Erdbeere ~苺~ 6話 壊れた理性 忍者ブログ
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2012年05月29日 (Tue)
6話/桐生さん視点

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暗い路地裏。
そこから聞こえてくる、男女の声。

高級バーを目指して歩いていた俺は、聞こえてきた声にふと足を止めた。


「・・・喧嘩、か?」


あけとの待ち合わせまで、あと5分。
出来ればこんなところで時間を潰したくはないのだが・・・仕方がない。

人気のない裏路地で、争うような男女の声。
神室町という町なだけに、放っておくのは危険すぎる状況だ。

足音を消して静かに歩き始めた俺は、声のする方へと近づいていく。


「・・・れ・・・て・・・!」


泣き叫ぶような声。見覚えのある姿。
その姿を見た俺はすぐに足を止め、バレないよう柱に身を隠した。

どういうことだ?
なんで、あけと真島の兄さんがここに?

いや、それよりも。
どうして二人が、ここでキスしてるんだ?


「ッ・・・ろ・・・・!はな、せ・・・離せっつってんだよこのやろう!」
「おおっと・・・あけちゃんも往生際が悪いなぁ」
「どこがだ!てめぇ・・・好き勝手してくれやがって!いくら兄さんだからって、許されることと許されねぇことがあ・・・」
「黙れや」
「ッ・・・!」


暴れるあけを兄さんが押さえ付け、無理やり唇を押し当てる。
襲っているとしか思えないその光景を見て、俺は一歩も動くことが出来なかった。

赤く染まっていくあけの頬。
もしこれが、嫌がってるように見えるだけで、二人がそういう関係だっだとしたら。


「(俺には・・・関係の、ないことだ・・・)」


そう、関係ないことだ。
俺はあけの恋人でも無い。親しい関係でもない。

たとえ兄さんと付き合っていようと、俺がどうこう出来ることじゃねぇ。


「・・・っだから!やめろ・・・やめてくれ、兄さん・・・・」


しばらくして、静かな路地裏に震えた声が響き渡った。
あけはぐったりと座り込み、身体を抱え込むようにして怯えている。


「やめてくれ・・・もう、やめて・・・」
「・・・なんでなんや・・・」
「え・・・?」
「どうやったら俺を見てくれるんや、あけちゃん・・・」
「わからねぇよ・・・誰を見るかとか、そんなこと、私自身でも分からねぇよ!」
「嘘つくんやないで・・・あけちゃんは明らかに変わってしもた。前までは俺のことを見とってくれてたのに・・・見なくなったんや。何でか分かるか?」
「・・・・分かんねぇよ、そんなの・・・!!」


兄さんの腕があけの頬を撫で、無理やり掴んで上を向かせた。
無理やり掴まれたあけは、大きな目に溢れ出そうなほど涙を溜めこんでいる。

兄さんの雰囲気がおかしいことには、ここからでも気づくことが出来た。


浮かべられた笑み。
発せられる声。

その全てが狂気染みていて。

俺でさえ聞いたことのないような低い声が、周りの空気を凍らせていく。


「教えたるわ」
「いいから、離し、て・・・!」
あけちゃんが桐生ちゃんを見始めたからや」
「・・・・!」


あけが?俺を?


「ち、ちが・・・」
「違わへんやろ?今も桐生ちゃんのこと、考えてたんとちゃうか?」
「それ・・・・は・・・」
あけちゃんは、桐生ちゃんのこと・・・好きなんやろ?」
「っ・・・・」


聞いてるだけじゃいけないのに、盗み聞きしてしまう。
話の内容が、俺の足を止めつづけた。

この先を聞きたい。
あけが俺をどう思っているのか、聞いてみたい、と。

もし聞いて、あけが俺を好きだと言ったら・・・どうする?


