いらっしゃいませ!
名前変更所
龍5主人公組(桐生・冴島・秋山・品田)/ギャグ/甘/ヒロイン視点
分岐型の夢小説です。
分岐順番は(秋山→冴島→品田→桐生)です。
お好きなキャラまで、お手数ですがスクロールでびゅーんとお願いします!
分岐型の夢小説です。
分岐順番は(秋山→冴島→品田→桐生)です。
お好きなキャラまで、お手数ですがスクロールでびゅーんとお願いします!
神室町での騒ぎが一段落したころ。
4人の傷も順調に癒えてきたため、今夜は栄養のあるものを食べさせようと、私は遠くへ買い出しに出掛けていた。
栄養のあるものと言えば、やっぱり鍋か?
寒いし、身体を温めた方が良いだろう。
私は4人の喜ぶ顔を想像しながら買い物を済ませ、店を出た。
「あー、久しぶりにいっぱい買っちゃったな」
「そうなの?姉ちゃん、持ってあげようか?」
「・・・・チッ」
店を出た瞬間、見覚えのない男たちに絡まれる。
相変わらず治安が悪いなとボヤキつつ、私はその男達を無視して歩き始めた。
だがまぁ、それを許すような奴らはここには居ない。
私はすぐに男たちに肩を掴まれると、その場で一気に囲まれた。
逃げ道を塞がれているだけに、私も渋々足を止める。
はー、ほんと。めんどくせぇなぁ。
「まぁ姉ちゃん、無視しないでよ?」
「お?結構可愛いじゃん。なぁ、俺たちと・・・」
「退け」
ただ一言、それだけ言い放つ。
これで退かないなら、私のやることは一つだ。
「はぁ?姉ちゃん、少し痛い目に・・・」
「悪ぃな・・・。今、急いでるんだ。退かねぇなら、容赦はしねぇ!!」
「な・・・が、ぁぁっ・・・!?」
道を塞いでいる男の顔面に蹴りを入れ、そのまま全体重をかけて地面に平伏せさせる。
ガッ!という鈍い音と共に男が動かなくなったが、私は気にすることなく他の奴らへの攻撃を続けた。
周りが静かになるまで、わずか1分。
私は周りを囲んでいた男達を全員蹴り倒し、そそくさとその場から逃げだした。
ここで警察に捕まったりしたら、正当防衛とはいえめんどくさいからな。
さっさとセレナに戻って、ご飯を作ってやろう。
「おい、そこのお前」
「あ?」
セレナに向かう道へ入った瞬間、後ろからイカツイ男が声を掛けてきた。
見覚えのない男だが、そこら辺のヤクザという感じでは無い。
なら、警察か?
そんな風にも、あまり見えない。
私は警戒しながらも足を止め、その男の方に向き直った。
「・・・なんだ?何か用か?」
「お前だろう、今、店の前でヤンキーどもを倒していたのは」
「・・・だったらなんだよ」
やばい。こいつ、警察だったのか?
一気に警戒心を強める私に対し、その男は豪快に笑う。
「そう警戒するな!私はお前の足技を見込み、お前に更なる高みへの修行をさせてやろうと思ったのだ!」
「は?修行?」
「あぁ、そうだ!俺の名前は西郷!秋山という男の修行もさせてもらった!」
「秋山の?・・・なるほど。んで、その修行っていったい何なの?」
「俺の修行は足を鍛えることにある。そこでお前の足技を見ていて声を掛けさせてもらった!」
「あぁ、うん、そう・・・」
なんか、すごくめんどくさい奴に絡まれた気がするぞ。
西郷と名乗った男は私の肩を掴み、ガクガクと揺らしながら話を進める。
持っている荷物が重たいのもあり、私は若干苛立ちながらその話を聞いた。
別に聞く必要も無いんだけど、ヤクザでも敵でもない奴を、無闇に殴るのも気が引ける。
「・・・・で?結局は私に何をしてほしいんだ」
「俺の修行に付き合ってもらいたい。明日の昼12時、秋山を通じて修行場所を連絡する!ではな!!」
「え、ちょっと待てコラ!!私はするって言ってな・・・!」
・・・居ない。
あの男、体格はでかいくせに、なんて俊敏さだ。
何だかどっと疲れを感じた私は、さっさとセレナに戻ってママさんと料理を始めることにした。
今夜は野菜たっぷりの鍋と、焼肉ってところかな。
男たちは食うから、たくさん準備してやらないと。
普段食うだけの立場にある私は、慣れない手つきで料理を準備し、4人が待つテーブルへと料理を運んだ。
翌日、12時。
秋山に言われた通り、私は西郷という男に指定された場所――――西公園の入り口に来てた。
しかも来ているのは、私だけじゃない。
品田、秋山、桐生、冴島。なぜかこの4人までご指名だったらしい。
めんどくさそうにする私を余所に、治療で身体が鈍っている4人は、少し嬉しそうにしている。
「あー、ほんと、嫌だ・・・めんどくさい」
「そう言うなって、あけちゃん。一度付き合ってあげれば、満足するタイプだからさ、アイツ」
「ま、なんでもいいっすよ俺は。正直身体が鈍ってたんで!」
「同じくや。たまには身体を動かさんとな」
「・・・あぁ、そうだな」
こいつら、筋肉バカかよ。
強くなることは好きだが、無駄な修行はあまり好まないのが私。
今回の修行は、明らかに無駄だ。
身体が鈍ってるっていっても、こいつらは今まで大けがをしてたんだぞ?
