Erdbeere ~苺~ 4話 素直になってはならない 忍者ブログ
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2012年05月28日 (Mon)
4話/桐生さん視点

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目が覚めると、そこには何故かあけが寝転がっていた。
昨日より身体が楽だ。もしかして、こいつが看病してくれてたのか?


「おじさん、起きた?」
「遥・・・これは・・・」
「ごめんね、あまりにも昨日の夜、おじさんが苦しそうだったから・・・私が呼んだの。はい、これ」


遥は申し訳なさそうにしつつ、俺に気味の悪い色の薬を運んできた。
いかにも毒としか思えないようなそれを、俺に飲めと進めてくる。

まぁ、気味の悪い色だが、作った本人がここにいるから大丈夫だろう。
それがあけの薬だと確信した俺は、呼吸を止めて一気に薬を飲みほした。


「っ・・・・」


ドロドロとした感触。
のどごしは決して良いものとは言えず、俺は軽い吐き気に襲われた。


「う・・・ぐ・・・」


ったく、作るならもっと薬っぽくしやがれってんだ。

心の中であけに対する悪態を吐き、飲み干したカップを乱暴に置く。
遥はそれを受け取ると、昨日より熱が引いた俺の額に手を当てた。


「良かった。昨日より全然熱くない!」
「ずっと・・・あけが、看病してくれてたのか?」
「うん。お薬も、ご飯の材料も、大急ぎで持ってきてくれたんだよ!」


地べたに寝ているあけを抱き起し、座らせてから頬を撫でる。
それから静かにベッドを空け、俺はあけをベッドに寝かせた。

相当急いで来てくれたんだろうな。
こいつ、仕事の化粧をしたまんまだ。
身体が楽になったわけじゃないが、あけが起きるまではベッドから退くことにする。


「おじさん、大丈夫?」
「あぁ。しばらくは起きてても大丈夫そうだ。こいつが起きるまで、寝かせててやろう」


あけの寝顔は綺麗で、いつものやんちゃを感じさせないほど穏やかだった。
可愛らしい、といえば良いのだろうか。見ていると無性に壊したくなる。

この前と同じ感情を目の前に、俺は静かにため息を吐いた。
言い聞かせただろ?この感情は、母性感情と同じようなもんだって。

言い聞かせたはずなのに、言うことを聞いてくれない感情が、心をかき乱す。


「・・・・」


遥が居ることも忘れ、俺はあけの寝顔をじっと見つめていた。
このあどけない姿を誰にも見られたくないと、謎の独占欲を抑えこみつつ。


「人の気も、しらねぇで・・・」
「・・・おじさん」
「ん?」
「もしかして、お姉ちゃんのこと、好きなの?」
「な・・・・」


時が止まった。
どこか見透かしたような遥の瞳に、俺の心が動揺する。

いや、まて、落ち着くんだ。

確かに遥は大人っぽいところがある。
でもそれは、子供なりに他人の気持ちを気にしやすいってだけの話だ。

動揺しないで、違うと否定すれば良い。
なのに何故、出来ない?


「・・・私ね、おじさんに幸せになってほしいんだ」
「遥・・・」
「お母さんのことをずっと好きで居てくれるのも嬉しいけど・・・でもね、私は、おじさんが心を許せる人と、一緒に居てくれる方が嬉しい」
「それは・・・遥が・・・・」
「私だけじゃなくて、色んな人と居てほしいの。お姉ちゃんは、おじさんのそんな存在の一人なんじゃないかなって」


自分自身で偽ってきた感情を、遥は見抜いてたんだな。
それが恥ずかしくて、俺は遥から顔を逸らした。


母性感情や、兄弟のような感情として偽ってきたこの気持ちに、素直になったとして。

だとしたら――――それがどうした?


あけは純粋だ。俺みたいなのより、もっといい男が必ず居る。
俺はそれなりに“夜の遊び”を経験し、この泥沼の人生を歩んできた男だ。

今はまだ抑えこんでいるが、この感情が吹っ切れたらどうなるか分からない。
手に入れたいものを、選ぶ道を、暴力で解決してきた俺が。

今抱いている感情に素直になれば、俺はあけを壊すだろう。


「俺はな、汚ねぇ男なんだよ」
「・・・・」
あけを手に入れたいっていう感情に素直になっちまったら・・・俺はあけを無茶苦茶にしちまう」


独占欲。支配欲。
欲に塗れた世界で生きてきたからこそ、俺はそれに気づいていた。

自分に素直になるな。
だから感情を偽り、気づかないフリをしろと。


「俺はあけの事が・・・好きだ。愛してるんだ」
「おじさん・・・」
「でもな、遥。俺はあけの人生を・・・これ以上、壊したくねぇんだ」


そうだ。俺は口移しでアイツを助けた時から、この感情の本当の意味を知っていた。
そして同時に封じ込めてきた。偽ってきた。

これからもそうやって、あけを見守っていけば良い。
俺は遥の頭を強く撫でると、弱々しい笑みを浮かべてあけに視線を戻した。


「んう・・・?」
あけ?起きたのか?」
「んー・・・?・・・・んん!?」


俺の視線に気が付いたのか、あけがゆっくりと身体を起こす。
そして何度か目を擦った後、何かを思い出したかのように勢いよく立ち上がった。


「どうした?」
「どうした、じゃねぇよ!お前昨日凄い熱だったんだぞ!?私なんかに譲らないで、さっさと寝ろ!」
「お、おい、分かったから引っ張・・・っ!?」


あけの力が思った以上に強く、俺はバランスを崩してベッドに倒れ込んだ。
もちろん、俺を引っ張っていたあけはその下敷きになる。


「お、おい、大丈夫か?」
「・・・・っ」


熱のせいで受身が取れなかったこともあり、俺は慌てて上半身をあけから離した。
俺に押し倒される形になったあけは、顔を真っ赤にして目を瞑っている。

一瞬頭を過った、あの時の口付け。
あけの唇の感触。初々しい反応。

駄目だ。このままだと理性が持たない。


「ッ・・・さっさと退け」
「お、おまえ!これでも看病してやったんだぞ!お礼どころか退けってなんだよ退けって!っていうかお前が退けよ!」
「お礼なら退いてからでもいいだろ?それとも、ずっとこのままで居たいのか?」
「・・・そ、それは、困る・・・!退くから待ってろ!」


あけがベッドから退いたのを確認した俺は、あけに背を向けたまま口を開いた。


「ありがとな、あけ
「・・・おう。良いから休めよ。今日までは泊まって看病してやるから」
「・・・・あぁ」


どこか微妙で、もどかしい、この関係。
でも、この関係のままで俺は十分だ。

こいつが傍に居てくれる、それだけで。





































無理やり手に入れて、今のあけを壊すよりは、ずっと。
(俺が好きな、あけのままで居てもらうために)
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