いらっしゃいませ!
名前変更所
時計の針が、午前5時ごろを指す。
子供たちが起きてくる前にご飯を作ってやろうと、俺は気だるいゆっくり身体を起こした。
昔の俺と比べたら、随分早い時間だ。
向こうに居た頃は夜遊びしまくって、ほぼ昼まで寝てたからな。
すっかり平和なこの環境に慣れてしまった自分を笑いつつ、隣に寝ているはずのアイツを起こそうと布団を退かした。
・・・が、俺が探すアイツの姿はすでに無い。
あけが俺より早く起きた事なんてほとんど無く、俺は布団を持ったまま固まってしまった。
トイレか?いやでも、ほとんど温もりが残っていない。
「・・・・」
アイツも大人だ。そんなに心配することはないだろう。
起き上がった俺は手早く服を羽織り、部屋の扉を開けた。
「あ、おじさん!おはよう!」
「あぁ・・・遥か。おはよう」
遥は相変わらず、この施設のお姉さんとして良くやってくれている。
最近はあけが来てくれたこともあり、少しは負担が掛からなくなったとは思うが。
でも今日は、そのあけが朝から居ない。
朝食の準備をしてると思ったんだが・・・どうやら違ったようだ。
俺は遥に朝食の材料を渡しながら、あけの事を尋ねた。
「あけは?どこに行ったんだ?」
「あれれ?お風呂・・・じゃないの?」
凄く朝早くに、シャツだけ羽織ってお風呂に行ってたよ?と。
遥にジト目で言われ、俺は思わずごまかすために咳払いをした。
遥はこう見えても、神室町で母親を探すために彷徨っていた子だ。
他の子どもより精神年齢は高めだろう。
下手すれば、あけよりも高いと感じる時がある。
「おじさん、あけお姉ちゃんのこと探しに行ってもいいよ?」
「・・・遥・・・」
あけの事を気にしていることがバレたのか、遥はにっこりと笑いながら俺の方を見た。
お風呂にも居なかったようだし、まず玄関に靴が見当たらなかった・・・ってことは、やはり外だろうか?
こんな朝早くにアイツが出ていくことを見たことが無く、考えれば考えるほど気になってしまう。
俺はしばらくしてから包丁を手放すと、後を遥に任せてあけを探しに行くことにした。
「すまないな、遥」
「ううん!・・・おじさん、あけお姉ちゃんのことになると、落ち着きなくなっちゃうんだから。早く見つけてきてね!」
「・・・!」
ああ。やっぱり遥は俺の思っている以上に大人だ。
何だか恥ずかしくなった俺は、すぐその場から離れ、まだ寝ている子供たちを起こさないようにそっと玄関を開けた。
扉を開ければ、沖縄特有の強い日差しが俺を迎える。
海に反射する日の光がとても綺麗で、俺はその景色を見ながらあさがおの周辺を探し回った。
「・・・どこ行ったんだ、あいつ・・・」
居そうな場所はざっと探したが、まったく見当たらない。
俺は探すことを中断し、ポケットに入れていた携帯を取り出した。
そういえば、電話すればいいんじゃねぇか?
遅すぎる自分の考えに、苦笑しながら電話帳を開く。
プルルル・・・
プツッ
「あけ。お前今どこにいるんだ?」
『え、いや、えっと、ちょっとお菓子買いに・・・?』
「・・・なんで疑問形なんだ」
『な、なんだよ心配してんのか?大丈夫だって。すぐに帰るからさ!』
「あ、おい・・・!?」
いつものあけらしくない、どもり口調。
しかもその電話は、桐生の言葉を待つことなく一方的に切られた。
怪しい・・・。これはかなり怪しい。
ちょっと前に遥が怪しいバイトをしていた時も、こんな感じだった気がする。
まさか、あけも?