まだまだ休んでても良いぐらいのときだってのに。
それにこいつら全員がいるってことは、下手するとこの5人で戦えといわれる可能性だってある。
秋山や品田とは良い戦いが出来るかもしれないが、桐生と冴島とは、戦うだけ無駄。
「・・・・んで?西郷はいつになったらくるんだよ」
約束の時間から10分。
時間が過ぎたというのに、西郷は姿を現さない。
何だよ。からかっただけってか?
そう思って「帰ろうか」と言おうとしたその時、秋山の携帯が鳴り響く。
・・・なんか、嫌な予感がする。
修行なんて無い方がいいと思っていた私は、その電話の内容に顔を引き攣らせた。
「あけちゃん、西郷からメール」
「・・・・え?」
メールの内容を見て、固まる。
【西郷だ。
これより、修行となるミッションを伝える!
俺はお前達の動きを観察させてもらおう。
ミッションの内容は簡単だ。
あけ、というらしいな。お前の脚の力は素晴らしい可能性を秘めている。
そのため、お前には更なる力の強化をしてもらおう】
いや、してもらおうって。
あまりにも自由奔放なメールの内容に、私は頭を抱え込んだ。
秋山もその被害者なのか、しょうがないよと言いながら私を慰める。
【ミッションの内容は、鬼ごっこだ。
鬼はそこに集まった4人の男。
場所はここ、神室町全体。
そして逃げるのは、あけ・・・お前だ。
時間2時まで逃げ切ればあけの勝ちとして、秋山になんでも奢ってもらえ。
そのかわり、捕まったら・・・そうだな。その捕まえた人に委ねよう。
ちなみに捕まえる手段、逃げる手段は問わない。
捕まりそうになったら、得意の足技で蹴り飛ばしてもOKだ!】
“秋山になんでも奢ってもらえる”という響きは良かったが、それ以降の条件が納得出来なかった。
なんだよ、捕まえた人に委ねようって適当なそれは。
捕まりそうになったら、とか。勝てるわけねぇだろこのメンバーに。
大体こんな適当な条件じゃ、私以外の奴らだって納得するわけ・・・。
「やりますよね?みなさん」
「俺はやるぜ。あけとは一度、手合せしてみたかったからな」
「え、桐生、それ冗談にしてもきついって・・・」
「俺もやろか。なんや、気分転換したかったとこや」
「ちょ、冴島さんまで何を・・・」
「俺もやります!走り込みは基本すからねー!」
「いや、品田・・・走り込みならお前一人で・・・」
「俺もやる。・・・ってことで決定だ、あけちゃん。今から1分待っててやるから、逃げろ」
「無茶苦茶だろお前らー!!!!!」
そう叫びながらも、私は全力でその場から逃げた。
この時点でもう、今まで以上の力を出せてるんじゃないかって思えるほどのスピードで。
とりあえず、逃げる上での敵は秋山と桐生だ。
何故ならあの二人は、神室町の裏の裏まで知り尽くしているから。
河原に逃げ込んでもいづれ見つかるだろうし、下手をすれば裏道に追い込まれる可能せいだってある。
じゃあ、どこに逃げれば良い?
