Erdbeere ~苺~ 6章 その声こそ、私の願う 忍者ブログ
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2013年02月10日 (Sun)
6章/ヒロイン視点

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――――ダメだ。
もう、これ以上は待てない。


「・・・・」
「大吾・・・」


口は元気だが、明らかに大吾の体力が削れてきているのが分かっていた。
当たり前だ。環境が良いところならまだしも、この場所自体、廃墟みたいな場所なのだから。

環境の悪さと、体力消耗と。
私よりも悪い条件で居る大吾の体力は、さすがにもう放っておけない。

食べれば元気になるってレベルの消耗だけどさ。

この状況じゃ、そんな消耗でも命取りになりかねない。


「そんな顔するなよ、あけ
「・・・大吾」
「俺は大丈夫だ。あけ・・・お前らしくないぜ、そんな顔は」
「うっせ」


人が心配してるのに、こいつときたら。
でもこのぐらい元気があってくれたほうが、こちらとしては心配する要素が減って安心だ。

空腹・・・というより、水分を取らせてもらえてないのがキツイのかもしれない。
変に口の中が乾いて、時々視界がぐにゃりと歪む。
これで空調が効いてればまだマシだったんだろうけど、あいにくここは廃墟みたいな場所みたいで。

最悪、だ。

不快感しか、無い。
もうそれしか言いようがない。


「・・・・ん?」


しばらくいつも通りに寝転がっていると、やけに見張り役がソワソワし始めていることに気が付いた。
小さな小型無線機を使って、私には理解できない国の言葉で何かを喋っている。

その光景を見て抱く、違和感。
今まで見張り役はいつも武器を磨いたり、私たちをあざ笑うようなことしかしなかった。

なのに今日は、おかしい。


「(落ち着きねぇな・・・なんかあるのか?)」


武器を手に持ち、ピリピリとした雰囲気で喋り続けている男。
周りの雰囲気を読み取る意味でも意識を集中させた私は、微かな音を聞き取って身体を起こした。

音がする。
何かを叩きつけてるような、冷たい音が。
決して近くで聞こえているわけではないが、私はその音に微かな希望を見出していた。

もしかして、と。

そう希望を抱いた私は、今まで温存していた体力で声を上げた。


「桐生!!!」
「っ・・・お、おい、あけ
「桐生ッ!!助けてくれ・・・!!桐生ッ!!!!」


擦れた声で、何度も何度も名前を叫ぶ。
するといつもは反応しない見張り役が大きく反応し、私の身体を無理やりベッドへ押さえつけた。

これは、ビンゴだ。
絶対来てる。あの男が。待っていたアイツが。


「桐生ッ!!!」
「黙レ」
「桐生ッ・・・!!桐生、私はここに・・・っんぐ!?」
あけ!!てめぇ、あけに乱暴するんじゃ・・・っ」


あとはもう、何も言えなくなった。
口をガムテープで塞がれ、放置されたからだ。

私に乱暴するのを止めようとした大吾にも、ガムテープが付けられる。
「ゴメンな」と目で謝れば、大吾が優しい表情で首を横に振った。


「んん・・・・」


でも、良いんだ。
アイツが来てくれていること、それに確信が持てたから。

―――もう、我慢する必要はない。


「んー!」
「ッ!貴様・・・!」


勢いよく身体を捻り、唯一自由な足で男を蹴とばした。
だが所詮、フラフラの身体。見張りの男はケロッとした表情で私を睨み、そして。


「んぐっ!!」
「!!」


私の腹部に、強烈な蹴りをお見舞いしてきた。
一気に胃液が上がってくるのを感じ、慌ててその場に蹲る。

いつもだったら、こんな蹴りに怯んだりしないのに。

痛々しく咳き込む私を、大吾が心配そうな目で見つめている。


「ん、ん・・・っ」


咳き込んでも、口が塞がれているせいで出すに出せない。
感じたことのない苦しさに息が上がり、意識がグラグラと揺れるのを感じた。

早く。
早く、桐生。

苦しい、んだ。


「(桐生・・・・!)」


バァンッ!!

激しい音が響き、突然扉が開かれた。
扉の前に立っていた見張りがその勢いで飛ばされ、頭を強く打ち、気絶する。


あけ!!」
「っ・・・!」


扉の向こう側に見えたのは、私が待ち望んでいた男の姿。
急に襲ってきた安心感に気が緩み、思わず涙が零れる。

やっと会えた、桐生。
数時間の別れだったかもしれないけど、私にとっては本当にツライ時間だったのだ。
あれからずっと、飽きるほど傍に居たから。

くっそ、やっぱり女々しくなっちまってる気がするぜ。

こんなこと、今まで感じたりしなかったのにな。


「大丈夫か、あけ!」
「んっ・・・ぷはっ!さんきゅ、桐生・・・」
「貴方も大丈夫?」
「・・・大丈夫じゃ、ねぇよ・・・・腹が減って死にそうだ」


圧倒的な強さで敵を倒した桐生は、狭山と一緒に私たちを解放してくれた。
二人のロープを外し終わった桐生が、私を痛いぐらいに抱きしめ、囁く。


「お前が無事で・・・よかった」
「・・・こんなことでやられるほど、ヤワじゃねぇよ」
「嘘吐くな。ボロボロじゃねぇか」
「へーきだっての」
「こんな時までそんな強がりか?なら・・・・」


“お仕置きしても、大丈夫そうだな”


そう囁かれた一言に、私はビクッと肩を揺らした。

ああ、やばい。今の声はやばい。
いつもよりもっと低い桐生の声―――完全に、怒ってる。

とりあえず今は誤魔化せ。
じゃないと、逃げ場が無くなっちまう可能性がある。


「き、桐生、とりあえず、水分と食料、私たちに取らせてくれねぇ?」
「あぁ。特に大吾は消耗が酷いみたいだからな。一旦セレナに戻るぞ」
「悪いな、桐生さん・・・」
「足場が悪いところが多いから、気を付けた方が良いわよ」


狭山の忠告通り、この建物の内部はすごいことになっていた。
床が落ちていたり柱が崩れていたり。下手すると今にもどこかが崩れ落ちそうだ。

大吾より私の方が体力残ってるって思ってたけど、意外と私の方がやばかったのかもしれない。
普通に歩いている大吾よりふらついている自分に気づき、ハァ・・・と深いため息を吐く。
すると急に視界がぐるりと回り、真正面に桐生の顔が映った。


「へっ・・・・?」
「見てられねぇ。このままいくぞ」
「のわ、ちょ、やめろ!降ろ・・・」


“お仕置きを増やされなくなきゃ、大人しくしてるんだな”


「・・・・はい」
「良い子だ」
「っ・・・うる、せ」


お姫様抱っこされながら囁かれた、甘く、低い声。
この後控えてるお仕置きとやらが何なのかを知っている私は、その声に異様に反応してしまう。

それを見て笑っている桐生が、すっごくムカツク。
でも抵抗する体力が残って無いから、大人しく運ばれることにした。

いっぱい、考えないといけないことあるのにな。

アイツらは誰だったのか、とか。本当の目的は何なのか、とか。
大体の目星はついてるけど、それを確実にさせる情報を得なければ。

―――でも今は、大人しく。


「・・・ありがとな、桐生」


久しぶりに味わう温もりに身を任せ、私はセレナまで、少し眠ることにした。































たった数分の休憩時間。
(それでもかまわない。この温もりを、感じれるなら)
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