いらっしゃいませ!
名前変更所
学校?授業?勉強?
そんなつまらないもの、私にとって必要ない。
どうせ私は、裏世界で生きていく人間。
平凡な学校生活を送ろうなんて、これっぽっちも思っていなかった。
だから繰り返す。校則違反を。
「あー、だりぃ」
最高のサボり場所といえば、やっぱり屋上。
屋上にこっそりと忍び込んだ私は、欠伸をしながら煙草を取り出した。
着崩した制服。辛うじて着けていたネクタイを投げ捨てる。
こんなかたっ苦しいもの、つけてるだけで息が詰まりそうだ。
「ふー・・・・」
今の時間はちょうど4時間目か?
4時間目って言ったら、桐生先生の現代文の時間だ。
サボったら厳しい先生だが・・・まぁ、良いだろう。
だってあんなの、子守唄が流れているのと代わりない。
聞いてるだけで眠くなる授業なんて、受けなくても一緒だし。
「あんな授業、眠すぎて受けてられねぇよなぁ」
「ほう?それは俺の授業が退屈すぎるって言いてぇのか?」
「うおっ!?」
いきなり背後から聞こえた声に、私はタバコを投げ捨てた。
聞こえるはずの無い声。授業中という緩みきった時間。
すっかり油断しきっていた私は、背後から話しかけてきた正体を睨み付ける。
「んだよ・・・。何でここにいるんだ?」
「それはこっちのセリフだ。テストだって言ったのに居ないから探しに来たんだ」
「あー、そうかよ」
私はこの桐生先生が苦手だ。
何もかも分かったような態度で接し、心を見抜いてくる。
大人の余裕と、包容力ってやつなのかもしれない。
でも私はそれが気に食わなくて、ずっと彼の授業をさぼり続けていた。
きっと彼は、そんな私の心さえ読んでいるのだろう。
「おい。いつまでここに居るつもりだ?」
「お前の授業が終わるまで」
「・・・随分俺も嫌われてるな」
「さーな」
声を聴くだけで、こうやって会話してるだけで。
心を見透かされそうで怖くなる。
元々あまり人と話すのが得意じゃなかったせいか、私は彼との会話に凄く緊張していた。
いつ捕まるかっていうのもあるけど、それ以上にこの雰囲気が怖い。
「・・・なんだよ。戻らないっていってんだろ?」
「お前、どうして俺の目を見ようとしない?」
「はっ?・・・べ、別に関係ねぇだろ」
「怖いのか?俺が。お前に説教した初めての教師だろうしな」
現代文担当、および生徒指導係。
授業をさぼり続けていた私を、初めて怒りにきたのが桐生先生だった。
でも違う。怖いわけじゃない。苦手なだけだ。
私は桐生の言葉に振り返り、挑発されて目を合わせた。
「怖いわけねぇだろ。じゃねぇと堂々とサボったりしねぇよ」
「・・・そうか」
「分かったら帰れよ。私はまだここでサボ・・・っ!?」
また屋上の外の方に向き直そうとした瞬間、グイッと腕を引かれて倒れかける。
慌ててバランスを立て直そうにも、桐生が腕を掴んでいるせいで出来ない。
バランスを立て直すことが出来ないまま、私は桐生の胸に飛び込んだ。
まるで抱きしめられている形になり、一瞬で思考を混乱させる。
「なっ・・・、な、何すんだよ!?」
「サボり続けるなんて、駄目に決まってるだろ。戻るぞ」
「やめ、やめろっ!だー、離せよこの馬鹿!変態!セクハラ!訴えるぞ!」
「俺は純粋に、言う事聞かない生徒を連れて行こうとしてるだけだ」
「だからって抱きしめる必要ねぇだろうが!離せっ!」
どれだけ暴れても、桐生の腕はビクともしない。
相手は男だ。私の力が敵わないことぐらい分かってる。
だからこそ、こいつにやられっぱなしというのが気に食わなかった。
腕に思いっきり爪を立ててみるが、桐生は一切反応を見せない。
これだけ爪を立てれば痛いはずなのに、何なんだよこいつ。
「て、んめぇ・・・!」
「俺は悪餓鬼に説教しに来たんだぜ。簡単に逃がすわけねぇだろうが」