人ごみで溢れるこの神室町で、純粋に逃げ切れる可能性はない。
「っは・・・。やっべぇ・・・体力ねぇのにな・・・」
とにかく、逃げよう。
アイツらがいた公園から、出来るだけ遠くへと。
現在、1時15分。
ここまで何とか裏道や裏路地を利用し、逃げ続けた。
が、しかし。
さすがに体力の限界が見えていて。
私は荒い息を吐きながら、裏路地を静かに歩き進んだ。
その先にアイツが待ち構えているということを、知らずに。
「っ・・・お、お前・・・・!!」
【居たのは秋山/甘々】
「あれ?あけちゃん、こんなところに居たのか」
「っやばっ・・・!」
「おっと、逃がさないよ?」
くっそ。
こんな時に限って、一番足の強い奴に出会うなんて・・・・最悪だ。
私は最後の体力を振り絞り、クネクネと入り組んだ裏路地を駆け抜けた。
普通の人ならここで私を見失い、追うのを諦めるだろう。
だが相手も、神室町をホームとして生きてきた人間。
そんな簡単に距離を引き離すことも出来ず、私は行き止まりの方向に追い込まれた。
「っは・・・はぁ・・・はぁ・・・っ!」
「さぁーて。そろそろ諦めたらどうだい?あけちゃん。諦めて俺とデートしなよ」
「はぁ!?するわけねぇだろ!つか大体、私とデートして何が楽しいんだよ!」
「酷いなぁ・・・俺はあけちゃんとデートしたくてこの修行に乗ったのに」
「・・・・っ!とにかく、ここまで来た以上、お前の財布空っぽにしてやるために、負けるわけにはいかねぇんだ!」
体力はもうほとんど残ってない。
でもこの話に巻き込まれたからには、原因に一番近い秋山に復讐してやらないと気が済まない。
よって諦めるという選択肢は、切り捨てた。
勢いをつけて壁を蹴り、その反動を利用して秋山に回し蹴りを叩き込もうとする。
まぁ、こんなのが当たるとは思ってないけど。
予想通り、秋山はひらりと身軽な動きでそれをかわした。
「はっ・・・!」
「おおっと・・・!こわいねぇ、あけちゃん。でも俺からも・・・行くよ!」
お互いに似たような足技を使っているため、勝負は平行線上を辿る。
私が使う技も、相手が使う技も、お互いに動きを読んでかわしてしまうからだ。
となると、勝負のカギは体力。
消耗しきっていた私は次第に動きが遅くなり、かわすのさえ辛くなっていた。
そこを秋山が見逃すわけもなく、あっという間に足を掛けられ、壁側に追い込まれる。
「っ・・・!」
「もう逃げられないでしょ?」
キスできそうな位置にある、秋山の顔。
壁に追い込まれたせいで逃げ場がない私は、恥ずかしさのあまり目を瞑った。
それを見た秋山が、私の耳元でクスクスと笑う。
耳元に当たる息がくすぐったくて身を捩れば、それを面白がって秋山が耳元に唇を近づけた。
わざと息を吹き込むような形で、囁かれる。
思わず声が漏れそうになった私は、歯を食いしばってその不思議な感覚に耐えた。
「っ、は・・・やめ、やめろっ・・・・」
「ん?どうしたのあけちゃん。顔真っ赤にしちゃって・・・・」
「てめっ・・・・!調子に、乗るなよ・・・!!」
「どうする?あけちゃん。俺とデートしてくれるってことで負けを認めるなら・・・離してあげてもいいけど」
「ッ・・・誰がっ・・・んっ!!」
また、耳たぶを甘噛みされる。
どれだけもがいても逃げられないことを理解した私は、震える声で降参を申し出た。
恐る恐る目を開けば、満足そうに笑みを浮かべた秋山の顔が映る。
「秋山・・・」
「んじゃ、行こうか・・・あけちゃん」
「・・・ちゃんとした場所エスコートしねぇと、帰るからな」
「お任せあれ、御嬢さん。ほら、手かして」
良いようにされるのは気に食わないが、私は渋々手を伸ばした。
秋山の大きな手が私の手を包み、ぎゅっと力強く握りしめる。
それが思った以上に心地よく感じた私は、きっと雰囲気に流されているだけだ。
結局私は高級料理店でたらふく食べ、秋山の財布に少しだけダメージを与えてやることに成功した。
