場に倒れた。
ポズンが勝利宣言を行おうとするが、それをナナシが大きな声で止める。
「自分も、もうバテバテや!だからドローでええやろ?」
「え、貴方さっきまでピンピン・・・」
「疲れた言うたら疲れたんや!!」
見ると、ナナシもその場に倒れていた。
全然疲れているように見えないのに。
アクアちゃんを、制裁の対象にしないようにしてくれてるんだ。
「・・・第3試合、両者・・・ドロー!」
助けてくれたナナシにお礼を言いながら、アクアちゃんが私の元へ戻ってくる。
手を広げて出迎えようとした私の目の前に、またしてもあのババアが立ちふさがった。
「制裁だよォ、アクア・・・・!」
「え・・・!?どうしてですか?アクア、ドローでしたよ・・・?」
「敵の情けの結果だろう!?コレッキオの分まで、死になァ!!!」
どうやら、コレッキオを殺せなかったのがムカついていたらしい。
私はやれやれとため息を吐くと、アクアに向かってアームを掲げた。
ディメンションアーム、アンダータ。
移動手段だけでなく、色々な方法で使えるこのアームを、私はアクアに使用した。
ラプンツェルの氷が届く前にアクアの姿が消え、私の腕の中に納まる。
「アンタ、私の話聞いてた?」
こんなかわいい子まで殺そうとするなんて。
そろそろ怒りが頂点に達しそうな私を、ラプンツェルが悔しそうに睨む。
これ以上ここに味方を置くと、隙をついて殺されるかもしれない。
あと2人残ってるし、一旦レスターヴァにこの二人を戻そう。
「ポズン」
「は、はい!」
「私、アクアちゃんとコレッキオを一回城に戻してくるから」
「勝負はどうなさるのですか?」
「私は最後に出るわ。ラプンツェルがいるんだもの、そんなにすぐ終わらないでしょう?」
遠まわしに、「あれだけ騒いでたんだから、簡単には負けないよね?」という嫌味を混ぜ、私はその場を後にした。
「・・・助けてくれて、感謝してる。コレッキオ、死ぬところだった」
「本当にありがとうございます、ラング様・・・・」
「良いのよ。私はただ殺しを楽しむ奴は嫌いなの」
頭を下げて感謝してくる二人に、苦笑いを浮かべる。
別に感謝されるためにしたわけじゃないから、そんなに感謝されると恥ずかしい。
「ふぅ・・・ちょっとイライラしすぎたかなぁ」
とにかく今は、勝負に備えて落ち着かなければ。
今はあのババアのせいで、少し頭に血が上ってしまっている。
このままじゃ、アランに勝つことなんて出来ない。
「大丈夫・・・大丈夫。あのフィールドは私の味方だわ。きっと、勝てる」
昔から私はアランに勝てたことがなかった。
何をするにでも負けて、悔しい思いをしてきた。
そう、これはリベンジなんだ。
昔のアランへの、勝負。
そうやって私は、アランと戦うことへの恐怖を勝負心で誤魔化した。
一人でブツブツと呟き続ける私に、アクアが不安そうな表情を浮かべる。
「あ、あの・・・」
「・・・ん?」
振り返れば、そこにあったのは満面の笑顔。
・・・・可愛い。
「私、応援してますから!」
「コレッキオも、応援してる。ラング様、応援する」
「・・・ありがとう」
二人のおかげで落ち着きを取り戻した私は、再びアンダータを発動させた。
向かうは氷原ステージ。
勝負の、場所へ。
私は、逃げられない。
私は、逃げない。
再び氷原フィールドへ舞い戻った私が見たのは、氷の上に横たわるラプンツェルの姿だった。
身体を一直線に走る切り傷。そして傷を押さえるドロシー。
なるほど。
このババアはドロシーと当たって負けたようだ。
「ただいま、ポズン」
「おかえりなさいませ」
「あれ、ラプンツェル。どうしたの?傷だらけじゃない」
今まで溜まっていたイライラが、すーっと消えていくのを感じる。
何も言い返せないババアに気をよくした私は、そのままアランへと視線を移した。
戦った形跡の見られない男。
やっぱりコイツ、私と戦うためにこのステージに出たんだ。
「・・・アラン」
私が名前を呼ぶと、アランが一歩私の方へ歩み寄った。
お互いの魔力が音を立ててぶつかり合い、周囲の氷を砕いていく。
「このフィールドで私に勝負を挑むなんて、いい度胸じゃない。女に負ける伝説の男なんて、恥よ?」
「俺様がお前に負けると思ってンのか?」
「負けるわよ。・・・そして私が勝つの」
お互いに譲るつもりのない戦い。
どちらも、負ける気など持ち合わせていない。
今までの勝負とは桁違いの魔力が吹き荒れる空間に、ポズンの試合合図の声が響いた。
「第6試合。チェスの駒、ラング!メル、アラン!」
試合、開始。
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