「良いから離せって!別に逃げねぇ・・・から・・・!」
「・・・そう言って、お前が逃げなかったことがあるか?」
「ねぇだろうな」
「だろ?」
「・・・・とりゃっ!」
「っ!?」
腕がダメなら、足はどうだ。
私は話の最中にゆっくりと足を上げ、振り下ろした。
カカトできっちりと足を踏んでやり、緩んだ腕の隙間から逃げだす。
よっしゃ!とガッツポーズを決めて屋上から逃げようとした私を、凄い力が引っ張って止めた。
そのまま引きずられる様に壁際に運ばれ、ダンッ!と顔の横に手をつかれる。
「てめぇな・・・いい加減にしろ」
「思いっきり踏んでやったのに、回復早すぎだろお前・・・」
「まずはその言葉遣いから治してやる」
「・・・・」
「まず、先生に向ってお前は無いだろ。俺は桐生先生だ」
「・・・うっせぇ」
傍から見れば、襲われているような体勢。
ここは授業中の屋上。助けは来ない。
とりあえず、無視だ無視。
説教なんてめんどくさくて聞いてられねぇよ。
「・・・・分かった」
そんな私を見てか、桐生は諦めるようにため息を吐いた。
もしかして、諦める?
そう思ったのも束の間、私はガッチリと桐生に顎を掴まれた。
真っ直ぐ桐生を見るしかなくなって、気まずさに目を逸らす。
「はな、はなせっ・・・・」
「俺の言うことを聞く気はねぇんだな?」
「あるわけねぇだろこの・・・っ!?」
言葉は途中で遮られた。
私が止めたわけじゃ無い。私の意思とは関係なく、止められている。
止めたのは、桐生の唇だった。
無理やり押し当てられたそれが、私の呼吸と自由を奪い取っていく。
これが大人のキス?初体験の感覚は私を混乱させた。
「ッ・・・ふ、っ・・・!」
「言う気になったか?」
「なに、を・・・!」
「桐生先生って、呼ぶ気になったか?」
「てんめぇ、こんなことして、許されると・・・!」
再び、唇を塞がれる。
ああもう、私の意見は通用しないってことか。
でも負けるのは嫌だ。
私は必死の抵抗で桐生を睨み付け、出来るだけその口付けに反応しないよう唇を噛みしめた。
入ってこようとする舌を、力で押し出そうとする。
そんな小さな抵抗すら許されず、桐生は段々と本気で私に口付けを始めた。
こじ開けてくる舌が私の舌を絡めとり、抵抗の意思を削り取る。
「はっ・・・・ぁ」
「いつまでその強気が続くか・・・試してやるよ」
「ま、もう、待て・・・っ!」
「待ってください、だろ?やっぱりまだまだ教育が必要だな」
「ッ・・・・!」
何度も何度も、息をする暇もなく口付けられて。
私の抵抗心が消えるまで、そう時間は掛からなかった。
ギブアップの意思を示し、桐生の腕を掴む。
桐生はしばらくして唇を離すと、私の顔を見てニヤリと黒い笑みを浮かべた。
「フッ・・・もうギブアップか?」
「くっ・・そ・・・!」
「ん?まだ大丈夫だったか」
「ま、待って・・・ください、桐生先生・・・」
大人しく従うしか、道は無い。
そう気づかされた私は、渋々桐生を先生と呼んだ。
「そうだ、それでいい」
「こんなことしてっ・・・覚えとけよ・・・」
「あぁ。嫌でも覚えててやるよ。俺はなぁ・・・お前みたいなやつを見ると、指導してやらないと気が済まねぇんだ」
「な・・・」
逃げられない、と。
恐怖を覚えるには十分すぎる雰囲気を感じた。
なんで、どうして、こいつに目を付けられたんだ私は。
さっきとは違い、一切の余裕を削られた私は怯えることしか出来なかった。
これから桐生の、桐生先生の指導を、受け続けることを覚悟して。
逃がさねぇぞ、悪餓鬼
(校則違反。その罰は口付けという甘い鎖)
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