いらっしゃいませ!
名前変更所
ふと目が覚めた夜。
片目だけを開けて大体の時間を確認したゾロは、同じベッドに眠るくろねこの腰に手を回した。
柔らかな肌。
まだ服を着ていない彼女のお腹に指を這わせれば、くすぐったそうにくろねこの体が動く。
「っ、ん・・・また、するの?」
裸で眠るくろねこは、ゾロに強請られたのだと思ったらしい。
寝惚け眼で目を開けたくろねこが困ったようにゾロに微笑む。
「うー、もう、できないよ・・・・」
可愛らしいくろねこの声に、また熱が昂ぶるのを感じながらもゾロは優しくその頭を撫でた。
2.じぇらしー
船旅をしていると、恋人の営みというものはあまり出来る機会がない。
それでも隙を見てはくろねこを襲っていたのだが、同じ部屋で寝床を共に出来るとなれば我慢する必要もなくなる。――――いや、むしろ、我慢できるわけがない。
あれから数日。傷が浅くなり、体力が回復したゾロは久しぶりにくろねこを求め、くろねこが気絶するまでその欲を満たした。
その結果がこれだ。
涙目で腰をさするくろねこは掠れた声で水を求めるが、腰の痛みにベッドに倒れ込む。
「ゾロぉ・・・・!」
「わりぃ・・・さすがにやりすぎたか・・・・」
手首についた真っ赤な痕。
窓から差し込む月明かりに照らされる首筋にびっしりとついた、噛み跡とキスマーク。
くろねこは何とか体を起こすと、布団をめくってゾロの包帯に触れた。
激しい行為で汗でぐっしょりと濡れた包帯は、寝る前にしっかり巻いたはずなのに少し緩んでいる。
「ゾロ、ちょっとシャワー浴びちゃおう」
「あ?」
「汗で包帯が・・・これだと傷の治りが悪くなっちゃう」
「あぁ・・・そうか」
くろねこの言葉に素直に頷いたゾロは、起き上がってお風呂場へと向かった。
後を追いかけるくろねこは腰を擦りながらヨロヨロとタオルを運ぶ。
「お前も入るか?」
「うん、私も右肩の治り悪くなると困るから・・・・」
鏡に映る二人の肌は、お互いに傷だらけだ。
薄明かりの中で表面の汗だけ流したゾロは、交代で汗を流しにきたくろねこの体を見ながらそっとバスタブの縁に腰を下ろした。
だいぶ治ってはきたが、それでもまだ傷がチラホラと目立つ。
傷が治らなければ修行をつけてもらえない。焦りは募るが、ここで無理をしても意味がないということは分かっている。
「この分じゃ、明日はまだ無理そうか・・・・」
残念そうに呟いたゾロの方を振り返ったくろねこが、悪戯に笑う。
「治りかけだからって無茶するからだよ」
「それとは関係ねぇだろ」
「ほんと?」
「むしろ治りが早くなるかもしれねぇだろ?試すか?」
「・・・・・殺す気?」
正直まだ求め足りない。
今でもくろねこのシャワーを浴びる姿を見て、体が昂ぶっているのは事実だ。それを隠すこと無くくろねこの姿を見つめていたゾロに、くろねこが呆れ顔を向ける。
「けだもの」
「なんとでも言え」
「・・・・・ったく」
シャワーを浴び終えたくろねこは、座ったままのゾロにタオルを投げ渡した。
「さっさと拭いて。包帯巻き直すよ~」
「へいへい」
相手にされなかったゾロが口を尖らせながら体を拭き始める。
その様子を見て再度呆れを含んだため息を吐いたくろねこは、仕方ないとゾロに歩み寄った。
「あ?」
「早く修行したいんでしょ?・・・・特別だよ」
「・・・・っ」
色っぽい、表情。
思わずごくりと喉を鳴らす。
くろねこはゆっくりとゾロの前に跪くと、ゾロの傷に舌を這わせ始めた。くすぐったい感触に震える手でくろねこの頭を掴めば、意地悪く見上げる瞳と目が合う。
「私は改造人間だから、体液に少し人の治癒を促す成分が入ってるんだ。誰にでも出来るものじゃないけど、こうやって舐めれば・・・・」
舌が這った場所から順に、小さな傷が塞がっていくのを見て、ゾロは驚きに目を見開いた。
「お、お前、こんな力・・・・!」
「本来は私の傷の治癒力を高めるものなんだけど、こういう事ができる相手で、かつ傷が浅ければ出来るってわけ!」
「・・・・これなら、明日には治りそうか?」
「うん。・・・・あんまりしちゃうと、ミホークにバレちゃうからやりたくなかったんだけど・・・・」
ミホークはくろねこが改造人間であることを知っている。
海軍の実験から逃げ出した彼女を拾ったのはミホークだ。実験体になっていたことも、くろねこの体の一部が改造されていることも、ミホークは全て知っている。
