Erdbeere ~苺~ 3話 見透かされた心に鎖を 忍者ブログ
2024.11│ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
いらっしゃいませ!
名前変更所
2024年11月15日 (Fri)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2012年05月27日 (Sun)
3話/ヒロイン視点

拍手



「お姉ちゃん・・・髪の毛、ぼさぼさだよ?」
「ちょっと寝ちまってさ・・・桐生はどう?」
「うん、今寝てる。でもまだ苦しそう・・・」


寝て遅れてしまったことを後悔しながら、私は桐生が寝ているベッドへと駆け寄った。
寝癖なんて気にしてる暇はない。とりあえず今は薬を飲ませないと。

少しでも早く楽になってもらいたくて、調合してきた薬を水に溶かす。
相変わらず色は悪いけど、ちゃんとした成分の即効性薬だ。
飲めばすぐに熱が引き、安静にしておけばぶり返さなくなる。


「うわ、結構高い熱だな・・・何度ぐらいだった?」
「39度・・・」
「今まで切り詰めっぱなしだったし、さすがの桐生でもきつかったのかもな」


熱に体力を奪われた桐生が、苦しそうに咳き込んだ。
まだ起きそうにも無いし、寝れたならこのままにしてあげたい。

ならせめて楽に寝れるようにと、私は濡れタオルを冷たいものと交換した。
それから呼吸が楽になるよう、持ってきた塗り薬を胸に塗る。


「それなぁに?お姉ちゃん」
「これな、気道の炎症を抑えて、楽にしてやる薬なんだ」
「なんか匂いで鼻がスースーする!」
「匂いきつくてごめんな?塗り終わったら、すぐ片付けるから」


っていうか・・・。

相変わらず良い身体しすぎだろ、こいつ。
塗ってるだけなのに、女の私が恥ずかしくなってくるってどういうことなんだよ。


「ひー、良い筋肉してやがるぜ」
「おじさん、凄く強いもんね」
「ほんと、人間離れしすぎてついていけねぇよ」
「お姉ちゃんも・・・強いと思うけど・・・」
「ん?私はほら、こんなに筋肉ねぇし、覚えた技とかでカバーしてるだけだよ」


一人の時間が多かったから、テコンドーや色々な格闘技を勉強し、自分に合う技を編み出した。
ただ、それだけのこと。私自身はさほど強くない。

追い込まれれば慌てるし、桐生達みたいに反射能力も高くねぇしな。
女の中では強い方に入るだろうが、まだまだ桐生の背中を守るには実力が足りなかった。


・・・力があれば、私はどれだけのものを守れたのだろう。


薬を塗りながら考え込んでしまった私を、遥が不思議そうに見つめてくる。


「お姉ちゃんって・・・・」
「ん?」
「おじさんの事、好きなの?」
「ぶー!!??」


な、なん、何って言った今。
好き?桐生のことを?


「な、なにいってんだよ。そりゃ、好きな方ではあるけど、信頼関係的な意味でだな・・・」
「やっぱり、好きなんだ。」
「え、いや、ほら、もちろんライクの方だぜ?」
「おじさんね、お姉ちゃんとメールしてたり、お話してる時、凄く楽しそうにしてるの!」
「いや、あの、遥?」
「私はおじさんに、幸せになってもらいたい・・・だから、お姉ちゃん。おじさんのこと、お願いします!」


全然話を聞かれてない。
問答無用で話を進める遥に、私は軽く眩暈を感じた。

好きか嫌いかで聞かれたら、好きだ。
でも私はその先の感情を殺した。
桐生のために。由美さんのために。

この微妙な関係を、壊さないために。


「・・・遥」
「うん?」
「確かに私は桐生のことが、好きだ、でも・・・・」


越えてはいけない、でのはなく。
越えられない一線がそこにはある。

私にはどうしても、越えることの出来ない一線が。


それは女としての自分を、持っていないことが理由だった。
極道の人間には、極道の女。そんな決まりは存在しない。
桐生のような優しい人間にこそ、由美さんみたいな女性が相応しいんだ。

だから、私は何も言わない。
私自身から、感情を告げることはしない。


「桐生には、私以上に良い人が見つかるはずだ。これから、もっと先になったとしても」
「お姉ちゃん・・・」
「私が気持ちを伝えて、それが伝わったとしても・・・きっと私は、桐生を満足させてやれない」


そこまで告げると、遥が寂しそうに眉を顰めた。

遥は人の気持ちに気づきやすいからな。
遥なりに気遣ってくれたんだろう。


「遥、ありがとな」
「・・・ううん」
「大丈夫。これからも私は、私なりに桐生と・・・遥を、見守ってるから」
「うん。ごめんね、お姉ちゃん」
「良いって良いって。それじゃ、桐生が起きてくるまで、遥は寝てろ」
「え・・・?ううん!私も起きてるよ・・・!」


現在の時刻、夜中の3時過ぎ。
ここから先、起き続けるのは私の仕事だ。


「良い子は寝る時間だろ?」
「でも・・・お姉ちゃんだって疲れてるのに・・・」
「良いんだよ。桐生や遥が苦しんでるのとか、見たくねぇから来たんだ。雑用は私に押し付けろ、な?」


私の言葉に納得したのか、遥は眠そうな表情でゆっくりと頷いた。
ほんと、良い子だな遥は。

良い子な上に、所々私よりも大人っぽい部分がある。
由美さんの子供って言われて、納得出来る部分の一つだ。

私の方が数倍大人なはずなのに、こうやって動揺させられっちまうし。


「おやすみなさい、お姉ちゃん」
「あぁ、おやすみ」


遥を寝かしつけ、そのまま私は桐生の看病に戻る。
薬を塗ったおかげか、苦しそうだった桐生の呼吸は、だいぶ落ち着きを取り戻していた。

でもまだ、熱は引いていない。
起きた時に薬を飲ませれば大丈夫だろうし、とりあえずはこのまま寝ててもらおうか。
少しでも楽に寝れるよう、タオルを頻繁に冷たいものへと替え、桐生の様子を見守る。


「ったく・・・無茶しやがって・・・」
「ん・・・」
「風邪治ったら、引きずり回してやらねぇと」


やっぱり私は、桐生のことが好きなんだな。

忘れようとして、思い出して。
忘れようとして、思い出させられて。

まるでこの感情を、忘れるなとばかりに掘り起こされる。

忘れられないならそれでも良いんだ。
心に鎖を掛けてしまえば、それで。































相手の幸せのために自らを犠牲にする、それは、私にとっての幸せ
(桐生の看病をしていた私は、いつの間にか夢の中へと沈んでいた)
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
←No.81No.80No.79No.78No.77No.76No.75No.74No.73No.72No.71
サイト紹介

※転載禁止
 公式とは無関係
 晒し迷惑行為等あり次第閉鎖
 検索避け済

◆管理人
 きつつき
◆サイト傾向
 ギャグ甘
 裏系グロ系は注意書放置
◆取り扱い
 夢小説
 ・龍如(桐生・峯・オール)
 ・海賊(ゾロ)
 ・DB(ベジータ・ピッコロ)
 ・テイルズ
 ・気まぐれ

◆Thanks!
見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。
現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。
(龍如/オール・海賊/剣豪)