Erdbeere ~苺~ 5話 ハッピーバースデー 忍者ブログ
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2012年05月28日 (Mon)
5話/ヒロイン視点

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あれからまた、数か月後。
私は今まで生きてきた中で、1番難しい問題に立ち向かおうとしていた。

今日は6月17日。
今までの私なら、何も変わりない日を過ごしただろう。

今日が何の日かを――――知らなければ。


「アイツの誕生日・・・」


本日6月17日は、桐生一馬の誕生日。
前々から知っていた事にも関わらず、私は桐生の誕生日プレゼントに頭を悩ませていた。

別に、忘れていたとかそういうわけじゃない。
むしろ覚えすぎていて、今週一週間はこの問題に悩まされていた。
もちろん、今現在も悩んでいる最中だ。


「くそ・・・。男にプレゼントなんて、やったことねぇしな・・・」


男の人への誕生日プレゼント。
そんなもの、やったことないに決まってる。

遥の誕生日なら、まだ好みとかも分かって良かったんだけど。
相手は男。しかも桐生の好みなんて、難しくて思いつかない。


「(だー。悩んでる暇はもうないってのに!)」


一週間悩みきった結果、私はもう後がない状況にまで追い込まれていた。

結局、桐生の好みは聞けずじまい。
遥にそれとなく聞いても、よく分からないという結果になった。

やばい、時間がない。早くしないと昼になっちまう。


私はとにかく神室町を歩き回り、色んなお店を見て回った。
ブランド品のお店。お菓子屋さん。小物屋、花屋。

それから、レストランや高級バーまで。

とにかくプレゼントやお祝いが出来そうな場所は、虱潰しに見て回ったが・・・。
駄目だ、何にも思いつかない。


「とりあえず・・・約束だけは、取り付けておくか・・・?」


プレゼントのことばっかりで忘れてたけど、渡すには呼び出さなきゃいけねぇんだよな。
とりあえずプレゼントは後にするとして、約束だけは取り付けておこう。

最悪、おめでとうだけ言えれば良い。
時間はちょうど昼過ぎ。今なら桐生も電話に出るはずだ。


「(うへえ、ちょっと眠い・・・)」
「・・・もしもし」
「あ、桐生。今いいか?」
あけか。あぁ、良いぜ」
「今日の夜・・・遥が寝てからで良い。こっちに来れねぇか?」
「夜?」


二人きりになるため、私は夜の時間を指定した。
いやまぁ、遥が一緒でも良いんだけどさ。
遥が一緒だと調子狂うと言うか、恥ずかしいというか。

久しぶりに飲みたかったし、ちょうど良いかもしれない。
高級バーに行って奢るだけでも、誕生日プレゼントだって言い張ることは出来る。


「なら、23時ごろで良いか?」
「あぁ。場所は喫茶アルプスの近くにあるバーな」
「・・・お前、そこ、高いところじゃなかったか?」
「たまにはぱーっとやろうぜ?んじゃ、待ってる」


誕生日だから、とは言わなかった。
色々聞かれる前に携帯を切り、さっさと目の前の問題に戻る。

タイムリミットは今日の23時。
それまでに誕生日プレゼントを見つけなければ。


「つってもなー。あれだけ一緒にいたけど、分かりづらいんだよな・・・」


一緒に戦い、一緒に飲み歩き、何だって一緒に解決してきた。
でも、あまりにも非現実的すぎる日々で、何一つ私はアイツの日常的な面を見ていない。

たとえば好きな色とか。好きな食べ物とか。
そういう面を見れていれば、こんなの問題にならなかったのに。

つーか、アイツ分かりにくいんだよ。

好きな色、好きな食べ物、好きな物。
思い返すたびに喧嘩の思い出しか浮かんでこない。


「もういっそ、武器買って渡してやろうかちくしょう・・・!」


歩き回っても浮かばない案に、苛立ちを感じ始めたその時。
私は小さなお店の前で、とある物に目を奪われて立ち止まった。

ショーウィンドウの中。

並べられているペアのブレスレット。

龍がデザインされているせいか、私はそれに釘付けになった。
何でだろう。迷いなんてなかったかのように身体が勝手に動く。


「いらっしゃいませー」
「すみません。あのショーウィンドウにあるペアブレスレット、売ってくれねぇか?」
「あちらですか?お高いですが、大丈夫でしょうか?」
「あぁ。ある程度なら持ってきてる」


セットで15万というそれなりの値段を提示されたが、私は迷わずそれを購入した。
桐生に渡す大きな方を包装してもらい、自分自身が持つ方は適当に袋に入れる。

やっぱ、龍がデザインされてるものは、アイツのイメージが強いな。
デザインが綺麗ってもあるけど、似合いそうな気がして買っちまった。

似合うだろうな、アイツには。

なんたって堂島の龍だ。


「・・・・決まるときは案外あっさり決まるもんだな」


こんなにあっさり決まると、今まで悩んでたのが馬鹿みたいに感じる。
いや、悩んだ末に見つけたから、無駄では無いのか。

私はしばらく購入したブレスレットを見つめ、自分用に買った方をこっそりと左手首に着けた。


「・・・・っ!」


着けてからペアブレスレットということを思い出し、恥ずかしくなって袖を伸ばす。

別に、これは、ペアが欲しかったからとかじゃねぇよ!
せっかくだからついでに私も着けようと思っただけだ!

