いらっしゃいませ!
名前変更所
今年もあと数時間。
私は手土産となるお酒を買い、神室町の華やかな街並みを歩いていた。
年末ということもあり、街はすっかり年越しの雰囲気になっている。
さすがに全ての店が閉まっているわけではないが、チラホラとシャッターを下ろしている店も見受けられた。
でもさすがは神室町。年末でも静まらない夜の街っていったところか。
手に持ったお酒が、たぷんと揺れる。
別に私が飲むわけじゃねぇんだけど、一応高めのお酒を買ってきた。
アイツに渡す酒だからな。少しは高めにしとかねぇと。
「よいっしょ・・・」
んー、でも、やっぱり重たい。
ぶら下げていたビニール袋を持ち直し、私は静かにあたりを見回した。
ラッキーなことに、絡んでくるようなチンピラもいないようだ。
私は真っ直ぐ目的地を目指し、このお酒をアイツに届けることにした。
【桐生のところへ/甘々/R18】
沖縄で施設を始めてから、年明けもあんまり騒げなかったからな。
私のアジトで待っているであろう桐生の顔を浮かべながら、私は静かにアジトの扉を開けた。
中から小さなテレビの音と、微かにタバコの香りが漂ってくる。
年明けたらすぐに向こうに帰らなくちゃいけないし、のんびり出来るのは実質今だけだ。
私はそっと桐生の背後に詰め寄り、そのままガバッと勢いよく抱きついた。
桐生は驚く様子も見せずにタバコを吸っている。・・・こいつ。
「気づいてたのかよー」
「当たり前だ。そんなビニール袋の音立ててりゃ、誰だって分かるだろ」
「そーかよ。んじゃほら、これ」
ビニール袋を横に置き、中から取り出したお酒を桐生に手渡した。
桐生はそのお酒を見るなり私を抱き寄せ、胡坐の上に無理やり座らせようとする。
もちろん恥ずかしいので抵抗はするが、力的に勝てないのは既に分かり切ったことだった。
しばらく暴れたのち、疲れ果てて抵抗を止める。
桐生は私が静かになったのを見ると、吸っていたタバコを灰皿に捨て、お酒の蓋を力強く開けた。
「いい酒じゃねぇか。どうしたんだ?」
「いいだろ、年明けなんだし」
「・・・ありがとな」
「ん・・・。向こうに帰る前に、ちょっとぐらいはハッチャけようぜ?」
いつも桐生は何かに追われて行動している。
神室町に来たのも、事件に巻き込まれたからだ。
だけどこういう時にしか、桐生に休息がないのも事実なわけで。
私は自分の開けたチューハイを桐生の酒に近づけ、カンッと音を鳴らして乾杯した。
「乾杯」
「あぁ・・・乾杯」
乾杯と同時に桐生が手を伸ばし、テレビの電源を落とす。
お互いに久しぶりのお酒だったこともあり、お酒を口にしてから一気に中身を飲み進めた。
「・・・ぷはー!うめぇ!」
「・・・お前なぁ・・・少しは女らしくしたらどうなんだ」
「今更だろそんなの。私がそんなこと出来ないって、分かってるだろー?」
もう一度お酒に口づける。
すると桐生が急にお酒を机の上に置き、私の足にゆっくりと手を滑らせた。
それがくすぐったくて身を捩るが、桐生はますます手を這わせ、徐々に上へと運んでいく。
桐生の手が太ももを撫で、そして腰を指でなぞり、ベルトへ。
厭らしい手つきでベルトを外そうとする桐生に、私は弱々しい声で待ったを掛けた。
「ま、て・・・。お前、今日はっ・・・」
「帰ったらこういうこと、出来なくなるだろ・・・」
「嘘つけ!いつも襲ってくるくせに・・・っ!っておい!こら!勝手にベルト外すなっ!」
怒っている間にも、桐生の手が私のズボンの中に侵入してくる。
抵抗したにも関わらずベルトも外され、手慣れた手つきに思わず悪態を吐いた。
「は、ぁっ・・・手慣れた、手つきじゃねぇかよ・・・。ほかの女にも、し・・・ひゃぁっ!」
「・・・嫉妬か?可愛いじゃねぇか」
「ん、っあぁ・・・、や・・・!」
そんな悪態ですら、与えられる快感の中に沈んでしまう。