【居たのは冴島さん/ほのぼの/甘】
ドン、と。
強く誰かにぶつかり、尻餅をつく。
慌てて顔を上げると、そこには冴島さんが立っていた。
急いで逃げようにも反応が遅れ、軽々と首根っこを掴まれてしまう。
「捕まえたで」
「わー!人を猫のように扱うなっ!」
「こうでもせんと、逃げてしまうやろ」
正直、もうこの人に見つかった時点で逃げられる気がしなかった。
冴島さんなら捕まっても無茶な要求はしてこないだろう。
でも諦めるのは気に食わない。
掛かってるのは秋山の財布だ。アイツも原因に近い人間なんだから、ギャフンと言わせてやらないと。
私は勢いをつけて身体を捻ると、そのまま冴島さんの身体を蹴った。
その勢いで腕から逃れ、冴島さんと向き直る。
「ほう・・・ここから逃げるか。中々やな」
「悪いけど、秋山の財布を空っぽにしてやるためには捕まれねぇからな・・・!」
「俺も逃がすつもりはないで」
冴島さんのことだから、本気ではこないはず。
悪いがそこを利用して勝たせてもらおうと、私は一気に懐に飛び込んだ。
一撃一撃を、確実に叩き込む。
だがそんな攻撃も、冴島さんには通用していないようだった。
軽々と全ての攻撃を受け止められ、しかも反撃を打たれる。
「お、わァッ!?」
冴島さんの攻撃はどれも重たく、よけきれなかった一撃に私の体勢が呆気なく崩れた。
ぺたんと尻餅をついた私に、冴島さんが手を差し伸べる。
・・・これはもう、捕まったも同然だな。
諦めて手を取れば、冴島さんが嬉しそうに笑った。
「ええ目をしとる女や。さすが兄弟が認めた女やな」
「へ?真島の兄さんが?」
「あぁ。お前さんのことを随分と気に入っとったで。“最高の情報屋の女がおる”てな」
「へぇ・・・。別に兄さんに気に入られるようなこと、してねぇと思うけどな・・・」
そういえば、冴島さんは兄さんと兄弟分なんだっけか。
数日前の騒ぎで冴島さんと兄さんが戦ったらしく、兄さんは今も体力が戻らずに休んでいる。
兄さんがあれだけボロボロになるのも、本当に珍しいことだ。
あの兄さんと対等に戦える冴島さんは、さすが兄弟分といったところだろうか。
「・・・んで?負けは認めるけど、これからどうする?お前の言うことに従うぜ」
「そやな・・・ほんなら一つ、付き合ってもらおか」
「ん?どこに?」
「兄弟とお前の話、聞かせてくれや。飲みに行くで」
グイッと強く手を引っ張られ、私は有無を言わさずに引っ張られた。
滅多に表情を変えない冴島さんの表情が、少し緩んでいることに気づき、私もつられて笑う。
ほんと、兄弟のこと大切に思ってるんだな。
それから私たちは韓来に行き、兄弟のことや自分たちの過去を話しながら酒を酌み交わした。
「冴島さんって少し怖いイメージだったけど、そうでもねぇんだな」
「なんや?兄弟がそう言っとったのか?」
「まさか。私の勝手なイメージだよ。でも・・・今日ので結構イメージ変わったぜ」
「俺も変わったわ。兄弟は惚れやすい奴やからな。普通の女やろうと思っとったが・・・」
良い女や、お前は。
そう真面目な顔で言われ、私は思わず冴島さんから顔を逸らした。
真面目にそういうこと言うなっての。
恥ずかしくなって肉を頬張れば、冴島さんがまた楽しそうに笑った。
【居たのは品田/ほのぼの】
路地の角から手が伸びてくるのを咄嗟に避け、私は数歩後ろに下がった。
角から「チッ」と軽い舌打ちが聞こえ、その正体が姿を現す。
「あっれー・・・。捕まえたとおもったんだけどなぁ・・・」
「なんだ、品田か」
「なんだって酷い言い方だなぁ。とにかく、捕まえさせてもらうよ!」
「悪いけど・・・一般人には負ける気しねぇな・・・」
極道関係者の人たちは異常な身体能力を持ってるから、勝てる気がしないけど。
品田はあくまでスポーツの関係者。
身体能力が高いって言っても、喧嘩慣れしてるわけじゃないだろ。