だがあけには、そんな怪しいバイトをする必要性が無い。
だとすると、まさか。
嫌な予感が頭をよぎり、俺の足は自然と琉球街へ向かっていた。
「(情報屋として働いてる気配も無かったしな・・・まさか、別な男か何かか・・・?)」
俺も元は夜遊びしていた身だ。女性の気持ちを分かってやれないこともある。
だからと言って、最近あけを怒らせた記憶もない。
モノレールに乗って琉球街へ到着した俺は、降りた先でさっそく見慣れた姿を見つけて立ち止まった。
遠くからだが、あの恰好は結構この町では目立つ。
黒いシャツにボサボサの短髪。間違いなくあけだ。
「(こんな所で、何してるんだ・・・?)」
あけはお店の前で、落ち着きなくそわそわしていた。
周りを見渡し、普段あまり吸わない煙草を咥え、携帯をしきりに確認している。
普段のあけを見慣れている俺にとって、その姿は初めて見るぐらいオドオドしているようにも見えた。
明らか、俺には言えない何かをしているのが分かる。
「まぁ・・・今行っても、何も話してくれねぇだろうな・・・」
あの電話の様子じゃ、適当に誤魔化されてしまうだろう。
仕方なく俺は、しばらくあけの様子を影から観察することにした。
「・・・・」
煙草を吸い、煙を吐き出す。
子供たちに悪いからと、あまり吸わなくなっていた煙草が美味しい。
あけは元々吸わないタイプだったが、イライラしたり緊張したりすると吸うって言ってた気がするな。
ある意味、レアな姿ってわけか。
隠れてこそこそしているあけに、苛立ちだけが募っていく。
「ったく、アイツはなにしてるんだ・・・?」
煙草を咥えなおし、もう一度あけの様子を窺った。
あけは煙草を吸いながら、険しい顔で携帯を睨み付けている。
そして急に慌てた様子を見せると、急いで携帯を取って話し始めた。
さすがに、この距離だと会話は聞こえない。
口パクで読み取れるほど、俺も器用じゃねぇ。
「(チッ・・・)」
あけは携帯を掛けたまま、俺の方に向かって走り出した。
見つかったのかと思って階段に隠れるが、どうやら違ったらしい。
「はぁっ・・・!くそ、アイツ・・・!」
俺に気付かずに通り過ぎたあけから聞こえた、そんな苛立ちのセリフ。
ますますあけの事が気になった俺は、後をこっそりと追い掛けた。
走っていくあけの後を、小走りに追いかける。
まるで、ストーカー・・・い、いや、これは決してストーカーなんかじゃない!
俺はそう自分に言い聞かせ、あけがとある店の前で止まるまで追い続けた。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
ここは、どこだ?
気づけば俺は、少し街を外れた場所へと来ていた。
あるのは寂れた空き地と、小さなアクセサリー屋さんだけ。
人通りが少ない裏路地のため、俺はその場所を遠くから観察することにする。
あけはそのアクセサリー屋さんの前で止まると、またさっきみたいに落ち着かない様子で煙草を吸い始めた。
「こんなところに、店が・・・」
隠れた名店、というべきなのだろうか。
ただのアクセサリー屋さんにしては、ヤケに高級感あふれる店がそこにはあった。
それにしても、なんでこんなところにあけが?
さっきよりも落ち着きねぇし、どうやらここで何かするみたいではあるが。
くそっ。気になるが今はその時じゃねぇ。
あの様子じゃ、“誰か”かを待ってるんだろ。
俺はそれを見つけるために、声を掛けたい気持ちを抑えてじっと隠れ続けた。
そして意外にも、すぐに“誰か”が姿を現す。
「あれは・・・りき、や・・・?」
最近、俺のことを兄貴兄貴と言ってついてくるアイツの姿を、見間違えるはずがない。
確かにあけの元へ走っていった男は、力也本人だった。
俺は静かに身を隠し、あけと力也がお店の中に入っていくのを見守る。
「(どういうことだ・・・?どうしてあの二人が・・・。これがコソコソしてた理由ってことか?)」
「・・・おじさん?」
「!」
二人が出てくるまで待つつもりだった俺は、後ろから掛かった聞き覚えのある声に肩を震わせた。
振り返ると、遥が凄いジト目で俺のことを見ている。
時計を確認すればもう朝ごはんの時間はとっくに終わっていた。
俺は遥に普通の会話をしようとして―――――――遥の黒い台詞に言葉を失う。
「おじさん、そんな趣味があったんだね・・・」
「え、いや、これは・・・!」
「私はお姉ちゃんのこと探していいよって言っただけなのに、ストーカーなんて・・・」
「ち、違うんだ!」
遥の冷たい言葉に耐えられなくなった俺は、必死に今の状況を説明した。
説明を聞き終わった遥が、いつも通りの純粋な笑みを浮かべてくれたことに胸を撫で下ろす。
「そうだったんだ・・・。でも、お姉ちゃんは浮気とかそういうのじゃ、ないと思うよ?」
「遥・・・」
遥の言葉には、やけに説得力があった。
でもまだ、不安は拭えないまま。
アイツは俺を裏切るようなことはしねぇ。自信持ってそう言えるはずなのに。
「じゃあ私、買い物してくるね!」
「あぁ。気を付けてな」
元気よく走っていく遥を見送り、俺はまたお店の方に目を向けた。
まったく、俺はいつからこんなに弱くなっちまったんだ?