と、誰にも聞かれていないのにそう言い聞かせ、また携帯を開く。


「うあー・・・3時過ぎ、か」


とりあえず、23時まで時間はまだあるみてぇだ。
適当に何かして潰したいが・・・なんか落ち着かない。

ゲーセンにでも言って、適当に遊んどけば気も紛れて――――。


あけちゃ~ん!」
「おあっ!?に、兄さん・・・?」


突然後ろから声を掛けてきたのは、真島の兄さんだった。
兄さんは相変わらずの恰好で、ニタニタと笑みを浮かべている。


「なんだよ兄さん、どうしたんだ?」
「なんや、つれない反応やな~。あけちゃん見つけたから、こうやって追いかけてきたんやないかい!」
「へ?そうなのか?」
「久しぶりに会ったんや。少し遊ぼうや、あけちゃん。な?ええやろ?」


兄さんと会ったのも、あの事件以来だ。

突然殴られて拉致られたり。勝手に奪い合いされたり。
あの時は散々な目にあった記憶しかないが、兄さんは兄さんで良い人だから恨めない。

私は大げさにため息を吐くと、しょうがないとばかりに兄さんの隣に立った。
23時まで暇だし、兄さんと居れば退屈しないだろう。


「んじゃ、暇にならないように頼む!」
「よっしゃあ!やっぱ分かっとるな~、あけちゃんは!たっぷり楽しませたる!」
「どうせ、あれだろ?バッティングセンターだろ?」
「違うでぇ。今回はゲーセンや!面白いゲーム見つけたんや、一緒にやりにいくで!」
「おわわ、分かった!分かったから引っ張るなって!」


引きずられるようにしてゲーセンに拉致られた私は、最初の予想通り、退屈しない時間を22時まで過ごすことになった。


















疲れた。
マジで疲れたよ。

あれからずっとゲーセンで兄さんに付き合っていた私は、格ゲーのしすぎで目の前が真っ暗状態だった。

あんまりぶっ続けでやるもんじゃねぇな。
兄さんは相変わらず元気だけど。


「うあー・・・もうすぐで23時か・・・」
「・・・楽しかったなぁ、あけちゃん」
「あぁ」
「さて、ほな、次はどこ行こか?」


兄さんの言葉に、私はもう一度携帯を確認した。
もうすぐで23時。そろそろ約束の場所に行かなくちゃ行けない。


「あ、兄さんわりぃ、私そろそろ行かなくちゃ行けない場所が・・・」


トン。


普通にさよならを言うはずだった私は、兄さんの腕に言葉を遮られた。
暗い裏路地で腕を掴まれ、状況が分からないまま壁に押さえ付けられる。

ちょ、ちょっと待て。
今の今まで楽しく遊んでたはずだ。

なのになんで、急に私は襲われてるんだ!?


「に、い・・・さん・・・?」
「馬鹿やなぁ・・・あけちゃん。行かせるわけ、ないやろ?」


今までの兄さんとは、明らかに雰囲気が違った。
拉致ってきたあの時や、私を冗談で取り合ってた時とは、まるで違う。

どっちかって言うと、時々見せてた本気の雰囲気に近い。
「暴れたら可愛い顔に傷つけてしまうやろ?」とか、あんなこと言ってた時の雰囲気に。

ここは暗い裏路地。

逃げ場所なんてなければ、私に逃げる力もない。


「兄さん・・・?」
「知ってるで、あけちゃん。なんか大事なことあるんやろ?」
「え・・・」
「気づいてなかったんか?遊んでる最中、ずっとしきりに時計見とったで」
「あ、それは・・・」


ギリギリと手首が締め付けられる。
壁に押さえ付けられた両腕。密着した身体。

怖いのと、ドキドキしてしまうのと。
兄さんの顔が徐々に近づいてくるのを感じて、私は必死に目を瞑った。


「なぁ、あけちゃん。いつになったら俺を見てくれるんや」
「兄さん・・・わ、私は・・・・」
「いっつもそうや。俺と居る時は他の誰か、何かを見とる」


耳元を、兄さんの低い声がくすぐる。
聞いたことのないような低音で囁かれた私は、背中にゾクリとした感覚が走るのを感じて身を捩った。


あけちゃん・・・今、誰をおもっとるんや?誰を見とるんや?」


兄さんの長い指が、私の頬をそっと撫でていく。


「俺を見てくれへんか・・・あけちゃん。俺はあけちゃんのその強い瞳が好きなんやで?」
「兄さん、まって、待ってくれ・・・!」
「やっと誰にも邪魔されないような場所で二人きりになったんや・・・待つわけないやろが」
「兄さん・・・っ!」
「イライラしてしょうがないねん!俺は欲しい物を必ず手に入れる・・・あけちゃんが何を見てても、俺はあけちゃんを手に入れたくてしょうがないんや・・・だから」


降りた指はそのまま私の顎を掴み、そして。


「な・・・!?」
「無理やりにでもなってもらうで――――あけ


殺気が籠った声で名前を呼ばれるのと同時に、私は唇を塞がれた。








































狂気染みた雰囲気が、口付けが、力が、声が・・・・・
(私を捕えて、逃がさない)
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