そう勝手なイメージで品田に戦いを挑んだ私は、すぐにそのことを後悔することになった。
素早く繰り出した蹴りが、全て品田に受け止められていく。
その上に反撃まで叩き込まれそうになり、私は慌てて身を翻した。
「っとわ・・・!?」
「ほら、大人しく負けを認めてくれよ。あんまりこういうこと、したくないしさ」
「私だってしたくねぇよ!だけど元はといえば、お前たちが勝手に話に乗るから・・・!」
悪いんだろうが。
言葉は最後まで発せられることなく、気付けば私は品田の胸の中に居た。
どうにかして逃げようにも、力勝負になってしまうとどうしようもない。
本当に一瞬だった。
いつの間に引っ張った?と思えるほど、品田の動きが見えなかった。
「捕まえた!」
「捕まえた、じゃねぇよ!んのやろう!離せっ・・・!」
「さすがにこうなったら、あけちゃんでも無理でしょ」
「うぐ・・・なめん、なよ・・・!」
品田の言葉に負けず嫌いな心が膨らみ、必死に抜け出そうと抵抗を始める。
だが、スポーツマンとしての筋肉は、それをまったく許そうとしない。
この、馬鹿力野郎・・・!!
段々抵抗することに疲れてきた私は、しばらくして抜け出すことを諦めた。
ぜぇぜぇと肩で息をする私を、品田が笑いながら解放する。
「降参、だよね?」
「・・・・わかったよ。降参だ。降参する」
「よっしゃ!いやー、中々こういう修行はしないから、楽しかったなぁ」
「お前・・・単純すぎんだろ・・・」
品田はどっちかっていうと、今までに会ったことのない人間のタイプだ。
単純で、自分の感情に真っ直ぐな人間。
だからこそ、捕まっても恨めなかった。
疲れた反動で地面に身を投げ出せば、品田も地面に座り込む。
「あー・・・つかれた」
「あけちゃんは1時間近く逃げてたもんねぇ。お疲れさん」
「さんきゅ」
買っていたらしいコーヒーを渡され、1時間ぶりの水分にそれを一気飲みした。
それからすぐに立ち上がり、品田の手をぎゅっと握りしめる。
「ん?」
「行くぞ、品田」
「へ?どこに?」
「お前の勝ちだったんだ。お前の好きなところに連れて行けよ。おごりだ」
「え?い、いやぁ・・・女の子に奢ってもらうわけには・・・」
「ふぅん?じゃあ残金今いくらさ?」
「・・・・」
品田が無言で財布を覗き、それから大人しく私の手を握り返した。
「・・・・お願いします」
「おし。何食べにいく?」
「そうだなぁ・・・。ここの焼肉食べてみたいんだけど」
「了解。韓来にでも行くか!ついてこいよー!」
「おわわっ!あんまり引っ張らないでよあけちゃん!」
「おらー!行くぞー!」
この後、普通に遠慮なく食べられて、お財布がピンチになるのは数時間後の話。
【居たのは桐生/微エロ/甘々】
やばい。
角を曲がった瞬間、目に入った服の色に、私は一瞬でそう判断した。
一気に身を引き、角の方に隠れる。
相手はこちらに対して背中を向けてたし、うまくいけば気付かなかったかもしれない。
そう淡い希望を抱いてもう一度覗いた先には、ばっちり私の方向を見ている桐生の姿があった。
「うわぁあぁあ!!」
「見つけたぜ」
「やば、やばい、来るなっ!!」
こいつに対しては何一つとして勝てる気がしねぇ。
足の速さも、強さも。
喧嘩を挑んで1分も持つ気がしない。
私は一気に距離を取り、裏路地を使って桐生を撒こうとした。
だが桐生は神室町の住人。慣れ親しんだような庭で撒けるはずもなく。
「そろそろ諦めたらどうだ?」
「うっせ・・ぇ・・・!あー、でももう走れねぇ・・・!」
「どうする?大人しく捕まるか?」
「・・・私を捕まえてから何しようとするかによるな」
捕まえた人が、私を自由に出来る。
そんな条件呑みたくもなかったのに、勝手に勝負が始められていて。
私も逃げっちまったし、修行をやり始めたからには潔く条件を飲もう。
ただしその条件の内容によっては、私は汚い手を使ってでも逃げるつもりだった。