いつだってあけは、俺の傍に居てくれた。どんな時でもずっと。
そんなアイツが俺を裏切るわけがない。
だがその気持ちとは正反対に、俺の心は店の中の二人を見て苛立つ。
「・・・・!あれは・・・」
数分後、店から出てきたあけの腕には、見たことのないブレスネットがはまっていた。
女物というよりは男物だろうか。
シンプルな物だが、あけのイメージに良く似合っている。
でもあんなの、着けてるところはおろか、持ってるところすら見たことない。
となると、先ほどのアクセサリー屋で買ったと考えるのが妥当だ。
自分で買ったんだと思いたいが、今の状況的に力也が買ったのかもしれないと思う自分がいて。
「・・・帰って、寝るか」
力也の隣で楽しそうに笑うあけに、俺は苛立ちの限界を感じた。
苛立ちを消すための昼寝だったが、どうやら寝すぎてしまったらしい。
自分の部屋で目を覚ました俺は、すっかり日が暮れていることに気付いて身体を起こした。
「もう、7時か・・・」
あの後、あけはどうしたんだろうか。
力也とあのまま遊んだのか?ずっと。
あー、駄目だ。
寝てもまったく晴れない苛立ちに、ため息しか出てこない。
「おじさん!ご飯、残してあるよ!」
「遥・・・・」
部屋を出ると、朝と同じように遥が出迎えてくれた。
おじさん寝すぎだよ!と怒る遥に、謝りながら居間へと進む。
すると居間には、俺以外にもう一人分のご飯が残してあった。
子供達は全員食った時間だよな?だとするとこれは誰のだ?
そんな俺の疑問に気づいたのか、遥がお茶を準備しながら笑う。
「それ、お姉ちゃんの。お姉ちゃん、おじさんが起きるまで待ってたんだよ?」
「・・・んぁ?あ、起きたのか。おはよ」
「あぁ・・・」
俺の声に気付き、重ねてあった布団からもぞもぞとあけが這い出してきた。
思わず不機嫌になってしまう自分を、抑えられる気がしない。
俺は咄嗟にあけから顔を逸らし、出来る限り今日の事を思い出さないようにした。
思い出せばきっと、時間なんて関係なくあけを壊してしまうだろう。
そっぽを向いて食べ始めた俺に、あけが変わらない様子で俺に話しかけてくる。
「おせぇぞ桐生。お前のせいでご飯さめっちまった」
「悪いな・・・」
「・・・な、なんだよお前。ヤケに大人しいじゃねぇか・・・」
素直に謝ると、気味悪いとばかりに凄い顔をされた。
・・・やっぱりこいつ、今すぐぶん殴ってやろうか。
「あ、桐生」
拳をわなわな震わしていると、あけが真剣な表情で俺に声をかけた。
あけのその表情につられ、俺も自然と真面目な表情になる。
「後で話あるんだ・・・浜辺に来てくれ」
静かにあけの言葉を待っていた俺は、その言葉にごくりと喉を鳴らした。
昼間の光景。そして二人きりでの話。
そしてこの状況・・・想像出来ることは一つしかない。
もし、別れを切り出されたら。
それだけが頭の中を巡り、俺の理性を壊していく。
俺も自分勝手だよな。好きなだけ遊んで、好きなだけ放置したこともあるのに。
でも俺にとって、アイツは帰る場所なんだ。
俺はあけが食べ終わるのを確認すると、すぐにあけを外へ引き摺りだした。
「ちょっ・・・!?桐生!?」
「来い」
「うわわ、あぶ、あぶねぇって!」
後ろから遥の声が聞こえるが、俺はそれさえも無視してあけを引っ張る。
そしてあけに喋らせる暇を与えないよう、砂浜についた瞬間口を塞いだ。
もちろん、俺の唇で。
壊れた理性に逆らわず、俺はあけを壊すように唇を貪った。
逃げようとする舌を絡め取り、震える身体をさらに押さえ込む。
「ふっ・・・!」
今までも、強引なキスはしてきた。
生意気な事言ったり、素直にならないときの薬としてだ。
だが今の俺には、その行為を止める理性がない。
いつもと違う乱暴な口付けに、あけは涙を浮かべながら抵抗しようとする。
それさえも、今の俺にとってはただの煽りにしか見えねぇけどな。