そんな相手が一緒にいる中でゾロの傷が異常に早く治れば、こういう治療をしたことが悟られてしまうのは言うまでもない。さすがにそれは恥ずかしいため、やらないでいたのだが。
「そんなに修行修行って言われると、少しは・・・・ね?」
照れたように笑いながら傷を舐め続けるくろねこに、ゾロはあの時と同じモヤモヤとした感情を抱えていた。
俺はまだ、くろねこの全てを知らない。
それをアイツは知っている。
―――――気に食わねェ。
治まりそうにない熱に、湧き出す嫉妬。
小さなその舌で自分に奉仕する姿なんてさすがのアイツも知らないだろうと、少し乱暴にくろねこの頭を押さえつけたゾロは、その顔を下に向けさせた。
「・・・・こっちも、してくれねぇか?」
「っ・・・・やったことない」
「やったことあるって言われたら無茶苦茶にしてたかもしれねぇ。・・・・なァ、頼む。俺しか知らないくろねこを見せてくれよ」
スイッチが入ったゾロは止められない。
それをよく知っているくろねこは恐る恐るその熱に手を伸ばし、髪をかき分けて舌を這わせ始めた。裸で跪き、自分の足元で熱を咥えてご奉仕する姿は――――見ているだけで、色々なものが吹き飛びそうな威力がある。
時折苦しそうにしながらも、熱っぽい瞳でこちらを見上げながら必死に口に含む姿は、何とも厭らしい。
「ん・・・・」
口の端から零れる涎。
鼻を擽る、甘い香り。
「っやべぇ・・・・」
本能的に無理矢理に後頭部を押さえつけても、くろねこは抵抗しなかった。
思わず吐き出しそうになったゾロは慌ててくろねこを引き剥がし、呼吸を整える。
「・・・・?ゾロ?」
「わり、でそうだった・・・・」
「最後までしてもよかったのに」
「あ?でもそれじゃあお前がつまんねぇだろ?」
「え、私はもういらな・・・・」
普段酒の香りに敏感な鼻を、誤魔化せるわけもない。
逃げようとするくろねこを抱きかかえ、部屋に運び、乱暴にベッドに投げ捨てる。
覆いかぶさって甘い香りがする場所に指を這わせれば、何もしていないはずのそこがぐちゃりと厭らしい音を立てた。
「本当にいらねぇのか?」
「っぁ、う、だめ・・・!」
「俺の、舐めただけでこうなったのか?へっ・・・随分と厭らしいもんだな」
「誰のせいだとっ・・・・!」
「俺のせいだろ?知ってるよ。俺がお前に教えたんだからな、イロイロと」
彼女の初めての奪ったのも、快楽を教えたのも、ゾロだ。
それ故に、ゾロはくろねことの行為に執着するときがある。
ゾロしか知らない表情。
ゾロにしか聞かせない声。
その全てが自分のものだと実感するために、ゾロはくろねこを抱く。
「諦めろ。本当にイヤなら全力で抵抗しろよ」
―――――俺より強ぇんだから、簡単だろ?
その囁きは、何とも意地悪な殺し文句だった。
抵抗しないということは受け入れているということを、思い知らせる言葉だからだ。
押さえつけられている力は、普通の男よりも何十倍も強い。
けれど、それでも、くろねこならその力を押しのける力を出すことが出来る。
だけど出来ない。
本心では、そこまでイヤではないから。
それを見抜いた上での言葉。
本当に、意地悪としか言いようがない。
「・・・・っ」
「いい顔するじゃねぇか」
「性格悪い」
「今更だろ・・・・おら、逃げんな・・・!」
「ひ、ぁっ!」
腰を引いて逃げようとするくろねこの蜜壺に、ゾロの指が思いっきり突き立てられる。
くろねこの体を知り尽くした指は、焦らすこと無く一番弱い場所を見つけると、そこを押し上げるようにくいと指を曲げた。
「っ・・・・ぁ、あぁぁっ!」
「ここ・・・すきだろ?」
「んん、ぁ、やっ、あ!」
体が思い出すのは、先程までの情事。
ゾロの好きなように嬲られ、いかされ、貪られるあの獣のような行為。
それをされると分かっていて抵抗しない――――いや、出来ない自分。
そして抵抗出来るはずだと分かっていて、抵抗しないくろねこに意地悪く囁くゾロ。
「っ・・・!だめ、やだっ、やだぁっ」
「いきそうか?」
全てが理性を揺さぶる。
「っ~~~、おねが、やっ、見ないでっ」
「あ?それじゃ意味ねぇだろッ・・・!」
顔を隠そうとする腕をベッドに押さえつけて、びくびくと跳ねる体を楽しみながら指を動かせば、耐えるようにぎゅっと目を瞑って達したくろねこが涙を零した。
「は、ぁ・・・っ、あ・・・・!」
「早いな・・・興奮してんのか?」
「ちが、う・・・!」
「へぇ?」
その違うに、何の意味があるのか。
お互いに意味がないことは分かっている。