何か言おうにも桐生が下着越しにいじめてくるせいで、私は何も言えずに口を閉ざした。
背中から抱きしめられている状態のため、背中に桐生の“アレ”が当たっているのが気になってしょうがない。
気になるけど、そんなこと言えば桐生が何を言ってくるか分かったもんじゃねぇ。
これ以上からかわれるのはごめんだと、与えられる快感にひらすら耐える。
「ふ、ぅ、ぁ・・・」
「時計、見えるか?」
「ん・・・っ。ん、見え、る・・・」
目に入った時計の針は、もう少しで0時を指そうとしていた。
色々あった今年という時が終わり、新しい年が訪れる瞬間。
桐生は私の首筋に強く歯を立て、真っ赤な花の跡を残した。
「っあ、てめ・・・っ!そんな、見えるところに・・・!」
「姫始め、っていうんだっけか?」
「おい、こら、人の話を聞・・・っ」
「今年も、それからも・・・お前は、俺の傍から離れるんじゃねぇぞ」
「んっ!あぁっ・・・」
強引な口づけ。
強引な、愛撫。
時計の針が0時を回ったその時まで、桐生はずっと私の身体を愛し続けた。
姫始め、か。桐生らしくないこと言いやがって。
強引なことばっかりする桐生に対し、震える息を吐きながら、今年最初の悪態を吐いた。
「・・・・バカ桐生」
「おいおい。今年最初の言葉がそれか?」
「お前が言わせてるんだろ・・・っ」
「・・・フッ。でもまぁ、お前らしくて・・・良いかもな」
桐生との、年越し。
結局まともにお酒飲めなかったなと、快感で揺らぐ意識の中、私は静かに苦笑を浮かべた。
【龍司のところへ/甘々/ギャグ】
「おーい!龍司ー!龍司ー?」
龍司のアパートに入るや否や、私は大声を出して龍司を呼ぶ。
いつもなら、「うるさいわ。静かに入ってこれんのか」って怒られるのだが・・・今日はその返事が無い。
不安になって探し回ってみたが、龍司の姿はどこにも見当たらなかった。
おかしい。今日来るって言ってあったのに。
むかついてその場にあったタオルを蹴散らせば、脱ぎ散らかされた跡と思われる衣服が現れる。
「・・・・」
それを見て、一瞬にしてとある考えが浮かんだ。
大声を出しながら探した時点で遅いのかもしれないが、私は静かにそーっと問題点である場所に視線を移す。
――――そう、お風呂。
目を向けた先にあったお風呂からは、微かにだが、シャワーの音が響いていた。
やってしまったと思うのはもう遅く、お風呂から出てきた龍司が意地悪い笑みを見せる。
「なんや?えらい必死に呼ぶ声が聞こえたようやがなぁ・・・?」
「うぐ・・・」
私は龍司がお風呂に入っていただけなのに、必死になって探し回ってしまったわけだ。
恥ずかしくて何も言えず、私はただ龍司のことを睨みつける。
だが龍司も元組長。そんなことじゃ怯まないのは当たり前のことで。
クツクツと震えるように笑う龍司に苛立ちが膨れ上がり、私は買ってきたお酒を乱暴にぶん投げた。
「危ないやろが」
「うっせぇ!」
「可愛げないのぉ・・・」
「元からんなもんねぇよ。おーい、龍司。コップどこだー?」
龍司の話を無視してコップを探す。
すると龍司が髪を拭きながら私の方へ近づき、私をぎゅっと抱きしめた。
・・・あつい。
当たり前か。風呂上りだもんな。
って待てよ?風呂上り?
「おおおおおい!!服着ろばか!!!」
「ん?なんでや?」
「なんでやじゃない!!」
「もう何度も見てるやろが」
「それでも恥ずかしいものは恥ずかしいんだっ!!」
回された腕が何も身に着けていないのを見て、私は悲鳴を上げた。
こいつ、裸のままで私に抱き着きやがって!
何とか離れようと力強くもがくが、それは所詮、女の抵抗。
私はあっという間に龍司に抱きかかえられ、そのままぐいっと肩に担がれた。
龍司が向かっている先は、明らかにベッドがある寝室。
え、いや、ちょ、ちょっと待て。
私はコップはどこだと聞いてたはずなのに、なんでこいつは寝室にいってるんだ!