「ぷはっ・・・!桐生!てめぇいきなりなにをっ・・・!人の話を聞け!」
「黙ってろ」
「ッ・・・!」
喋らせない。何も言わせない。
このまま、壊してやる。
「ひっ・・・!あ、やめっ・・・」
抵抗を止めようとしないあけを黙らせるために、俺はあけのズボンに手を入れた。
下着の上から大事な所をなぞれば、悲鳴に似た甘い声が上がる。
誰にも聞かせたことの無い声。俺だけが聞ける声が。
「ひゃ、あ・・・やめ、おねがっ・・・!」
抵抗していた声が、本格的な甘みを帯びてきたことに気付き、俺はふと笑みを浮かべた。
「どうした?外でこんなことされて・・・感じてんのか?」
「んっ・・・!だ、だめ・・・!」
「そんなこと言う割には・・・感じてるみたいだけどな」
言葉と、手で。あけの理性を容赦なく崩していく。
それでもあけは、何か言おうとするのを止めない。
・・・イライラする。
俺は抵抗するあけの手を押さえつけようとして、ふとブレスネットの存在に気付いた。
反射的にそれを奪い取ろうとするが、あけの足蹴りがそれを阻む。
「ぐっ・・・」
「はぁっ・・・!はぁっ・・・!てめぇ、何、するんだ!?」
「それ、力也から貰ったんだろう?」
「は・・・?りき、や・・・?」
俺の言葉に、あけが呆然とした表情を浮かべる。
そして俺の表情から何かに気付いたのか、急にぷぷっ!と噴き出した。
「お前、まさか朝のやつ見てたのか?」
「だ、だったらなんだ」
「お前なぁ・・・ばか!お前本当にばか!」
「・・・今、そんなことを言える立場だと思ってるのか?」
「あ、ちょっ・・・!?おま、え・・・卑怯だってっ・・・!」
下に這わせた手を動かせば、一瞬であけの表情が女のものに変わる。
だがあけは喋るのを止めようとはせず、俺にブレスネットを見せつけながら、途切れ途切れの言葉を紡いだ。
「これ、はっ、力也に頼んで・・・ひゃぁ、ぁ・・・お前に、似合うのをっ・・・!」
「・・・俺、に?」
「お前、明日が何の日か、しってる・・・か?」
明日?
俺はいじめる手を止めずに、空いてる手で携帯を開く。
「はっ・・・ぁ」
「6月17日だな。それがどうした」
「ばか、か。お前の・・・たん、じょうびっ・・・だろ・・・!」
あけはそう言いながら、快感に打ち震える手でポケットから箱を取り出した。
箱にはあの、アクセサリー屋さんの名前が刻まれている。
さすがに俺はいじめる手を止め、その箱を静かに受け取った。
ゆっくりと開ければ、中にはあけとお揃いのブレスネット。
俺好みの、シンプルな物だ。ってことはつまり、力也は・・・。
「力也は、男の好みを参考にするために、つれてっただけだ」
「・・・そうだったのか」
「ばーか」
勝手に勘違いして襲い、勘違いして苛立っていた。
そう思うと、申し訳なさ過ぎて何も言えなくなる。
馬鹿という言葉にも、反論は出来ない。
でもあけは俺に罵声を浴びせることなく、嬉しそうな笑みを浮かべた。
ブレスネットを愛おしそうに撫で、それから俺にぎゅっと抱き着いてくる。
「お前のせいで早くなったけど・・・誕生日、おめでと」
早とちりしてしまった悲しさと、祝ってもらえる嬉しさと。
俺は色んな感情をごまかすために、抱き着いてきたあけを抱きしめ返した。
「気に入って、もらえたか・・・?」
「あぁ。これから毎日着けよう」
「喧嘩するときは外せよ、お前いつもあぶねぇんだから」
「フッ・・・そうだな」
「・・・あ!あと・・・」
ん?まだ何かあるのか?
じっと見つめて言葉を待っていると、何故かあけが怒った様子で俺のことを睨み返してくる。
「み、見んなっ!」
「お前が何か言おうとするから、待ってたんだろう」
「う・・・そ、それはそうなんだけど・・・!」
「言いかけたこと、ちゃんと言わないと・・・」
さっきの続き、ここでするぜ?
