Erdbeere ~苺~ 1.お前ほんと可愛げねぇな 忍者ブログ
2024.11│ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
いらっしゃいませ!
名前変更所
2024年11月15日 (Fri)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2013年01月19日 (Sat)
一馬之介/ギャグ甘/※ヒロイン視点

拍手



1.お前ほんと可愛げねぇな


私は情報屋の鷹。
3年前に祇園に訪れた“桐生”という男の、本当の正体を知っている人間。

情報屋は貴重な情報を抜き取り、その情報で本人を揺さぶったり、情報を売り捌いたりして金を得る。
3年前、私は桐生という男の情報を得た後、その情報で本人を揺さぶることにした。

売るよりも揺さぶった方が美味しい。そう思ったから。


―――でもその考えは、大きな間違いで。


私は桐生を揺さぶりに掛けたことにより、桐生に追われる日々を送ることになった。
桐生が揺さぶりに動じるどころか、その情報を消させようと私に襲い掛かってきたからだ。

そして始まった、祇園恒例の“賭け事”。

祇園中を巻き込んで行われる私と桐生の追いかけっこに、いつしか祇園中の人間が、それを見世物・賭け事として扱う様になったのだ。

しかも一部では、私と桐生が恋仲であるとか、そんな夢物語を作り出しているらしい。
禁断の恋。情報屋としてのプライド。祇園の賭け事。

すっかりハチャメチャな日々を過ごすことになった私に、トドメをさしたのも桐生だった。


“なぁ、俺の女になれよ”


とある日、私を追い詰めた彼は確かにそう言った。
夢物語が噂で流されている中、彼はそれをはやし立てるように私に接吻をして。

そして今ではこの有様。


「龍屋の旦那、頑張っておくれやすー!」
「じれったいわぁ。はよう捕まえて熱い抱擁を・・・・」
「情報屋の鷹さんも、意外と可愛い反応してはりましたよね」
「やっぱり、両想いなのでは・・・?」
「「きゃー!」」
「・・・う、うるせぇなぁ・・・!!」


桐生に追われていると、嫌でも耳に入る周りの人たちの黄色い声。
夢見がちなお年頃の女性にとって、今の私と桐生は恰好の餌食なのだろう。

夢物語の、姫と殿様ってところか。
でも私にとって、そんなのはゴメンだ。
私はあんな乱暴者の女になったりなどしない。

あんな男、私は・・・。


「ッ・・・!!」
「おっと・・・捕まえそこなったか」
「お前、いつの間に回り込んで・・・っ」
「お前がぼーっと一直線に走ってるからだろうが」


黄色い声に気を取られすぎていた私は、思わぬ襲撃に足を止めた。
伸ばされた手を間一髪でかわし、後ろに1歩後ずさる。

せっかく人目に付きにくい裏道に逃げ込んできたというのに。
だからといって捕まるわけにはいかないと、私は再び屋根に飛び乗って人がいる方へと走り出した。
次々と屋根を飛び乗り、移動する。それに桐生は平然とした顔でついてきている。


「あぁもう!!しつこいな!!」
「お前が観念しねぇからだろ?」
「だから・・・情報なら売らない。消してやるっていってるだろ!?」


正直、こうも追いかけられてばかりでは商売上がったりなわけで。
私は桐生に初めて捕まったあの日から、情報を売るということを桐生に伝えていた。

なのに桐生は、そんなこと関係なしに追いかけてくる。
桐生が求めているものは情報ではなく、“私”だというのだからもっとタチが悪い。

遊女好きの、女泣かせの男にそんなこと言われても、信じるわけないだろ?

どうせ遊女とはタイプの違う女で、遊びたいって思ってるだけ。


「はぁっ・・・はぁっ・・・・」
「どうした?息が上がってきてるぜ?」
「お前の、せいだろ・・・!良いから、もう、やめろって・・・!」
「そうはいかねぇなぁ・・・。俺が何を求めてお前を追いかけてるか、分かってんだろ?」


