Erdbeere ~苺~ 5章(3) 助けを待つその時間 忍者ブログ
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2013年02月04日 (Mon)
5章(3)/※ヒロイン視点

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攫われて、何時間経っただろうか。
元々まともな食事を取ってなかったこともあって、私の体力は少しずつ消耗されていった。

大吾はあの日から食べてないんだ。私よりも酷い状態だろう。
だから私は弱音を吐くことなく、ただその場に寝そべり続けた。
ここで弱音を吐けば、大吾にも気を使わせる・・・そう思ったから。


「あー、ったく。暇だっての」


吐き出した声は明るい。
震えてもいないその元気な声に、吐き出した自分自身でもビックリした。

まだ、こんな気力が残っているのかと。
意外にもこの状況、見た目以上に過酷でキツイからな。

縛られている身体。自由の聞かない腕。自由なのは口だけ。

お腹の中は空っぽで、今にも胃液が飛び出してきそうだった。


「だりぃなー。おい、大吾、大丈夫かー?」
「あぁ・・・まぁ、平気だ。お前の方がやばいんじゃねぇのか?」
「まっさか。私を馬鹿にしてんのか?」
「・・・その様子じゃ、確かにまだ余裕みてぇだな」


余裕ってことにしとかなくちゃ、気落ちするだろうが。
再び口を閉ざした大吾に私は声を掛けることなく、見張りが居る方向に向かって身体を捻った。

見張りは二人。
二人とも余裕の表情で銃を磨いている。
隙を突ければ逃げ出せる人数なのに、まったく逃げ出せる余裕が無いのが悔しいところ。

体力もそうだけど・・・このロープ。

結び目まできっちり結ばれてて、全然解けそうにない。


「そろそろ腕痺れてきちゃいそうだぜ・・・・ほんと・・・」


ゴロゴロ転がって血が止まらないようにはしているが、ずっと同じ体勢で縛られてて、筋肉が硬直しないわけがない。
時々無理な体勢を取れば容赦なく身体がつって、その痛みに悶えることになってしまう。

でもずっとこのまま、桐生の助けを待つことだけをするのは、私の性に合わない。
だーもう!どうすればいいんだよ本当にさ!

こういうどうにも出来ない時間が、一番大っ嫌いだ。


「(ふざけてんのかよ・・・くそ。こんなお姫様みたいな立場はごめんだっての)」


せめて敵の情報を得ることぐらいはしたい。
逃げることは無理かもしれないが、それぐらいなら出来るかもしれない。

何故なら動くのが私だけで済むから。

逃げるとなれば体力消耗してる大吾も連れて行かなくちゃいけなくなるし、逃げ切る確率はほぼ無くなる。
だけど一人で行動する分のものなら、何かしら出来るかもしれない。

それに、ほら。私女じゃん?

多少のワガママは許される、だろ?

・・・まぁ下手すりゃ、最悪のパターンもありえるけどな。
女ということを逆手に取られて屈辱を受ける可能性だってある。


「(でも、何かしら行動しなきゃな・・・。なぁ、そうだろ?桐生。もう無茶しちまったもんは、しょうがねぇじゃん?)」


どうせ怒られるなら、たっぷりやらかした後が、私らしいって思うだろ?


「おーい。おい!おいそこの男!トイレ行きてぇんだけどー?」
「・・・・」
「聞いてんのか?おいこらてめ・・・」
「聞コエテル。少シマテ」


私の行動開始は早い。
思い立ったら即行動。それが私。


「コッチダ・・・コイ」
「さんきゅー」


この時だけ解かれる、赤い縄。
痺れかけた腕をぐーっと伸ばした私は、勝手な行動をするなとばかりに男に睨まれた。

ケチだなって睨み返しても、相手はまったく動揺を見せない。
あー、こういう意思疎通が取れない感じの相手は、とても苦手だ。

相手の心を惑わして情報を得るタイプの私にとって、こういう相手は一番の強敵に値する。


「なぁお前ら、私たちにまったく危害を加えようとしねぇよな?」
「・・・・」
「なんで私たちを連れ去ったんだ?やっぱ桐生が目的か?あん?」
「・・・・・・」


にゃろ、完全無視だぜコイツ。
さーって。どうやって心を覗いてやろうか。


「なー、私を攫っても、確実に桐生が来るとは限らねぇぜ?」
「・・・・っ」


ピクリ、と。
少しだけ男が動揺したように見えた。

やっぱり、狙いは桐生か。
それとも桐生に関わるものや、東城会か何かに恨みがあるのかもしれねぇ。

限定は出来ないが、今の動揺で大体の予想はつく。


「別にそんな気にするなよ。私は今お前たちの捕虜なんだぜ?」
「アマリ喋ルナ」
「ハッ・・・厳しいやつ。堅物な考えばっかしてっと、ハゲるぜ?」
「・・・・」


私の言い方が気に障ったのか、少し相手のペースが乱れるのを感じた。
挑発に乗ってくれれば、あとはこっちのもんだ。


「桐生に恨みがあるんなら、やめといた方が良いぜ。なんたって私も敵に回すんだぜ?・・・お前たちに好き勝手された分、殺す勢いでやってやるよ」
「・・・好キニ考エロ」
「んぁー?フン。その様子じゃあれか?でっかく東城会を潰してやろうとか考えてるんじゃねぇだろうなぁ?」
「・・・・好キニ考エロ」


それしか言わねぇのな、お前。

・・・でもよくわかったよ。
声のトーン、言葉の紡ぎ方、表情。

人を騙してこその情報屋だから分かること。
こいつ等、動きがヤケに洗礼されてると思ったら・・・そういうことか。


「早ク入レ」
「はいはい」


狙うは東城会って感じだな、あの様子じゃ。
そのために桐生を最初に潰すって感じか。

んでも、なんでこんなマフィアみたいな集団が、東城会を狙うんだ?

普通にシマが欲しいってだけなら、他にもやり方があるだろうし。

・・・まぁ、あれこれ考えても、一番近い候補はあの“郷龍会”との繋がり。
このタイミングで私たちを潰そうとするんだ。あの組と組んでても可笑しくは無い。


「ふーむ。ま、こんな感じか。若干つかめれば、それなりの情報になるだろ」


その後の情報は、また後で調べればいい。
抜け出した後にじっくりと―――な。


「ん、さんきゅーな」
「サッサトシロ」
「あだっ・・・・分かったよ」


また身体が縛られ、ベッドに強く突き飛ばされた。
でもさっきより体が軽い。少し情報を得られて余裕が出来たからだろうか。

覚えてろよ、お前ら。
お前らのせいで私はお仕置きされるんだからな?桐生に。

それ以上の仕返しをお前らにはさせてもらうからな―――絶対に・・・!!



















アイツの真の恐ろしさを知ってるのは、ある意味私なのかもしれない。
(でも私は待ってるんだ。・・・アイツの、助けを)
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