「私・・・は・・・」


聞いては行けないんだ。
あけの本当の感情を聞いて、それがもし俺の理性を壊してしまうものだったら。

俺は、あけを。
無茶苦茶にしちまう。
なのに、身体が動かねぇ。


「私は、桐生を・・・」
「なんや?何も思ってないんやったら・・・遠慮せんと、無理やりにでもあけちゃんを物にするで?」
「・・・・っ!やめ、やめろ!私は、私は桐生のことがっ・・・!」


兄さんに腕を掴まれ、あけが大声を上げた。
痛いぐらいに食い込む兄さんの手が、あけの細い手首に赤い痕を残す。

気に食わない。

あけのあんなに怯えた表情、俺でさえ見たことがないのに。

獣のように湧き上がる独占欲。
それと共に、俺の理性の砕け散る音が聞こえた。


「私は、桐生の事が、好きだ・・・!そうだよ、だから、だから兄さんのことは・・・見れない・・・!」


聞いては行けなかった言葉を、俺は耳にしてしまったらしい。
理性が砕け散るのは思ったよりも簡単で、俺は自然とあけ達の方へと歩きだしていた。

手首につけられた赤い痕が気に食わない。

兄さんに、あけの怯えた表情を見られたのが気に食わない。

唇を奪われたのが。
触れられたのが、気に食わない。


「やっぱりあけちゃん、そやった・・・」
「悪いが」


真島の兄さんの言葉を遮り、俺は座り込んでいたあけを無理やり立たせた。
引きずられるように俺の胸に飛び込んできたあけは、俺の方を見て口をパクパクとさせて驚いている。


「・・・あけは返しもらう」


兄さんの方を見ることはしなかった。
力づくであけを引っ張り、俺のものだとばかりに連れて行く。

壊れた理性は戻らない。
独占欲。嫉妬。抱いた愛情。

隠してきた汚い欲が、俺を狂わせる。


「おい、桐生・・・!?どうしたんだよ、お前・・・!」
「うるせぇ。黙って来い」
「き、りゅう・・・?お前、ちょっと待っ・・・」
「来い」
「いた、痛いって!く、くそ・・・!どいつもこいつも話聞かねぇで・・・!」


「なんや・・・俺、恋のキューピットみたいなことしてもうたんか・・・!?」


あぁ、そうだな、兄さん。
良くも悪くも、その通りだ。



























「おい、桐生!?は、話を聞けって!」
「・・・・」
「どうしたんだよ桐生!?」


歩みは止まらない。
もう、止められない。

俺はあけと二人っきりになれる場所を探し、最終的にラブホテルへと連れ込んだ。
場所を見て抵抗し始めたあけを、軽々と押さえこんで中に引きずり込む。


俺は自分勝手な男だ。

相手の人生を曲げないよう、邪魔をしないよう、壊さないよう我慢してきたはずなのに。


いざ相手の気持ちが自分を向いているとしれば、牙を剥き始める。
勝手な嫉妬と独占欲に狩られ、相手を壊そうとする。


「き、りゅ・・・」
「入れ」


怯えるあけをホテルの一室に投げ込み、中から鍵を掛けた。
あけはそんな俺を、ベッドの上で不機嫌そうに見つめている。


「・・・どういうことだよ、これ。何するつもりだ」


そんなあけの表情を見て、俺はやっと一時的に理性を取り戻すことが出来た。
あけの隣にゆっくりと腰かけ、自分を落ち着かせながら口を開く。

あけは俺を、嫌うだろうか。
欲望に駆られて、こんな所まで連れ込んだと言ったら。


「ワケを話せよ、桐生。お前こういうことするタイプじゃねぇだろ?」
「・・・・だ・・・」
「あ?」
「お前が、好きだからだ」
「・・・・はっ?」


あけのマヌケな反応に、俺は思わず笑ってしまった。


「フッ・・・そんな驚くことじゃねぇだろ」
「え、いや、は?驚くだろ、え、だってお前は由美さんが・・・」
「あぁ。俺は由美の事が好きだった。でもあの事件の途中から、お前のことが気になって・・・しょうがなかった」


自分の心に溜めていた感情を、ここぞとばかりに打ち明ける。
もう何もかも、隠さずに。


「俺はお前のことが好きになっちまったんだ。でもな、俺は・・・見ての通り、極道モンだ。欲望に忠実なんだ。今だって俺は、お前の気持ちを聞いて、お前を手に入れるために穢そうとした」