その言葉に、体力の限界を感じた私は急停止を掛けた。
皆の視線を感じながら、私は桐生に拳を構える。


「あぁ、どうせ身体か何かだろ?私はお前のような乱暴人に、抱かれる趣味はもたねぇんだ」
「ほう・・・言うじゃねぇか。ますます気に入ったぜ」
「・・・・チッ」


ダメだ。
話なんざ、聞いちゃいない。

そんなに女を得たいのなら、この時間で遊女通いでもすればいいものを。
捕まえようと伸ばされた手に手刀を叩き込み、そのまま隣の家に飛び移る。


「お前がしつこく追い続けるなら、私はお前に絶望的な距離で逃げ続けるだけだ・・・!!!」
「っ・・・!?」


懐に忍ばせておいた袋を取り出し、それを桐生の顔面に投げつけた。
中に入っているのは神経を敏感にする薬と、こしょう。

いわゆる、手作りの煙幕のようなものだ。


「な、ん・・・けほっ・・・!けほっ・・・・!」
「じゃあな、桐生!」


手作りと言っても、効果は絶大。
目が見えていないであろう桐生にべーっと舌を出した私は、すぐにその場から移動した。

これならさすがに、すぐには追ってこれないだろう。
そしてここは祇園の街。華やか、かつ賑やかな町。
一度撒いてしまえば、こっちのものだ。


「ようし・・・」


出来るだけ人目につかないような、小道を選んで走り抜ける。
こういうところなら黄色い声も聞こえないし、雑念も生まれない。

小道の奥に身を隠した私は、周りを警戒しながらそっとその場に腰を下ろした。

さすがに走り続けたのが身体にきている。
足が重たくて、走りづらい。ここで休めておかなくては。


「はぁ・・・・」


なんでこうなるんだ。
分からない。3年もアイツに追いかけられ続けても、その答えは分からない。

いや、私がアイツを目に着けた時点で間違いだったのだろう。
アイツの本質を見抜けず、自分よりも上手な人間だと気付けなかったから。

間違っていたのは私。

でもどこか、そのことに後悔していない自分がいた。


「・・・」


この状況が、楽しいと。
少しだけ思い始めてしまったからだ。

何も刺激が無かった情報屋としての生活。
相手を脅し、素直に応じる相手から金をとる商売。

応じない相手には揺さぶりをかけ、とことん追い詰める。

その商売が唯一通じなかった相手。


「そんなこと考え始めちまったら、私も負けだな」


この関係を楽しんでしまったら、アイツの思う壺だ。
少し休憩をした私はゆっくり立ち上がると、動くようになった足を確認して再び屋根に上った。

小さな建物の屋根の上。
大きな建物に隠れ、しかも辺りの道を見渡せる。最高の場所だ。


「さすがにキツかったかな。こしょう入りの煙幕は」


香辛料を混ぜた煙幕は、目くらましというよりは相手に痛みを与える。
私が特別に作った神経を敏感にさせる薬も混ぜてあるからな。

敏感になった神経に香辛料が入りこみ、刺激する。
どんなに痛みに強い人間でも、涙が止まらなくなることは確実だ。


「ま、アイツのことだからすぐ来ると思うけど・・・・」
「待ちやがれ、この野郎・・・!!」
「ほら、きた」


噂をすれば何とやら。
凄い形相で私に近づいてくる桐生を見つけ、私はすぐにその場所を移動した。

ここから屋根へ、屋根へ。
祇園の住民がはやし立てる中、いつも通り桐生から逃げる。
桐生はまだ目が痛いのか、少し目を細めながら辛そうに私の後を追った。

その光景が少し愉快で、思わずいらぬ挑発を加えてしまう。


「どうしたんだ?桐生。情けないツラだなぁ?」
「・・・・て、めぇ・・・・!」
「なっ・・・!」


いきなり詰められた距離。
突然のことに反応が出来ず、私は自分が乗っていた屋根から足を踏み外した。

そこからはもう、ただ落ちていくだけ。
バランスを立て直すことも出来ず、ぶつかることを覚悟して受け身の体勢を取った。
そして衝撃に備え、ぎゅっと目を瞑る。

―――。

――――?


「あ、れ・・・?」


落ちる音の代わりに聞こえた、周りの黄色い歓声。
そして落ちる衝撃の代わりに感じた、柔らかい温もり。

まさ、か。


「っ・・・・ど、どうして・・・!」
「お前な・・・。後ろぐらいちゃんと注意してみておけ」
「ッ・・・!良いから離せっ!!ぐあ・・・っ!?」


受け止められたことに感謝するよりも早く、恥ずかしさからその腕を抜け出そうと暴れた。
だが、抜け出すために着いた足は、上手く力を入れることが出来ず。

何とか腕からは抜け出したものの、結局その場に蹲る形になってしまった。


「うっ・・・ぐ・・・・」
「・・・・?おい?どうした」
「つ~・・・・」


先ほど落ちる際に挫いてしまったのだろうか?

何度力を入れようとしても、妙な痛みに襲われ、立ち上がることが出来ない。
立ち上がるのに時間を掛けていると、急に視界がぐるりと回った。


「へっ・・・?」
「足、挫いたんだろ。手当してやる」
「い、いや、いいっ・・・!!!」
「うるせぇ。静かにしてろ」
「か、勝手に決める、なっ・・・!!おわ、降ろせ・・・!!」


米俵のように担がれる身体。
皆からの視線が痛くて、私は悲鳴を上げながら桐生の背中を叩いた。

周りの女性からの声が、特に痛い。
あらぬ噂を立てはじめる女性の話が聞こえるたび、この状況が恥ずかしくて堪らなくなる。


「うう・・・・」
「どうした?・・・恥ずかしいのか?」
「当たり前だろ・・・・」
「我慢しろ。結構足が熱を持ってるからな・・・。このまま放っておけば、ひどくなるだけだ」
「・・・・」


珍しくまともなことを言われ、背中を叩く手を止めた。
もしかして、本当に心配してくれてるのか?こいつ。

そうだとしたら申し訳なかったと、少し反省しかけていたその時。

その気持ちが消え失せるほどの失礼なことを言われ、私は再び手を振り上げた。


「それにしてもお前、ほんと可愛げねぇなぁ・・・。ちったぁ大人しく出来ねぇのかよ」
「ッ・・・!!お前に言われたくねぇ!!やっぱりいい!!離せこの乱暴者がっ!!!」
「あーあー、うるせぇなぁ・・・」
「ひっ!?お、おいこら!!どこ触ってんだてめぇ!!!!」
































憎まれ口を叩くけど、結局は優しく手当てをしてくれて。
(日常を壊したはずのこいつが憎いのに、どうしても嫌いになれない私が居た)
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
←No.182No.181No.179No.178No.177No.176No.175No.174No.173No.172No.171
サイト紹介

※転載禁止
 公式とは無関係
 晒し迷惑行為等あり次第閉鎖
 検索避け済

◆管理人
 きつつき
◆サイト傾向
 ギャグ甘
 裏系グロ系は注意書放置
◆取り扱い
 夢小説
 ・龍如(桐生・峯・オール)
 ・海賊(ゾロ)
 ・DB(ベジータ・ピッコロ)
 ・テイルズ
 ・気まぐれ

◆Thanks!
見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。
現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。
(龍如/オール・海賊/剣豪)