そう低い声で囁けば、すぐにあけが涙目で首を振る。
「わ、分かった・・・言う。言うからお前の部屋いこうぜ・・・?」
「・・・・?」
「まだプレゼントあるんだけど・・・こ、ここには持ってきてねぇんだよ」
さっきより顔を赤く染めて言うあけに、俺は一先ず従うことにした。
あけは急いだ様子で俺を引っ張り、おじさんの部屋と掛かれた部屋に入る。
子供達はもう寝たようだ。
ここの子供達は早寝早起きだからな・・・おかげで、最近俺も規則正しい生活に慣れてきている。
「っしょ・・・!」
俺のタンスの裏から、大きな紙袋が出てきた。
おいおい。俺の部屋に何隠してるんだコイツは。
そう問い詰める暇もなく、あけは静かに紙袋をひっくり返した。
出てきたのは、大人の玩具と呼ばれるそういうもの。
バイブに、軽い手錠。目隠しや薬のような物まである。
あけは気が強い方だ。だから今までこういうはほとんど使ったことが無い。
使ったとしても、俺が調子に乗って手錠をかけたときぐらいだ。
なのに、どうして?
「り、力也がっ」
絞り出す声が恥ずかしさに震えている。
それが愛しくて、俺はあけの言葉を待った。
「力也が、その、プレゼントは物も、いいけど・・・これが、1番嬉しがるって、いうからだな・・・」
そう言ってあけは、自らの首元にリボン風の首輪を着けた。
乱れたシャツに首輪。そして目の前に出された道具。
何がプレゼントか理解してはいるが、最後まで意地悪く言葉を言わせる。
「それで?」
戸惑う表情。
早く聞かせてくれ。お前が誰にも言ったことのないであろう言葉を。
「だ、だから・・・その・・・」
「・・・・」
「わ、わたしを、す、好きに・・・してくれ・・・!」
こんな姿で、こんなこと言われて、我慢できる奴がいるわけねぇだろ?
意地悪く笑いながら、その場に転がっていた玩具をあけの大事な場所に当てる。
スイッチを入れれば、厭らしく動くソレ。
あけが必死に声を押し殺そうとするのを、俺は容赦なく突き崩した。
「好きにしてくれって言ったのはあけだからな?」
「はぁあぁっ・・・!ぁ、いきな、りっ・・・すぎるって、ばか・・・!」
「今日は容赦なく、させてもらう」
「いつも容赦ないだろーが!」
「・・・・」
「ひゃ!ぁっ、ごめ・・・ぁあぁっ・・・!」
声が枯れるまで。動けなくなるまで。
今までで1番最高のプレゼントを、朝までたっぷりと頂くとするか。
「寝る暇もねぇぐらい、鳴かせてやるよ・・・覚悟しとけ」
暖かい感触が、俺の眠気をうっすらと覚ましていく。
俺はゆっくり目を開けると、手を繋いだまま寝ているあけの姿を見つけて微笑んだ。
「よく寝てるな・・・」
「ん・・・」
「・・・起こしちまったか?」
頬を撫でただけなのに、あけは敏感に反応して身を捩る。
「・・・っく!いたたあ・・・」
そのまま起き上がろうとしたあけは、腰への痛みでもう一度布団にダイブした。
昨日は狂うまでやっちまったからな。無理もないだろう。
あけが買ってきた道具は全て使い、焦らし、苛め抜いたんだから。
夜の事を思い出して笑う俺を、あけがキッと睨み付ける。
「て、めっ・・・笑うな!」
「今日はゆっくり休め。昨日あれだけやったんだ・・・動けないだろう?」
「う・・・」
恥ずかしそうに頬を染め、俺に顔を見せないようにするためか、俺の胸元へ顔を埋めた。
頭を優しく撫でてやれば、あけが小さな声で囁く。
「よ、喜んで、貰えたか・・・?」
「・・・あぁ。最高だったぜ」
「ん・・・よかった。これからも・・・よろしく・・・な・・・」
身勝手てで、自由奔放な俺を、ここまで思ってくれるコイツが。
俺の胸に顔を埋めながら再び寝始めたあけを見て、俺もまたもう一眠りすることにした。
慌ただしい俺の、帰る場所
(二人仲よく眠っている所を、遥が見て嬉しそうに笑っていたのは誰も知らない)
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【DB】 ★DB 永遠の忠誠(原作・アニメ沿い連載) ★DB 愛知らぬが故に(原作・アニメ沿い連載) ★DB プラスマイナスゼロ(短編繋ぎ形式の中編) ★DB(短編)