歪んだ愛情表現なのかもしれない。
極道から足を洗ったとはいえ、考えは極道のままだ。

相手の事を思えば、打ち明けるべきではないこの感情。
でも手に入れたい――――あけの存在。

そして、無理やりにでも手に入れてしまおうという、穢れた感情。


「俺はお前の人生を捻じ曲げっちまうことだってあるだろう。お前は純粋だ。俺なんかじゃなくて、もっといい男がいる。そう思って我慢してきた・・・でも」


聞いてしまった。
あけの、心を。

聞いて我慢できるほど、俺の心も大人じゃなかったようだ。


「お前が真島の兄さんに襲われているのを見て・・・さっきのを聞いて、我慢出来なくなった。あけ・・・俺はお前の事が好きだ」
「桐生・・・ほんと、な、のか・・・・?」
「あぁ、本当だ。でもお前はまだ若いし、俺のような奴に振り回される前に・・・もう一度、考え直・・・・」
「桐生」


今さっきまでの怯えた表情は一切なく、あけはいつも通りの真っ直ぐな瞳で俺を見つめてきた。
吸い込まれるような綺麗な瞳に映った俺は、どことなく不安そうな顔をしている。


「なぁ、桐生。・・・・私、桐生のこと・・・それでも好きだぜ。お前になら、穢されても良い」
「・・・・あけ・・・」
「私も、ずっと、前から思ってた。でも由美さんや桐生のことを考えると・・・私みたいなのは、相応しくないって思って、ずっと我慢してた」
「・・・あけ・・・俺は・・・」
「待ってくれ、桐生。私の気持ちも・・・言わせてくれ」


あけの手が、恐る恐る俺の手に重ねられた。
落ち着かせるために握り返してやれば、あけがホッとした表情を見せる。

やっぱり、素直な奴だな。こいつは。


「私は桐生が思ってるほど、純粋じゃねぇ。私だって裏の世界や極道に関わってきた人間だ。自分勝手だし、汚いことだって平気でする・・・・」
「・・・あぁ」
「だから、私は、桐生にはもっとふさわしい女がいると思って・・・私なんか、桐生を満足させてあげられないって・・・そう思って、我慢してたんだ・・・・」
あけ・・・」
「私が気持ちを伝えることで、桐生の将来を、せっかく穏やかになった生活を・・・壊しちまうんじゃないかって・・・・」


つまり俺たちは、お互いに同じ感情を抱き、同じような悩みで止まってたってことか?


打ち明け合った気持ち。正直な感情。
全てを言い合った後、俺はふと笑みを浮かべた。

するりと、モヤモヤが綺麗に消えていく。
今まで抑え込んできたものが、一気に無くなったかのようだ。


あけ・・・わりぃ。我慢できねぇ」
「き・・りゅう、ちょ、ちょっとまって・・・!まだ、聞きてぇことが・・・っ!」
「消毒してからでいいだろ」
「ん・・・っ!」


我慢してきたものが無くなって、俺は再び理性の限界を超えた。
あけの唇に、手首に、強く舌を這わせてあけを味わう。

兄さんに口付けされた場所。
掴まれた場所。
消毒しないと気が済まねぇ場所、全てに口付ける。


「っ・・・き、桐生・・・私を裏切っても良い。夜遊びだってしていい・・・だけど、一つだけ、一つだけ約束してほしいんだ・・・」
「・・・なんだ?」
「私を帰る場所だと思って・・・必ず、私の所に戻ってきてくれるって・・・約束してくれねぇか?」


そう言うあけの表情は、女としての表情そのもので。
俺は迷うことなくあけを抱きしめ、可愛らしい耳元で囁いた。


「約束する。・・・お前こそ、後悔しないな?」
「あぁ、しない。お前こそ、本当に私なんかで良・・・・」
「俺の女になってくれるか、あけ
「・・・・だから・・・人の話は最後まで聞けっての・・・まぁ、良いけど、よ」


俺の気持ちに迷いはない。
正しくは、無くなったんだ。


言葉を遮られて不機嫌なあけを、俺は宥めるように撫でまわした。

もう、我慢はしない。俺だけのあけだ。
穢されても良いって煽ったのも、お前だしな。

覚悟はできてるだろう?


あけ・・・愛してる」


何もかもが壊れるまで、壊れた後でも。
俺の全てを、受け入れてもらおうか。

一生、逃げられねぇと思えよ・・・あけ






























平行線を辿るはずだった未来が、交わった瞬間
(俺は静かに彼女を組み敷き、ニヤリと意地悪い笑みを浮かべた)
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