Erdbeere ~苺~ 1章 平和は脆くも崩れて 忍者ブログ
2024.11│ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
いらっしゃいませ!
名前変更所
2024年11月15日 (Fri)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2012年06月04日 (Mon)
1章/ヒロイン視点

拍手



「おじいちゃん・・・」
「親っさん・・・」


おじいちゃん達のお墓に着いた私は、手を合わせ、心の中でおじいちゃんにたくさん語りかけた。

今までの事、これからの事。
そして、桐生や遥との事。

私の本職である、情報屋としての事。


「何もかも失ったって思ってたのに・・・幸せなんだぜ、私」


仕事は昔ほどとまではいかねぇが、順調に有名な情報屋としてやっている。
副職の薬関係も、中々の売り上げになってるしな。

おじいちゃんが見たら、また腕を上げたなって言ったはずだぜ。
もちろん危ない薬の方が多いけど、この前はちゃんと桐生の風邪を治してやったんだ。

でも、文句言われたよ。マズイって。


「おじいちゃん・・・私たちのこと、見守っててくれ」


これからも、この平和を奪わないでやってほしい。
私の事は良いからさ。桐生達に幸せを与えてやってくれ。

天国からなら、そういう事できるだろ?


「ふぅ・・・・」


ある程度おじいちゃんに手を合わせた私は、まだ目を瞑っている桐生の方を向いた。
桐生は私たちに聞こえるような声で、親っさんへの思いを呟く。

遥はそれを聞いて、嬉しそうに笑みを浮かべた。
私は恥ずかしさの方が上回ってしまい、それどころじゃなくなっていたが。


「俺一人だけが残ってしまいましたが・・・俺は遥を立派に育て上げ・・・あけを、女として幸せにするつもりです」
「おじさん・・・」
「ッ・・・へ、平気で、そういうこといいやがって・・・」
「本当の事だ。それとも、親っさんの前で嘘でも吐けと?」
「・・・っ!」


こうやって桐生は、平気で私が恥ずかしがるようなことを言う。
そして恥ずかしがってるところを見て、楽しんでやがるんだ。

いや、でも、嬉しくないわけじゃない。

私はニヤける顔をどうにか隠そうと、桐生に対して背を向けた。
墓地が広がる光景に、私はそっと目を細める。


「・・・・ん?誰だ、あいつ」


細めた目に飛び込んできた、墓地をゆっくりと歩く大型の男。
最初は気のせいだと思ったが、どうやら気のせいじゃないらしい。

―――――あいつ、少しずつこっちに近づいてきている。
そっちの世界の危ないやつじゃねぇだろうな?

でも何か、見覚えあるような気も・・・。


「あ、寺田・・・?」


歩いてきた男の正体は寺田だった。
1年前とはまた変わった貫禄を漂わせ、私たちの方に歩み寄ってくる。


「お久しぶりです、四代目」
「寺田か・・・一人で来るとは不用心だな」
あけさんもお久しぶりです。お二人にだけは、お話ししておきたいことがありまして来ました」
「わ、悪い。急に構えっちまって」
「気にしないでください」


寺田だと分かった私は構えを解き、静かに寺田の話を聞くことにした。
東城会のトップが「護衛」無しで来たんだ。相当な話なんだろう。

私の予想は的中し、寺田の表情が瞬時に真剣なものへと変わった。

そんな真剣な表情されたら、私も真剣に聞かなきゃいけなくなるだろ。
真面目な話が嫌いな私は、渋々その場に座り込んだ。


「実は・・・近江の郷田会長と、盃を交わそうと思っているんです」
「盃・・・」
「ええ。近江連合との全面戦争を避けるには、最早それしか方法が・・・」
「・・・郷田会長とお前とでは格が違う。向こうがその話、飲むとは思えんがな」


近江連合と東城会の盃。
盃を交わすことが出来れば、戦争が起きる心配は無くなる。

でもまぁ確かに、近江連合は活発な極道代紋だ。
ぼろぼろな東城会と盃を交わすなんて・・・あり得るだろうか。


「(まぁ、郷田会長ってのがどんな人かにもよるけどな・・・)」


私が情報屋としての力が発揮できるのは、ここ神室町のみ。
残念ながら、近江連合やその内部のことは私にも分からない。

どっちにしろ、私や桐生が口を出す問題じゃないしな。

桐生は堅気。
私はただの情報屋。
どちらも極道には関係無い立場の人間。


「ですから、助言を頂きたく今日は来たんです。こんな時、お二人ならどうするかと・・・・」
「寺田」
「・・・」
「俺はもう、極道じゃねぇんだ。堅気である俺が口を出すことじゃねぇ」
「そうだな。・・・まぁ、情報屋の鷹として手伝える事があったらするよ」


寺田が不安になる気持ちも十分に分かる。
五代目という立場と責任が、全て寺田の身体に圧し掛かってるってわけだ。

それに、この話が失敗すれば、問答無用で戦争が始まる。
助けてやりてぇとは思うけど、私に出来ることは情報の提供ぐらい。

とりあえず、連絡先の書いてある名刺ぐらいは渡しておいても――――。


――――パァン。


「なっ・・・!?」
「寺田!!」


名刺を持った手が、空を切った。
目の前に立っていた寺田から大量の血が飛び散り、私の視界を染めていく。

銃声?墓地だっていうのに、こんな所で誰が。
右手から血を流す寺田を庇うように立った私は、その犯人をすぐに見つけることが出来た。
銃を持った男が二~三人、私の方を見てニタニタと笑っている。


「なんだお前等・・・」
「寺田はんの首、貰いに来たんや。大人しく渡したってや」
「・・・近江の奴らっぽいな。どうする、桐生」
「しょうがねぇ。寺田!お前は遥を連れて逃げてくれ!」


寺田の命は東城会の運命。
桐生が寺田を庇うのを見て、私も挑発的に拳を構えた。


「ですが・・・!」
「寺田。お前の身体には東城会の運命が掛かってるんだ」
「・・・わ、分かりました」
あけ、お前も寺田と逃げ「よーし!いっちょやるか、桐生!」
「お前・・・」


桐生の言葉を遮り、やる気満々で前に出る。
言葉を遮られた桐生は不機嫌そうに私を睨み付け、私を後ろからコンッと小突いた。

絶対そう言うって思ってたんだよ。
だからわざと前に出たんだ。お前が一人で戦わないように。

いつだって一緒だと、約束した仲だから。


「一人だけかっこつけようとしてんじゃねぇぞ」
「・・・お前を心配した俺が馬鹿だったみてぇだな」
「そういうことだ。・・・ほら、さっさとアイツらに礼儀を教えてやろうぜ」
「あぁ・・・お前らに、極道の礼儀ってやつを教えてやるよ」
「なんやと・・・!?おい、やっちまえ!」










































堅気でも変わらない、その強さは龍のように
(手も足も出せずに倒れていく敵を、私は懐かしむように見つめていた)
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
←No.91No.90No.89No.88No.87No.86No.85No.84No.83No.82No.81
サイト紹介

※転載禁止
 公式とは無関係
 晒し迷惑行為等あり次第閉鎖
 検索避け済

◆管理人
 きつつき
◆サイト傾向
 ギャグ甘
 裏系グロ系は注意書放置
◆取り扱い
 夢小説
 ・龍如(桐生・峯・オール)
 ・海賊(ゾロ)
 ・DB(ベジータ・ピッコロ)
 ・テイルズ
 ・気まぐれ

◆Thanks!
見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。
現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。
(龍如/オール・海賊/剣豪)