「ちょ、ちょっと!!待て!おかしいだろ!」
「なにがや」
「せっかく酒買ってきたのに・・・!」
「なんや?酒ならあとでええやろ。今はこっちの方が大事や」
「大事じゃない!襲うだけだろうが!!」
「お前があんな風に呼ぶのが悪いんやろ?・・・先に煽ったんは、お前や」
龍司の目が、昔と同じように輝いているのを見て、私は深いため息を吐いた。
こりゃもう何言っても無駄だなと、諦めて静かに覚悟を決める。
ベッドに降ろされた瞬間襲ってくる、深い、深い口づけ。
息も出来ないほどに貪られる感覚を味わいながら、遠くで聞こえる0時を告げる音に目を閉じた。
【峯のところへ/甘々/微エロ】
お酒を買ってきたは良いが、私は峯の部屋の前で止まっていた。
今更だけど、こんなお酒でよかったのか?なんて考えてしまって。行くのをためらってしまう。
いやだってさ、峯って金持ちだろ?
私は雰囲気や飲む相手にこだわるタイプだからあれだけど、峯もそうとは限らないし。
「あー・・・しまったなぁ。先に色々聞いとくんだったぜ・・・」
峯の秘書とかに、そこら辺の情報聞き出せば良かった。
でももう、後悔しても遅いことは分かる。
気配を感じて顔を上げると、悩みの種である峯が私の方を見て立っていた。
扉をゆっくりと開ける様子からして、私のことを招いているのであろう。
「・・・何してるんです?入らないのなら閉めますよ」
「うわぁあぁ入る!待て!」
「・・・・まったく、貴方はいつも騒がしいですね」
「うっせぇ!」
押しつけるようにして酒を渡し、お構いなしに部屋の中に入った。
後からついてきていた峯が、私の渡したお酒を眺め、ふと笑みを浮かべる。
あんまり笑わない峯が笑うと、妙にドキドキしてしちまうから困るんだよな。
そんなことを考えながら峯を見つめ続けていた私を、峯が乱暴に抱き寄せる。
「どうしたんです?・・・そんなに、俺が気になりますか?」
「っ・・・・!ち、近づけんなば・・・」
馬鹿。
その言葉は、最後まで言えずに吸い込まれた。
峯の舌が私の唇を割って入り、我が物顔で暴れまわる。
走る快感に身を捩れば、峯が少しだけ唇を離して、また笑った。
「っ・・・」
「ふふ・・・っ。まったく貴方は、本当に可愛らしい人ですね」
「何、言って・・・」
「このお酒も、悩んで買ってきてくれたんでしょう?」
「いや・・・や、ま、そうだけ、ど・・・」
峯と飲みたくて買ってきたお酒。
それを峯が嬉しそうに見つめながら、再び私に口づけた。
何度も、何度も、何秒も。
息継ぎを許されないほど口を塞がれ、私は峯の服にしがみ付いた。
時計を見ると、時間は0時。ぴったし年明けの時間だ。
「・・・あけましておめでとう、峯。これからも、ずっと・・・」
また、塞がれる。
どうして言葉を止めるんだと睨みつければ、峯が私の耳元に囁いた。
「それは私から先に言わせてもらいます。・・・これからもずっと、傍にいてください。いえ・・・・」
変わる表情。
インテリな時の峯とは違う、男の顔。
その表情に、背中がゾクリと痺れるのを感じた。
耳元に触れる唇のせいかもしれないが、視界がじんわりと揺らいでいく。
「・・・俺の女で、いろよ」
そういうの、卑怯だよな。
ほんと、卑怯だ。
むかついて峯の身体を突っぱねても、峯はビクともせず笑っていた。
恥ずかしいけど、しょうがない。こいつにはやっぱり敵わないから。
「・・・好き、だぜ・・・峯」
「そういう時ぐらい、名前で呼んだらどうだ?」
「・・・・いやだね」
「フッ・・・それでこそ貴方らしい。良いですよ。なら、呼ばせるまでです」
耳を甘噛みしたまま囁かれた言葉に、私は心から微笑んだ。
「・・・・愛して、いますよ」
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