「そうだな・・・。今日1日、俺に付き合ってもらおうか」
「付き合う?」
「あぁ。まぁ、デートみたいなもんだ」
「・・・・え、私とデートして何が楽しいんだ?」
「お前だから楽しいんだ。本当にお前は鈍感だな・・・」
じんわりと距離を詰められ、トンっと壁側に追い込まれる。
そして耳元に桐生の唇が近づくのを感じながら、この状況をどう逃げるか、必死に考え続けた。
だがその考えも、桐生が喋ることによって奪い去られる。
「お前のことが好きだ・・・あけ」
「ッ!!な、ん・・・っ!そんなことで捕まると思うなよ!」
「あぁ。・・・少し、大人しくしてもらおうか」
「へ?あ、やっぱ降参しま・・・んっ!!」
軽い口づけ。
そこからすぐに首筋を舌がなぞり、チクッと小さな痛みも走った。
嫌な予感がして降参を申し出ようとしたのに、それさえも聞いてもらえず。
私は桐生のなすがまま、好き勝手に弄ばれていた。
勝手に反応してしまう身体が悔しく、思わず唇を噛みしめる。
「っ、く、ぅ・・・・てん、めぇ・・・!!」
「っ!」
好き勝手にされるのが気に食わず、私は桐生の腹に一発叩き込んだ。
さすがの桐生でも、隙だらけだった今だけは反応出来なかったらしい。
一瞬よろけた隙を突き、私は桐生を突き飛ばした。
だからといって別に逃げるわけではなく、今のこの状況を回避できただけでも胸を撫で下ろす。
「はぁ・・・はぁ・・・っ。降参だっていっただろ!?セクハラすんな!このセクハラおやじ!!」
「これぐらいしねぇと、お前は俺の気持ちが本気だって思わねぇだろ?」
「・・・っ!うるっせぇ!!良いから好きなところ連れて行けよ」
「フッ・・・いいぜ。こっちに来い」
桐生の言うとおりにすると、桐生の大きな手が私の手を包み込んだ。
優しく繋がれた手の感覚に、今まで抱いたことのない変な意識を抱いてしまう。
いや、いやいやいや待て。
ここで意識しちまったら、桐生の思うつぼだ。
何でもない。私と桐生はただの仲間。それだけだ。
「~~・・・っ」
「どうした?顔が赤いぜ」
「良いから早くエスコートしやがれ、馬鹿」
結局その後、その次の日も、私は桐生に良いように付き合わされるようになった。
別に桐生が気になり始めたわけじゃない、そう言い聞かせながら。
今日もまた、桐生と共に神室町を歩く。
「またかよ?」
「俺が満足するまで付き合ってもらう。それが俺の命令だからな」
「何回言うこときけばいいんだよ・・・んで?今日はどこに行くんだ?」
「今日は・・・そうだな。新しくできたバーがあるんだが、そこはどうだ?」
「んー?桐生のオゴリならいくぜ」
「しょうがねぇなぁ・・・奢ってやるから、ちゃんと付き合え」
「りょーかい」
桐生の命令はいつまでも続く。終わりなど、私にすら分からない。
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晒し迷惑行為等あり次第閉鎖
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◆管理人 きつつき ◆サイト傾向 ギャグ甘 裏系グロ系は注意書放置 ◆取り扱い 夢小説 ・龍如(桐生・峯・オール) ・海賊(ゾロ) ・DB(ベジータ・ピッコロ) ・テイルズ ・気まぐれ ◆Thanks! 見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。(龍如/オール・海賊/剣豪)
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★龍如(峯短編集)
★龍如(連載/桐生落ち逆ハー)
【海賊】 ★海賊 さよならは言わない
★海賊 ハート泥棒
【DB】 ★DB 永遠の忠誠(原作・アニメ沿い連載) ★DB 愛知らぬが故に(原作・アニメ沿い連載) ★DB プラスマイナスゼロ(短編繋ぎ形式の中編) ★DB(短編)