それでもただ熱に溺れるのは恥ずかしくて、怖くて。
意味のない抵抗。
足でゾロをどかそうとしても、震える体では全く意味をなさない。
達している中を開くように指を動かされ、また昇ってくる感覚にくろねこは目をつむる。
「またっ・・・・!ね、またいっちゃうからっ」
「いいぜ?いけよ・・・・」
「何度も、されたらっ、や、壊れるっ・・・!」
何度も、何度も。
体が熱を帯びて、跳ねる。
「あぁああっ、やら、もうっ」
「駄目だ」
いつも意地悪なところはあるとはいえ、今日のゾロは異常だった。
最後は泣き叫ぶように本気で抵抗したにも関わらず、何度も何度も絶頂に導かれた。力尽きたくろねこが涙と涎でぐしゃぐしゃになっているところに、自身の熱を蜜壺に沈め始める。
「ほん、とに・・・しんじゃ・・・・どうした、の?私、なんか、怒らせた・・・?」
抵抗することを止めたくろねこは、中が満たされる感触に息を切らせながら尋ねた。
「苛つくんだよ、お前のことを俺よりアイツが知ってんのが」
「あいつ・・・?みほーく、の、んっ!」
「うるせぇ、黙ってろ」
この時間に、他の男の名前は必要ない。
「っ・・・くろねこ・・・!」
「あっ、あぁっ、ん・・・!」
「俺だけに聞かせろ・・・!俺だけに、見せろッ・・・・!」
海賊だから、欲しいものは力付くでも手に入れる。
組み敷く彼女の体が完全に力を失うまで味わい尽くしたゾロは、太陽の光が差し込むのを見てようやくやりすぎたと二度目の後悔をすることになった。
◆◆◆
いつもの席に、いつもの時間。
普段と変わらない光景で違うのは、いつも一番早いくろねこがいないこと。
「・・・・・くろねこはどうした」
「寝てる」
「怪我を治してもらったのか?」
「あ?・・・あ、あぁ」
「そうか」
くろねこの言う通り、微かな傷だったにも関わらずミホークはそれを見抜いて指摘した。
さすがの観察力と言うべきなのだろうが、やはりどこか気に食わない。
「・・・・くろねこのこと、詳しいんだな」
置いてあった新聞に視線を逸しながら、我慢しきれなかった言葉を吐く。
「あいつを拾ったのは俺だからな。必然的にそうなる」
「・・・・そうかよ」
「フン。気に食わんのか?」
「・・・・チッ」
「気にせずとも俺はくろねこに特別な感情はない。だが・・・・俺にもある程度の情というものはある。アイツの過去は、俺が知っている中でも想像し難い苦痛と絶望に塗れている」
グラスワインを傾けたミホークは、いつも以上に真剣な瞳でゾロを見つめた。
射抜くような瞳にゾロは思わず動けなくなる。
「・・・・あの娘を、もし不幸にしてみろ」
――――あの時と、同じ。
冷たい感触が肌を撫でる。
「未来の若き芽だとしても、俺はお前を斬る」
本気だ。
声色も表情も何一つ変わらなくとも分かる、殺気。
こんな男まで変えてしまうくろねこは、本当に魅力的な人間なのだろう。
想像し難い苦痛と絶望の過去を振り切る真っ直ぐな太刀筋。輝くような笑顔。
裏のない、恐ろしいほど真っ直ぐな人間。
ゾロが彼女に惹かれたのも、そんなところだった。
「頼まれても不幸になんかするかよ」
その過去に囚われず、真っ直ぐ自分の強さを見つけにいくくろねこは、どんな女よりも美しく眩しい。
そんな彼女がいつまでも笑っていられるようにするのは自分の役目。
自分’だけ'の役目。
ゾロの答えに満足気に頷いたミホークは、静かにワイングラスに口づけた。
そろそろ起きてくるはずだと呟いたミホークの言葉通り、遠くからドタバタと慌ただしい足音が近づいてくる。
「ごっ、ごめん、寝坊、した!!!」
「いい。どうせその男に無理させられたんだろう」
「ッ、んなわけないでしょ!?違う!!クソ!!変態!!!」
「フッ・・・・」
ミホークの直接的なからかいに、くろねこが汚い暴言を吐きながら台所に消えていく。
「からかって遊んでんだろお前・・・・」
「事実だろう」
「・・・・・・・・」
「あいつは分かりやすい。タフだが体調の変化はすぐ顔を見れば分かる」
「チッ・・・・」
やはり、気に食わない。
だが逆に見せつけにはなったのかと、ゾロは開き直って目を瞑った。台所から朝ごはんのいい匂いがするまでは、もう一眠りしよう。
じぇらしー
(過ごした時間は短くても、俺はアイツよりくろねこを知ってるんだ)
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